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ミロクローゼ

メジャーな大作映画が好きなボクは、映画をシネコンで観ることが多いですが、
それでも全体の2割弱はミニシアターのお世話になっています。
ミニシアターのいいところは、自館の上映作品に愛があるところです。
壁に上映作品のインタビューや評論などの雑誌記事の切り抜きが貼ってあったりして、
映画が好きなのが伝わってきます。
ボクも映画誌の記事はかなりチェックしている方だと思いますが、
それらの切り抜きの中には、(例えばイヌの映画だとペット専門誌の記事とか、)
映画誌以外の記事もけっこうあり、「よく見つけたな」と感心します。
そんな記事の切り抜きを上映前や上映後に読むのも楽しみで、
ミニシアターにはついつい長居してしまうんですよね。

しかし、中には「こんなの貼っちゃうか?」と思うような記事も…。
今から感想を書く映画も、ミニシアター(シネマート心斎橋)で観ましたが、
壁に貼ってある主演や監督へのインタビュー記事に混じって、
週刊プレイボーイの映画批評家によるレビュー記事が貼ってあり、
それが「そこまで言うか?」と思うほどの酷評で…。
(たしか「『CASSHERN』以来の駄作」みたいな内容です。)
それを読んだのは上映前でしたが、観るのを止めてしまおうかと思うほどでした。
もうチケットを買った後だったので、結局は観ることにしましたが…。
酷評記事の切り抜きまで掲示するのは、ある意味フェアだと思いますが、
観る前からテンションの下がるような記事は、出来れば読みたくなかったかな…。

ということで、今日は週プレから酷評された映画の感想です。
まぁいざ観てみたら、その酷評記事を書いた批評家の目が節穴だったとわかりましたが。

ミロクローゼ

2012年11月24日公開。
石橋義正監督、山田孝之主演によるラブファンタジー。

神秘的な美女ミロクローゼ(マイコ)に心を奪われるも、彼女が別の男性といるのを目撃して恋に破れ、心に空いた穴を鍋ぶたでふさぎながら孤独に生きるオブレネリ ブレネリギャー(山田孝之)。一方、彼と顔立ちが似ているダンディーな相談員・熊谷ベッソン(山田孝之)は、「交際中の彼女の本心を確かめたい」など日々寄せられる草食系男子たちの悩みを華麗に解決していく。(シネマトゥデイより)



本作は、去年3月の香港映画祭を皮切りに、約1年半の間、
世界中の映画祭を回っていたそうですが、やっと日本で公開となりました。
映画サイトなどの上映スケジュールには1年以上前から載っていたので、
いつ公開になるかと心待ちにしていました。
映画祭巡業ではモントリオールで行われたジャンル映画の祭典
ファンタジア・フェスティバルで最優秀監督賞を受賞したりと、
それなりに世界から称賛されたようではありますが、
いずれの映画祭も日本ではマイナーだったためか、特に話題にもならず、
せっかくの凱旋公開なのにかなり小規模公開になってしまいました。
まぁ確かに人を選びそうな概要なので、大規模公開しても客は入らないでしょうが、
いざ観てみると意外にもキャッチーで観易い内容だと思いました。
もっとシュールで難解な作品かと想像していたのですが、
シュールなのは間違いないけどアート作品のような難解さはなく、
むしろ中身が空っぽで、純粋に映像のポップさだけを楽しめる娯楽作品になっています。
「まるで音楽を聴くような感覚で楽しめる映画だ」というフレコミだったので、
90分間ミュージックビデオを観るような感じなのかと懸念しましたが、
それほど音楽を重視しているわけでもなく、世界観はナンセンスだけど、
ストージー自体は意外とベタなコメディで、コントのような作品です。
真っ当な映画だと思って観ると、ちょっと期待ハズレかもしれませんが、
観客の中にそんなことを期待している人はいないでしょう。

本作でメガホンを取った石橋義正監督は『オー!マイキー』を作った人です。
『オー!マイキー』は登場人物が全てマネキンのシュールなコント番組ですが、
深夜に放送されているにもかかわらず、知らない人はいないくらいに有名な番組ですよね。
ボクもその独特な世界観に一時嵌っていたのですが、
如何せん再放送が多すぎるので少し飽きちゃって最近は見てません。
石橋監督の作品で言えば、『オー!マイキー』の前身を含むナンセンスなコント番組
『バミリオン・プレジャー・ナイト』が大好きでした。
もう10年以上も前の番組になると思いますが、ナンセンスで意味がわからないものの、
過激で官能的な石橋監督の作る世界観は最高だったと思います。
(イマイチなコントもいっぱいあった気がするけど…。)
で、久々に観ることいなった石橋監督の最新作である本作ですが、
『バミリオン・プレジャー・ナイト』のナンセンスさに、
『オー!マイキー』のキャッチーさを合わせたような印象で、
ポップでシュール、そしてちょっとお洒落な、絶妙なバランスの作品に仕上がっています。
石橋監督の作品のファンなら間違いなく楽しめるでしょうし、
それ以外の人も意外と受け入れやすい作品だったと思います。
ボクとしては、もうちょっとブラックでナスティな内容でもよかったと思いましたが、
世界に通用する一定のポピュラリティを維持するにはこの程度で正解なのかも。

