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タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら

ピクサー最新作『メリダとおそろしの森』の日本用ポスターのデザインが、
各国のディズニー配給会社から絶賛され、世界的にも同デザインが使用されるとか。
日本用のデザインが世界で認められるのは珍しいことらしいです。

たしかにボクもハリウッド映画のポスターは、日本公開用にデザインされたものよりも、
オリジナル(全米用)ポスターの方が、優れたものが多いと思っていました。
日本用のポスターは販促に重点が置かれすぎで、煽り文句が多かったり、
出演する人気俳優の顔が大きく描かれていたりすることが多く、なんだか野暮ったいです。
全米用のポスターはデザイン性重視で、シンプルでモダン。
映画の中でもアメリカ人の部屋には、よく映画のポスターが貼られていますが、
インテリアとしても観賞できるほどお洒落な印象があります。
逆に日本用を部屋に貼ってると、なんで自宅で映画の宣伝してるんだろ?って感じです。
たぶん日本用の方が日本では販促効果あるんでしょうが、どれも似たり寄ったりで、
意外と目を引くのはデザイン性重視の全米用かもしれません。

ということで、今日は全米用ポスターが目を引きすぎる映画の感想です。
主人公たちの顔すら全く映ってないけど、人間の切り株の断面が…。(※)
さすがにこれは一般の劇場には貼り出されてなかったでしょうね。

タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら
Tucker Dale vs Evil

2012年2月11日日本公開。4月20日DVDリリース。
カナダ発、前代未聞のスプラッター・コメディ。

とても仲がいい中年男のタッカー(アラン・テュディック)とデイル(タイラー・ラビーン)は、手に入れたばかりの別荘で休暇を過ごすため森へやって来る。しかし、同じころに近所にキャンプに来た大学生グループから、森の奥深くに住む殺人鬼と勘違いされてしまう。さらに、二人が川でおぼれかけていた女子大生を救出したことが誤解を招き、思いもよらぬ事態へと発展していく。(シネマトゥデイより)



ホラー映画の祭典シッチェス国際映画祭ではパノラマ部門の作品賞を受賞した他、
各所の国際映画祭で高い評価と、評価以上に観客からの高い人気を獲得している本作。
日本での公開が限定的で、劇場まで観に行くことはかないませんでしたが、
かなり高い期待をしながら、DVDレンタル開始を待ちました。
しかしその高い期待をも軽く上回るほど面白く、これはホラーファンの間で、
後世に語り継がれることになるであろう傑作だと思います。
(TSUTAYA限定レンタルですが、もっと広く取り扱うべきです。)

本作は殺人鬼ものホラー映画を題材としたブラック・コメディで、
殺人鬼ものホラーのお約束を、面白可笑しく皮肉ったパロディ映画です。
同じような手法の映画として『スクリーム』シリーズなどがありますが、
同じ殺人鬼もののジャンルでも、題材となる作品の種類が異なり、
『スクリーム』はスリラー系スラッシャー映画のパロディで、
本作はスプラッター(切り株)映画のパロディって感じでしょうか。
スッラシャーとスプラッターの境は曖昧なので、
説明は難しいですが、最近見かけた便利な言葉を使うと、
本作は"Cabin in the Woods(森の中の小屋)"系映画のパロディです。
『死霊のはらわた』『悪魔のいけにえ』『13日の金曜日』などが代表的な元ネタですが、
ボクの狭い見識の中では『クライモリ』を真っ先に連想しました。
もっとも冒頭のシーンがPOVホラーのパロディになっているように、
"Cabin in the Woods"系に限らず、いろんなホラーのパロディを取り入れているようです。
(ちなみに"Cabin in the Woods"とは現在全米で公開中のホラー映画のタイトルです。)

ブラック・コメディなので、グロテスクなところも多いですが、
笑いのネタとして使用しているので、グロが苦手でも身構えることはないです。
なので誰でも見れる程度の映像だとは思いますが、基本的にはパロディですから、
元ネタとまではいかなくても、せめて殺人鬼ものスプラッター・ホラーの
お約束ぐらいは理解しておかないと、あまり見る価値はないかなと思います。
なので、結果的にグロ映画が苦手で避けてきた人が見ても、
本作のポテンシャルの半分も味わえないかもしれません。
ただ、本作が傑作たる所以は、単なるパロディだけでは終わっていないからで、
ドラマもしっかり描かれているので、何の予備知識がなくても、退屈はしないはずです。

