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悪の教典

今日感想を書く映画『悪の教典』には、プリクエル(前日譚)にあたる
『悪の教典 序章』というドラマが存在します。
それは原作小説のエピソードで本編に入り切らなかったものを映像化したものなので、
いわば本編と『~序章』を合わせて、原作の完全な映像化と言えると思います。
つまりは本編だけ見ても、原作からすれば未完成なもので、
その作品を100%堪能したとは言えないわけです。

でもこのドラマ『~序章』って、BeeTVで放送されたんですよね…。
ボクは映画のスペシャルドラマをテレビで放送したりすることに批判的ですが、
ましてやドコモの契約者しか見られない有料のBeeTVで放送するなんて酷過ぎると思います。
ドコモの契約者を増やすための策略だと思いますが、他のキャリアの観客に失礼です。
auのボクは見ることはできませんが、動画配信の収益だけでドラマが作れるとも思えず
きっと映画来場者が払った鑑賞料の一部も、そのドラマに使われるはずです。
自分には見ることができないBeeTVでプリクエルが放送されると知って、
完全に堪能できないなら、いっそ本編を観に行くのも止めようかとも思いました。
でも放送後すぐにDVD化されたため、簡単にレンタルで見ることができて、
再び本編を観に行く気になりましたが、こんなビジネスモデルは感心できません。
ドコモの一部スマホでしか見られないNOTTVの『踊る大捜査線』のスピンオフである
『係長青島俊作2』も同様ですが、ドコモって本当に映画ファンを軽視してます。
まぁauも似たようなことをしていた時期があるんですけど…。

ということで、今日は"ネット動画の劇場版"に成り下がった映画の感想です。

悪の教典

2012年11月10日公開。
貴志祐介のベストセラー小説を三池崇史監督が実写化したサスペンス。

ハスミンというニックネームで呼ばれ、生徒たちから圧倒的な人気と支持を集める高校教師・蓮実聖司(伊藤英明)。生徒だけでなく、ほかの教師や保護者も一目を置く模範的な教師だったが、その正体は他人への共感や良心を持っていない反社会性人格障害者であった。学校と自身に降り掛かったトラブルや障害を取り除くために、平然と殺人を犯しては校内での地位を強固なものにしていく蓮実。しかし、ささいなミスから自身の凶行が知られそうになってしまう。それを隠そうと悩んだ彼が導き出した答えは、クラスの生徒全員を殺すことだった。(シネマトゥデイより)



怒涛のペースで映画を撮り続けるも、『忍たま乱太郎』『一命』『逆転裁判』『愛と誠』と
4作続けて駄作だった三池崇史監督ですが、本作は久々に見応えのある作品でした。
けっこう駄作率が高い三池監督が、依然名匠扱いされているのは、
「数撃ちゃ当たる」って感じで、撮り続けているからかもしれませんね。
いや、バイオレンス映画に限れば、かなり高い打率を誇っているのに、
ファミリー向けコメディとか撮って、無駄に打率下げているとも言えます。
本作は東宝配給では珍しいR指定のバイオレンス映画なので、
三池監督も本領発揮しており、なかなか刺激的な作品に仕上がっています。
とはいえ本作の面白さは、狂った高校教師が教え子を皆殺しにしたり、
未成年が鮮血飛び散らして死んでいくという過激で不謹慎な内容と映像によるもので、
物語自体の出来がいいかといえば、かなり微妙なところ…。
それでも映像の過激さだけでここまで魅せられるんだからすごいと感心すると同時に、
やっぱり三池監督はバイオレンスでしか魅せられない映画監督だと再確認しました。

