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一枚のハガキ

一週間前の投稿で、見逃していた第85回キネマ旬報ベスト・テンの、
外国映画第1位の作品『ゴーストライター』の感想を書きましたが、
今日は、やはり見逃していた日本映画第1位の作品の感想を書こうと思います。
キネ旬の日本映画ベスト・テンは、第1位の作品だけではなく、
2位、4位、6位、7位も見逃しており、ランクインした半分見逃しています。
ボクは去年の日本映画はかなりレベルが低いと感じていましたが、
高評価を受けた作品を見逃していたんだから当然ですね。
ただ、いくら評価が高くても、あまり見たいとは思わない作品ばかりなので、
とりあえず最高評価の第1位だけは押さえておけばいいかなと…。

ということで、今日は予定通りキネ旬ベスト・テン、日本映画第1位の作品の感想です。
劇場公開を見逃したので、当然DVDで見たわけですが、
このブルグでDVDで見た日本映画の感想を書くのは初めてです。

一枚のハガキ

2011年8月6日公開。
新藤兼人監督が自らの戦争体験を基に描く感動の人間ドラマ。

太平洋戦争末期、中年兵として招集された啓太(豊川悦司)ほか仲間99名の運命は、上官によるくじ引きで決定した。仲間の定造(六平直政)はフィリピンに送られることになり、戦死を覚悟した彼は啓太に妻の友子(大竹しのぶ)が書いた一枚のハガキを託す。もし彼が生き延びることができたら、妻にハガキは読んだと伝えてくれと頼まれ……。(シネマトゥデイより)



日本で最も権威がある(と思う)映画賞、キネマ旬報ベスト・テンで、
日本映画部門の第1位に輝いた本作ですが、正直、評価が不当に高すぎるように思います。
本作を高く評価した選考委員の選評も読みましたが、とにかく本作で語られることは、
作品の出来よりも監督が誰だということばかりです。
本作の監督は99歳の日本最高齢映画監督、新藤兼人監督です。
日本のインディペンデント映画に多大な影響を与えた巨匠であり、
そんな彼の引退作が本作だということです。
本作は、彼のこれまでの功績に対する評価が多分に含まれており、
作品単体の出来は二の次で評価されています。
功労賞的な賞ならいくらでも差し上げたらいいと思うけど、
やっぱり、過去何十年の功績で、年間ベストを決めるのは間違いです。

ボクは新藤兼人監督のことは全く評価していません。
というか、彼の監督作を観たことがないので、評価したことがないです。
でも、だからこそ、初めから高い下駄をはかせて評価している選考委員よりは、
純粋に作品自体の出来をフラットに評価できると思います。
まぁたしかに、功績は知らないけど、99歳の監督って聞いてしまうと、
そんなご高齢なのに作品として成立しているだけでも関心してしまいます。
高く評価した選考委員たちも、新藤兼人監督の過去の監督作と比較すると、
衰えは否めないと感じているようですが、年齢補正がかかり、
過去の作品を上回る高評価になっていると思います。
しかし、映画は別に監督の年齢で観るわけじゃないですからね。
そんなものを配慮する方がおかしいです。
(むしろ経験の乏しい若い新人監督の作品なら多少は意識しますが…。)

はっきり言ってしまえば、本作を撮ったのがもっと若い監督なら、
全く箸にも棒にもかからない評価だっただろうし、
逆に新藤兼人監督が、どうしようもない駄作を撮ったとしても、
本作と同じ程度の評価を得られていただろうと確信できます。
キネ旬ベスト・テンの最優秀男優賞を受賞したのは去年亡くなった原田芳雄です。
本作にしてもそうだけど、花道を飾ってあげたいという気持ちは理解できますが、
そんな補正がかかってしまうのはフェアじゃないし、賞としての信頼性も低下します。

