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カラスの親指

ワーナーブラザーズの今年の日本でのローカル・プロダクションは、
『るろうに剣心』や『アウトレイジ ビヨンド』といったヒット作があり、
かなり絶好調だったように思います。
ハリウッド・メジャーの中では最もローカル・プロダクションに意欲的でしたが、
2006年の参入以来、今まで作れども作れどもヒット作に恵まれず、
ここまでになるには大変な根気が必要だったと思われます。
それでも日本映画を作り続けてくれたことには感謝したいし、
その努力が結実したことはとても喜ばしいことだと思います。
それと言うのも、既存の日本映画の大手配給会社がダラしなく、
テレビドラマかアニメの劇場版頼みの情けない会社ばかりなので、
今後の日本映画の行く末はローカル・プロダクションにかかっています。
でもソニーもパラマウントもローカル・プロダクションに挑戦して玉砕してるし、
もうワーナーと20世紀フォックスだけが頼みの綱です。

ということで、今日は20世紀フォックスのローカル・プロダクションの感想です。

カラスの親指

2012年11月23日公開。
直木賞作家・道尾秀介の代表作を阿部寛主演で映画化。

ベテラン詐欺師のタケ(阿部寛)と、どこかマヌケな相棒のテツ(村上ショージ)。ある日、ひょんなことからまひろ(能年玲奈)という少女と知り合ったのをきっかけに、二人は彼女と姉のやひろ(石原さとみ)、その恋人の貫太郎(小柳友)と共同生活を送るハメになってしまう。全員が不幸な生い立ちを背負っていたこともあり、彼らは次第に奇妙な絆を育んでいく。そんな中、タケが過去に自分が引き起こした事件が深く関わった大勝負に挑むことになる。テツやまひろたちも一致団結し、一大詐欺作戦が動き出すが……。(シネマトゥデイより)



『はやぶさ/HAYABUSA』以来、20世紀フォックスの久々のローカル・プロダクションなので、
本作には頑張ってヒットしてほしいと思っていたのですが、現状はどうも厳しそうです。
週末興行ランキングで初登場8位とかなり残念な結果で、動員数もたったの4万5千人強…。
大人気の阿部寛主演で、内容的には悪くないのに、なぜそんな結果になったのか、
いろいろ理由はあると思いますが、ひとつは上映時間の尋常ではない長さでしょうね。
本作は上映時間がなんと2時間40分(160分)もあります。
ボクは常々適正な映画の上映時間は1時間40分(100分)だと考えているのですが、
2時間40分も窮屈な椅子に座り続けることが、どれだけシンドイか考えないんですかね?
まぁ実際は楽しく観られるので、体感時間はそれほどでもないのですが、
まずそんな長い映画だと、観に行こうという気持ちが挫かれます。
年配の人とか子ども連れはトイレも心配になるかもしれませんね。
ボクも公開から1週間して漸く観に行きましたが、公開直後に観に行かなかったのは、
92分の『ドリームハウス』とか、111分の『人生の特等席』とか、
手頃な時間で観れる作品が同日に公開されていたため、そちらを優先したのです。
ボクは本作を昨日(11月30日)に観たのですが、本当はもう少し時間のある時にしようと、
まだ鑑賞を先延ばしにするつもりでした。
でも急遽昨日観ることになったのは、今日から急激に上映回数が減るため、
更に時間の都合を合わせるのが難しくなりそうだと思ったからです。
なぜ上映回数が急激に減ったのか、その理由も上映時間が長すぎるからに他ならず、
シネコンにとってスクリーンの使用時間が長い本作は、集客面で不利だからでしょう。
それだけ客が入るならまだしも、毎回ガラガラですからね。
全国的に半減したんじゃないかと思うほど、今日から上映回数が減りました。

本作は「衝撃のラストには衝撃の裏がある。」というキャッチコピーで、
予告編では「この映画の<秘密>は決して口外しないでください。」と注意書きが流され、
TVスポットでは「ラストの大どんでん返しにダマされ度96%!!」とナレーションが入り、
本作の最後にどんでん返しがあることを事前にアナウンスしています。
これも常々思っていることなんですが、どんでん返しがある作品はそれを伏せるべきです。
はじめからビックリ箱だとわかっている箱は、開けてもビックリできません。
ボクは基本的に鈍感なので、大概のミスリードには引っかかるいい客ですが、
ミスリードされるとわかっていたら流石に引っかかりません。
本作も何も知らずに観たら、きっと衝撃的なラストだったと思いますが、
知っていたのでどんでん返しの伏線にもほとんど気付いてしまいました。
予告編だけでも阿部寛演じる主人公の詐欺師が最後に騙されることが予測できますが、
そんな予測できる展開を確認するために160分の映画を観ようと思いますか?
ボクは本作に、たまに一緒に映画を観に行く友人を誘ったのですが、
「主人公が騙されて終わる物語は不愉快そうだから観たくない」と断られました。
ボクはバッドエンドになれているのでそんなことは思いもしませんでしたが、
なるほど、そう考える人も多そうだなと思う意見でした。
まぁ本作の場合は、主人公が最後に騙されるのは間違いないけど、
ハートウォーミングなハッピーエンドなんですけどね。

