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ゼロ・ダーク・サーティ

あ、今週末はもうアカデミー賞の授賞式ですね。
例年ならけっこうウキウキする時期なのに、今年はイマイチ盛り上がらないのは、
やっぱりオスカー候補から『アベンジャーズ』がハブられている印象を受けるためかな?
納得できないだけでなく、保守的で全く面白味に欠ける選出だしね。
日本絡みの候補もないので、日本国内でもほとんど話題にならないし…。
とりあえず主要部門の予想をしてみます。
例によって、ボクが受賞してほしいと思う作品ではなく純粋な予想です。
結構いい線いってると自負してますが、監督賞は自信ないです。

作品賞予想:『リンカーン』
監督賞予想:ミヒャエル・ハネケ『愛、アムール』
主演男優賞予想:ダニエル・デイ=ルイス『リンカーン』
主演女優賞予想:ジェニファー・ローレンス『世界にひとつのプレイブック』
助演男優賞予想:トミー・リー・ジョーンズ『リンカーン』
助演女優賞予想:アン・ハサウェイ『レ・ミゼラブル』

ということで、今日はオスカー候補の感想です。

ゼロ・ダーク・サーティ
Zero Dark Thirty

2013年2月15日日本公開。
テロ組織アルカイダの指導者、ビンラディンの殺害計画が題材のサスペンス。

ビンラディンの行方を追うものの、的確な情報を得られずにいる捜索チーム。そこへ、人並み外れた情報収集力と分析力を誇るCIAアナリストのマヤ(ジェシカ・チャスティン)が加わることに。しかし、巨額の予算を投入した捜査は一向に進展せず、世界各国で新たな血が次々と流されていく。そんな中、同僚の一人が自爆テロの犠牲となって命を落としてしまう。それを機に、マヤの中でビンラディン捕獲という職務が狂気じみた執心へと変貌。ついに、彼が身を隠している場所を特定することに成功するが……。(シネマトゥデイより)



第85回アカデミー賞で作品賞を含む5部門でノミネート中、
第70回ゴールデングローブ賞で主演女優賞受賞するなど、
様々な映画賞を受賞したり、ノミネートされたりしている注目作。
それだけに、ボクも注目していたし、かなり期待もしていたんですが、
いざ観てみると、どうも楽しめなかったです。
日本で公開された4本目のオスカー作品賞候補ですが、4本中最悪でした。
それもそのはず、本作は2011年5月2日に実行された、
国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン捕縛・暗殺作戦の裏側を、
当事者の証言に基づいて映像化した社会派作品であり、
9.11以降のアメリカの対テロ戦争や、テロ組織アルカイダについて、
ある程度知識がないと、話についていくのも大変です。
ビンラディン殺害のニュースは、日本でも大きく報道されたので、
その事実自体は周知のところでしょうが、ボク含めもともと中東情勢に疎い日本人には、
本作で描かれる背後関係や時間的経緯、テロ組織の人間関係、中東の地理関係など、
あまり馴染みがなく、かなり難しいんじゃないかと思われます。
特に人名・地名などの聞きなれない名称が多用されるのが厳しかったです。
まぁ一般的なアメリカ人も、それほど中東情勢に詳しいわけでもないので、
ちゃんと観ていれば理解できるようにはなっているのですが、
難しい名称が続出する字幕を追わなくちゃいけないという日本人の不利は大きいです。

興味ないものが題材になっていても、面白い映画は沢山ありますが、
本作がそれに当てはまらないのは、本作が再現ドラマでしかないからでしょう。
本作で描かれた出来事を証言したのが誰なのかは知りませんが、
その証言をなるべく脚色しないで映像化を図っているためか、
登場人物たちのプライベートなどの背景があまり描かれておらず、
登場人物の人物像が薄く、単なる記号としてしか機能していません。
一応主人公であるCIA女性分析官マヤにしても、
彼女の人物的な背景は、高卒でCIAにリクルートされたということしか描かれず、
家族構成や仕事以外の交友関係などプライベートには一切触れられません。
人物的背景がないから、なぜ彼女が上司と衝突してまでビンラディンに固執するのかとか、
拷問するのが苦手そうなのにこんな仕事を続けているのかとか理解できません。
そんなどういう人物かもわからないキャラに感情移入なんてできるはずもなく…。
つまりは本作にはドラマ性が皆無であり、それゆえに娯楽性も薄いので、
純粋に物語としてだけ楽しむことが出来ないのです。
主演のジェシカ・チャスティンは、こんな中身のない人物を演じているのに、
よくもゴールデングローブ賞の主演女優賞なんて受賞出来たものです。

ドラマ性が皆無であったとしても、題材となった実際の出来事がドラマチックであれば、
それはそれで楽しめるものですが、本作はそれにも当たりません。
本作はビンラディン殺害の裏側を描いた物語ですが、殺害に至るまでの経緯は、
捕まえたテロリストを拷問して得た情報から、ビンラディンの居場所を特定したという、
なんとも普通な展開で、何の意外性もありませんでした。
実際には、そのテロリストを拷問して情報を引き出すまでの過程や、
その情報からビンラディンの居場所を特定するに至る過程、
特定してから殺害を実行するまでの過程、そして実際に殺害する作戦の様子など、
紆余曲折が描かれてはいるのですが、そこに特にドラマチックな展開があるわけでもなく、
その経過が再現映像として、ただただダラダラと流されるだけです。
それで上映時間が158分にもなってるんだから、ちょっと辛いものがあります。
まぁ時折、爆弾が爆発したり銃撃があったりとテロのシーンが挟まれるので、
それがアクセントとなって眠気も覚めますが、基本的には意外性皆無の地味な展開です。
ある意味CIAの活躍を描いたスパイ映画ですが、娯楽超大作のスパイ映画と違って、
実際のスパイの仕事なんて地味なものですね。(当たり前だけど。)

