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ライフ・オブ・パイ -トラと漂流した227日-

ボクの家からは、梅田、なんば、伊丹、西宮のTOHOシネマズに10~50分で行けるので、
映画を観るのもTOHOシネマズを利用することが多いです。
今年も『96時間 リベンジ』『LOOPER ルーパー』『テッド』、
そして今日感想を書く『ライフ・オブ・パイ』をTOHOシネマズで観ましたが、
この4本の映画には、ある共通点があります。
それは前売券がムビチケしかない(紙の前売券は売られなかった)ということです。
ボクはシニアでもなければ女性でもないので、シニア割引もレディースデーも使えず、
映画を安く観るのには前売券が欠かせません。
それらの作品も前売券で観るために、ムビチケを購入したのですが、
紙の前売券は概ね1300円なのに対し、ムビチケは1400円が当たり前と割高です。
ムビチケはネットで座席予約できて便利ですが、ボク自身便利な場所に住んでいるので、
ネット予約なんてせずとも劇場まで出向くのは全く苦にならないので、
ムビチケにあまりメリットは感じず、割高料金による金銭的ダメージのみです。
それ以前にネット予約だから人件費もかからないはずなのに、割高なのは変ですよね?

なのでムビチケなんてなくなってほしいですが、半年ほど前はムビチケを購入する際に、
「全国のTOHOシネマズでしか使えません」と注意されましたが、
最近は「まだムビチケ対応していない劇場もあるのでご注意ください」と言われます。
「まだ」ってことは、いずれ全てのシネコンが対応するのでしょうか?
今のところ東宝系の日本最大のシネコンTOHOシネマズと、弱小シネコン数社のみの対応で、
東映系のティ・ジョイも松竹系のムービックスも全くその気配がないんですけど…。
それどころか東宝資本が入っている大阪ステーションシティシネマですら未対応で、
シネコン各社が足並みを揃える気はなさそうです。
しかし前売券がムビチケのみの作品でも、未対応劇場でも上映されています。
なんだか不公平というか、いろいろな劇場を使いたいのに不便でなりません。
まぁ全てのシネコンが対応するのも、価格カルテルまがいで不愉快ですけど。
東宝と東宝東和以外の配給会社は、ムビチケと同時に紙の前売券も売ってください。

ということで、今日は泣く泣くムビチケで観た映画の感想です。
2D版ムビチケだから1400円だったけど、3D版だとメガネ代込みの1800円になります。
紙の前売券だとメガネ持参したらプラス300円で済むので1600円なのに、200円も割高です。

ライフ・オブ・パイ -トラと漂流した227日-
Life of Pi

2013年1月25日日本公開。
世界的ベストセラー小説「パイの物語」をアン・リー監督が映画化。

1976年、インドで動物園を経営するパイ(スラージ・シャルマ)の一家はカナダへ移住するため太平洋上を航行中に、嵐に襲われ船が難破してしまう。家族の中で唯一生き残ったパイが命からがら乗り込んだ小さな救命ボートには、シマウマ、ハイエナ、オランウータン、ベンガルトラが乗っていた。ほどなくシマウマたちが死んでいき、ボートにはパイとベンガルトラだけが残る。残り少ない非常食、肉親を失った絶望的な状況に加え、空腹のトラがパイの命を狙っていて……。(シネマトゥデイより)



第85回アカデミー賞で、作品賞をはじめ11部門でノミネートされた本作。
アメリカでは初登場5位とボチボチの成績でしたが、世界で5億ドルも稼ぐ大ヒット作です。
オスカー候補となれば、ハリウッド映画ファンとしては必修作品なので、
ボクも当然観に行きましたが、正直なところオスカー作品賞候補の中では、
『リンカーン』の次に期待していませんでした。
でもいざ観てみると予想外に見応えがあり、たぶん作品賞は無理でしょうが、
技術系の賞はいくつか受賞するだろうと思われます。
それだけ映像が素晴らしく美しいです。
ボクは2D版で観ましたが、十分臨場感のある美麗な映像を堪能できました。
むしろ3Dメガネ掛けると明度が落ちるので、たぶん2版Dの方が綺麗だと思います。