休暇で湖の畔の別荘に遊びに来た親友タッカーとデイルだが、
近くでキャンプをしている大学生グループに、山で暮らす殺人鬼と勘違いされます。
タッカーとデイルは湖で溺れた女子大学生アリソンを救助し、別荘で介抱するが、
それを見た大学生グループは、アリシアが殺人鬼に攫われたと誤解。
更に、様子を調べるため別荘に近づいた男子学生が、自分の不注意で事故死したのも
殺人鬼に殺されたのだと思い込んだ大学生グループは、アリシア奪還と仲間の復讐のため、
武器を手にタッカーとデイルに襲いかかるが…、という話。

タッカーは強面(ハチに刺されて迫力アップ)のマッチョだし、
デイルは髭モジャの肥満体形なので、確かに風体は怖そうだけど、
殺人鬼なんてとんでもなく、実際は気のいい男たちです。
特にデイルはコンプレックスの塊で自分に自信がなく控えで優しい男です。
外見だけで「殺人鬼」と決めつける大学生たちは、発想が突飛すぎる気がするけど、
山奥では熊に出会うよりも人に出会った方が怖い(不気味)って言うしね。
できれば関わりたくないとは思うでしょうね。
それに、この大学生グループは、大半は普通のバカな若者ですが、
彼らを扇動する男子学生チャドは、その生い立ちから、殺人鬼に対して執着を持っており、
タッカーとデイルの2人が殺人鬼であると心底信じ、彼らの討伐に執念を燃やします。
一方、溺れたところを助けてもらった女子大生アリシアは、
2人が無害で優しい男たちであることにすぐに気が付きます。
チャドの思い込みは酷過ぎるけど、アリシアももう少し警戒心は持っていた方がいいよね。
2人が本当にいい人だったからよかったものの、
男2人で生活している別荘に女の子が1人でいるのは危ないです。

チャドの扇動で2人に強襲をかけた大学生グループですが、
勢い余って一人は自分の武器の上に倒れ込み、一人は木材破砕機に頭から突っ込み自滅…。
その後、駆けつけた保安官も、不慮の事故で死んでしまうのですが、
チャドたちは全ての事故を2人の殺人によるものと誤解し、報復をエスカレートさせます。
一方のタッカーとデイルの2人は、目の前で勝手に学生たちが死んでいくことを、
大学生の自殺サークルによる集団自殺だと解釈し、
自分たちもアリシアも、彼らの巻き添えに殺されるのではないかと考えます。
もう勘違いの連鎖で、どんどん事態が悪化していくのが面白いです。

チャドたち大学生グループはデイルの愛犬ジャンガースを人質(犬質)にし、
ジャンガースを救出に来たタッカーを縛り上げて、
彼の中指と薬指を切断し、デイルの立て篭もる別荘に投げ込みます。
この頃になるとチャドは、"適者生存"を錦の御旗として、
デイルを殺すことのみに執着するサイコキラーに変貌します。
アリシアでさへ、ストックホルム症候群と勘違いされ、チャドの標的になります。
本作をホラーではなく完全にコメディと断ずる人もいますが、
チャドのサイコっぷりはもう笑えるレベルではなく、けっこう怖いです。
ここまでくると、殺人鬼ものホラー映画の勘違いパロディというよりも、
列記とした殺人鬼ものホラー映画ですよ。
ただし、殺人鬼はデイルたちではなく、もちろんチャドの方です。
ただの大学生たちが勘違いと誤解の連鎖で殺人鬼に豹変していくサイコ・ホラーです。

自ら放った炎に焼かれ、いよいよ外見からしてサイコキラーになったチャドは、
アリシアを攫って姿を消します。
アリシアを助けたいが、親友タッカーが重傷なため動けないでいるデイル。
そんな彼にタッカーはひとりで彼女を助けに行くように諭します。
「おまえは自己評価が低すぎる。自身を持て。」と励まされたデイルは、
自らを奮い立たせ、アリシア救出のためチャドと対決に向かいます。
ここのタッカーとデイルの友情には、不覚にも泣きかけました。
まさか爆笑コメディ映画だと思っていた本作で、こんな感動の展開になろうとは…。
そしてデイルは古い製材所でチャドと一騎討ちになるのですが、
デイルの唯一の特技である、ある一芸が決め手となり決着がつきます。
タッカーの言うように、劣等感だらけだったデイルにも、
ちゃんと誇れるものがあることが証明されたわけで、
とてもカタルシスを感じる、いい展開だったと思います。
そして自信を取り戻した彼は、自分とは絶対に不釣り合いだと思っていたアリシアと…。

こんなに夢と希望があるスプラッター映画は他に知りません。
欲を言えば、もう少し笑いがあってもよかった気がしますが、
ホラー史に残る傑作なのは間違いありません。

(※)気持ち悪いのでトップのポスター画像は差し替えました。元の画像はコレでした。
タッカー&デイル

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