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任侠ヘルパー

今、日曜洋画劇場で『レッドクリフ』を放送していますね。
このご時世にわざわざ中国映画を放送するのはどうかと思うけど、それは置いといて、
なんでも「レッドクリフ 特別版~RED CLIFF INTERNATIONAL VER.」という、
2部構成だった作品を1本にまとめた欧米配給用バージョンのようです。
『レッドクリフ』といえば、日曜洋画劇場が、公開から半年という異例の早さで、
地上派初放送したことが当時話題になりましたね。
その日曜洋画劇場では、先週『三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』が放送され、
これも公開からまだ1年ほどしか経っていないはずなので驚きました。
たしか洋画は2年間は地上波で放送しないルールになっていたと記憶しているのですが、
そのルールが適用されるのは、洋画の中でもハリウッド映画だけなのかな?
『三銃士~』はヨーロッパ映画だから関係ないのかも?
それにしても、テレビ局製作の邦画並のスピード放送は珍しいと思います。

ということで、今日はテレビ局製作の映画の感想です。
本作は来年の今頃には土曜プレミアムで放送されていることでしょう。

任侠ヘルパー

2012年11月17日公開。
草なぎ剛主演のテレビドラマの劇場版。

暴力団の隼会から脱退し、堅気となってコンビニ店員として働く翼彦一(草なぎ剛)。強盗に入った老人に店の金を渡したことから刑務所送りになった彼は、獄中でその老人・蔦井雄三(堺正章)と再会。元極道であった彼は彦一に、コンビニの件の礼として出所後に自分と兄弟分だった極鵬会の組長・朝比奈(宇崎竜童)を頼れるように手はずを整えてくれる。出所したものの、身を寄せる場所のない彦一は、朝比奈を訪ねることに。だが、彼から破産した老人たちを劣悪な介護施設に放り込み、年金や生活保護費を絞り取るシノギを強いられる。(シネマトゥデイより)



本作は2009年にテレビ放送されたドラマ『任侠ヘルパー』の劇場版ですが、
ボクはそのテレビドラマは見ていません。
劇場で流れる予告編が、なんだか面白そうだったので観に行こうかと考えましたが、
やっぱりドラマを見ていないのに内容についていけるのかは心配で…。
それに劇場版ではあんなに面白そうな予告編なのに、
テレビドラマの視聴者用に作ったと思われるテレビスポットは全然面白そうじゃなく、
公開の直前まで本当に観に行くべきか、かなり迷いました。
ただ本作と同じようにテレビドラマを見ずに劇場版に挑んだ『闇金ウシジマくん』は、
テレビドラマ版を引きずらない内容で、なかなか面白かったし、
ドラマの視聴率が軒並み悪い昨今は、その視聴者を集客するだけでは儲からないからか、
劇場版だけで成立する構成になっている作品も多いですよね。
そんなタイプの劇場版の草分け的存在が『容疑者Xの献身』だと思うのですが、
本作はその作品の監督による監督作なので、たぶん大丈夫だろうと考えて、
やっぱり観に行くことにしました。

…で、いざ観てみると、期待通りにテレビドラマをあまり引きずらない構成で、
単独の映画として十分成立する作品になっていました。
ドラマのヒロイン役(?)だった黒木メイサが唐突に登場したりしましたが、
あくまで友情出演としてのチョイ役だったので許容範囲です。
(出来れば全く出演しないに越したことはありませんが…。)
ドラマから引き継いだもので、ちょっと気になったのは、タイトルくらいですかね。
草なぎ剛演じる主人公・翼彦一は、ドラマでは介護ヘルパーだったのでしょうが、
本作では老人ホームの所長なので、正確にタイトルを付けるなら『任侠所長』でしょう。
まぁそんなことは瑣末なことなので、どうでもいいことで、
本作は劇場版でありながら、通常の日本映画に匹敵する、
…いや、通常の日本映画を凌駕する、面白い作品に仕上がっていると思いました。
これはドラマを見てない人にもオススメしたいし、
劇場版として宣伝されることで、ハードルが上がっているのは勿体ないと思います。

でもボクが観た時は、客席のほとんどが年配(特に男性客が多い)で、
ドラマなんてあまり観てなさそうな客層だったように思います。
客の多くはドラマファンではなく、任侠映画好きのオッサンか、
老人福祉問題に関心がある(直面する)介護世代って感じでした。
三十路のボクはそのどれでもないですが、老人福祉問題には多少関心があるかな?
本作は特別養護老人ホームを題材にした物語です。
ボクの祖父母は全員他界してしまいましたが、うち数名が認知症を患い、
施設に預けることになって、両親がそれで苦労したのも知っているし、
そんな祖父母の姿にボク自身も強いショックを受けました。
認知症は遺伝しやすいらしい、両親がそうならないとも限らず、
十数年後にはボクも介護世代になっているかもしれず、心配です。
というか、孫であるボク自身も発症の確率はかなり高く、他人事ではありません。
なので、老人福祉問題に関心がある半面、目を背けたい事柄でもあり、
後期高齢者たちが無残に扱われる様を、かなりシビアに描いている本作を観て、
中盤まではかなり鬱屈した気持ちに襲われました。
でも終盤は殴り込みなど、かなり任侠映画テイストの娯楽的なノリになったので、
かなり気が楽になれたというか、別に何か老人福祉問題が解決したわけでもないけど、
その振れ幅がカタルシスとなって、けっこう痛快な気分で劇場を出ることができ、
結果的にかなり面白い映画だったという印象が残りました。