しかしその美しすぎる幻想的な映像が、初めは物語の邪魔をしていると感じました。
救命ボートでベンガルトラと何百日も漂流した少年パイの物語で、
その設定だけでもリアリティがないのに、夜光る魚や波、水銀のような水面など、
その幻想的な映像のせいで、更にリアリティを損ねてしまっていて、
これはもうファンタジーとしか思えないと…。
トラと漂流するという、シチュエーション・スリラー的な緊張感は全く感じられません。
トラ自体も完全にVFXの産物で、よく出来ているのは確かですが、
トラと密室に閉じ込められるスリラー『バーニング・ブライト』のような、
本物のトラの迫力は感じられません。
全てが作りもので、とてもウソ臭く感じられるんですよ。
極めつけは漂流終盤の人喰い島のエピソードですよね。
太平洋に浮かぶマングローブの島ですが、夜になると淡水の湖が酸になり、
アフリカにしかいないはずのミーアキャットが足の踏み場もないほど生息しています。
都市伝説としても出来の悪い、完全に荒唐無稽な展開で、失笑ものでした。
しかし、そんな作りものくさいのは当たり前、このトラと少年の冒険譚は、
全て作り話だったことがラストで示唆されるのです。

この冒険譚は、あるカナダ人の作家が、奇跡的な体験をした男がいると聞きつけて、
カナダ在住のインド人ピシンの家に取材に来るところから始まります。
このピシンが本作の主人公である少年パイで、彼が作家に語った体験談が、
少年時代にトラと大海原を漂流したという冒険譚です。
ボクは初めて本作の邦題を知った時に、「トラと漂流した227日」というサブタイトルは、
「少なくとも227日は少年もトラも無事である」ということを明示している
酷いネタバレの邦題だと憤りを感じましたが、そもそも端から回想として描かれ、
パイが生還することは確定した状態で始まるんですよね。
そのせいでトラに危険性を感じなかったのかもしれません。
ちなみにこのカナダ人作家は、レイフ・スポールというよく知らない俳優が演じてますが、
もともとは『スパイダーマン』3部作のトビー・マグワイアが演じていたそうです。
でも「無名キャストが大半を占める中で目立ちすぎる」という監督判断で、
出演シーンが差し替えになってしまったそうです。
ボクはけっこうマグワイアのファンなので、ちょっとだけ残念でしたが、
本人も納得しているみたいだし、思惑通りの作品になってるので、まぁいいかな。
そんな作家にパイが語ったのは作り話だったわけですが、
単なる作り話も2時間近くも見せられていただけというオチなら最悪ですが、
その作り話にはパイなりの意図があり、その内容がとても興味深かったので、
なかなか面白い作品だったと思えるようになりました。
(それに不満だった映像の作りもの感も説明が付いたので納得できたし。)

パイは動物園を経営する両親と2歳年上の兄の4人家族です。
ある時、一家は動物園を売却し、カナダに引っ越すことになります。
動物たちはカナダで売却する予定なので、動物たちと一緒に貨物船でインドを発ちます。
しかしその航海中、大時化に遭い、貨物船はマリアナ海峡に沈没。
救命ボートに乗せられ、一人だけ助かったパイでしたが、ボートには彼の他に、
シマウマ、ハイエナ、オランウータン、そしてトラが乗り込んでおり…。
(あ、あとネズミもいましたね。)
ハイエナは負傷したシマウマを喰い、怒ったオランウータンも噛み殺してしまいますが、
トラがハイエナを殺して、ボートはパイとトラだけになります。
おそらくパイの話は、貨物船が沈没するところまでは本当です。
しかし救命ボートに乗り込んだ動物たちは、(ネズミ以外)実際は人間で、
救命ボートで凄惨な殺し合いが行われたことのメタファーとなっています。
残忍なハイエナは船のフランス人コックで、負傷した中国人船員であるシマウマを食べ、
その非道さに怒ったパイの母であるオラウータンを殺します。
それを見て激昂し、コックであるハイエナを殺したトラこそが、
パイ自身のメタファーだったのです。
パイは母が殺されたことや自分が殺人を犯した記憶を改変するために、
登場人物を動物に置き換え、物語をでっち上げたのでしょう。
いや、別に記憶を改変する目的ではなく、どちらにしても貨物船が沈没し、
自分一人が生還した事実に違いはないのだから、実際に起きた悲惨な話よりも、
トラと漂流したという神話のような冒険譚の方が「いい話」だと考えたのかな。
意外な真実でしたが、荒唐無稽な作り話だっただけに、なんだか納得してしまいました。

