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世界にひとつのプレイブック

ボクは第85回アカデミー賞のノミネート作品が発表されたときに、
作品賞候補9本のなかでは『アルゴ』が一番いい作品に違いないと思っていました。
しかし予想では『リンカーン』がオスカーを受賞すると書きました。
それは『アルゴ』が2つの理由から、オスカーは受賞しないだろうと考えたからです。
その理由のひとつは『アルゴ』が第70回ゴールデングローブ賞を受賞していたからで、
GG賞受賞作はアカデミー賞会員に倦厭される傾向にあるためです。
そして決定的だったもうひとつの理由は、『アルゴ』が監督賞候補ではなかったから。
過去6年の受賞結果を見ても、作品賞の監督が監督賞も受賞しており、
作品賞と監督賞はニコイチであり、いくら作品賞候補が多くても、
結局は監督賞の候補作からしかオスカーは出ないと思い込んでいました。
結果、監督賞選外の『アルゴ』が作品賞を獲ったわけですが、
作品賞を獲るほどの作品の監督が、監督賞ノミネートもされないのは違和感があります。
『アルゴ』は素晴らしい作品なので作品賞受賞は納得ですが、
監督賞の候補選出過程には問題があるような気がします。
なんとなく、『アルゴ』の監督ベン・アフレックが、俳優との兼業監督なので、
監督賞のノミネートを選らぶ映画監督が彼をハブったと邪推できます。

ということで、今日は監督賞にもノミネートされた、主演女優賞受賞作品の感想です。

世界にひとつのプレイブック
Silver Linings Playbook

2013年2月22日日本公開。
ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンス共演のヒューマン・コメディ。

妻が浮気したことで心のバランスを保てなくなり、仕事も家庭も全て失ってしまったパット(ブラッドリー・クーパー)は、近くに住んでいるティファニー(ジェニファー・ローレンス)と出会う。その型破りな行動と発言に戸惑うパットだったが、彼女も事故によって夫を亡くしており、その傷を癒やせないでいた。人生の希望を取り戻すためダンスコンテストに出ることを決めたティファニーは、半ば強制的にパットをパートナーに指名する。(シネマトゥデイより)



いやー、かなり面白いし、めちゃめちゃ感動しました。
本年度のアカデミー賞の作品賞を『アルゴ』が受賞したことは異論ありませんが、
本作も『アルゴ』に匹敵する、オスカー級の素晴らしい作品だと思います。
作品賞候補の9本の中では、暫定2位、いや1位タイの出来です。
本作は本年度で唯一、主要5部門全てでノミネートされましたが、
特に演技賞部門4部門全てにノミネートされるというのは、かなり珍しいことです。
それだけに役者の演技が売りの作品で、内容的にはイマイチなのかなと懸念しましたが、
それは全くの杞憂で、本当に感動的で、かつ娯楽的にも優れた名作でした。
結局演技賞4部門のうち、主演女優賞しか受賞していません。
ボクには演技についてはわからないが、主演女優賞に輝いたジェニファー・ローレンスは、
演技の出来はともかく、本当に魅力的だったと思うし、オスカーも当然の結果です。
しかし主演のブラッドリー・クーパーも負けじと良かったし、
もうちょっと評価されてもよかったと思います。
(…というか、あざとい『リンカーン』の主演男優賞が気に入らないです。)
それにしてもアカデミー賞授賞式の翌日に観に行ったので、
劇場が混雑することは覚悟していたのですが、かなりガラガラで…。
ゆったり観れたのはいいけど、日本人のオスカーへの興味の無さにショックを受けました。
まぁ作品賞でも獲っていれば、状況はまた違ったのかもしれませんが…。