指定暴力団から足を洗い、堅気としてコンビニでバイトをする元極道の翼彦一ですが、
ある日、コンビニ強盗の老人にレジの金を恵んだことから刑務所送りになります。
コンビニのマニュアルでは、安全のため強盗には逆らわないって聞いたことがあるけど…。
彦一も警察から逃げようなんてしなければ、刑務所行きにはならなかったかもね。
刑務所に入った彦一は、塀の中でそのコンビニ強盗・蔦井と再会します。
元極道の蔦井から出所後に世話してくれる暴力団「極鵬会」を紹介された彦一は、
出所後すぐにそのツテを頼って極鵬会に行き、そこで働くことになります。
テレビドラマを見ていないので、なぜ彦一がコンビニで働いているのかわかりませんが、
こんなにすぐに極道に戻るなんて、あまり強い意志で堅気になったわけではないのかな?
そもそも彦一は「弱きを助け強気を挫く、本物の極道になりたかった」と言っているけど、
そんなに正義感がある任侠の男というわけでもなさそうです。
コンビニ強盗の老人を助けたことからも、老人には優しいのかと思いきや、そうでもなく、
極鵬会から紹介された老人相手の貧困ビジネスの仕事をあっさり引き受け、
老人を騙しまくってボロ儲けする、任侠の風上にも置けない卑劣なチンピラです。
彼に全く共感は覚えませんが、予想と全然違う人物像で驚いたし、
これほど仁義を感じない任侠映画の主人公も珍しく、興味深い設定だと思いました。

その貧困ビジネスのひとつが、特別養護老人ホーム「うみねこの家」です。
その実態は老人相手の闇金で破産させた認知症の老人を入所させ、
彼らの生活保護費や年金を不正に搾取するシステムの極鵬会の収入源です。
入所させた老人を悪辣な環境の狭い部屋に監禁し、死なない程度に介護します。
高齢者虐待も甚だしい違法な老人看護施設ですが、これは極端すぎる例とはいえ、
認知症老人や知的障害者に対してそういう待遇をしている施設は実際にあり、
時折、そんなクソ施設が摘発されたりするのをニュースで見ますよね。
でも本作が興味深いのは、そんな違法な施設だけでなく、
真っ当な特別養護老人ホームの認知症老人に対する扱いの酷さも描いているところです。

環境福祉都市宣言を掲げ当選した八代代議士は、
コネで知人・葉子の認知症の母親を、立派な設備の特別養護老人ホームに入居させます。
しかしその施設は、彼女が暴れるという理由で、安定剤を過剰に投与し、
その結果、彼女の認知症は急激に進行してしまいます。
本当にそんな対応をするところがあるのかはわかりませんが、
そんな施設に入ると、認知症が悪化するということはよくあることで、
ボクの認知症だった祖父母も、施設に入った途端に子供の顔も忘れてたようでした。
(孫であるボクのことは入る以前から忘れちゃったみたいだけど…。)
彼女は入所以前も訪問介護ヘルパーから虐待を受けていて、悲惨な状況でした。
その介護施設にしても訪問ヘルパーにしても、暴力団絡みの「うみねこの家」と違って、
一応真っ当な業者なのに、認知症老人が人間扱いされていないことでは同じです。

その施設に不信感を覚えた葉子は、無理やり母親を施設から連れ戻し、
知人である彦一の「うみねこの家」に入所させます。
葉子の幼い子どもから泣きつかれた彦一は、自分の仕事に疑問を感じるようになり、
「うみねこの家」をマトモな介護施設に変えようと思い立ちます。
設備も人手も不足しているので、マトモな介護施設になんてなりようがありませんが、
彼は認知症の入居者にも家事など仕事を与え、皆で手分けして運営します。
すると寝たきりだった入居者たちは、たちまち元気になり、
活気のある楽しい介護施設に変わるのです。
立派な設備があり何でもしてもらえるが、認知症老人を人間扱いしないマトモな施設より、
仕事をさせられるが人間として扱うマトモではない「うみねこの家」の方が、
よっぽど老人たちが幸せに暮らせるという、なんとも皮肉な展開ですね。

その後、葉子に立派な施設を紹介したのに面子を潰された八代代議士の根回しで、
「うみねこの家」に警察の立ち入り調査が入り、貧困ビジネスを疑われます。
まぁ運営は入居者の生活保護費や年金の不当な徴収で賄われているのは事実なので、
違法な施設であることには間違いありません。
警察に目を付けられたのは極鵬会にとってもマズイことで、
組は「うみねこの家」を潰しにかかり、彦一は組と争うことになります。
彦一は極鵬会の大人数の構成員相手に単身殴り込みをかけるのですが、
そんなバトルシーンもなかなか迫力があったと思います。
なぜか極鵬会の構成員もヤクザのわりにはチャカやドスは使わずに応戦するんですよね。
彦一は腕っ節は強いですが、それでも多勢に無勢で、かなり劣勢です。
それでも敵に立ち向かう姿は、序盤とは一転して立派な任侠でした。
こんな怖くてカッコいい草なぎ剛は初めて見たかもしれません。
普段のイメージからはかけ離れているけど、意外な当たり役ですよね。
これで終わりなんて勿体ないので、(映画で)シリーズ化してもいいと思います。
でも任侠に目覚める過程に感動したので、もし次回作があったとしても、
その時はまた最低なチンピラからスタートしてほしいです。

笑いあり、感動あり、アクションあり、風刺あり、更にロマンスもちょっとありの、
かなりよく出来た作品だと思うので、ドラマファン以外も観て損はないかと。

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