ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

脳男

先日授賞式が行われた第36回日本アカデミー賞も、毎度のことながら茶番でした。
最優秀作品賞は『桐島、部活やめるってよ』が受賞しましたが、
去年70本弱の日本映画を鑑賞したボクの印象では、下から数えた方が早い駄作です。
なぜか映画関係者や映画評論家からは妙に高い評価を受けていますが、
彼らは奇をてらった構成に騙されているだけだと思います。
ただ、ショウゲート配給の作品が最優秀賞を受賞したのは評価すべきかも。
(投票権を持つ会員は東宝、東映、松竹、角川の社員が多いから。)
とはいえ、授賞式を放送する日テレ製作の映画ですし、
長編アニメ部門も日テレ制作の『おおかみこどもの雨と雪』(駄作)が受賞しているので、
何かしらの力関係が働いたと勘繰ってしまいます。
「キネ旬ベストテン」以外の日本の映画賞は、出来如何は関係なく、
全て力関係で決まると言っても過言ではないです。

有名な話ですが、ジャニーズのタレントは日本アカデミー賞を受賞しません。
ジャニーズ事務所が映画賞をボイコットしているためです。
それは他事務所の俳優と比較されたくない、同じ土俵で戦いたくないからですが、
逆に言うと、下手に土俵に上がると、事務所の力関係で映画賞を総なめにしてしまい、
世間から批判されかねないので、それを避けているとも言えます。
その程度で決まる映画賞なんて、全事務所がボイコットすればいいです。

ということで、今日はジャニーズ主演作の感想です。
主演の生田斗真はジャニーズだけどアイドルではないためか、
昨年いくつかの映画賞をジャニーズで初めて受賞しましたが、
やはり日本アカデミー賞はボイコットしたみたいですね。

脳男
脳男

2013年2月9日公開。
生田斗真主演で、第46回江戸川乱歩賞を受賞した首藤瓜於の同名小説を映画化。

残忍な手口の無差別連続爆破事件を追う刑事の茶屋(江口洋介)は犯人の居所を突き止めるが、身柄を確保できたのは身元不明の鈴木一郎(生田斗真)だけ。共犯者と見なされた一郎は犯行が常軌を逸したものだったため、精神鑑定を受けることに。担当となった精神科医・鷲谷真梨子(松雪泰子)は感情を表さない一郎に興味を持ち、彼の過去を調べ始めるが……。(シネマトゥデイより)



今年はちょっとジャニーズ主演作・準主演作が多すぎるように思います。
軽く挙げても、二宮和也主演『プラチナデータ』、国分太一主演『だいじょうぶ3組』、
稲垣吾郎準主演『桜、ふたたびの加奈子』、岡田准一主演『図書館戦争』『永遠の0』、
錦戸亮主演『県庁おもてなし課』、草なぎ剛主演『中学生円山』、亀梨和也主演『俺俺』、
櫻井翔主演『謎解きはディナーのあとで』、松本潤主演『陽だまりの彼女』などなど…。
まぁ一口に日本映画といっても、大小合わせて年間300本ほど公開されているので、
その中でジャニーズ主演作なんて一握りなのでしょうが、メディア露出が多いため、
日本映画のほとんどがジャニーズ主演作だと錯覚してしまいます。
映画館で流される予告編なんて、日本映画の3本に2本がジャニーズ主演作ですよ。
ボクはジャニーズは嫌いではないし、上記の作品の半分以上は観る予定ですが、
作品の中身ではなくキャストの人気でしか集客できない日本の映画界の惨状が垣間見え、
映画ファンとしては虚しさを覚えます。
そんなジャニーズ・イヤーの一発目となるジャニーズ主演作が、生田斗真主演の本作です。
もう一カ月も前に公開の作品ですが、ようやく観に行けました。

第46回江戸川乱歩賞を満場一致で受賞したサスペンス小説が原作の本作。
原作がそれだけ評価が高いこともあるのか、日本映画としては面白い方だと思います。
物語の本筋となる無差別連続爆破事件は正直たいした話ではないけど、
主人公である脳男こと入陶大威こと鈴木一郎は、なかなか魅力的なキャラで、
彼を演じた生田斗真も雰囲気があってかなりよかったと思います。
脳男は記憶力も身体能力も(容姿も)抜群で、感情がないことを除けば完璧です。
というか感情がないからこそ、後天的に完璧に作り替えられたわけです。
殺人マシーンと言ってしまえばチープに聞こえますが、
脳男は従来の殺人マシーンキャラとは一線を画す、風変わりのキャラだと思います。

