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ツナグ

今月2日にベテラン俳優の大滝秀治さんが亡くなられたそうですね。
87歳だったそうで、ボクの祖父母よりも長生きだったし、
最期まで現役を貫いていたので、大往生ではないでしょうか。
その遺作となるのが現在公開中の『あなたへ』らしいのですが、
ちょっと不謹慎かもしれないけど、この映画にとっては追い風かもしれません。
依然ロングヒット中ですが、今週末の興行成績は前週を上回るでしょうし、
去年の故・原田芳雄さん主演の『大鹿村騒動記』のように、
日本アカデミー賞やキネ旬ベストテンなど各映画賞で、
作品の実際の評価以上の高評価を得るのは間違いないかと。
本年度の各賞の助演男優賞は大滝秀治さんでもう間違いないでしょう。

でも、死後オスカーを受賞したヒース・レジャーなんかもそうですが、
こんなのって茶番というか、賞を授与する側のエゴだと思うんですよね。
例えば戦死した兵士が2階級特進したりすることがありますが、
これは遺族年金が上がるので意味があることだけど、
映画の賞なんていうのは、生きている人が貰ってこそ活きるもので、
死者にあげても屁の突っ張りにもなりません。
オスカーも死後受賞したヒース・レジャーにとっては与り知らぬものですが、
対抗馬だったジョシュ・ブローリンが受賞していれば、
彼のその後のキャリアは現在以上のものになっていたかもしれません。
死後の世界で映画賞が役に立つかどうか、一度死者に訊いてみたいものですね。

ということで、今日は死者と一度だけ会わせてくれる人の物語の感想です。
実際一度だけ死者に会えるとしたら、映画スターを選んだりはしませんが…。

ツナグ

2012年10月6日公開。
直木賞作家・辻村深月による同名小説を映画化したヒューマンドラマ。

生きている者が、もう一度だけ会いたいと強く願う、すでに亡くなってしまった者。その再会の機会を設けることができる、“ツナグ”と呼ばれる使者の見習いをする高校生・歩美(松坂桃李)。ガンで逝去した母(八千草薫)と会いたいという高慢な中年男・畠田(遠藤憲一)、けんかをしたまま事故死した親友・御園(大野いと)に尋ねたいことがある女子高生・嵐(橋本愛)など、さまざまな依頼人の願いをかなえる歩美。だが、死んだ者と生きる者が再び出会ってはいけないのではないか、それで両者は救われるのだろうかと考え……。(シネマトゥデイより)



『ヒア アフター』のような内容かなと思って期待して観に行った本作ですが、
予想を遥かに下回る出来でガッカリしました。
親しい人との死別を題材にした感動作のようで、マストで泣けると思ったのですが、
涙もろくて子どもアニメでも泣いてしまうボクなのに、本作では全く泣けず…。
お涙頂戴の白々しい展開に途中で飽きてしまいました。
なのに本作は2時間を優に超える長尺映画で、ちょっとシンドかったです。
主人公の話も含めて4エピソードから構成されていますが、
尺的には1エピソード削った方が見やすくなると思います。
これでも原作よりも1つ少ないみたいですけど、もっと削れたでしょう。

感動できない理由は明確で、「ツナグ」という能力の設定が全く納得できないからです。
そんな設定をベースにしていては、どんな泣ける話も台無しになります。
「ツナグ」というのは死者との再会を仲介する霊能力ですが、
口寄せやネクロマンシーのような一般的な降霊術とはかなり違っていて、
ツナグは死者と会いたい人の依頼を受けて死者と交渉し、
日取りを決めてホテルの一室に来てもらい、その部屋で再会できるように段取りします。
なぜ高級ホテルの一室なのかとか、些細な疑問はあるものの、ここまでは問題ないですが、
納得できないのは死者に一度しか会えないというルールです。
このルールがかなり曖昧な気がするんですよね…。

というのも、死者との再会の段取りをして、再会に立ち会う主人公の歩美(♂)は、
「僕がツナグです」とは言いつつも、実は「ツナグ」ではなく「ツナグ」の見習いであり、
死者と交渉し呼び出す「ツナグ」は彼の祖母なので、彼は言わばまだ普通の高校生。
でも彼はその見習いの仕事の都合上、死者に何度も会うことができます。
つまり誰と再会したいか決めるのは一度しかできないけど、
その部屋に行けば誰でも死者に会えるということになると思うんですよね。
「ツナグ」を継承すれば自分のために死者を呼び出すことが出来なくなるらしく、
彼は「ツナグ」になる前に、不可解な死を遂げた両親と再開すべきか悩みますが、
それだって「ツナグ」になってからも他人に代わりに依頼してもらえばいいだけです。
そもそも2度再会するとどうなるのか、罰則も明確じゃないので、
なんとも曖昧で得心のいかないルール設定だと思います。
「ツナグ」は死者との再会の仲介人ですが、見習いはその仲介人の更に仲介人なので、
そんな主人公の立ち位置も中途半端で微妙です。
以下、各エピソードの感想を短めに。

