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愛、アムール

かなり間隔が開きましたが、『フライト』『ジャンゴ』の感想記事に続いて、
第85回アカデミー賞の諸部門の受賞結果についてです。
今回は主演女優賞の感想になります。
本年度の注目は、史上最年長女優と史上最年少女優がノミネートされたことでした。
最年長は『愛、アムール』のエマニュエル・リヴァ、当時85歳。
最年少は『ハッシュパピー』のクヮヴェンジャネ・ウォレス、当時9歳です。
その差は実に76歳と、干支にして約6周り半、4分の3世紀も開きがあります。
正直、芸歴50年以上の大ベテラン女優と、デビューしたばかりの子役を、
同じ土俵に上げていいものかと思ってしまいますが、
最年長と最年少のどちらか片方だけのノミネートならまだしも、
同時にノミネートとなると、何か作為を感じるのは否めません。
結局オスカーを受賞したのは、そのどちらでもなく、
『世界にひとつのプレイブック』のジェニファー・ローレンスでした。
(彼女も若干22歳で、もしあと1年早ければ最年少受賞者です。)
その結果は予想通りだったし納得の結果ですが、前述の女優2人が、
なんだか噛ませ犬みたいで、ちょっとスッキリしない気持ちになります。
どの部門にも言えることだけど、受賞の見込みがない候補者は立てない方がいいです。
ベテラン女優の方はまだしも、子役に賞を獲らすつもりなんてないくせに…。

ということで、今日は最年長主演女優賞候補の映画の感想です。
演技が上手いと言うよりは、普通の女優は嫌がる演技に挑戦しているという印象でした。

愛、アムール
Amour.jpg

2013年3月9日日本公開。
鬼才ミヒャエル・ハネケ監督によるヒューマン・ドラマ。

パリ在住の80代の夫婦、ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リヴァ)。共に音楽教師で、娘はミュージシャンとして活躍と、充実した日々を送っていた。ある日、教え子が開くコンサートに出向いた2人だが、そこでアンヌが病で倒れてしまう。病院に緊急搬送され、かろうじて死だけは免れたものの、半身まひという重い後遺症が残ってしまう。家に帰りたいというアンヌの強い願いから、自宅で彼女の介護を始めるジョルジュ。しかし、少しずつアンヌの症状は悪化していき、ついに死を選びたいと考えるようになり……。(シネマトゥデイより)



本作は第85回アカデミー賞でも話題になりましたが、
それ以前に第65回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した注目作です。
しかも本作の監督である巨匠ミヒャエル・ハネケは、
前作『白いリボン』もパルムドールに輝き、2作連続受賞の偉業を達成しています。
映画ファンとしては、三大映画祭のグランプリくらいは観ておくべきかと思うので、
パルムドールを受賞した時点で本作を観に行くことは決めていたのですが、
できれば観に行きたくない作品で…。
高齢者向けの内容で、若輩者のボクには楽しめそうにもないのは予想に難くないし、
何よりハネケ監督の前作『白いリボン』が、近年指折りの退屈な作品だったので、
全く期待が持てませんでした。
そもそも映画ファンの最低必修事項として、過去4年パルムドール作を観に行きましたが、
一本も楽しめた試しはなく、ボクはパルムドールと相性が悪いんですよね…。

しかし本作は、比較的相性がいいアカデミー賞でもノミネートされました。
しかも外国語映画にも関わらず、作品賞にまでノミネートされたのです。
昨年度(第84回)アカデミー賞ではイラン映画(ペルシア語)の『別離』が、
脚本賞にノミネートされて、かなり異例なことだと思いましたが、
いざ観てみても脚本賞候補になるのは当然と思える面白い作品でした。
本作は、それを上回る(?)作品賞でもノミネートですから、
パルムドール受賞で地に落ちた期待値も上がると言うものです。
ただ、アカデミー賞とて比較的相性がいいというわけでもなく、
作品賞候補でも毎度1~2本は残念な作品が混じっているものです。
特に「パルムドール受賞×アカデミー作品賞候補」という本作と同じ経緯の作品だと、
前年度の『ツリー・オブ・ライフ』で、本当に痛い目に遭いました。

しかしアカデミー賞は作品賞候補だけではなく、
『おくりびと』や『別離』も受賞した、外国語映画賞も比較的信頼できます。
映画ファンを名乗るだけのために律儀に観に行かないでもいいかなと思いながらも、
最終的に本作を観に行く後押しをしてくれたのは外国語映画賞でのオスカー受賞でした。
しかしながら、本作で外国語映画賞の信頼も揺らぐことになりました…。