ただ、そんな動物のメタファーは、漂流のごく序盤のエピソードで、
その後のクジラにイカダを転覆させられたり、トビウオの群れに遭遇したり、
嵐に襲われたり、食人島に上陸したりするエピソードは、
何のメタファーにもなっていないんですよね。
トビウオや嵐は実際に体験したことでしょうが、食人島はいくらなんでも…。
しかもトラは自分自身なんだから、当然ずっとパイひとりだったので、
トラとの駆け引きも全て作り話ということになります。
映像的にも展開的にも面白かったので別にかまわないのですが、
できればそのあたりのエピソードにも、何かの意味を持たせてほしかったです。

トラとの漂流は別としても、パイのキャラ設定もとても興味深いものでした。
なんと彼は、ヒンドゥー教とキリスト教(カトリック)とイスラム教の、
3つの宗教を同時に信仰しているのです。(なぜか仏教には興味なさそう。)
ヒンドゥー教は多神教なので、他の宗教と同時に信じることも出来そうですが、
クリスチャンとムスリムに同時になるのは難しそうですよね。
本作では食生活くらいでしか宗教は描かれませんでしたが、
3つの宗教を信じる男ってだけでも、何か別の面白い話が作れそうです。
しかし肉が食べられなかったり、魚を捕えるのも殺生と考えなきゃいけないようでは、
サバイバルするのに宗教は何かと厄介ですね。
でも神様がいると思えるからこそ、絶望的な状況でも希望を持って生き続けられるのかな?
ボクは無宗教なので、海で遭難したら、自殺はできないかもしれないけど、
パイほど必死に生き延びようともしない気がします。

最後に作品の評価には直接関係ないけど、ちょっと気になった点をひとつ。
なんだか本作の日本および日本人の描き方が、少し不愉快な気がします。
沈没した貨物船は日本の船ということがわざわざ明言されますが、
あの程度の時化で貨物船が沈没するなんて考えられないことで、
結局沈没原因もわからず、日本の造船技術にケチをつけられた気がしました。
生還したパイに沈没時の状況を訊きに来た日本の保険調査員の態度も感じ悪く、
なんだか日本人に対する悪意を感じます。
(まぁパイの話を全く信用しないのは、普通の反応とも言えますが…。)
監督が中国人のアン・リーなので、日本に何か期するところがあって、
わざと日本を嫌な感じに脚色したのかと勘繰ったので、ちょっと原作について調べたら、
どうやら原作通りの展開(設定)だったみたいで、ボクの思い過ごしでした。
しかし本作での貨物船は「ツィムツーム号」という日本船籍とは思えない船名ですが、
原作(の日本語訳)では「ツシマ丸」と日本船籍らしい船名でした。(少し意味ありげ?)
中国人監督なのはいいとして、本作はインド色が強いので、
第81回アカデミー賞の『スラムドッグ$ミリオネア』のオスカーもまだ記憶に新しいので、
本年度の作品賞を獲ることはあり得ないだろうと思います。
去年のオスカーはフランス映画だったし、本年度はハリウッド映画の威信をかけて、
アメリカらしい映画に票が集まる気がします。(…となると、やはりあの作品かな?)

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