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ザ・マスター

『フライト』『ジャンゴ』『愛、アムール』の感想記事に続いて、
第85回アカデミー賞の諸部門の受賞結果についてです。
授賞式ももうかなり前な印象ですが、受賞結果の感想も今回で最後かな。
最後は助演女優賞の感想になります。
オスカーを受賞したのは『レ・ミゼラブル』のアン・ハサウェイでしたね。
ボクも彼女の「夢やぶれて」にはかなり感動させられたので、予想通りの結果でしたが、
どちらかと言えば演技じゃなくて歌で受賞しちゃった感じなので、
映画の賞、女優の賞としてはどうなのかなとも思います。
まぁ丸坊主にまでして、体張ってた印象もありますけど…。
個人的には大好きな女優であるエイミー・アダムスにも検討してほしかったですが、
ポスト・メリル・ストリープ状態の彼女だけに、「ノミネートの常連」って感じで、
たぶん受賞には至らないだろうなとは思ってましたが…。

ということで、今日はアカデミー助演女優賞ノミネート作の感想です。
助演女優賞だけでなく、主演男優賞、助演男優賞にもノミネートされましたが、
結局無冠で終わってしまいました。

ザ・マスター
The Master

2013年3月22日日本公開。
ホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマン共演のヒューマン・ドラマ。

第2次世界大戦後のアメリカ。アルコール依存の元海軍兵士のフレディ(ホアキン・フェニックス)は、「ザ・コーズ」という宗教団体の教祖ドッド(フィリップ・シーモア・ホフマン)に出会う。やがてフレディはドッドを信頼し、ドッドもフレディに一目置くように。そんな中、ドッドの妻・ペギー(エイミー・アダムス)は暴力的なフレディを追放するよう夫に進言し……。(シネマトゥデイより)



全米初登場7位、アカデミー賞にも3部門でノミネートされた作品なので、
とりあえずハリウッド映画ファンとしては観ておくべきかなと思って観に行きましたが、
うーん、どう楽しめばいいのかイマイチわからない作品でした。
ホアキン・フェニックス、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムスと、
錚々たる演技派俳優をキャスティングしていることから、
演技が売りの作品なのかなと思いましたが、むしろ売りが演技しかない作品なのかも?
アカデミー賞でも俳優部門でしかノミネートされてないことからもそれが窺えます。
役者は素晴らしいのに…、みたいな。
ところが、映画評論家連中からは異様に高い評価を受けているみたいで、
彼らが何を評価したのか、いくつかのプロのレビューを読んでみたのですが、
いまいち要領を得ないものばかりで、結局わからないままでした。
ただ、どのレビューにも共通するのは、舞台である1950年の時代性を評価している点。
太平洋戦争直後、冷戦時代の空気感みたいなことを言及したレビューばかりでした。
つまりは、当時をリアルタイムで経験した、或いは映画などで慣れ親しんだ
映画評論家の年寄り連中が、懐古的に高評価しているだけだと思われます。
このデジタルのご時勢に、撮影にもわざわざ70mm(65mm?)フィルムを使用して、
当時のスクリーンの質感を再現して懐かしさを煽っているのだと思われます。
しかしそんなコダワリも、80年代生まれのボクでは味わうことができず…。

たしかに演技では引き込まれるシーンもありました。
しかしストーリーが全然面白味を感じられず、全体的には退屈です。
概要は新興宗教のカリスマ教祖に嵌っていく男の物語で、
宗教嫌いなボクとしては逆に興味深いものだったはずなのですが、
なんだかいろんな要素が重なっていて、内容は濃いけど掴みどころがない感じで、
結局どんな主題だったのか、何が言いたいのかもわからないままです。
難解なことを高尚と捉えがちな映画評論家が好きそうな内容ですが、
一般の観客、特に若い人には全くオススメできない作品だと思います。

太平洋戦争に従軍していた水兵フレディは、PTSDが原因でアルコール依存症に…。
日本が降伏して帰還し、社会復帰した彼はデパートで営業写真館をしますが、
仕事中に酔っぱらって客に暴力を振るってしまい解雇されます。
その後、キャベツ農場で職を得ますが、彼の作った密造酒で、
出稼ぎ労働者の老人が死んでしまい、また職を失います。
ある夜、彼は酔っぱらって、クルーザーに密航するのですが、
それは新興宗教「コーズ」の教祖ドッドの船で、多くの信者と共にNYへ向かっていました。
酔いが醒めたフレディは、ひょんなことからドッドの仕事を手伝うことになるのです。
コーズは「サイエントロジー」という実際の新興宗教をモチーフにしているそうで、
ドッドもその教団の教祖をモデルにしているのだとか…。
サイエントロジーは50年代に設立され、当初から何かと物議を醸す存在だったとか…。
何でもトム・クルーズも信者らしく、今でも世界中に信者がいる教団なので、
ちょっと断言するのは憚られる気もしますが、カルト教団ですね。