はっきり言って全く面白くないです。
白黒映画だった意味不明な『白いリボン』に比べれば、かなり観易いとは思いましたが、
笑えないし感動も出来ない、ひたすら苦々しい内容で、席を立ちたくて仕方なかったです。
簡単に内容を説明すれば、「老老介護の様子」、この一言に尽きると思います。
妻が病に倒れたことで穏やかだった日常が変化していく老夫婦の姿を描いた物語ですが、
まず妻は死ぬことが冒頭で明示されます。
もう夢も希望もない物語で、何が目的でこんな鬱屈した作品を撮るのか理解できません。
上映時間は120分を超えますが、そのほぼ全てが重苦しい展開です。
客席は案の定高齢者ばかりだし、アカデミー会員の高齢者が多いと聞きますが、
高齢者はこれを観て楽しいのかな?
全編ほぼアパートの一室のみで撮られてるし、カット割りもかなり少なく、
登場人物も老夫婦、特に旦那ジョルジュが出ずっぱりですが、
老人らしいゆっくりした動きで、画変わりのない長々しいシーンの連続です。
もう嫌がらせで上映時間を引き延ばしているとしか思えませんよ。
途中で挿入される絵画なんて、物語に全く関係ないし、引き延ばしの最たるものです。

妻アンヌは、夫ジョルジュと一緒に朝食を食べている最中、急に意識を失います。
その時はすぐに意識が戻るものの、医者から頸動脈が詰まったことによる発作と診断され、
手術をすればすぐに治ると言われたので手術を受けますが、
失敗率5%の手術がまさかの失敗で、彼女は右半身が麻痺し車椅子生活に…。
その後も病状は悪化し続け、寝たきりになり、ついには痴呆症に…。
そんな妻を献身的に介護する夫ジョルジュだが…、という話です。
とにかく夫が妻を介護する映像が、社会派ドキュメンタリーのように延々続きます。
老老介護の様子はとにかく辛くて辛くて…。
ボクの祖父母はもう全員他界しましたが、父方も母方も片方が痴呆症を患い、
ちょうど本作の終盤のような状況だったので、それが思い出されて息苦しくなりました。
ボクの親だって10年か20年か、そう遠くない将来にそうなってもおかしくないし、
妙な不安に苛まれて、落ちつかなくなります。
そういう意味では、人の心を揺さぶる破壊力のある作品とも言えますが、
金払ってまで、そんな嫌な揺さぶられ方されたくないです。
観に来ていた高齢者の方々は、親や祖父母ではなく、自身のこととして捉えられるので、
ボクなんかよりももっと気が滅入るんじゃないのかな?

中盤で、玄関のチャイムが鳴り、夫ジョルジュが見に行くと、
なぜかドアの前には誰もおらず…、というようなスリラー的なシーンがあり、
「お、なんか盛り上がってきたかも?」なんて一瞬期待したのですが、
次の瞬間、ジョルジュが目を覚ますというベタな悪夢オチで…。
やっぱりその後は介護の様子が延々と続く展開に戻ります。
こういうアクセント的なシーンをもう少しコンスタントに入れてくれると、
とても観易くなると思うんだけど…。

妻アンヌが死ぬことは冒頭でわかっていますが、
消防により彼女の遺体が異臭漂うアパートのベットで発見された時、
夫ジョルジュの姿はなく、彼がどうなったのかはちょっと気になりますよね。
彼は妻の遺体に喪服を着させ、周りに花をあしらい、寝室を密閉して、
外出してしまったみたいなのですが、その消息は作中で明らかにされず…。
その謎だけを頼りに頑張って最後まで観たのに、それを有耶無耶にされるなんて…。
もうハネケ監督の悪意しか感じません。
てか、この監督に限っては毎度のことなので、やはり観に行ったのが間違いでした。
もう関わりたくないので、次回作の3作連続パルムドール受賞は阻止してほしいし、
アカデミー賞にも絡まないでほしいです。
まぁどうせ次が遺作になりそうだし、次もパルムドールやオスカーに絡んでも、
あと1作我慢すればいいだけだと思いますが。

鑑賞コンプを目指しているアカデミー作品賞候補も残すところあと2作。
『リンカーン』にも懸念は感じているものの、最大の壁だった本作を越えたので、
ある程度楽しめそうな気はします。
最年少の主演女優賞候補を輩出した『ハッシュパピー』は普通に面白そうかな。

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