ボクも観る前はバッドエンドだと思い込んでいたので、
ある意味、予想外のどんでん返しだったとも言えますが、
どんでん返しがあると意識して観はじめると、開始数分のかなり序盤で違和感を覚え、
どんでん返しの仕掛けに気付いてしまうと思います。
結局、上映前の予想は全然当たってませんでしたが、どんどん伏線に気付いて、
ネタばらしの時には9割方予想通りの展開だったと感じました。
いつも騙されまくっているボクとしては、伏線をどんどん拾えるというのは、
ある意味痛快ではあるのですが、伏線拾うことに気が取られて、
肝心のストーリーにあまり気が回りません。
どうせ最後にどんでん返しで覆ると思って観ているので、
そこまでのストーリー自体に興味を持ちにくい心境になっていたのかもしれません。
やっぱりどんでん返しなんてのは、事前に公表するものではないです。
ネタバレを口外されたくないなら、上映後にその旨伝えればいいと思います。
まぁボクは禁止されてもネタバレさせちゃいますけどね。
ということで、以下ネタバレ注意です。

詐欺師のタケとテツは、ひょんなことからスリの女の子マヒロと知り合いになり、
彼女と姉のヤヒロ、姉の彼氏の貫太郎と同居することになります。
タケと姉妹はある闇金業者に対して因縁があり、5人で協力して闇金業者を倒そうと、
奴らから金を騙し取る作戦を立てて、決行するという話です。
ボクは鑑賞前は、主人公タケは姉妹から最終的に騙されて、
儲けた金を全部持っていかれるというような話だろうと予想していたのですが、
開始早々に、その予想が間違いであることに気付きました。
姉妹が登場する前に、露骨に怪しい奴を見つけてしまったのです。
それがタケのヌケた相棒であるテツです。
なにが怪しいって、それはテツのフルネーム「イルカワテツミ」ですよ。
そんな氏名はいくらなんでも珍しすぎます。
特に名字ですが、漢字で書くと「入川」ですが、その場合は「イリカワ」と読むのが普通。
あまりに意味ありげなために、ミスリードじゃないかと思ったくらいです。
しかもその珍しい名前をわざわざ強調する展開で、かなり序盤で主人公のタケがテツに、
「珍しい名前だけど、アナグラムなのか?」と訊きます。
テツは否定しますが、そのタケの発言がそのものズバリ本作の真相の確信でした。
ボクもすぐにアナグラムの解読に意識が行きましたが、
その後、マヒロが登場して「河合マヒロ」と名乗った時点で、
テツの本名が「河合ミツテル」か「河合テルミツ」だろうことを予想するのは容易でした。
そうなれば、テツと河合姉妹の関係性なんてわかったも同然で、
その後のテツの行動の意味もだいたい想像できてしまうというものです。

ある意味フェアだと思うけど、もうちょっと伏線を隠すことは出来なかったものかと…。
雑誌の取り込み詐欺にしても、劇団のポスターにしても、
もっとさり気なく盛り込めばいいのに、これ見よがしに提示してきて、
これは何かあるぞと言わんばかりです。
それに何と言っても、テツの意味ありげなキャスティングですよね。
俳優経験もほとんどないし、タレントとしてもダメキャラで売っている村上ショージを、
わざわざ起用するからには何かあるのだろうと思わせてしまう配役です。
本作での彼の演技は好評のようですが、ボクはやっぱり彼は演技が下手だと思いました。
明石家さんまの舞台や新喜劇とかもしているので、コントは問題ないのですが、
普通の現代劇となるとケレン味が強すぎます。
そもそも彼に標準語で演技させることに無理があり、彼もかなり苦労したみたいですが、
それでも関西弁を封じるのにはそれなりに理由があるんだろうと推察できます。
河合姉妹との関係性を考えれば、なるほど関西弁ではダメなはずです。
それなら端から標準語の俳優を使えばいいと思いますが、
劇中でテツはイルカワテツミを演じているという展開なので、
多少ケレン味があった方がいいのですが、自然なケレン味を出すために、
演技の素人を使うことで、わざと演技っぽさを出しているのでしょう。
棒読みなセリフが朴念仁のようで、ヌケた相棒というイメージにも合っているしね。
奇抜なキャスティングで面白いとは思いますが、わかり易すぎます。

それでも流石に全部真相に気付けたわけではなく、
競馬場や質屋の詐欺の真相や、放火事件や猫殺しの真相まではわかりませんでした。
このあたりはヒントが少なかったというか、実現するには少々リスクが高い仕掛けで、
ちょっとご都合主義的な展開だったのも、読めなかった原因かも。
でもやっぱりそれらのタネ明かしを聞いた時には、けっこう感心させられたし、
多少不親切でも、タネは見破られないようにするに越したことはないと思います。

親切すぎて真相丸わかりの本作ですが、それでも面白いと思えたのは、
タケの贖罪と再起の物語として、なかなかドラマチックだったからでしょうか。
よく考えたら、けっこうシリアスな内容だったはずなのに、
コメディシーンも多く、軽快な語り口で楽しく観れたのもよかったし、
粗方の真相の予想は出来たものの、テツが病気ということも予想できてなかったので、
死に別れで湿っぽく終わるのではとも懸念しただけに、
ちゃんとハッピーエンドで終わってくれたのも嬉しかったです。

20世紀フォックスは、未だ日本でのローカル・プロダクションでヒット作はありませんが、
これに懲りずにまた日本映画も製作・配給してほしいと思います。

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