そんな娯楽性の皆無な社会派映画だって必要だとは思うし、ボクも嫌いじゃないですが、
本作は社会派映画のくせに、制作サイドの社会的メッセージが明確ではなく、
そのメッセージに対して考えさせられたり、論じることすらもできません。
大筋からは不可能に思えたビンラディン暗殺を成し遂げたアメリカ政府の功績や、
CIAのスパイ技術力、特殊部隊NavySEALの戦闘能力などを称賛しているように思える半面、
捕虜に対する拷問という非人道的な行為をするCIAに対する人権的見地からの批判や、
潜伏先を特定してもなかなか作戦実行に移せない弱腰な政府やCIA上層部に対する批判、
作戦決行の重要な時に、ブラックホークを墜落させてしまうNavySEALのミスなど、
否定とも肯定とも断言できない日和見気味な内容になっている気がします。
おそらくは当事者の証言を、何の主義主張もなくただ再現したのでしょう。

拷問にしても、水責めの刑や、大音量でメタルを流して寝かさないように放置、
窮屈な小さい箱に閉じ込める、下半身丸出しにさせて犬の首輪を付けてお散歩プレイなど、
たっぷり時間を使ってかなり残酷で屈辱的に描かれています。
だから当然本作は、捕虜に対する拷問・虐待に対して否定的な立場だと思いきや、
オバマ大統領が「捕虜の虐待は許さない、させない」と明言してからは、
一転して拷問によりテロリストから情報を引き出せない苛立ちが描かれます。
この拷問シーンに関して、共和党から大統領選でオバマ大統領に有利に働くと批判され、
その反面、反拷問の人権団体や民主党の一部議員からも批判されています。
真逆の立場の両面から批判されるということは、つまり日和っているわけで、
テロリストに対する拷問については擁護派のボクからしても判断は難しく、
本作の社会的な側面を判断できないし、曖昧なので自分の見解も述べられません。
ただCIAのエージェントがどれほど鬼畜な奴らかということはわかったので、
本作はアメリカを敵に回すことの恐ろしさを知らしめ、
テロリストに対する抑止力にはなるかも。
是非、金正恩第一書記にも観てもらいたいですね。

無茶苦茶なのは拷問だけではありません。
テロリストのひとりアンマルを拷問し、ビンラディンとその側近ファラジの連絡係、
アブ・アフメドことイブラハム・イサードの存在を割り出したCIAは、
クウェート王子にランボルギーニを贈ることで、イサード家の電話番号をゲットし、
イブラハムとその兄アブラムが住んでいるパキスタンの邸宅を突き止めます。
そこを無人偵察機で監視していると、イサード兄弟や数人の子どもらの他に、
女性が3人住んでいることがわかり、「女性が3人いるなら男も3人いるはず」
「最後のひとりはビンラディンに違いない!」と、よくわからない理論で推定し、
それから暫らく経った2011年5月2日未明にNavySEALを突入させます。
(「ゼロ・ダーク・サーティ」とは「未明」という意味らしいです。)
そこにビンラディンがいる可能性は約60%だったみたいですが、
そんな微妙な確率で攻撃を仕掛けるんだから、米軍が誤爆しまくる理由がわかります。
イラクの大量破壊兵器所持の誤認問題もなるべくしてなった気がしますね。
まぁ今回の作戦は、実際にビンラディンが潜伏していたのでよかったものの、
もし間違いだったら国際的な非難も避けられないし、
パキスタンとの関係もかなりヤバいことになったでしょうね。

それに潜伏先の邸宅には、ビンラディンやサイード兄弟の他に女子供も沢山いるのに、
そこに武装した兵士を送り込み、ドンパチするなんて、ちょっと酷くないですか?
ドア越しにイブラハムを蜂の巣にしましたが、あんなの子どもを撃つ可能性も…。
とりあえず動くものは撃つので、実際にアブラムの女房も殺しちゃってるし…。
子どもの死者が出なかったのは奇跡的というか、ホントに死者がいないのか疑わしいです。
建物内に成人男性はビンラディンを含め3人の見込みだったはずだけど、
サイード兄弟の他に側近の男ハリドもいたし、ホントに適当な作戦です。
CIAやアメリカ軍はやっぱりかなり危険なやつらですよ。
一般市民からしてみたら、どちらがテロリストかわかったものじゃないです。

何の主張もない中身がカラッポの映画なのに、批評家連中の評価は異様に高く、
オスカー最有力とも言われている本作ですが、オスカー候補の中でも、
同じく中東を題材にした娯楽映画『アルゴ』の方が断然面白いです。
ゴールデングローブ賞では『アルゴ』に軍配が上がりましたが、
アカデミー賞会員は天邪鬼なので、オスカーは逆の結果になる惧れも感じます。
なにしろ本作の監督の前作『ハート・ロッカー』は、
史上最大のヒット作『アバター』を破ってオスカーを受賞するという、
今考えるとあり得ない結果でしたからね。
作品がオスカーを受賞しないことを切に祈ります。

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