伊藤英明演じる蓮実聖司は生徒から絶大な人気を誇る高校教師。
しかしその本性は生まれながらのサイコパスです。
彼は自分の邪魔になりそうな者を躊躇なく殺し、隠蔽します。
ある日、担当クラスの女生徒・梨奈の親から「娘がイジメに遭っている」と批難され、
蓮実は彼女の家に放火して、その親を殺します。
家の周りの猫除け水の中身を灯油にすり替え、煙草の不始末で引火させるのを待つという、
かなり成功率の低そうな放火方法だと思いましたが、あっさり成功してしまいます。
その放火事件を学校裏サイトの掲示板で、反抗的な男子生徒・蓼沼の仕業だと書き込み、
後日、蓼沼を巧みに誘い出し、殺して行方不明にしてしまいます。
放火事件が蓮実の仕業だと感ずた同僚教師・釣井を、首吊り自殺に見せかけて殺害。
電車内で殺すというのも大胆すぎますが、頭を殴打して気絶させてから吊るすので、
どう考えても自殺には見えないと思うのですが、警察は気付かなかったみたいです。
しかしそんな釣井殺しを、隣のクラスの生徒・早水に見抜かれてしまいます。
当然殺しますが、早水は焼き鏝のようなもので拷問してから殺し、山に埋めます。
これでもう蓮実に疑いの目を向ける者はいなくなったはずでしたが、
肉体関係にあった女生徒・美弥が蓮実の持ち物から蓼沼のケータイを発見してしまい、
屋上からの投身自殺に見せかけて美弥を殺すのですが、
その現場を美弥の友達の女生徒に見られてしまい、その場で彼女も殺してしまいます。
このままでは自分の犯行が露見すると思った蓮実は、それを隠蔽するため、
クラスの生徒全員を惨殺してしまおうと考え、銃を手に生徒を次々と殺します。

どうやら蓮実は人を殺すことに躊躇がないだけで、別に快楽殺人鬼ではないようで、
自分が気分よく生活する上で、障壁となりそうな奴を殺すだけみたいです。
特に殺しの腕がいいわけでもなさそうで、完全犯罪者には程遠いズサンな殺しが多く、
結局そのせいで、鬱陶しいモンスターピアレントをひとり始末したころから、
隠蔽のために連鎖的に殺人を繰り返さなくてはいけなくなり、
最後はクラス全員抹殺する事態にまでなってしまいます。
彼は中一の時に担任を殺したりと、子どもの頃からそんな生活を送っていたようですが、
こんな危ういズサンな殺人を繰り返して、よくまぁ今まで捕まらなかったものだと…。
蓮実が滞在していたアメリカでは入国管理のブラックリストに載っているみたいなので、
アメリカは彼が危険人物であることは承知していたみたいですが…。
そのズサンな殺人の極め付けが本作のクライマックスである、クラス全員惨殺事件です。

文化祭準備の夜、蓮実は散弾銃を手に、ひとりで学校中の人間を殺して回りますが、
ドアや窓などロクに封鎖もされていない校舎では、蓮実の監視なんてザルも同然で、
その気になれば生徒は逃げたい放題だと思います。
蓮実にとっては口封じのために全員殺さないといけないのに…。
実際に男子生徒がひとり校舎から脱出して、警察を呼んでしまいます。
その生徒はまだ猟銃を持った男が蓮実だと気付いてなかったみたいなので、
すぐに警察にバレることはありませんでしたが、急だったとはいえ雑すぎる犯行です。
それにこの散弾銃はクレー射撃用のものなので、2発撃つと弾込めが必要で、
スキが多いので、大人数を相手にするのは向かないはず。
圧倒的に多勢である生徒から反撃を受けてもおかしくないはずです。
なのに本作の生徒は、弾込めの間も逃げるか立ち竦むだけで…。
まぁ銃を持った人を目の前にすると、冷静な判断は出来ないのかもしれませんが…。

蓮実はサイコパスなので何を考えているかはわかりませんが、
襲われる側の生徒たちにもイマイチ感情移入することができず、
サイコパスが迫ってくる恐怖みたいなものが感じられません。
本作のメイン生徒である蓼沼、早水、美弥はクライマックス突入前に死んでいるので、
この学校でのクラス全員惨殺事件で残っているのはモブキャラ同然の生徒がほとんど。
未成年という設定だから過激さはありますが、誰が殺されても何の感情も湧きません。
ひとりだけでも生徒側に主人公的なキャラを作っておけば、
ホラー映画としてもうちょっと緊張感のある展開になったと思います。
まぁ最後まで生き残る生徒2人はいるので、彼らが主人公だったのかもしれないけど、
集団カンニングを首謀するような殺されて当然のクソガキ・早水の親友たちなので、
はじめからあまり印象のよくない2人だったので、
彼らに生き残られても嬉しくも何ともないし、むしろあと2人になった時は、
蓮実にこのクラス全員惨殺事件を完遂してほしいと思ったくらいでした。

その生き残った2人のうち、女生徒・怜花の方は最後まで生き残ると思いました。
なにしろ彼女を演じるのはヴィネチア映画祭新人賞の二階堂ふみですから、
その他大勢の生徒役の駆け出し若手俳優とは扱いが違います。
『ヒミズ』で彼女と一緒にヴィネチア映画祭新人賞を受賞した渋谷将太も出演しており、
件の早水役を演じていましたが、彼が中盤で死んだのは意外でした。
しかしこの『ヒミズ』主演コンビを、そのまま本作にも登用してしまうなんて、
彼らの世界的な評価を利用し、本作も世界に売り込もうという意図が見え見えですね。
ただ日本でのネームバリューで言えば、生徒の中では前島役の林遣都が断トツかな?
前島は出番こそ少ないものの、ある男性教員と肉体関係だったというオイシイ役です。
やはり彼も終盤まで無事だったので、生き残るのではないかと思ったのですが、
ラスト3人のところでかなり壮絶な死を迎えてしまいました。
そういう意味では、駆け出し同然の浅香航大演じる夏越が、
二階堂ふみと共に生き残ったのは意外だったかも…。
山田孝之演じる教師・芝原でさえ、ロクな見せ場もなく殺されちゃったのにね。

でも実はもうひとり女生徒が生き残っていました。
それは蓮実に投身自殺に見せかけて屋上から落とされた美弥です。
彼女の生存が、続編への伏線のようなのですが、
彼女は蓮実や芝原と肉体関係のある淫行女子高生なので、あまり好感は持てず、
他の生き残り2人同様、あまり生き残ってくれても嬉しくない生徒です。
おそらく続編は彼女が蓮実の子を身ごもっていて…、って展開になるのかな?
あと、殺害シーンを描かれなかった問題児・蓼沼も、生きている可能性がある気がします。
ただこの手のR指定バイオレンスは、衝撃度で前作を上回ることは難しいので、
続編が本当に製作されるかどうかには懐疑的です。
というより、下手に製作しない方がいいと思えます。
しかしフジテレビの失態でドル箱シリーズ『海猿』を失ってしまった主演の伊藤英明や、
配給会社の東宝にしてみれば、本作を新しいドル箱シリーズにしたいところでしょうね。

蓮実を演じた伊藤英明って、『海猿』の主演など熱血漢で好感度が高い役が多いけど、
処世術に長けていて、どことなく腹黒そうな印象があって、本作の役柄に妙に嵌ってます。
そんな蓮実の本性を逸早く見抜いたのが、吹越満演じる同僚の教師・釣井でしたが、
彼も実は殺人に手を染めたことがあり、蓮実に自分と同じ臭いを嗅ぎ取っているのです。
釣井の事件については、本作の劇中で描かれることはなく、
プリクエルであるBeeTVの動画『悪の教典 序章』を見なければわかりません。

で、その『悪の教典 序章』ですが、せっかくレンタルしてまで見たものの、
見ても見なくても本作にはそれほど影響はない内容でした。
まぁ影響がある内容だった方が問題ですよね。
本作で釣井の部屋に血の付いたバールが置いてあるシーンがあり、本作だけ見た人は、
そのシーンの意味がわからないと思いますが、そのバールは彼が殺人に使った凶器です。
彼はそれで自分の妻を殺害し、床下の貯蔵庫に死体を隠しているようです。
でも本作では脇役のひとりである釣井の過去なんてどうでもいいことだし、
その裏設定を知ったからといって、本作がより面白くなるわけでもなく、
むしろ蓮実の他にもこの学校には殺人教師がいるなんて設定がわかったら、
殺人鬼としての蓮実のアイデンティティが少し損なわれかねません。
むしろ釣井の過去なんて知らない方がいいのかもしれません。

どうせプリクエルにするのなら、蓮実が前の学校で起こしたと思われる、
生徒4人の連続自殺事件について描けばいいと思うのですが、
『~序章』では更に前の、蓮実がアメリカの投資会社で働いていた時のことと、
それと並行して、本作の少し前に起こったある失踪事件が描かれます。
そこで蓮実の異常性の片鱗を見ることはできますが、
どちらかといえば釣井の異常さ、不気味さの方がメインで描かれている感じかな?
『~序章』の監督は三池監督ではないので、バイオレンスで過激な内容ではなく、
映像的にも地味なサイコスリラーですが、そちらの方が面白いと思う人もいるかも。
蓮実が端からサイコ丸出しの本作と違って、本性が徐々にわかってくる展開なので、
ストーリーだけなら『~序章』の方が見応えがあるかもしれません。

さて、久々に彼らしい作品を撮った三池監督ですが、
次回作『藁の楯』も殺人鬼もののアクション・サスペンスらしいので、
また鮮烈なバイオレンスが観れるかもしれません。

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