例えば『あずみ』の主人公とかは、一流の暗殺者に育てるべく、
幼い頃から殺人術や諜報技術を叩きこまれ殺人マシーンになるわけですが、
脳男も幼い時からそれらの英才教育も受けますが、
彼は生まれながらに感情がなく、普通の子どもではなかったため、
まずは普通の人間らしく振る舞えるように仕込まれるのです。
殺しの英才教育だけなら感覚的に何となくわかる気がしますが、
人間らしさを仕込むというのは、一体どういうことなのか、興味深いです。
外からの刺激に対してどう反応するのが正解なのかを教えるということで、
本当にロボットのプログラミングに近い作業なんですよね。
それが如実に描かれているポリグラフテストのシーンは感心してしまいました。
脳男に対しロールシャッハなど、どんな精神鑑定をしても、
全く異常の認められない平均的なテスト結果になりますが、
それは彼が平均的な人間として仕込まれており、
わざと完璧な平均点を取ることができる異常な男だからです。
ただ、ロボットと同じで融通が利かず、完璧な体内時計通りに行動してしまったりと、
完璧に平均的な人間なのに、人間らしからぬ完璧さが露見するという面白い設定です。

脳男は興味深い設定ですが、若干不満だったのは、
感情以外にももうひとつ欠落しているものがあったことです。
彼は常にエンドルフィン数値が高く、常に肉体的にハイ状態で、痛みを感じません。
人間らしく仕込まれたなら、痛みを感じなくても感じているフリくらいはするべきだし、
感情がないどころか、痛みまで感じないなんて、
そこまでロボット的な設定にすると、少々都合良すぎると思いました。
それに痛みを感じない割には、足を撃たれた時、足を引きずるように歩くのは変です。
あれは痛みを感じる人の行動だと思います。

脳男は殺人術を叩きこまれた殺人マシーンですが、サイコキラーとは違う気がします。
祖父から「この世にはびこる悪を殲滅するのが使命だ」とプログラムされ、
反社会的な犯罪者しか殺さない、正義感溢れる死刑執行人、いわばアンチヒーローです。
放っておいても人畜無害どころか、社会秩序に貢献しています。
警察でも捕まえられない、或いは事件自体にも気付かないような犯罪者を殺してくれます。
自警活動するアメコミヒーローを彷彿とさせ、アメコミファンのボクは好きです。
そんな彼に感情を取り戻させ、本当に普通の人間にしようとする
本作のヒロインである精神科の女医の行動は、独善的だと思ったし、
彼女に共感することは全くできないし、なんだか彼女は好きになれません。
彼女の母親も設定が悪趣味すぎて不愉快です。
しかしそんな母子以上に不愉快に感じたのは、無差別連続爆破事件の犯人の女です。

事件の主犯である緑川を不愉快に感じたのは、反社会的な人物だからではなく、
全く魅力を感じないキャラで、脳男に対峙するものとして全く相応しくないです。
刑事が彼女の経歴から「どこか鈴木一郎と似てないか?」と言いますが、
こんなカスと脳男を比べるんじゃないよとイラッとしました。
稀なタイプの精神異常者である脳男に対し、
緑川は言わば漫画的な在りがちなタイプのサイコキラーです。
いや、サイコキラーなんて上等なものではなく、サイコを演じる愉快犯ってところかな。
彼女が標的にするのは、アナウンサーや司会者、コメンテーターなど、
自分たちを批判したマスコミ関係者ですが、本当のサイコはそんな理由で人を殺しません。
現場に短歌を残しますが、それにも全く意味はなく、サイコを演じているだけです。
今どき、眉を剃ったり同性愛描写で異常者を表現するなんて、時代錯誤な演出です。
残念なのは、こんな役を二階堂ふみが演じていることです。
役不足も甚だしく、国際的な彼女の評価をも下げかねないと思います。
彼女と『ヒミズ』でW主演を務め、ヴェネチア映画祭で新人賞をW受賞した染谷将太も、
『悪の教典』に続き共演していますが、彼が演じるもうひとりのサイコパスの方が、
脳男の相手としてはまだマシだったと思います。
緑川の設定は、原作からかなり脚色(改悪)されていたようなので、
監督らをはじめ映画製作サイドの責任であることは明白です。

…というように、脳男のキャラクターだけは良かった作品ですが、
それだけでもそこそこ楽しめたのだから、それはそれですごいのかも?

コメント

脳男が足を撃たれて足を引きずっているのは痛みのせいではなく、動かすための筋肉組織が損傷してしまい、筋肉が正常な働きが出来なくなった結果です。
足を引きずるということが、痛みを感じているっていうことにはなりません。

  • 2013/11/12(火) 17:11:25 |
  • URL |
  • くるり #-
  • [ 編集 ]

好意的に見ればそうでしょうね。
でもあの歩き方は、足を庇っている歩き方なので、痛い時の歩き方です。
とはいえ、一度観ただけなので、ちゃんと覚えているわけではないですが、
観た時はそう感じたので、そう思わせてしまう演技や演出にも問題があるのかも。

  • 2013/11/12(火) 21:13:43 |
  • URL |
  • BLRPN #-
  • [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/966-fbebaa8e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad