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マリー・アントワネットに別れをつげて

今年の映画界は、フランスの当たり年だったと思います。
『ヒューゴの不思議な発明』『ミッドナイト・イン・パリ』など、
フランスを舞台にした映画3本がアカデミー賞にノミネートされ、
『アーティスト』が史上初のオスカー作品賞に選ばれたことを皮切りに、
『最強のふたり』が日本を含む世界中で大ヒットしたり、
『愛、アムール』がパルムドールを受賞するなど、フランス映画に勢いがありました。
他にも『おとなのけんか』や『ロックアウト』などフランス映画が日本で次々公開され、
フランスを舞台にした日本映画『新しい靴を買わなくちゃ』なんかもあったりと、
かなりのフランスブームだったように思われます。
最近でも、つい先日フランスのアニメ映画『モンスター・イン・パリ』を見ましたが、
今週末もフランス舞台の歴史劇『レ・ミゼラブル』や、
フランス映画『シェフ! 三ツ星レストランの舞台裏へようこそ』が公開になります。
映画におけるフランスの発信力ってすごいなと感心すると同時に、
日本映画ももっと海外で上映されたり、日本舞台の外国映画が増えたらいいなと思います。
現状では日本映画にも日本自体にもあまり魅力がないから難しいですが…。

ということで、今日は金熊賞にもノミネートされたフランス映画の感想です。

マリー・アントワネットに別れをつげて

2012年12月15日日本公開。
小説『王妃に別れをつげて』を映画化した歴史劇。

1789年7月14日、暴徒に襲撃されたバスティーユ牢獄が陥落しフランス革命が勃発。王妃マリー・アントワネット(ダイアン・クルーガー)と、その寵愛(ちょうあい)を受けるポリニャック夫人(ヴィルジニー・ルドワイヤン)らの名前が載った286名の処刑リストが出回り、ベルサイユに衝撃が走る。宮殿を逃げ出す貴族や召使が相次ぐ中、朗読係のシドニー(レア・セドゥー)は王妃に対する気持ちの深さから忠誠を誓うものの、王妃から思いも寄らない命令が下される。(シネマトゥデイより)



今週末にフランスの歴史大河映画『レ・ミゼラブル』を観に行くつもりですが、
ボクはフランス史に疎いので、劇中で語られるであろう18世紀後期から19世紀初頭の
フランスが激動した時代のこともほとんど知りません。
(当然原作ミュージカルも見たことがないし。)
なのでその作品を観る前に、少しでもフランス史に触れる機会があればいいな、
なんて思っていたところに公開になったのが、フランス革命を描いた本作です。
たぶん『レ・ミゼラブル』でもフランス革命のことが多少語られると思うし、
当時のフランスの雰囲気を知るには絶好の機会だと思って、本作を観に行きました。
まぁ本作が『レ・ミゼラブル』に便乗するべく公開日を合わせたんだと思いますし、
それにまんまと釣られたわけですが、もちろん本作の予告編などからも、
面白そうな作品だと思って観に行ったんですけどね。
いざ観てみると、期待を裏切らない程度の面白さはあったと思いますが、
内容的には想像(期待)していたものと少し違い、確かにフランス革命が舞台ですが、
勃発から数日間のヴェルサイユ宮廷の様子しか描かれておらず、
フランス革命の全容を知るには程遠い物語で、『レ・ミゼラブル』の予習にはならず…。
しかしドラマとしてはなかなかよかったので、まぁ楽しめたかな?

市民革命を、革命を起こされた側の立場で描いた作品というのは少し珍しいかも。
バスティーユが民衆により陥落し、民衆たちがヴェルサイユに攻め寄せる中で、
宮廷の連中の焦りや迫りくる恐怖心から、右往左往する様子が興味深く描かれています。
(なんとなく民衆が狼藉者のような印象すら受けました。)
その様子を語るのが、本作の主人公で王妃に心酔する朗読係シドニーで、
彼女は革命勃発から数日後にヴェルサイユを発ってしまうため、
その間の様子しか描かれていないわけです。
てっきり王妃マリー・アントワネットがギロチンにかけられるまで描かれると思ったので、
「え、ここで終わりなの?」と思ってしまいましたが、
あくまでも朗読係シドニーがメインという趣向なので仕方ないですね。
でも王妃の断首の瞬間を、シドニーがどんな気持ちで迎えたかは気になるので、
やっぱり中途半端な終わり方だったような印象は残るかな。