ボクがもっとサイエントロジーについて詳しければ、本作も風刺映画として、
もっと楽しめたのかもしれませんが、生憎全く無知で…。
コーズは「コーズ・メソッド」というもので、被験者の過去の人生を想起させ、
(地球は誕生してから46億年しか経っていないのに)数兆年前の記憶を遡らせたり、
それにより白血病が治せると嘯いたりと、かなり胡散臭いカルト教団ですが、
教祖ドッドはそんなに悪い人には見えないし、コーズ・メソッドにしても、
啓発のためのちょっとスピリチュアルなカウンセリングって感じです。
フロント政党を作って政治を操作したり、人の迷惑を顧みずに折伏してくる、
日本の某カルトに比べたら、害は無さそうかな?
教旨も簡単に言えば「今の人生を生きる秘訣は笑いだ」ってことで、
吉本興業の社訓みたいなチープな教えです。
サイエントロジーが本作の公開差し止めに動くのではと噂があったみたいですが、
結局何もしなかったのは、特に問題がある内容ではないと判断したからでしょう。
ボクとしては本当に差し止められると元も子もないけど、せっかく風刺するなら、
サイエントルジーから強烈な批判をされるくらいの内容にしてほしかったです。

ただ職を得たいがために雇ってもらったフレディですが、
教祖ドッドから「プロセシング」というコーズ・メソッドのカウンセリングを受け、
トラウマを想起させられたことで、完全に妄信してしまうことになります。
「プロセシング」は傍目に見ると、質問攻めで極度なストレスを掛けて、
トランス状態に誘っているだけのように思いますが、実際やられたら信じちゃうかも?
このシーンでのフレディ演じるフェニックスと、ドッド演じるホフマンの掛け合いは、
圧巻の迫力で、なかなか見応えがありました。

まんまと入信させられたフレディですが、彼の妄信っぷりはドッドも予想外で、
コーズ・メソッドを「タイムトラベル催眠術」だと揶揄する男をボコボコにしたり、
父の話はデタラメだと言い張るドッドの息子を恫喝したりします。
ドッドが詐欺で逮捕された時も暴れて、現行犯逮捕でドッドと一緒に留置所へ。
檻の中でも叫ぶは便器は破壊するは、もう手が付けられない男です。
ドッドの家族も懸念して「彼は精神異常で危険人物だから追い出して」と申し出ますが、
ドッドは「彼を見捨てない、救済する」と家族を説得します。
なぜ教祖であるドッドが単なる一信者な上に厄介者である彼を気に掛けるのか不思議…。
フレディが妄信する以上に、ドッドが彼を必要としているように感じられます。
思い当たることがあるとすれば、フレディが作る密造酒を、
ドッドがとても気に入っているということくらいでしょうか。
その密造酒はかなり刺激的な味のようですが、それもそのはずで、
その材料は燃料用のアルコールや、シンナーなんですよね。
キャベツ農場の老人もそんなものを飲んだら死んで当然ですが、
フレディやドッドは平気どころか、とても美味しく飲んでいます。
だけど妻に注意されて、ドッドは飲まなくなったので、密造酒目当てではなさそうかな。

ちょっとゲイっぽいけど、そういう関係ではないようなので、
特別な親友としての「ブロマンス」って感じなのかも。
2人は荒野(砂漠)で「目標設定ゲーム」なるものをするのですが、
そのゲームは自分の決めた目標地点までバイクで向かい折り返してくるというものですが、
フレディは目標地点まで行ったまま走り去り、何故か戻ってきませんでした。
あれだけ妄信していたドッドの下を急に去るなんてフレディの心境は理解できませんが、
去った彼を追い求めるドッドの心境もやっぱり理解できません。
その後、フレディが映画館でひとり、アニメ映画を見ている時に、
その映画館にドッドから電話が掛ってきて、従業員が取り次ぎます。
フレディが「何で居場所がわかった?」と聞いても、ドッドは明確に答えませんでしたが、
本当に何で居場所がわかったのかが不思議で仕方ないです。
掛ってきた電話を客に取り次ぐ従業員の頭もおかしいですよね。
映画館では携帯だろうが固定だろうが、電話の使用は禁止しろと。

その後、再開した2人ですが、また別れることになります。
もう2人の心境に全く付いて行けなくなっているので、
どんな意味があるラストなのかも全く理解できず、
感動もできないし、気持ちも微塵も盛り上がりません。
なんだかモヤモヤしたまま、首を傾げながら劇場を後にしました。
ボクには30年早い作品でした。

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