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LOOPER ルーパー

第70回ゴールデン・グローブ賞が発表されました。
ミュージカル部門の作品賞は『レ・ミゼラブル』、ドラマ部門の作品賞は『アルゴ』で、
ボクもどちらも本年度屈指の作品だと思っていたので、納得の結果です。
ただ少し寂しいのは、例年日本未公開の作品が選ばれることが多く、
日本公開時にはゴールデン・グローブ賞受賞作品として楽しみに観に行っていたので、
すでに鑑賞済みの作品が選ばれると、その楽しみが得られないことです。
まぁノミネート作ってだけでも十分に楽しめですけどね。
両作品賞ノミネートの日本未公開作品7本は、すでに日本公開日が決定していて、
しかも3月1日までに全て公開日を迎えるのが嬉しいです。
惜しくも作品賞受賞を逃した作品ですが、どんな面白い作品なのか楽しみです。
先日ノミネートが発表されたアカデミー賞の方も、どんな結果になるのか楽しみですね。

ということで、今日は多くの批評家賞にノミネート、または受賞した映画の感想です。

LOOPER ルーパー
Looper.jpg

2013年1月12日日本公開。
ライアン・ジョンソン監督、ジョセフ・ゴードン=レビット主演のSFアクション。

未来からタイムマシンで送られてきた標的を消す、“ルーパー”と呼ばれる殺し屋のジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)。ある日、ジョーのもとへ送られてきたのは、何と30年後の自分(ブルース・ウィリス)だった。ジョーは、未来の自分の殺害をためらい逃がしてしまうが、その後未来の自分から、やって来た理由を明かされ……。(シネマトゥデイより)



前述のように、本作は多くの権威ある映画賞で脚本賞の候補に選ばれ、
受賞しているのですが、アカデミー賞とゴールデングローブ賞にはカスリもしません。
受賞、または候補になった映画賞を調べてみると、
ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞、ワシントンD.C.映画批評家協会賞、
ラスベガス映画批評家協会賞など、映画批評家が選ぶ映画賞ばかりです。
つまり本作は、やたら批評家ウケがいい、批評家好みの映画ということですね。
一般人のボクが観ても、なかなか面白い作品だと思ったので、
本作が批評家から評価されるのは別に構わないのですが、
脚本賞で受賞するのはちょっと納得できないかも。
娯楽性に優れ面白い作品なのは確かですが、脚本はそれほど巧くないです。
むしろ世界観の設定にかなり矛盾を孕んでおり、筋が通らない展開も多いです。
そんな本作なのに、映画を沢山観ているはずの批評家たちが、
脚本賞に選出するなんて、彼らの映画を観る目を疑います。
まぁボクは金を貰って映画を批評するような輩はもともと嫌いなので、
プロの映画批評家の批評なんて端から疑ってかかってますけどね。
天邪鬼なボクとしては、本作が批評家に絶賛されまくっているのが癪に障るので、
けっこう楽しめた作品ですが、ちょっと否定的な感想になるかもしれません。

まず初っ端に微妙な設定だと思ったのは、時代背景です。
主人公ジョーの請け負っている仕事「ルーパー」とは、
30年後の未来からタイムマシンで現代に送りこまれて来た人物を、
出現地点で待ちかまえて撃ち殺すこと。
30年後の未来では、完璧な身元特定方法があるらしく、死体の処分が難しいため、
未来の犯罪組織は始末したい人物を30年前に飛ばし、雇ったルーパーに処分させます。
ルーパーたちにとっても、未来人は存在しないはずの人物であるため、
死体を処分しても大して問題になったりしません。
このSFな処刑システムは斬新で面白いと思いました。
でもどうにもイマイチなのは、ルーパーたちのいる現代が西暦2044年の近未来ということ。
未来人が現代にやってきて、タイムパラドックスが起きるのが面白い話なのに、
現代も近未来では、なんだかその面白さも薄れてしまう気がします。
別に(全米公開時の)2012年が舞台でもなんら不都合はない話だったように思いますし…。

それでも近未来を舞台にした理由のひとつは、「TK」という設定を使いたかったためかな。
「TK」とは念動力のことで、手を触れずに物を動かす超能力です。
近未来ではそれを使える能力者が、10%の割合で出現します。
これは確かに2012年現在ではあり得ない状況で、舞台を近未来にするのも理解できるが、
そもそもこのTKという設定自体が、本作の中であまり活かされていません。
序盤に少し説明された後は、忘れかけた終盤までTKの話は全く出てきません。
主人公ジョーの30年後の自分が未来からやってくる物語ですが、
30年後のジョーのタイムトラベルの目的は、未来の犯罪王である
「レインメーカー」という凶悪犯罪者を、子どものうちに始末すること。
(まるで『ターミネーター』のスカイネットみたいな目的ですね。)
そのレインメーカーが強力なTK能力者で、その力で大量虐殺をしたようですが、
別に大量虐殺なんて銃火器でも化学兵器でもできるし、TK能力者である必要はないです。
だから近未来を舞台にする必要はやはりありません。
むしろTK能力者が全人口の10%もいたら、危険人物予備軍だらけの世界になりますよ。
なのでTK能力者はレインメーカーだけの方が都合がよく、
それであれば2012年現在が舞台でも何ら差し障りはなかったはずです。
もうひとつの理由としては、さすがに30年後にタイムマシンは完成しないと考えたかな。
まぁ2044年後の30年後である約60年後でも、タイムマシンの感性は無理でしょうが…。