ブラッドリー・クーパー演じるパットは、妻が同僚と浮気している瞬間を目撃し激昂。
その場で相手の男を半殺しにしてしまい、躁うつ病と診断され精神病院に入れられます。
8ヶ月後に裁判所から退院を許可されますが、接近禁止令で妻に会うことは許されません。
しかし彼は愛する妻と復縁したいと願い、なんとか彼女と話せないかと考えますが…。
妻の浮気が原因なのに、彼が悪者扱いを受けるというのは、何とも理不尽な話ですよね。
躁うつ病じゃなくても、妻(恋人)が他の男とセックスしている現場に遭遇したら、
とりあえず相手の男に殴りかかるのは、男として当然の行動だと思います。
しかも彼とは比較にならないほどイマイチなハゲたオッサンが相手となれば…。
というか、かっこいい旦那がいるのに、あんな男と寝る妻の心境もよくわからないですね。
しかも接近禁止令だなんて、元凶のくせに何様のつもりかと…。
まぁそんな百年の恋も冷める状況に遭遇しても、妻を愛し続けるパットの心境も、
ちょっと理解し難いものがありますが…。

危険人物扱いで接近禁止令が出たのは、暴行事件より躁うつ病と診断されたのが原因かな?
「頭がボンヤリしたり、太るから嫌だ」と、薬の服用を拒否していたパットは、
退院時でも躁うつ病は完治しておらず、たまに躁状態になって暴れます。
特に浮気現場で流れていたスティービー・ワンダーの曲を聞くと、
フラッシュバックして我を忘れてしまいます。
ヘミングウェイの『武器よさらば』を読んで、内容がムカつくと窓から投げ捨てたりも…。
治療の一環として主治医から読書を勧められているみたいですが、
『武器よさらば』とか『蝿の王』みたいな鬱小説を読むのは逆効果ですよね。

パットは土地転がしをしている友人ロニーから食事会に誘われ、
その席でロニーの義妹ティファニーに出会います。
そのティファニーが本年度のオスカー女優、ジェニファー・ローレンスです。
ティファニーも精神疾患を患っていることもあって、2人は何となく意気投合しますが、
食事会の帰りに、パットは彼女から誘惑されますが「妻がいるから」と拒絶します。
それでも彼女は何かと彼に付きまとうようになります。
ティファニーの精神病は、明確には言及されないもののセックス依存症かな?
友達になりたい、親しくなりたいと思うと、すぐにやっちゃうみたいで、
特に夫が先立ってからは、寂しくなったのか、
男女問わず同僚11人と関係を持ち、会社を解雇されました。
パットはそんな彼女を、変態で自分と一緒にされたくないと思いますが、
妻の友達でもある彼女と親しくなれば、妻とコンタクトが取れると考え、
彼女に妻へ手紙を渡してほしいとお願いします。
しかしパットに好意を持っているティファニーは、彼が妻と復縁するのは複雑な心境…。
彼女は彼に、一緒にペアダンス大会に出場してくれたら手紙を渡すと約束します。
渋々了承したパットですが、大会に向けて練習する内に、自分もダンスに夢中に。
読書なんかよりも精神安定にも寄与しており、病状も改善されます。

ティファニーとの関係が描かれる一方で、パットと両親との関係も描かれます。
父親役ロバート・デ・ニーロと、母親役ジャッキー・ウィーヴァーも、
それぞれオスカー助演男優賞候補、助演女優賞候補でした。
正直、母親の方はノミネートされるほどの活躍があったとは思えませんが、
父親とのエピソードは意外性もあり、とても感動しました。
パットの父はレストランの開業資金を得るため、アメフトのノミ行為で、
応援する地元チームのイーグルスに賭けて稼いでいます。
ギャンブラーだけあって異様にゲンを担ぐのですが、
息子と一緒にテレビ観戦した試合はイーグルスが勝利すると信じ切っており、
何かとパットをテレビ観戦に誘うのですが、パットは相手にしません。
それどころか、パットは優秀な兄ばかり父から愛されていると劣等感を覚えています。
そんなある日、父の告白により、パットは父の本心を知ることになります。
父は息子パットとまともな父子関係を築けなかったことを申し訳なく思っていて、
イーグルスのテレビ観戦を口実に、息子との時間を作りたいと考えていました。
この告白シーンにはとても感動させられました。
特にボクは父子の物語が好きなので、かなり泣けてしまいました。

