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ゴーストライター

日本で最も権威のある映画賞はキネマ旬報ベスト・テンですが、
(2011年度)第85回キネマ旬報ベスト・テンの結果には、どうにも得心いきません。
しかしそれもそのはず、日本映画部門と外国映画部門ともに、
ベスト・テンの1位の作品を、鑑賞すらしていなかったのです。
得心するも何も、観てもいないのでは話になりません。
観た上でどう感じるかは別としても、とりあえずキネ旬の1位は押さえておかないと、
去年の映画の動向について語ることはできないかなと思うので、
遅ればせながら観賞してみることにしました。
ちょうど双方とも、DVDがリリースされたばっかりなので、難なく観賞できます。

ということで、今日はキネ旬ベスト・テン、外国映画第1位の作品の感想です。
日本映画第1位『一枚のはがき』の感想も近いうちに書くと思います。

ゴーストライター

2011年8月27日日本公開。
巨匠ロマン・ポランスキー監督が、ロバート・ハリスの小説を映画化したサスペンス。

元イギリス首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自叙伝執筆を、破格の報酬で引き受けたゴーストライター(ユアン・マクレガー)。その仕事の前任者が事故死したこともあり、彼は気乗りがしないままアメリカ東部の島へと向かう。同じころ、イスラム過激派のテロ容疑者に対する拷問への元首相の関与が取り上げられ……。(シネマトゥデイより)



う~ん、たしかにいい映画ですね。キネ旬ベストテン第1位も納得です。
個人単位なら、本作を去年のベスト映画に選出する人はそういないでしょうが、
本作を観賞した人なら、ほぼベスト・テンからは外さないだろうと思うので、
最大公約数的に本作が年間1位に選ばれるのは、よくわかります。
ボクも個人的に去年のベスト映画だと思う『リアル・スティール』の方が、
本作よりも面白かったというのは揺るがないけど、去年の劇場公開中に本作を観ていたら、
年間ベスト・テンには確実に入れていただろうと思いました。
そもそもベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞するほどの作品なんだから、
もっと誰でも観にいけるくらいの規模で公開しておいてほしいです。
まぁその時の金熊賞の『蜂蜜』は、さらに小規模な公開だったみたいですが…。

元英国首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自叙伝を執筆していた
首相補佐官のマカラが、自叙伝の完成を前に事故死してしまう。
その後任にユアン・マクレガー演じるゴーストライターが選ばれるが、
彼は巨大な政治的陰謀に巻き込まれることになる…、という話。
今、感想を書いてて気付いたけど、主人公には名前が付いてないんですね。
まさに、名前が公表されることがないゴーストライターってわけですね。
逆に、前任者のマカラは一切姿を出しません。(キャストが付いていない。)
これも公然に出ることがないゴーストライターを意図した演出でしょう。
映画に小説的な印象を残す、興味深い手法です。
便宜上、ユアン・マクレガーの役名は"ゴースト"とします。

ゴーストが自叙伝の執筆依頼を受けた直後、
ラング元首相に、アルカイダのテロ容疑者をCIAに引き渡し拷問させた疑惑が浮上し、
彼が罷免した元外務大臣(ロバート・ピュー)に告訴され、戦犯の容疑がかけられます。
そんな折、ゴ-ストは前任者マカラの遺品から、ある資料を発見し、
元首相の経歴と、前任者マカラの事故死について疑惑を持ち、単身調査を始めますが、
ゴースト自身も身の危険を感じるようになります。

中盤まで観賞すると、「だいたい話は読めちゃったな」と思ったのですが、
その時点でのボクの読みは全く見当はずれで、予想外の展開になっていきました。
前任者マカラの事故死は始めから不審だと誰でも思うし、
基本的には誰がマカラを殺したのかが本作の関心事です。
元首相に私怨を持つ元外務大臣か、戦犯疑惑に抗議する人権派市民か、
もしかしたら拷問で死んだテロ容疑者の関係者か、いや元首相自身も怪しい、
…と、いろんな可能性がうまく提示されており、
当然ボクもその中からひとつの予想を立てたわけですが、
完全にミスリードさせられており、「やられた!」って感じです。
終盤にかけてゴーストが真実に近づき、事件と疑惑の全容が見えてくるのですが、
最後の最後に、その全容さえもひっくり返されてしまいます。
最初と最後で、ほとんどの登場人物の印象が、ガラッと変わってしまう、
とても興味深いミステリーです。

事件と疑惑の裏にはとんでもない政治的陰謀があり、
もし本当にこんなことがあったら、世界中が騒然とするようなスキャンダルで、
冷静に考えれば、荒唐無稽であり得ないような内容なのですが、
それをあり得るかもしれないと思えるほど、巧妙に描いてあり、感心します。
ここまで露骨には出来ないと思うけど、あの国ならそれくらいのこと企みそう。
日本も多少はやられてるんじゃないかと思ったほどです。

前任者マカラが自叙伝の原稿に隠した謎については、
もう少し観客にも推理の余地があるものにしてほしかったのと、
その謎に気付いたゴーストが、最後にとった行動に、
あまり論理性を感じなかったことだけ、ちょっと不満かな。
それ以外はとてもよく出来た脚本で、
本作が去年度を代表する映画の1本なのは間違いないです。

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