このタイムトラベルの設定も、かなり曖昧なものです。
ルーパーは未来でも使用が禁止された違法行為なので、
ルーパーになった者は口封じのため、30年後に雇われた組織から過去(30年前)に送られ、
ルーパーである若い頃の自分に殺されることが義務付けられています。
それを「ループが閉じる」と称し、未来の自分を殺したルーパーは引退し、
報酬を受け取って残された30年の余命を自由に過ごします。
そのルーパーという職業システムもなかなか面白い設定だと思いました。
ただ、イレギュラーなことが起きた場合の展開に、かなり曖昧さを感じます。
ルーパーのひとりであるセスは、未来から送られてきた30年後の自分を逃がしてしまい、
その違反行為により、ルーパーを雇っている組織から命を狙われます。
30年後の自分が生きているなら、殺されても死ぬはずないと思いますが、
どうも未来は現在の行動によって書き換えられるようで、殺されたら普通に死にます。
しかも現在の自分が怪我をするとタイムトラベル中の30年後の自分に後遺症が残りますし、
現在の自分の行動で30年後の自分の記憶が書き換えられます。
しかし30年後の自分に影響を与えるのはどうやら現在の自分の行動だけのようで、
現在からタイムトラベルしてくる30年の記憶は曖昧なものになってしまうようです。
30年後から来たジョーも、「複雑すぎるからループの説明は断る」と言いますが、
ちょっと都合がよすぎる設定で、別にそれで面白くなくなるわけではないけど、
世界観の考証というか、脚本としては甘さがあると思います。

記憶の書き換えに関して納得できないのはラストの部分です。
30年後のジョーはレインメーカーの幼少期であるシドを殺しに来ますが、
現在のジョーはシドが後にレインメーカーになるとわかっても、
30年後の自分からその子を守ろうとします。
30年後のジョーは、記憶の書き換えで現在のジョーの気持ちを体験しているはずなので、
現在のジョーがシドを生かしたいと思った時点で、殺すことを思い留まるはずです。
しかし30年後のジョーは、やっぱりシドを殺そうとするので、
現在のジョーは已む無く自殺することで、30年後の自分の存在を消すのです。
少なくとも現在のジョーが自殺を考えた時点で、30年後のジョーは諦めないかな?
まぁ記憶絡みのことは曖昧であることは言及されているので、まぁいいとしても、
シドがレインメーカーになるのは、母親を殺した30年後のジョーに対する恨みからですが、
30年後のジョーが未来から来なければ、または来てもすぐに殺されていれば、
レインメーカーも存在しないことになり、ジョーも未来から来る必要はなくなります。
ジョーがやってくる前の未来、つまり当初の未来ではレインメーカーはいないはずです。
本作の設定では、このタイムパラドックスは起きないはずだと思いますが、
筋が通らないからこそタイムパラドックスなので、厳密には何とも言えないかな?
…って、自分でも何を書いているのかわからなくなってきました。

タイムトラベル関係の設定の不可解さは、SFには付き物なので仕方がないけど、
本作には他にも、SFとは関係ないが不可解で無意味な設定が散見されます。
例えば、現在のジョーは目薬タイムの麻薬中毒ですが、その設定って必要だったのかな?
30年後のジョーは目薬なんて注してなかったけど別に平気そうだったし…。
例えば、30年後のジョーの妻が中国人なんて設定は何か意味があるのかな?
まぁ中国市場を睨んでの戦略だから、興行的には意味があるんでしょうが…。
例えば、射程の長いガット銃を持つギャングのキッドブルーが、
射程の短いラッパ銃を持つジョーにわざわざ近づいて撃ち合うのは変じゃないかな?
それに最も納得できないのは、街から浮浪者を排除したり、
違法行為であるループを次々と閉じているレインメーカーって、人殺しではあるけど、
やってることは義賊的で、それほど凶悪な犯罪者でもない気がします。
以上のことから、オリジナル脚本に挑戦した監督の心意気は認めるけど、
数々の映画賞で脚本賞を受賞出来るほどの優れた脚本ではないです。

散々批判しましたが、自分で書いておいてなんだけど、ほとんどは言われなき批判です。
深く考える必要なんて全くない、誰もが気楽に楽しめるポップコーン・ムービーです。
そんな娯楽映画である本作の脚本をどうこう言うこと自体がナンセンスで、
脚本を批判するボクも、絶賛する批評家たちも、本作の評価を誤っていると思います。

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