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推理作家ポー 最期の5日間

今年もノーベル賞受賞者が発表されましたね。
日本人ではiPS細胞の山中伸弥教授の医学生理学賞受賞が発表されましたが、
報道番組などマスコミは山中教授の受賞の喜びよりも、
iPS細胞を使って心筋移植したと虚偽発表した森口何某とかいう虚言癖男の話題で持ち切り。
痛すぎるオッサンで視聴率が取れそうとか、虚偽発表を掲載した読売を貶めたいとか、
各メディアいろいろな思惑があるでしょうが、山中教授および日本人のせっかくの偉業に、
少々ケチがついてしまった感じで、なんだか残念です。

ノーベル賞といえば、またしても村上春樹が受賞を逃したり、
中国人作家が初受賞したりということも話題になっていますね。
選考委員が全ての言語を理解できるはずもなく、
英語とゲルマン語以外は翻訳されたものを読んでいると思うので、
選考に無理がある文学賞の存在には疑問を感じてしまいます。
まぁ検閲が厳しい中国の作家は、中国政府の犬みたいなものなので、
今回はそんなやつが受賞したから、特に疑問を感じてしまっているだけで、
村上春樹や他の日本人作家の受賞が決まれば、普通に嬉しいと思います。
普段は文学的な本なんて全く読んでませんけど…。

ということで、今日は文学史に新たな1ページを刻んだ作家の物語の感想です。
でも文学的ではなく、とても娯楽的な映画です。

推理作家ポー 最期の5日間

2012年10月12日日本公開。
推理作家エドガー・アラン・ポーの最期の数日を描くミステリーサスペンス。

1849年のボルチモア。ある殺人事件を担当することになった若手刑事エメット・フィールズ(ルーク・エヴァンス)は、事件が推理作家エドガー・アラン・ポー(ジョン・キューザック)の作品によく似ていることを察知。貧乏で酒におぼれる生活を送るポーは容疑者とみなされるが、捜査が進められる中、彼の著作をまねるように連続殺人が発生。その後、自らのアリバイが証明されたポーは、事件解明のため捜査に加わるが……。



本作は『大鴉』などで知られる19世紀の作家エドガー・アラン・ポーの謎の死の真相を、
史実とフィクションを交えながら描いたゴシック・ミステリーです。
ポーは史上初の推理小説を書いたと言われる超有名な作家ですが、
ボクは彼の著作は一編たりとも読んだことがありません。
なので彼自身についての知識も全くなく、さほど興味もなかったのですが、
ちょうど2カ月前にヴァンパイア映画だと思って観た映画『ヴァージニア』に彼が登場し、
図らずも彼のことをちょっとだけ知ることになりました。
『ヴァージニア』は、あるオカルト小説家が、夢の中で敬愛するポーに会う話で、
ただ登場しただけではなく、ポーを題材にした作品でしたが、
それがかなり興味深い作品だったので、これを機にポーのことももっと知ろうと思い、
著作のいくつかも読んでみようかなんて考えたのですが、
読書が苦手なので、この2カ月1冊も読むことが出来ないままでした…。
でも本作はポーのいろいろな著作を模倣した連続見立て殺人が起こるという物語なので、
その見立て殺人の基となったポーの著作を知っている人なら、
面白さが倍増することは想像に難くなく、せっかく絶好の機会があったにもかかわらず、
著作を1つも読まないまま臨んでしまったことを公開しました。
しかしそんなボクでも、ミステリーとしてなかなか楽しめる映画であり、
逆にポーの作風を知るいい機会になったと思います。
『ヴァージニア』ではオカルト小説作家としての側面が描かれていましたが、
本作では推理作家としてや批評家としての側面が描かれており、
2本合わせて、彼の作家としての多様性を知ることができました。
ポーの人物像も随分異なる印象を受けましたが、人物像も多様だったのでしょうね。

本作はポーの原因不明の死までの5日間の話で、史実が織り交ぜてあるようですが、
史実を知らないボクが観ても、ほぼフィクションであることはわかります。
それにしてもこの邦題、ちょっと酷くないですか?
「推理作家ポー」の部分はいいけど、後に続く「最期の5日間」ってネタバレですよね。
まぁ彼が最後に死ぬことが予測できるのは、史実なので構いませんが、
5日間なんて明示されると、いつ頃死ぬかまでわかってしまいます。
物語冒頭が死ぬ5日前なのがわかるので、途中で「あと2日で死ぬのか」とか、
「明日は死ぬ日だから今日は死なないな」とか予測出来ちゃいますもん。
それどころか、実際は彼が瀕死状態で発見されるまでの5日間で、
ウィキペディアによれば、発見されてから4日後に死んだらしいから、
「最期の5日間」であれば、内容のほとんどが危篤状態で病院で寝てるだけになりますよ。
フィクションなので、そこまで厳密に言っても仕方ないけど、ネタバレは勘弁です。
原題の直訳である「大鴉」か、単に「推理作家ポー」って邦題でよかったのでは?