でもそんな口実と同等以上に、ゲン担ぎも大事なようで、
開業資金を全て賭けたイーグルスの大事な試合の日に、
パットがティファニーとのダンス練習をする約束があることに怒ります。
ティファニーも大事なダンスの大技を練習する日なのに、
彼が家族と試合に行きたいと言い出して憤慨します。
結局パットはダンス練習前に試合観戦に行くのですが、
スタジアムで彼の主治医を含むインド人サポーターがケンカの巻き込まれ警察沙汰に…。
結局イーグルスは試合に敗れ、ティファニーとの約束もスッポカすことになります。
イーグルスの敗戦はパットのせいではないですが、ゲンを担ぐ父はそうは思いません。
彼はパットがティファニーと付き合い始めたのが悪いと言い出します。
完全な八つ当たりですが、開業資金を全部スッちゃったら、人のせいにもしたくなるか…。

パットの父から、謂れのない非難を受けたティファニーは、
「彼と会う日は全てイーグルスが勝利している、2人一緒にいた方がゲンがいい」と反論、
父も「確かにそうかも…」と納得してしまいます。
そこでペアダンス大会当日のイーグルスの試合で、
負ければ破産するが、勝てば開業資金が取り戻せる大博打をしようと考えます。
賭けの対戦相手はパーレイ(二重賭け)なら賭けに乗ると言います。
つまりイーグルスが試合で勝った上に、ペアダンス大会でパットとティファニーのペアが
10点満点中5点獲得しないと賭けの勝利にはならないという不利な条件です。
ダンス初心者には5点取るのも難しく、パットは怖じ気づき、賭けから降りますが、
父とティファニーが、大会当日は妻も観に来ると嘘をつき、パットをその気にさせます。
それにしてもそんな不利な条件はズルすぎると思いましたが、
試合で10点のハンデを取るという最初の提案よりは良心的なのかな?
結局試合はイーグルスが快勝し、10点どころか30点以上のスコア差でしたが…。

イーグルスも勝って、命運はパットとティファニーのダンスに掛けられますが、
嘘から出た真で、大会会場には妻もたまたま観に来ており…。
それに気付いたティファニーは激しく動揺し、自暴自棄になって、
出番前なのにウォッカを2杯も飲んで酔っぱらってしまい…。
彼の妻が来たくらいで、そこまで投げやりになるのはちょっと不可解に感じましたが、
おかげでダンス本番で、彼女が酔って転倒でもしないかとハラハラしたし、
とてもスリリングで面白いものになったと思います。
結果的に酔ってるわりにはかなり見事なステップを披露していました。
大技のところだけは素人目にもわかるグダグダ感があったように思いますが、
それはウォッカのせいなのか、大技の練習日をスッポカしたからなのか微妙なところです。
あの大技まで成功していれば、目標の5点は優に超えていた出来なので、
失敗したおかげで得点発表の時もかなりドキドキしました。
このスリリングなドキドキ感は、『アルゴ』のクライマックスにも負けてない、
とても巧い演出だったと思います。

そのダンスにより、躁うつ病を克服した兆しを妻に証明し、パットは妻と復縁するのか、
…というラストですが、まぁそこはロマコメですから、お約束の展開になります。
でもロマコメとして全体を通して良かったのは、
パットとティファニーの関係がとても丁寧に描かれていたことと、
「セックスしない?」から始まった関係なのに、
意外にも最後までプラトニックな関係のままだったのが、
青春映画的で爽やかで清々しく、とても好感を覚えたことです。
ロマンスあり恋愛あり家族ドラマありスポ根ありで、笑って泣ける名作ロマコメでした。

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