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ひまわりと子犬の7日間

たぶん今回感想を描く映画で、今年観た映画50本目になるはずです。
自分史上最高本数(年間200本)観た昨年でも、
50本目に到達したのはゴールデン・ウィーク中だったのに、今年はまだ3月中旬…。
また年間記録を更新してしまいそうなペースですが、
仕事はいつも通りなのに、なんだか今年は忙しいと思ったら、映画の観すぎだったのか…。
本数が増えた原因は、期間限定上映「未体験ゾーンの映画たち」を観たのと、
先月末から日本映画をよく観るようになったところが大きいかな。
映画を観に行くのは楽しいからいいんだけど、
忙しすぎて、先日せっかく買ったゲームソフトの封も切ってないし、
また資格の勉強でも始めようと思っているので、映画鑑賞回数を徐々に削ります。
ハリウッド映画は大好きすぎて削れないので、日本映画を少し削ろうかな。

ということで、今日は今年50本目の映画の感想です。

ひまわりと子犬の7日間
ひまわりと子犬の7日間

2013年3月16日公開。
堺雅人と中谷美紀の共演による、実話を基に描いたヒューマン・ドラマ。

妻に先立たれ、シングルファーザーとして二人の子どもを育てている保健所職員の彰司(堺雅人)は、命懸けでわが子を守ろうとする母犬と出会う。その犬は、老夫婦のもとで大切にされていたが、夫婦が去り、孤独な中で子犬を生んで育てていた。彰司は犬の母子を守ろうと決意し、母犬に「ひまわり」と名付ける。(シネマトゥデイより)



ボクは動物もの映画に弱いけど、特に犬の映画は好きです。
本作も犬の映画ですが、人と犬との絆を描いた単純なものではなく、
ちょっと社会派な、道徳を問う内容となっています。
保健所を題材にしたお仕事ものドラマという見方もできますが、
ボクも健診なんかで何度か近所の保健所に行ったことはあるものの、
実際どんな仕事をしているところなのか、あまり知らないものです。
市民に対する健診などの他にも、業務は意外にも多岐に亘っており、
その中のひとつが野良犬や捨て猫の管理です。
むしろ「保健所の仕事」と言えば、真っ先に思い付くものではありますが、
その実態についてはあまり知られていないように思いますし、
意図的に表に出さないようにしていたようにも思われます。
それを映画化してしまったのが本作で、もちろん犬との絆を描いた感動話でもあるけど、
それと同時に「殺処分」という忌避しがちな問題を描いた真面目な物語でもあります。

宮崎県の保健所の動物管理する部署で働く主人公・神埼。
この部署は保健所のオフィスで2ヶ月デスクワークして、
次の月は動物保護管理所で働くというローテーションです。
管理所では、野良犬を保護・管理し、里親を探したりもしますが、
7日間引き取り手が見つからなかった犬を殺処分するのも職員の仕事です。
宮崎県では年間4000頭もの犬が持ち込まれ、ほとんどは引き取り手が見つからないので、
ほぼ毎日、犬の殺処分が行われていることになります。
殺処分は炭酸ガスによる窒息死ですが、初めて見たガス室の小ささや簡素さに、
何とも言えないリアルさを感じ、ドキッとしました。
ガス室の稼働スイッチを押すのは神埼の役目ですが、
元動物園の飼育員で、動物が大好きな彼にとっては辛い仕事です。
…というか、動物を殺すなんてマトモな神経の人なら誰だって辛いはず。
それなのに人一倍動物好きの彼が、この仕事に転職した理由がよくわかりません。
彼のようにスイッチを押す度に悲しんでいるようでは、いずれ精神に支障をきたす気が…。
動物の死を悼む心は感心しますが、いい加減慣れた方がいいというか、
彼は再転職するなり、部署の異動を申し出た方がいいです。

