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のぼうの城

今日感想を書く映画で、今年劇場で鑑賞した邦画の50本目になると思います。
邦画を50本も観たような印象はありませんが、そのうち20本はアニメだったからかな?
邦画はもう100本以上観ているので、あまり印象にないのも仕方ないかも。
それになにより、今年公開されている邦画って、洋画よりも面白くない気が…。
まぁ実写の邦画は30本しか観てないので、カスばかり掴まされている可能性もあるけど、
けっこう注目作は押さえてるつもりなんですが…。
毎年年末にその年に公開された洋画・邦画・アニメ映画の各ベスト10を発表しますが、
今年は邦画でよかった作品を10本も選ぶことが出来なさそうで、
邦画だけベスト3くらいにしようかと思っています。
とはいえ、今年が終わるまでにまだ2カ月あり、邦画も10本程度は観る予定なので、
その出来如何によってはベスト5くらい組める見込みはあります。
…というか、どうせ観るならそうあってほしいと期待しています。

ということで、今日は今年観賞した50本目の邦画の感想です。
本来なら去年鑑賞していたはずの作品ですが…。

のぼうの城

2012年11月2日公開。
戦国末期の武将、成田長親の姿を描く時代劇。

天下統一を目指す豊臣秀吉は関東の雄・北条家に大軍を投じるも、その中には最後まで落ちなかった武州・忍城(おしじょう)と呼ばれる支城があった。その城には領民からでくのぼうをやゆした“のぼう様”と呼ばれ、誰も及ばぬ人気で人心を掌握する成田長親(野村萬斎)という城代がいた。秀吉は20,000の軍勢で攻撃を開始するが、将に求められる智も仁も勇もない、文字通りのでくのぼうのような男の長親は、その40分の1の軍勢で迎え討とうとする。(シネマトゥデイより)



本作は去年の9月17日に公開が予定されていましたが、
去年の3月11日の東日本大震災を受けて、早々に公開延期を決めてしまいました。
本作は天正10年の備中高松城の戦いで豊臣秀吉が水攻めを使うシーンで始まりますが、
それらの水攻めシーンが、大震災の津波被害を想起させるということで、
被災者感情に配慮して公開延期されたわけです。
しかし、公開が近い作品ならともかく、大震災から半年も先に公開予定だった作品ですよ。
大震災の翌日封切られた『忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段』にも、
水攻めのシーンがありましたが、公開中止にも公開延期にもならなかったし、
誰からも批難されていなかったので、半年も公開が先の本作が配慮する必要はありません。
しかも数か月の延期ならまだしも、丸一年以上も延期するなんて、配慮の度が過ぎてます。

一年以上も公開を延ばしたことで、本作はベストな公開時期を逸していると思います。
去年は織豊時代を舞台にした大河ドラマを放送していたこともあり、
もし去年中に公開されていれば同時代を描いた本作はタイムリーな作品でした。
(去年は『プリンセス トヨトミ』とかも公開されましたしね。)
去年まではギリギリ続いていた戦国武将ブームも、今では鎮静化してしまってます。
なにより一年以上もお預けを食ったことで、本作に対するハードルも上がり、
並大抵の内容では満足できない心境にもなりました。

そんな高いハードルを設定して臨んだ本作ですが、案の定、満足できるものではなく…。
去年のうちに公開されていたら「まぁこんなものか」と思ったでしょうが、
今となっては「一年も待たしてこの程度なのか」と思ってしまいます。
ストーリーの残念さは、時間が経っても脚本が変わるわけではないので仕方ないけど、
特撮とかCGの残念さは、時間があったのだからもっと何とかなっただろうと…。
特に水攻めの水の描写の不自然さには愕然としました。
大震災を受けて、人が波に飲み込まれるシーンなどは修正したそうですが、
修正ついでにもう少し映像のクオリティを上げることはできなかったものかと…。
その水らしからぬ水の描写も、被災者感情に配慮して、
あえて水には見えないようにしているのではないかと思うほどです。

豊臣秀吉による小田原征伐での忍城の戦いを描いた物語です。
小田原城の支城のひとつである忍城に、石田三成率いる豊臣軍が攻めてきます。
その時の忍城の城代が「のぼう様」こと成田長親です。
忍城の兵力は500人しかなく、20000人を超える豊臣軍に対抗できるはずもなく、
当初は降伏し開城するつもりでしたが、長親の一存で応戦してしまいます。
結局、忍城より先に本城である小田原城が落ちてしまい、
支城の中で唯一落とされなかった城の総大将である長親ってすごいよね、
…って話なんだけど、本作の描き方では、なんだか全然すごい人物ようには思えず、
むしろかなりダメな総大将のようにする思えます。
彼の「のぼう様」というあだ名は「でくのぼう」から付けられたものなので、
表向きは何の才覚もない人物に見える振る舞いばかりなのは仕方ないけど、
「うつけ」と呼ばれた織田信長なんかとは違い、本当に何の才覚もない人物です。
豊臣軍が忍城を落とせなかったのは、長親云々は関係なく、
ただ豊臣軍の総大将である石田三成が無能だったからとしか思えない描き方です。

