ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

誰も守ってくれない

今月30日、『20世紀少年 第2章』に先立ち、同第1章が地上波で放映されますが、
劇場公開から半年も経たないうちに地上波で放送するとは…。
しかも劇場公開版に未公開シーンや撮りおろしシーンを加えた完全版…。
2部作の『デスノート』の時も同じようなことをしましたが、
宣伝のためとはいえ日本テレビは、映画館に足を運ぶ映画ファンを愚弄しています。
今月31日公開の第2章だって、秋公開の第3章公開前には地上波でやるだろうし、
宣伝どころか、ボクなんかは逆に映画館に行くモチベーションが下がります。
(まぁそれでも結局行ってしまうのが映画ファンの軽視される一因ですが…)

洋画は権利関係でなかなか地上波で放映されませんが、
テレビ局が関わっていることが多い邦画は比較的早いですね。
きっと今春公開のテレ朝製作『鑑識・米沢守の事件簿』の前作『相棒 -劇場版-』も、
TBS製作『ジェネラル・ルージュの凱旋』の前作『チーム・バチスタの栄光』も、
まだ劇場公開から間もないけどテレビ放映されることになるんだと思います。
釈然としない思いもあるけど、宣伝としては効果的なことは間違いないです。
そんな中、今日は劇場公開のためにわざわざ前作的ドラマを作ってテレビ放映した
フジテレビ製作の映画の感想です。

誰も守ってくれない

2009年1月24日公開。
『踊る大走査線』シリーズの製作スタッフによるヒューマンドラマ。
セミ・ドキュメンタリー撮影(ハンディカメラ)で撮られた社会派映画。
平凡な家庭の長男が、殺人事件の容疑者として逮捕される。犯人の妹・沙織(志田未来)の保護を命じられた刑事・勝浦(佐藤浩市)は、マスコミから逃げるために居場所を転々とするが、ネット上の書き込みが、しだいに2人を追い詰めていく。

未成年者が凶悪犯罪を起こした場合、その被疑者の家族が世間から非難され、
自殺に追い込まれるケースが度々あり、それを防ぐために警察が家族を保護する、
そうゆうシステムがあるらしいです。
被害者家族の保護はよく聞くけど、被疑者の家族の保護はあまり考えませんでした。
ボクは他人が他人を殺す事件なんてのは所詮他人事だと思っているので興味ないし、
犯人の家族まで責めるという感性は持ち合わせていませんが、
たしかに報道なんかを見ていると、そうゆうことが好きな人って多いんでしょうね。
今作は、そんな世間の好奇の目から、殺人事件の被疑者の妹を遠ざけながら、
妹の事情聴取を命じられた刑事(なぜかマル暴)と、被疑者の妹との逃避行の話です。

前半は加熱するマスコミ報道の異様さを描いています。
テレビのレポーターや記者が被疑者の自宅はもちろんのこと、
被疑者の親戚の家や保護している刑事の自宅にまで押しかけ、
被疑者の家族の乗った警察車両を執拗に追跡する異常な報道合戦。
明らかに行き過ぎた行為だけど、彼らは社会正義だと思ってるんだから性質が悪い。
またそれを面白がる視聴者が多いのも事実でしょう。
よく報道番組で被疑者の家族構成や生い立ちなんかを紹介することがあるけど、
あんなものに誰が興味あるんだと思ってしまいますが、需要があるからやるんですね。
まぁ映画としてかなりデフォルメされたマスコミ像だとは思うけど、
ボクも閑静な住宅街にマスコミが殺到してる光景を見たことがあるし、
ああいうやつらは常々気持ち悪いなと思ってました。

後半はマスコミよりもっと気持ち悪いネット社会の闇がテーマ。
匿名掲示板の住人、ぶっちゃけていえば"2ちゃんねらー"への批判です。
厳密には2ちゃんねるは出てこないので仮想2ちゃんねらーってとこですか。
彼らの一部はマスコミのように視聴率や功名心で行動しているわけではなく、
ただ穿った社会正義と好奇心で刑事と被疑者の妹をつけまわします。
そこに道徳なんてものが入り込む余地はないのでマスコミ以上に性質が悪い。
だけど、現実に未成年犯罪者の顔写真なんかをネットにアップして得意気になってる
キモい奴はいることは知っていますが、この映画の仮想2ちゃんねらーは
デフォルメが過剰すぎて、リアリティがありません。
ニコ動のようなサイトで妹の監禁シーンを生配信していた奴らなんて、
その行動もありえないけど、その服装はもっとありえない感じ。
いまどき、あんなステレオタイプのオタクいませんよ。
所詮はフジテレビもマスコミです。
マスコミよりもっと卑劣なものとしてネット社会をでっち上げることで、
体面を守ろうとしたんじゃないかな?
テレビ局は基本的にネット社会を敵だと思っている節が強く、
テレビ局製作のサスペンス映画にはネット犯罪者は欠かせない存在です。

加熱するネット社会やマスコミを批判するだけの映画なら、
「あぁ被疑者の家族が可哀想」で終わる話なのですが、
今作には、過去に自分の息子を警察の捜査ミスで失ってしまった夫婦が登場します。
彼らは被害者側の心情で刑事や被疑者の妹を非難します。
マスコミや仮想2ちゃんねらーのように好奇心からの非難ではないので、
その言葉は重く、観客もいろいろ考えさせられることになると思います。
その結果、物語に深みが出て、なかなか面白い映画だったと思えました。

去年『おくりびと』がモントリオール世界映画祭でグランプリをとった時に
同映画祭でワールド・コンペティション部門で最優秀脚本賞を受賞したのが今作です。
ボクとしては『おくりびと』よりも面白かったかもしれないと感じました。
そんな面白い映画ですが、ひとつだけ大きな問題点が…。
その問題点はこの映画と同日でテレビ放映されたドラマ『誰も守れない』の存在です。

はじめに"わざわざ前作的ドラマを作ってテレビ放映した"と書きましたが、
ドラマ『誰も守れない』は宣伝の域を越えた完全な前作です。
これを見ると見ないとでは映画の面白さが半減します。
個人的にはテレビドラマを見てない人は映画を見ないほうがマシだと思うくらいです。
この映画はそれだけでも作品として成り立ってはいるのですが、
登場人物の人物像など、ヒューマンドラマとしては致命的に端折られています。
主人公・勝浦刑事(佐藤浩市)の症状、娘へのプレゼント、警察内での立場など、
かなり重要なはずのポイントはドラマ版でしか掘り下げられていません。
精神科医の尾上(木村佳乃)との関係だって、映画だけなら勝浦の愛人にしか見えず、
「妻子がいるのに酷い男だな」と思われても仕方ないです。
特に勝浦の相棒・三島(松田龍平)の面白さはまったく伝わらないんじゃないかな?
勝浦との何気ない会話の意味はもちろん、被疑者の妹の彼氏になぜ僻むのかなど、
面白い部分はすべてドラマの伏線があってこそ成立するものばかりです。
この映画のコメディ部分を一手に引き受ける役だけに、
そのあたりがわからないとただの暗い映画になってしまいます。
前作をただテレビ放映するだけより、意欲的な宣伝方法だとは思いますが、
単発ドラマだけに、レンタル屋ですぐ手に入るようなものでもなく、
これから映画を見ようとする人に対して不親切なやり方だと感じました。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/82-d63b3c80
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad