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砂漠でサーモン・フィッシング

ボクは貧乏なので、普通の寿司屋は高級すぎてもう5~6年行ってませんが、
一皿100円前後の回転寿司には2カ月に一度くらいは行けます。
そこでも10皿以上は食べないと心に決めていて、取る皿を慎重に選ぶのですが、
そのチョイスは毎回だいたい同じになるものですね。
しかもかなり偏っていて、サーモン、焼きハラス、オニオンサーモン、とろサーモン、
そしてイクラの軍艦と、半分はサーモン関係のお寿司です。
一緒に行った人から、よく「子どもみたい」と言われますが、サーモンの美味しさは異常。
それに回転寿司ってやっぱり普通の寿司屋より見劣りするネタが多いけど、
サーモンだけはどこで食べても(美味しくて)あまり変わらない気がします。
まぁ普通の寿司屋のサーモンがどんな味だったかは忘れましたが…。

ということで、今日はサーモンを題材にした映画の感想です。

砂漠でサーモン・フィッシング

イギリスの小説『イエメンで鮭釣りを』映画化したロマコメ。

「イエメンでサケ釣りをしたい」という依頼を受けた水産学者のジョーンズ博士(ユアン・マクレガー)。そんなことは絶対無理だと相手にしなかったものの、何とイギリス外務省後援の国家プロジェクトに発展。ジョーンズは、イエメンの大富豪の代理人ハリエット(エミリー・ブラント)らと共に無謀な計画に着手する。(シネマトゥデイより)



本作はイギリスで大人気だった小説の映画化作品で、イギリスではヒットしましたが、
全米でも初めは20館足らずで公開されていたものが、徐々に500館近くにまで増え、
最終的には全米ボックスオフィス7位まで上昇したようですが、
それだけ評判がよかったということでしょうね。
たしかに面白い映画で、なんだか久々にちゃんと面白い映画を観た気がします。
その原作小説もちょっと変わった構成のものだったらしく、
Eメール、日記、新聞、雑誌といった様々なスタイルの文書で書かれていて、
映像化するのは無理だろうと言われていたそうです。
(小説版『電車男』みたいな感じなのかな?)
ややもすれば、その奇抜な文体がウケただけなのかもしれない惧れもありましたが、
こうして映像化して、文体は関係なくなっても、楽しめる作品になっているので、
やっぱりストーリー自体もかなり面白い作品だったとだろうと思います。
劇中でEメールやチャットでのやりとりや、雑誌の記事などのシーンがありますが、
それは原作の名残なのでしょうね。
しかしその程度では、原作の文体の奇抜さは全く味わうことが出来ないので、
原作がどんな感じなのか、かなり興味をそそられました。
本作を観た帰りに本屋に寄ったのですが、残念ながら取り扱ってなくて…。

イギリス漁業農業省に勤める水産学者ジョーンズ博士のもとに、
イエメンの大富豪シャイフから、代理人ハリエットを通じて、
「鮭釣りがしたいのでイエメンに鮭を泳がせてほしい」と依頼される。
ジョーンズはそんなことは不可能と一蹴しますが、
アフガン戦争が激化する中、中東との緊張緩和のためにと首相広報官が支援を決め、
ジョーンズは否応なく無謀な国家プロジェクトに巻き込まれることになり…、という話。
本作はジャンルで言えばロマコメになると思うのですが、
シニカルなユーモアも満載な上に、かなりドラマチックな展開で、
大いに笑えて、ちょっと感動もできるとても楽しい映画です。
かなり荒唐無稽な展開なのに、なぜか実話を映画化したかのような、
納得できてしまえるストーリーなのも不思議ですね。