まぁ動物を殺してもヘッチャラな人間が管理所の職員になったら、
里親探しにも真剣に取り組まないだろうから、難しいところですね。
もちろん動物が大好きで出来るだけ多くの犬を救いたいと考えている神埼は、
里親探しにも熱心で、7日間の収容期間を勝手に延長して里親探しをすることもあり、
所長から度々「ルールは守れ」と釘を刺されます。
収容中のエサ代は税金ですから、市民からの苦情を恐れているのです。
これについてはボクも税金の無駄遣いは別としても、どうせ大半が殺処分になるなら、
野良犬を7日間も生かしておく必要があるのか疑問には思います。
犬はかなり賢いですから、管理所に収容された犬たちも、
自分の運命には薄々気付いてそうだし、7日間も監禁され恐怖を味あわせるくらいなら、
さっさと殺してあげた方がいいのではないかとも思います。
死刑もそれ自体よりも、死刑宣告から執行までの待ち時間が懲罰ですからね。
ただ、この7日間というのは、別に犬に情けをかけて猶予を与えているわけではなく、
野良犬じゃなくて迷子犬かもしれないから、一時預かりの期間として設定してるのかも…。

作中でも「年をとったから要らない」とペットの老犬を捨てる飼い主の話が出てきますが、
飼い主から持ち込まれた捨て犬は、7日間待たず即日殺処分になるそうです。
また、本作では犬のことしか描かれませんが、猫は持ち込みだけなので、
全て即日殺処分されるらしいけど、その数は犬の比ではないそうです。
犬の映画だけど、猫派も真剣に考えた方がいい問題です。
ペットを飼うからには最期まで面倒見るのが当然だし、
要らなく(飼えなく)なったからといって保険所に処分させるのはムシがよすぎます。
持ち込まれたペットに関しては、飼い主自身にガス室のスイッチを入れさせ、
自分がしたことの責任を痛感させるべきだと思います。
持ち込む飼い主は「保健所は安楽死させてくれる」と思ってるかもしれないけど、
ガス室の窒息死というのは、安楽死なんて優しいものではないです。
苦しまずに死ねるなら、人間の安楽死でも使用しているはずで、
ナチスの強制収容所にもガス室があるように、ただ殺すのに効率がいいというだけです。
管理所のガス室も、職員の負担軽減のためか、一度入犬をれてしまえば、
ガスでもがき苦しんだ死体を見ることなく、そのまま焼却までされるそうです。
そういう意味では、飼い主にガス室のスイッチを押させるくらいでは、
責任を痛感させるには甘いかもしれませんね。

無責任な飼い主のせいで、大量の犬や猫を殺処分せざるを得ない保健所職員ですが、
動物愛護の観点から殺処分に批判的な人も多く、執行する職員に悪意が向くことも…。
神崎も世間から「ただの殺処分するする人」と思われていることを気に病んでおり、
小学生の娘や息子にも自分の仕事のことは明かしてはいません。
昔から屠殺業の人が差別を受けるようなこともありましたが、
動物を殺すのは穢れた仕事であり、忌み嫌われることは今も少なからずあるでしょう。
ボクは穢れているとは思わないけど、自分では絶対に出来ない仕事だと思っていますが、
それも一種の差別意識の表れかもしれませんね。
里親が見つからなかった犬がどうなるのかを娘に尋ねられ、正直に答えた神埼は、
父親が犬を殺していることにショックを受けた娘から絶交されてしまいます。
本作はそんな娘から何とか理解してもらおうと奮闘する物語で、
父と子の感動のホームドラマに仕立てられていますが、ここはもう少し踏み込んで、
職業の尊卑の問題をもっと掘り下げてもよかったのかも。
その方が殺処分自体の問題意識も高まる気がします。