フランス史に疎いボクでも、さすがにマリー・アントワネットのことは多少知っています。
困窮する国民を後目に贅沢の限りを尽くし、フランスの財政を傾かせた悪女ですよね。
「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」と発言したりと民衆を愚弄し、
その王妃への悪評が暴動の引き金になった、フランス革命勃発の張本人です。
…というのは一般的な見方で、今では彼女の評価もかなり見直され、
彼女の悪評の大半もデマで、たまたま宮廷に対する民衆の不満の矛先にされただけで、
それほど酷い人物でもなかったようだと言われています。
本作のアントワネットはどんな人物かと言えば、特に良くも悪くも描かれていません。
ただかなり世間知らずなセレブで、浮世離れが激しすぎるので、
ちょっと掴みどころのない、理解に苦しいキャラだったと思いました。
彼女はポリニャック公爵夫人という女性を寵愛しているので、
てっきりソッチ系かと思ったし、夫のルイ16世とは仮面夫婦だと思ったけど、
彼に付き従うためにヴェルサイユ脱出を取りやめたりと、夫に献身的だったりもします。
一般的なイメージを根強く持っているボクとしては、
王妃が即行で田舎へ逃げ出す準備をする展開は「彼女らしい」と思いましたが、
その後、ヴェルサイユ残留を決めた心境の変化は、ちょっと理解できなかったです。
ルイ16世も暗君だと思ってたけど、本作ではそうでもない感じで意外でした。

ただ、だからといって王妃が覚悟のある立派な人物かといえばそんなこともなく、
押し寄せる民衆を「パリからの悪臭」と表現したり、彼らを蔑んでいるのは間違いなく、
財政を揺るがすほどではないにしろ、趣味のファッションに浪費しまくっていたのは事実。
まぁ浪費するのは宮廷の貴族全員なので、彼女だけ特段に酷いわけでもないです。
田舎に脱出する準備の時に「田舎は退屈だから何を持っていこうか?」とか、
宮廷がパニック状態でも、寵愛するポリニャック公爵夫人のことばかり案じたりと、
自分の置かれている危機的状況がイマイチ理解できないようにも思え、
このフランス革命に対しても楽観的に考え、悠長に構えているのかも。
たぶんちょっとバカなんでしょうね。

そんな王妃に心酔する主人公の朗読係シドニーですが、
彼女の王妃に対する想いは強烈に思えたので、彼女もソッチ系かなと思ったのですが、
普通に船頭のイケメン青年と恋をしたりもします。
王妃に対しては、その青年に対する想いよりも強い感情を持っていそうですが、
恋愛というよりは、貧困層出身ゆえの権力に対する執着のようにも思えました。
王妃の覚えめでたくなることに必死で、王妃が自分と親しく接してくれることに、
恍惚感を覚えているような感じですね。
しかし王妃は別に彼女を特別に厚遇してくれているのではなく、
若い彼女を若いポリニャック公爵夫人の代わりとして接しているだけ。
最終的にシドニーは王妃の命令で、ポリニャック公爵夫人が無事に国外脱出できるように、
実際に夫人の影武者にさせられてしまいます。
王妃は夫人さえ助かればよく朗読係の命なんてどうでもいいと考えているととがわかり、
シドニーはショックを受けます。
この時点で彼女の王妃に対する想いもかなり冷めただろうから、
王妃がギロチンにかけられた時も、特になんとも思わなかったかもしれませんね。

一方、それほどまでに王妃に寵愛されていたポリニャック公爵夫人ですが、
シドニーの王妃に対する想いと同様、王妃の夫人に対する想いも意外と一方的なようで、
夫人は早々に王妃を見捨ててヴェルサイユ脱出してしまいます。
彼女だけではなく、宮殿の寵臣たちも次々と脱出してしまいます。
誰もいなくなった臣下の部屋をノックして回る王妃の姿が哀れでした。
金の切れ目が縁の切れ目で、忠誠心のない臣下ばかりだったみたいですが、
まぁ民衆の持つ処刑者リストに自分の名前が載っていたら、そりゃ逃げるよね。
逃げずに潔く自殺する者も多かったみたいですけど…。
ポリニャック公爵夫人のことは全く知らなかったので、彼女のその後が気になり調べると、
王妃が処刑されたすぐ後くらいに急死したみたいですね。
彼女のしたたかさはいけ好かなかったので、なんとなく留飲が下がる気がしました。

マリー・アントワネットは悪評ほど悪い人間ではなかったかもしれないが、
国民の血税を保身や私利私欲のために使った者はギロチンにかけられて当然です。
先週の選挙で選ばれた日本の代議士たちも、
本当の意味で首をかけるくらいの覚悟で政治をしてほしいですね。

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