劇中でジョーンズも言ってますが、ほとんど砂漠のイエメンでは、
鮭釣りなんて出来る環境はないように思われますが、
大富豪シャイフは、すでに川を作るだけの水を確保しており、ダムも建設済みです。
鮭が産卵するのに適した砂利もあり、理論的には可能とのことです。
ボクは鮭の生態についてあまり知らないのですが、
ただ鮭を放流するだけでなく、遡河回遊させるなんてことが本当に出来るんですかね?
でも日本の鮭も自然に遡河回遊しているわけではなく、
川で稚魚を放流しているって話を聞いたことがあるから、出来なくもないのかな?
ちゃんと放された川に戻ってくるなんて、回遊魚って不思議ですよね。
ただ、冷たい水や産卵に適した砂利があるといっても、それだけで十分ではないはず。
劇中でもイエメンで鮭釣りが不可能な理由として、
稚魚の餌となる北欧のハエがいないという問題が提起されたはずだけど、
そのことについて作中では解決されていませんでした。
まぁシャイフはベラボーな金持ちだから、ハエを輸入して餌づけくらいできそうですが…。

理論的には可能だと判断したジョーンズですが、
たったひとりの釣好きのセレブの道楽で、水資源や放流する1万匹の鮭を無駄にするのは
如何なものかと考え、あの手この手で代理人ハリエットを諦めさせようとします。
しかし実際に大富豪シャイフに会い、単なる釣り目的ではないことを悟り、
彼は鮭プロジェクトに真剣に取り組もうと考えるようになります。
シャイフの真の目的は、砂漠に水をもたらすことで、その地に農業を興し、
何世代もの人々のために砂漠を緑に変えよう考えていたのです。
それなら川を作るだけで十分で、鮭釣りなんてどうでもいい気がしますが、
シャイフの妙に説得力のあるオーラのせいで、なんだか納得させられてしまいます。
とはいえ、どんな立派な理由があろうとも、個人の独断でやってもいい計画ではないです。
こんなことをしたら生態系に甚大な影響が及ぶのは間違いなく、
イエメンだけの問題ならまだしも、鮭は回遊魚だけに世界的に影響が出そうですよね。
本作で知ったのですが、鮭はマスのように養殖できるみたいなんで、
ダムの水で養殖して、釣り堀でも作ればいいと思います。

養殖できる鮭ですが、シャイフはあくまで鮭が遡上する川にしたいため、
遡上した鮭から産まれた天然の鮭の放流にコダワリます。
しかしイギリスの釣り人は、自国の天然の鮭を1万匹もイエメンに送ったら、
自分たちの釣る鮭が減るのではないかと懸念しており、
彼らの声を受けて環境局やマスコミも断固反対します。
鮭プロジェクトを推し進めた首相広報官としては、釣りによる親善事業により、
全国200万人の釣り人から政府が支持されることを期待していたのに、
逆にこの鮭プロジェクトのせいで批判されるなんて皮肉ですね。
そもそもアフガン戦争の批判のもみ消しや、次期選挙のためという、
なんとも不純な動機のバカげたプロジェクトですが、本当にやりかねない気がしますね。
もちろんイギリス政府だけではなく、日本の政府だって似たようなものなので、
他人事ではないシニカルな展開だと思えました。
資金も全て大富豪シャイフ持ちだし、政府にとってはオイシイ話だったのですが、
逆にそのことで批判されては意味がなく、政府は天然鮭をイエメンに送るのを辞めます。
その代わりに養殖鮭を勧めるのですが、当然シャイフは拒否。
政府は鮭プロジェクトから手を引くことになり、ジョーンズも漁業省をクビになります。
結局はジョーンズが養殖鮭でも大丈夫だろうと判断し、シャイフも妥協しますが…。
ボクの素人考えですが、天然鮭を放流したら、元のイギリスの川に戻る気がします。