まぁキネ旬ベスト・テンなんて、歴史があるから他より権威があるだけで、
所詮はイチ映画雑誌が主催する映画賞でしかありません。
むしろそれより日本の映画界として問題があると感じるのは、
本作がアカデミー外国語映画賞の日本代表に選ばれたことです。
日本映連の誰かが選んだのでしょうが、エントリーされた日本映画の中で、
本作が最も勝算がある作品だとはどうしても思えません。
日本最高齢監督も日本映画に対する貢献も、外国の映画賞には通用しません。
しかも本作は太平洋戦争の戦中戦後の日本を舞台にした戦争映画です。
露骨に原爆とかのスチールを含む作品が、アメリカの映画賞でウケるわけがないです。
当然ノミネートどころか予選にも残れませんでした。
アカデミー外国語映画賞は日本映画を世界に知らしめる場のひとつだし、
もしノミネートや受賞できれば、国内の映画に対する関心も高められる貴重な機会です。
(特に国内に対しては三大国際映画祭よりも効果的ですよね。)
そんな重要な機会を、個人の「最後の思い出づくり」に使わないでほしいです。

こんな書き方だと、本作がよほど酷い作品だったように思われるかもしれませんが、
ただ不当に高い評価を受けているというだけで、そんなに悪い作品ではないです。
一言でいえばシンプルで無難な作品です。

去年はちょっとした太平洋戦争映画ブームでしたが、
『太平洋の奇跡』『日輪の遺産』『聯合艦隊司令長官 山本五十六』など、
「帝国軍人の中にも素晴らしい人物がいた」みたいな、若干右寄り(?)というか、
太平洋戦争の比較的好意的に再評価する娯楽作品がほとんどでしたが、
本作はとにかく「戦争は悪」を謳うゴリゴリの反戦映画です。
それだけでも最近の風潮と違うので、古臭く感じてしまいますが、
実際に戦争経験者の古い監督が撮ってるんだから当然かな。

テーマやストーリーも古臭いが、それ以上に(語弊があるかもだけど)キャストが古い。
メインキャストの平均年齢が還暦近いんじゃないかと思われる高齢映画ですが、
特に主人公(豊川悦司)やヒロイン(大竹しのぶ)の設定年齢は30代が妥当です。
監督にとっては50代の彼らでもまだ若造だと思えるんでしょうが、
40代以下の観客には違和感があると思います。
本作は監督の実体験が基になっているそうで、主人公は監督がモデルですが、
監督も戦争当時は30代だったはずです。
トヨエツは若づくりなのでまだマシですが、大竹しのぶをヒロインとするのは厳しく、
ヒロインの母親役でもいいくらいの年齢だと思います。
彼女は演技力に定評がありますが、本作では監督の好みに合わせてか、
昭和のノリの演技に徹しており、迫力はあるけど、どうも仰々しく感じます。
というか、演技も古臭いです。ある意味、若い女優には出せない演技です。
でもこんな古臭い映画は、今の映画についていけない古い観客にはちょうどいいかもね。

よかったところは、ストーリーが監督の実体験であるため、
戦中戦後の日本の風俗や、大日本帝国兵の様子が、
リアルに描かれている気がして、資料的な意味で興味深いと思ったこと。
特に末端の日本兵の様子は知らなかったことが多く、
予科練生のために天理教本部や宝塚劇場を掃除する仕事があることや、
適当なクジ引きで赴任先が決まるということを初めて知りました。
特にクジ引きにはビックリです。
末端の兵とはいえども、もうちょっと適材適所に配置した方がいいだろうに、
本当に一般の日本兵ってのは、軍部から頭数としか見られてなかったんですね。
それでは勝てる戦いも勝てませんよね。
地方の風習かもしれないけど、レビレート婚みたいなのが、
数十年前の日本で普通に受け入れられていたことにも驚きました。
今だとちょっと気持ち悪い気さえしますが、当時は軍でのクジ引きだけじゃなくて、
そういう面でも、個は尊重されない土壌になってたんですね。

キネ旬ベスト・テン、アカデミー外国語映画賞日本代表の他にも、
毎日映画コンクールの日本映画大賞、ブルーリボン賞の監督賞なども受賞してます。
ブルーリボンの授賞式では、新藤監督は次回作の製作に色気を見せたそうですが、
ホントに撮れば、また無条件で映画賞を席巻するのはわかりきっています。
ぜひ監督業は遠慮していただいて、若い才能にチャンスを与える立場になってほしいです。

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