長親に何の才覚もないなら動かなければいいのに、
彼が無用な行動をすることで、忍城はより悪い状況になっている気さえします。
結局、豊臣軍の小田原征伐は成功したので、大局的には負け戦であり、
忍城も開城になるわけですが、それならば初めから降伏しても同じことです。
実際に開戦前に提示された投降条件を全て飲むことになった上に、
事を構えたことで領地も没収され、兵や民などの犠牲も出してしまいました。
長親の一存で応戦を決定したことは明らかな采配ミスです。
またその開戦理由が酷いです。
負け戦が明らかでも、北条への忠義のために戦ったのであれば侍としてかっこいいけど、
ただ豊臣軍の軍使の態度が気に入らず、長親がへそを曲げただけです。
それも武功をあげたい三成による挑発にまんまと乗っただけなので情けないです。
そんな理由で豊臣軍と戦うことになりますが、下手すれば籠城した民衆諸共、
城を枕に討ち死にの可能性もあり、先に小田原城が落ちてくれたのはラッキーでした。
忍城が小田原城の落城まで持ち堪えたのは、何も忍城が堅牢だったからではなく、
三成が水攻めなんて悠長な作戦を取ったからに他なりません。
武力の差は圧倒的だったので、もし力で押していれば、すぐに落城していたでしょう。
忍城に攻め入ったのが、戦の素人の三成だったのが不幸中の幸いで、
もし上杉景勝など違う武将が大将だったら、即行負けていたでしょうね。

また三成の人物像についても曖昧な描き方で、
部下の武勲を無視して自分勝手に水攻めを命じたり、
大谷吉継の制止を無視する行動で水攻めを台無しにしたりする愚将として描かれる反面、
敵の本拠地である忍城に自ら交渉に赴く度胸を見せたり、
敗軍の将である長親たちに寛容な態度をとったりする名将としても描かれ、
心が狭いのか広いのか、器が大きいのか小さいのか、はっきりしない人物像です。
もう彼が何を考えているのか理解できませんが、ただ上地雄輔が演じているので、
おバカで何も考えていないようには見えます。
他にも自分の幼い娘がいる農村に水攻めを仕掛ける手伝いをする百姓や、
北条家に忠義を示しながらあっさり開城を命じる長親の父、
戦の経験もないのに自信だけは人一倍な若手家老など、
本作には何を考えているのかわからない登場人物が沢山登場します。

中でも最もよくわからないのはやっぱり長親ですよね。
特にヒロインである甲斐姫に対する彼の想いが全くわからず困惑しました。
開戦前に豊臣側の軍使・長束正家が和戦の意思について訊きに忍城へ来ますが、
投降する場合の条件のひとつに「甲斐姫を関白に差し出せ」というものがあり、
それを聞いた長親が、怒って応戦することにしたように見えたのですが、
実は甲斐姫のことはどうでもよかったようで、小田原陥落後の降伏条件提示の時には、
甲斐姫を差し出すことをあっさり承諾してしまいます。
北条への忠義でなくとも、愛する女性のために戦うのであれば、まだ男として立派だけど、
本当に相手の軍使の態度が気に入らなかっただけだとわかり、愕然としました。
百姓など民衆のことは大切に思っているようでいて、結局は戦に巻き込んでるし、
彼の自分が人気者であることを自覚した上での行動も、なんだか鼻につきますね。
甲斐姫は美しい女性ですが武辺者で、忍城の戦いでも大活躍したという話もありますが、
本作では彼女が敵兵と戦うシーンもなかったのは、甲斐姫らしくなくて残念でした。

そんないろいろと残念なところが多い本作ですが、見どころが全くないわけでもなく、
特に長親の田楽踊りのシーンは、彼を演じる狂言師・野村萬斎の本領発揮でした。
その田楽踊りは水攻めを破る作戦の一環で、自分が殺されることで民衆の士気を上げ、
堤を破壊してもらおうという意図なので、踊り自体には何の意味もありませんが…。
はじめは何かの陽動かと思いましたが、ただ同情を買おうとしていただけで、
作戦と呼べるほど立派なものでもなかったですが、踊り自体は面白かったです。
あと開戦初日の籠城戦での、味方の猛将2人の活躍はよかったです。
単騎で何人もの敵兵の忍城侵入を食い止めるという、関羽や張飛なみの大立ち回りで、
少々あり得ない展開でしたが、けっこう過激なゴア描写もあって楽しめました。
水攻めが終わって、また楽しい武力衝突が始まるかと思ったら、
小田原陥落で済し崩し的に停戦してしまい残念でした。
…いや、本当はそんなに残念でもなかったかな。
なにしろ本作は上映時間150分にも及ぶ無駄に長い映画だったので、
これ以上ズルズル続けられたらウンザリしたかも。
人間の集中力は90分~120分しか持続せず、映画もそれくらいがベストと言われますが、
150分はいくらなんでも長すぎます。
密度が高くて、これ以上切りようがない内容なら仕方ないけど、本作はそうでもなく、
せっかく1年間も編集に掛けられる時間が延びたんなら、もう少し見直すべきでした。

脚本の不出来もさることながら、やっぱり一番評価を下げた原因は公開延期でしたね。

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