国民から批判されたのはイギリス政府だけでなく、
大富豪シャイフも原理主義(?)的なムスリムから神に対する冒涜だと罵られます。
日本人のボクからすると、砂漠なんて不毛の大地で、無いに越したことはないと思うけど、
アラブ人にとっては砂漠は神聖なものらしく、砂漠に水を引くことは冒涜であり、
西欧化だからダメだという、理解しがたい考え方があるみたいです。
ホントにイスラム教って何かとややこしい宗教ですよね。
そのことでシャイフは過激派ムスリムから暗殺されかけますが、
刺客に気付いたジョーンズの見事な釣り竿捌きにより、刺客を撃退します。
拳銃を持った相手に対しキャストして釣り針を引っ掛けるのですが、
なんとも無茶苦茶な展開だけど、突拍子が無さすぎて面白かったです。
しかし暗殺が失敗しても過激派は諦めず、鮭の放流の日にダムの水を一気に放出し、
下流で鮭釣りをするシャイフやジョーンズ、イギリス政府関係者たちを鉄砲水が襲います。
シャイフとジョーンズはギリギリ無事でしたが、死人も出る大事件で…。
こんなのテロ攻撃に他ならず、戦争に突入してもおかしくない国際問題ですよね。
でもシャイフは「彼らの気持ちもわかる」と、犯人逮捕を指示しません。
ホントにイスラム教って理解しがたい宗教です。
国際問題にはならなかったし、たぶん死んだのはイギリス人ではなかったのでしょう。

そんな感じでジョーンズが政府の思惑に巻き込まれて奔走するコメディですが、
ロマコメなので、それと並行してシャイフの代理人ハリエットとのロマンスが描かれます。
ジョーンズは既婚者だし、ハリエットも彼氏持ちなので、
本当にロマンスに発展するのか途中までわかりませんでしたが、
やっぱり最後はロマンスに帰結しましたね。
そこはちょっと無理くり感があったので、双方の元のパートナーが若干気の毒に…。
ジョーンズは妻と倦怠期でしたが、妻は鮭プロジェクトに全く理解を示さず、
漁業省を辞めたことを責められ、家を飛び出します。
妻はジョーンズには結局自分のもとへ戻ってくるDNAがあると言い、復縁を期待しますが、
ジョーンズはもとの退屈な生活に戻るつもりはサラサラなく…。
この妻のDNAの発言により、彼は養殖鮭でも遡上するのではと考えたので、
彼は言わば鮭のメタファーであり、彼が妻のもとに帰らないというのは、
なんだか放流した鮭も川に戻ってこないことを暗示しているようにも思えます。
実際、放流した鮭は遡上する素振りを見せたものの、その鮭の産卵し、
その稚魚がこの川にもどってくるかどうかは微妙なところだと思いますね。

一方のハリエットは、軍人の青年ロバートと付き合いますが、
彼はアフガン戦争に派兵され、戦闘中に行方不明となってしまいます。
その報を受けたハリエットは、鮭プロジェクトを投げだし自宅に引き籠りますが、
ジョーンズの説得により復帰し、2人は徐々にいい仲になります。
ところがロバートのまさかの帰還により、彼らは三角関係に…。
しかしハリエットに対しロバートが「こんなプロジェクト、どうかしている」、
「大富豪はレジャーで儲けるつもりだ」と発言したことで、
必死にプロジェクトに取り組んできた彼女は100年の恋も冷めます。
100年どころか彼女とロバートは知り合って3週間ほどですからね。
正直、ロバートが行方不明なった程度で、彼女があんなに落ち込むとは思えないほどです。
ロバートは主人公ジョーンズの恋敵なので、憎い相手ではありますが、
最後はハリエットの意思を尊重し引き下がったので、別に悪い奴じゃないです。
いや、彼のハリエットへの愛は、ハリエットの彼に対するものほど深くなかったのかも。
なにしろ出会って3週間ですし、そのうち1週間くらいはアフガンにいたわけですからね。
帰還したことで、母国では英雄扱いだし、それで彼は十分ハッピーでしょう。
それにジョーンズの妻にしてもそうですが、鮭プロジェクトに対する彼らの反応は、
至って真っ当で健全なものだと思いますしね。

今週公開の映画は本作しか観る予定はありませんが、
現在公開中の映画の中でも、最もオススメな1本でした。

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