歩美が見習いになって最初に受けたのが、死んだ母親に会いたいという中年男の依頼です。
男は死んだ母親から「土地の権利書の場所を聞きたい」という理由で依頼してきました。
歩美はその依頼をあっさり受けるのですが、そんな理由の依頼を受けるなんて…。
「ツナグ」で再会できるのは一晩だけですが、いつでもいいというわけではなく、
月夜(満月?)の夜と決まっており、とても貴重な機会なのです。
それをそんな理由の依頼で埋めるなんて、能力の無駄遣いにもほどがあります。
(実際は男の依頼理由は建前で、本心は違いましたけど。)
「ツナグ」なんて能力があるなら、警察の殺人事件捜査に協力するべきです。
遺族だって、この男よりはもっと切実に死者に会いたいと思っているはずだし。
「ツナグ」は無償で行っているのですが、「ツナグ」である祖母は高齢で無職だし、
その祖母と2人暮らしの歩美も普通の高校生で、収入はないはず。
祖母の実家は「ツナグ」を代々継承する名家らしく、そこの援助を受けているわけですが、
それってつまり、誰かが「ツナグ」に対して資金提供してるってことですよね。
その金の流れが明確じゃないのも、胡散臭くてなんか嫌です。
この中年男もお金は払わなかったものの、感謝の印として自分の名刺を置いていきます。
歩美と祖母もそんなコネで生活してるんでしょうか?
その名刺は何かの伏線かと思ったけど、結局何もなかったし…。

2つ目の依頼は歩美の同級生・嵐(♀)から。
彼女はある勘違いから親友を殺してしまい、もし「ツナグ」で親友が誰かに呼び出されたら
自分の犯行が暴露されるのではないかと恐れて、死者にとっても1度きりの再会の機会を、
自分が依頼することで消費させてしまおうと企みます。
さすがにそんな理由を歩美には言えず、表向きは「親友に会いたい」という理由ですが、
その程度の理由で依頼を受けてしまう歩美にはまたしても幻滅です。
親友とはいえ、本当にその子に会いたいのは家族ですよ。
いくら「ツナグ」とはいえ、家族との再会の機会を勝手に潰すなんて酷くないですか?
依頼者である嵐は、親友が周りに「(私は)嵐には敵わない」と言っていたのを、
「(嵐は)私には敵わない」と聞き間違え、見下されたと思って殺意を覚えます。
「アタシ」と「アラシ」を聞き間違えていたというオチですが、
そのために「嵐」なんて珍しすぎて少々違和感のある名前に設定されたのですね。
彼女のフルネームは嵐美砂ですが、親友だったら「嵐」じゃなく「美砂」って呼ぶよね。
あまり交流のない主人公のことでさえ「歩美くん」って呼ぶ子なんだし…。
全然関係ないけど、嵐美砂を演じた最近注目の若手女優、橋本愛ですが、
どんどんハリセンボンの死神の方に似てきて、今後がちょっと不安です。
今年8本目の映画出演みたいですが、本作含め作品にも恵まれてないし…。

3人目の依頼者は7年前に恋人が失踪した青年。
恋人の生死を確認するために、恋人との再会を「ツナグ」に依頼します。
この依頼理由はかなり真っ当だと思うので他の依頼者のケースより好感が持てます。
「ツナグ」は世間では都市伝説程度に思われているようで、
他のケースではネットなどで情報を得た依頼者が、半信半疑で依頼する感じですが、
このケースでは祖母がたまたま出会った青年に「ツナグ」に依頼してみるように促します。
どうも祖母は死者と交信するだけではなく、人の悩みを嗅ぎとる能力がありそうですが、
それが「ツナグ」に所以するものかは定かではなく、本当に曖昧な能力だと思います。
ただ、このエピソード中に、「ツナグ」は死者を呼び出しているのではなく、
現世の記憶の欠片を形にしているだけではないかという疑問が提示され、
降霊術としてその考え方はなかなか面白いなと思いました。
でもその疑問は誰もわからず、答えが明示されることもありません。
死者と会える「ツナグ」や見習いなら、死後の話なんて簡単に聞けそうだけど、
きっとそれも曖昧なルールで禁止されているのでしょう。
また全然関係ないけど、その青年を演じるのは佐藤隆太なのですが、
松坂桃李演じる歩美に「オッサン」と罵声を浴びせられます。
ボクと1~2歳しか違わない佐藤隆太がオッサン呼ばわりされたのがショックでした。
まぁ三十路なんていったら、10代~20代からするとオッサンなのは否めませんが…。
役柄とはいえ松坂桃李のこともいけ好かない若造として嫌いになったかも。

最後は歩美自身の話。
彼は絵に描いたような幸せな家族でしたが、幼い頃に父親が母親と謎の無理心中をし、
そのことがずっと不思議だったので、「ツナグ」を継承する前に、
依頼人として両親のどちらかと会って、心中の真相を聞いておくべきか悩みます。
前述のように、ボクにはそんのことは要らぬ悩みのように思えて仕方ないですが、
結局彼は自力で推理して、自分なりの真相に辿りつき納得します。
たぶんその真相は合っているのでしょうが、これもボクには納得しがたい真相で…。
「ツナグ」が死者と交信するのに用いる銅鏡は、
「ツナグ」継承者以外が覗くと、覗いた者も継承者も死ぬという罰則があり、
それを知らずに覗いた母親が、当時継承者だった父親もろとも死んだという真相で、
母親は旦那から「ツナグ」であることは打ち明けられていたけど、
鏡の罰則までは知らなかったのでは?…というのが歩美の推理です。
でも鏡の使い方は教えられているのに、罰則だけ知らなかったというのは、
どうにも都合がよすぎる解釈で、全く納得できません。
そもそも今どき「覗いたら死ぬ」なんて、都市伝説系ホラーにしても安易すぎる設定です。
それ以前に、このエピソードの頃には、あまりの上映時間の長さに飽き飽きしてたので、
どんな展開でもネガティブな印象しか受けなかったと思うけど…。

とにかく、いくらファンタジーといえども、設定が荒唐無稽すぎてリアリティがなく、
とても退屈な映画なのでオススメできません。
日本映画はこんな作品が多いので、面白いかどうかに関わらず、
上映時間が2時間を超えてはいけないという暗黙の了解があった方がいいです。

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