といっても、ボクは石橋監督の最新作だから観に行ったわけではないです。
ボクの目当ては五指に入るほど好きな俳優、山田孝之の主演作だからです。
しかも一人三役ですから、これは期待せずにはいられません。
ボクはコメディ映画『鴨川ホルモー』以来の彼のファンであるため、
彼には喜劇役者としての活躍を求めてしまうのですが、
最近の彼の出演映画は『闇金ウシジマくん』『悪の教典』『その夜の侍』など、
バイオレンスやシリアスなものが多く、少々不満でした。
(テレビでは低予算コメディ『勇者ヨシヒコ』シリーズがありますが…。)
そんな中、本作は完全なコメディ映画で、喜劇役者としての彼を本領を、
久々に堪能できそうな気がしていました。
しかも一人三役だから、3パターンの喜劇的な演技を一気に観れるわけです。
とはいえ、彼の演じる三役のうちのひとり、片目の浪人・多聞は、
けっこうシリアスでバイオレンスなカッコいい系の役だったし、
もうひとり、オブレネリ・ブレネリギャーも約半分の幼少期は子役が演じているし、
最後のひとり、青春相談員・熊谷ベッソンは、かなり待ち望んだイメージに近いものの、
苦手そうなダンスまでさせられていて、ちょっと痛々しいほどに無理をしている感じで、
実際は彼の喜劇的な演技を堪能したとまでは思えませんでしたが、
その役の振り幅は、役者としては流石だなと感心させられました。

オブレネリのエピソードは、偉大なミロクローゼという女性に、
主人公オブレネリが30年越しの恋をするという物語で、
特に前半は、かなりメルヘンチックな映像で描かれています。
物語自体はそれほど特筆すべきものではなく、特に面白いわけでもないですが、
ナレーションのシュールなセリフ回しで笑いを誘うタイプのコントです。
主人公の名前「オブレネリ・ブレネリギャー」なんて、
思わず声に出してみたくなるヘンテコな名前ですが、
それをナレーションで連呼されると、徐々に笑いのツボになってきます。
他にも彼のペットの猫「ベランドラ・ゴヌゴンゾーラ」とか、
偉大なミロクローゼの恋人「サラマンダラ・クオレンツォリッヒ」など、
語感の気持ちいい名前の登場人物が次々と登場します。
ヤクルトジョアやネクターの小ネタも笑えましたが、それらはほぼ前半の話で、
オブレネリはまだ幼少期で山田孝之が演じているわけではありません。
その30年後となる後半から彼が演じますが、その後半はイマイチだったかも。
笑えるところと言えば彼の顔芸くらいでしょうか…。
それも一部特殊メイクを使っているところが勿体なく思いました。

青春相談員・熊谷ベッソンのエピソードは、彼が恋に不器用な若者の電話相談を受け、
毒舌で無茶苦茶なアドバイスを(再現)して、オチで突如ダンスするという繰り返しで、
ストーリーも全くない、テンポで押し切るリズムネタ的なコントです。
リズミカルに展開し息つく暇もないし、セクシーな女の子も多数登場するので、
いつまでも観てられそうな楽しいシーンの連続ではありますが、
前述のように山田孝之のダンスはちょっと残念で…。
彼のダンスよりも、バックダンサーの女の子にばかり目が行ってしまいます。

一転、片目の浪人・多聞のエピソードは、ストーリーもかなりしっかりしてます。
花屋の看板娘ユリに恋をした多聞は、彼女に告白し付き合うことになりますが、
幸せと不幸が同時に訪れる運命のせいか、彼女は盗賊に攫われて、
「天柘楼」という遊郭に売られてしまいます。
彼女に会うために天柘楼に行った多聞ですが、人気遊女・蜘蛛伊である彼女を指名するには
所持金が全く足りず、天柘楼の賭場のチンチロリンで稼ぐことに。
しかし女壺振りがイカサマをしていることに気付いてしまい、
賭場の用心棒たち相手に天柘楼で大立ち回りを繰り広げることになります。
なんだか時代劇みたいな話ですが、序盤の舞台は現代で、
年月が経つごとに時代が退行しているようなシュールな演出になっています。
やっぱり日本のイメージといえばサムライとゲイシャですから、
このエピソードは海外の映画祭でのウケはよかったんじゃないかな?
天柘楼の遊女七人衆のひとり女萎魅を演じるのは、山田孝之の実姉だそうです。
役が役だけに何だか気まずそうですが、絡みはなかったのでなんてことないかな?
クライマックスである天柘楼での大立ち回りですが、
10分ほどのシーンをワンカットの長回しで撮られています。
実際には長回しではなく、数十秒のシーンをスローモーションで長くしているのですが、
完璧に計算され尽くした殺陣が素晴らしい構図で撮られており感心しました。
途中で多聞が歌舞伎のような見得を切るシーンなんて最高です。
でもやっぱりスローが長すぎ、途中から冗長感が漂います。
このエピソードも特に終盤シリアスになって、笑いが少ないですが、
数少ないコメディシーンでも多聞はツッコミになっている感じでした。
実際にボケている彫り師・蛾禅との掛け合いは面白かったです。

本作は完全なオムニバスではなく、3つのエピソードは地続きの世界が舞台のようで、
それぞれちょっとだけリンクしています。
しかしかなり微々たるリンクなので、もうちょっと深くリンクさせたり、
ザッピングさせたりした方が、1本の作品としての一貫性が出せたような気がします。
熊谷ベッソンの車が、多聞を轢いたりしたのはよかったけど、
オブレネリのエピソードは独立しすぎで、ちょっと浮いてる気がします。
一応エピソード内に熊谷ベッソンの看板広告があったり、
逃げた飼い猫ゴヌゴンゾーラが多聞の恋人ユリの花屋にいたりと、
若干リンクはしているものの、せめて主人公同士の邂逅は必要でしょう。
オブレネリが熊谷ベッソンに恋愛相談なんてしたら面白いことになりそうだったけど…。
まぁそんなに思い通りの展開にならないところが、ナンセンス・コメディらしいですが。
あと、スタッフロールまでも凝っていて、なかなかスタイリッシュでした。
とてもオススメはできませんが、嵌る人にはガッツリ嵌る作品だと思います。

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