19世紀のボルティモアで、ある母子が無残に殺される密室殺人事件が発生し、
捜査するフィールズ刑事は、それがポーの推理小説『モルグ街の殺人』の
見立て殺人であることに気付き、容疑者のひとりとしてポーを連行します。
『モルグ街の殺人』は史上初の推理小説らしいですが、
それが19世紀だなんて、推理小説の歴史って意外と浅いんですね。
その後、今度はポーの恐怖小説『落とし穴と振り子』の見立て殺人が発生します。
はじめの密室殺人も、首がもげそうなほど掻っ切られていて、なかなかエグかったですが、
今度の殺人は鎌のような振り子で胴体を真っ二つにする大規模な仕掛けを使った、
ジグソウばりにエグい殺し方で、切り株映画のようなグロいシーンです。
ポーの作風は凄惨な描写が多いことが人気の秘訣だったようなので、
それを映像化したらこんな風になるのは当然のことかもしれませんが、
グロが苦手な人は少々覚悟しておいた方がいいかもしれません。
ボクとしては、本作のそんな攻めた演出が気に入りましたが。

その振り子殺人の現場で、『赤死病の仮面』の見立て殺人を予告する物証が発見され、
ポーとフィールズ刑事は、ヘミルトン家の仮面舞踏会で次の犯行が起こると予測し、
舞踏会に潜入するのですが、その甲斐虚しく、ハミルトン家の娘エミリーが誘拐されます。
エミリーはポーの恋人であり、一連の犯行はポーに対する挑戦であると判明し、
ポーはエミリーを救出するため、まるで推理小説の探偵のように、
犯人の正体を推理しなくてはならなくなります。
その後も『マリー・ロジェの謎』、『ヴァルドマアル氏の病症の真相』、
『アモンティリヤアドの酒樽』など、ポーの著書に見立てた事件が発生し、
その現場に意図的に残された物証から、犯人を推理するのです。
まるで二次創作のような内容ですが、これがけっこう骨太なミステリーで、
ボクもうっかりミスリードされてしまいました。
(冒頭の酒場にいた水夫が怪しいと思ったのですが、全く見当外れで…。)
意外なのは、ポーも最後まで犯人を推理で割り出すことは出来ず、
結局犯人の方から名乗り出る形になったことです。
ポーの完敗だったことは間違いなく、推理ものとしては少々スッキリしない展開でした。

誘拐されたエミリーは『告げ口心臓』に見立てた場所に閉じ込められていますが、
なかなかガッツのあるヒロインで、一度は自力で脱出できそうになるんですよね。
でもあんな密閉空間に閉じ込められて何日も放置されたら、普通は死にますよ。
彼女が自力で脱出しようとしたり、空気穴を作ったりしなければ、すぐ窒息死したし、
それだと人質としての価値を失ってしまうのに、犯人の行動は浅はかすぎる気がしました。
この犯人ですが、よほどポーに因縁のある人物かと思いきや、
単なるポーのファンによる模倣犯というオチで…。
…って、サラッとネタバレを書いてしまいましたが、
このことは普通にポスターやチラシにも書いてあるんですよね。
キャッチコピーとして「史上初の推理作家VSポーに魅せられた小説模倣犯」ってね…。
邦題の件もそうだけど、本作の宣伝方法はかなり配慮に欠けています。
日本ではディズニーが配給していますが、自社作品じゃないといい加減なものです。

ついでなので、もうひとつネタバレだけど気になったことも書いてしまいます。
史実として、ポーは危篤状態の時に「レイノルズ」という名を繰り返し言っていたそうで、
それが誰のことなのか真相はわからず、いろいろな憶測が囁かれた謎でしたが、
本作ではそれが犯人の名字だったということが示されます。
つまり犯人の名をダイレクトに伝えただけのダイイング・メッセージだったのですが、
あまりに単純な真相で、ポーのファンとしては拍子抜けだったのではないでしょうか。
ボクはポーを知ったばかりなので、「レイノルズ」という遺言は知りませんでしたが、
普段その犯人のことをファースト・ネームで呼んでいたのに、
死ぬ前になって急に名字でダイイング・メッセージを残すというのは、
ちょっと不可解な展開だとは思いました。
まぁ始めから犯人がレイノルズと呼ばれていたら、わかる人にはすぐわかっちゃうので、
そうするしかなかったというのは理解できますが…。

史実絡みで少々納得できないところはあるけど、ミステリーとして面白いし、
19世紀のゴシックロマンスな世界観も魅力的で、なかなかいい映画だと思います。
でもアメリカ人はポーにそれほど興味がないのか、初登場7位デビューと残念な興収で、
評価もイマイチだったみたいで、かなり赤字だったみたいです。
でもボクの観に行った劇場ではなかなか盛況だったので、日本人には合うのかも?

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