神崎が管理所の担当になった月の7日に、畑を荒らす野犬がいると問い合わせがあり、
彼は同僚らと一緒に、あるメスの野犬を捕獲します。
後に「ひまわり」と名付けられるその犬には、3匹の子犬がおり、
4匹まとめて管理所で保護することになります。
普通だと収容された親犬は、(やはり運命を悟るのか)自分のことしか考えられなくなり、
子犬のことは放棄してしまうそうなのですが、ひまわりは違いました。
子犬を必死に守ろうと神埼たち職員を威嚇し続けます。
もともとひまわりは、ある農家の老夫婦に飼われていた犬でしたが、
飼い主の奥さんが他界し、ご主人も老人ホームに入り、野良犬になったのです。
いくら大切に飼っていても、自身の健康面の不安など、飼えなくなる事情はありますが、
そういう人はいくら犬が好きでも飼うのは控えるべきです。
まぁこの老夫婦の場合は、昔から飼ってた犬がお産しちゃっただけですが…。
野良になったひまわりはその後、スコップで殴られるなど、人間から暴力を受けたために、
人間に強い敵意を持つようになり、更に子犬が生まれ、子犬を守るため凶暴化しました。
犬をスコップで殴るなんて、酷い人間もいるものだと思いますが、
中型とは言え野犬に遭遇したら、咄嗟に防衛しようとするのも当然かな?
それに本作は実話を基にしていますが、犬が喋るはずもなく、
このひまわりの経緯は、全てフィクションです。

収容期限は14日まででしたが、寒波により管理所内で子犬が1匹死んでしまい、
その管理責任を感じた神崎の独断で、収容期限は月末までに延ばされます。
運がよく、ひまわりの話を聞いた愛犬家が、母子を引き取りたいと申し出てくれますが、
引き取り先で何かあると保健所の責任になるかもしれないので、
人を威嚇するような犬を里子に出すことは禁止されており…。
子犬を守るため威嚇が、逆に自分たちの運命を危うくする、何とも皮肉な展開です。
娘から「母子を離れ離れにしないで」と頼まれた神埼は、
ひまわりが人に噛みつかないと証明して、母子をまとめて引き取ってもらうつもりです。
その奮闘に感動を覚えるわけですが、普通ならここは妥協して、
比較的貰われやすい子犬だけでも引き取ってもらうべきでしょうね。
ひまわりは可哀想だけど、子犬たちにとっては早く管理所から出る方がいいし、
子犬がいなくなれば、ひまわりも落ちついて、威嚇しなくなったかも。
そうすれば、ひまわりの引き取り手も見つかるかもしれないです。

母子一緒に拘り、ひまわりを人に慣れさせるため、神埼は管理所に泊りこんだりしますが、
その間にも他の収容された犬たちは殺処分されているのに、
彼がひまわりにばかりかまけているようにも見えるのは…。
ボクは動物愛護団体のように、犬を人のように扱うべきとは思っていませんが、
犬同士の命に重みの差はないと思うので、ひまわりだけ特別扱いするのは納得できません。
結局、月末の殺処分の朝にやっと心を開いたひまわりを、彼は自宅で飼うことにし、
ひまわりの殺処分は免れますが、他の殺処分される犬との差は何なのか…。
それは自分の娘の願いを優先したということでしかなく、
人と犬との関係や、職業人意識に問題が残る気がします。
結局、父と子の感動のホームドラマとして、決着を付けてしまったんですね。
本作の平松恵美子監督は、山田洋次監督の弟子みたいな人らしいので、
松竹的な人情ものに偏りがちなのは仕方がないのかもしれないけど、
本作で最も大切な殺処分の問題にはあまり頓着がないのかなとも思ってしまいます。

そもそも犬自体に動きが少なく、ひまわりたちが魅力的に映っていないので、
平松監督が犬を好きなのかどうかも微妙なところです。
まぁ犬好き監督がいい犬の映画を撮れるわけではないけど…。
ちなみにひまわりを演じた柴犬は、『マリと子犬の物語』でも母犬マリを演じたらしく、
だとするとかなりベテラン動物タレントで、なかなかの老犬ですよね。
歳のせいもあるのか、本作に比べると『マリと~』の時の方が躍動的だったかも。
本作の彼女はなんだかヌイグルミ的にすら感じられました。
というか、威嚇する時の怖い顔のアップなんて、本当にヌイグルミじゃないの?

題材は興味深いものでしたが、脚本や演出に不満が残る作品でした。

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