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ロラックスおじさんの秘密の種

ユニバーサルは100周年を迎えた今年、過去最高の興行収入を上げたそうですが、
それを牽引したのが日本でも絶賛公開中のCGIアニメ『ロラックスおじさんの秘密の種』と、
アメリカ国外での興収が過去最高を記録したR指定コメディ『テッド』の大ヒットです。
この『テッド』ですが、未だに日本での公開が決まる気配がなくヤキモキしています。
ある男と命の宿ったクマのぬいぐるみの友情を描いたコメディらしいのですが、
そのぬいぐるみが、可愛い姿なのにかなり過激な発言をするという内容らしく、
絶対面白いに決まってるのに、配給会社の東宝東和が過激な内容に二の足踏んでるのかな?
まぁ国外で過去最高といえども、R指定コメディは日本でヒットした試しがないし、
日本で劇場公開するつもりはないのかも…。

ということで、今日は過去最高興収のもう一方の立役者の感想です。
奇しくも本作の主人公の少年の名前もテッドですね。
クマのキャラも登場しますが、過激な発言はしません。

ロラックスおじさんの秘密の種

2012年10月6日日本公開。
児童文学作家ドクター・スース原作を映像化した3Dアニメーション。

少年テッドは、一本の木さえ育たないほど最悪の環境状態にある世界で暮らしている。彼が住んでいる人工の街だけは実力者のオヘア氏によって環境が整えられ、空気もきれいで過ごしやすく保たれていた。ある日、テッドは好きな女の子にいいところを見せようと、これまで誰も見たことがない本物の木を探しに行くことにする。そこで祖母から街の外で一人で暮らしているワンスラーのことを教えてもらい、木を探す手掛かりを得ようとするが……。(シネマトゥデイより)



ユニバーサルのアニメ部門イルミネーションのフルCGIアニメ第二作目の本作ですが、
第一作目の『怪盗グルーの月泥棒』に続き、名作になってしまいました。
今や二強であるピクサーの低迷や、お家騒動で迷走するドリームワークスより、
イルミネーションの方が安定感があるかもしれません。
ついに二強時代が終わり、三強時代に突入したなと感じさせる渾身の出来です。

原作者のDr.スースの絵本は欧米人なら誰もが子どもの頃に読んでいるという
超ベストセラーですが、どうにも日本人には馴染みがないようで、
彼の絵本『ぞうのホートンひとだすけ』をブルースカイ・スタジオがアニメ映画化した
『ホートン ふしぎな世界のダレダーレ』は、日本ではビックリするほどコケました。
ボクもDr.スースの絵本を読んで育ったわけでもないのですが、
無類のCGIアニメ好きなので『ホートン~』も観に行きましたが、
これがなかなか面白く、本作にも期待していました。
イルミネーションの前作『怪盗グルー~』もそれほどヒットはしなかったし、
先達て公開されたソニーのCGIアニメ『モンスター・ホテル』が、
なかなか面白いにも関わらず日本でコケたこともあって、
本作もコケる可能性が高いと思っていましたが、先週末は3連休ということもあってか、
劇場は家族連れで満席になっていて、ヒットの予感を感じさせました。
集計が出てみると、初登場6位だったので、それほどヒットしたとも言えませんが、
これほどの内容ならば、今後クチコミで広がっていくのは間違いないでしょう。
日本ではそんな感じだけど、本国アメリカでも予想を上回る大ヒットで、
3月公開の映画として歴代3位のロケットスタートで首位デビューしました。
猛者ぞろいの今年の年間ランキングでも暫定8位の好位置をキープしています。
まぁアメリカでのDr.スースの絵本の人気を思えば当然の結果ですが、
イルミネーションは今後も『ハットしてキャット』などのアニメ映画化を企画中です。

そんなDr.スースの作品の中でも、本作は代表作のひとつらしいのですが、
有名すぎる原作を映像化しているので、かなり映像化には苦労があったと思います。
本作の素晴らしいところは、原作を壊さず、アップグレードして制作し、
原作ファンも納得の出来にして、大ヒットさせたことでしょう。
原作絵本は、荒廃した世界のある少年が、ワンスラーに話を聞くという物語で、
ワンスラーと木の代表者ロラックスおじさんとの出会いから別れまでの回想で構成され、
少年がワンスラーから種をもらうところで完結してしまっています。
本作はそこに、少年がワンスラーに会いに行くまでの経緯と、
種を貰ってからワンスラーがロラックスおじさんと再会するまでの話を追加し、
いわば短い原作を映画サイズに水増ししているわけですが、
この水増し部分が本編の回想部分に匹敵するほど面白いんですよね。
本作ではその少年は、Dr.スースの愛称であるテッドという名前が付いて、
本作の主人公的ポジションになるのですが、ロラックスおじさんは回想の登場キャラなので
最後まで主人公のテッドには出会わないんですよね。
その二段構造的な構成が、斬新で興味深かったと思います。

人工的にあらゆるものが建造され、人々は幸せに暮らす夢の街スニードウィルですが、
街には一本の植物も生えてはおらず、空気は汚れきっています。
しかし綺麗な空気はボトルに詰めて売られており、人々は大気汚染なんて気にしません。
街にはプラスチック製で電飾の付いたオートツリーがあちこちに建てられ景観も綺麗で、
誰も植物の必要性なんて感じていないのです。
この偽りの夢の街のモデルはディズニーランドらしいです。
たしかにディズニーランドも人工的な夢の国ですよね。
ある意味これはイルミネーションによるディズニーへの挑発ですね。
まぁイルミネーションの親会社のユニバーサル・スタジオだって似たようなものですが…。

近所の女子高生オードリーが本物の木を見たがっていると知ったテッドは、
木を手に入れるため、木のことを知っているという謎の男ワンスラーに会いに行きます。
「本物の木がなくなったのは自分のせいだ」と語るワンスラーは、
テッドに自分の若い頃の過ちの経緯と、ロラックスおじさんのことを話してくれます。
まだ世界に自然が溢れていた頃、若かりしワンスラーは「スニード」という布を開発し、
大儲けしようと、その原材料になる天然繊維が取れる植物を探して旅をしていました。
ある谷でフサフサの葉っぱが付いたトラッフラの木を発見した彼は、
スニードを作るために1本切り倒します。
するとその切り株の中から、木の代表者である精霊ロラックスおじさんが飛び出し、
彼に「木を切ると恐ろしいことになる」と警告するのです。

このロラックスおじさんの日本語吹替えキャストに選ばれたのが、
まさかの「変なおじさん」こと志村けんです。
完全にネタ的なキャスティングなので、かなりの懸念を感じたのですが、
いざ観てみると、思ったよりも上出来でした。
「アイーン」とか「ダッフンダ」とかアドリブで持ちギャグをかますわけでもなく、
役に徹してくれていたように思います。
まぁ本人の個性が強いので、全く違和感がないといえば嘘になりますが、
意外にもワンスラー役のトータス松本の方が違和感が強かった程度のものです。
トータスのワンスラーも地声が関西弁で気になるけど、ミュージカルシーンでは、
さすがに本職の歌手だけあって、聴かせる歌唱力を発揮しているので悪くはないです。
イルミネーションは前作『怪盗グルー~』でも笑福亭鶴瓶を主役に起用し、
それも大成功していたこともあり、タレントの声優起用は上手いかもしれません。
起用が上手いというか、アフレコの演技指導が上手いのかな?

ロラックスおじさんの警告に根負けし、「木は切らない」と誓ったワンスラーは、
おじさんや谷の動物バーバルートたちと仲良く暮らし始めます。
ある日、完成したスニードを街に売りに行くと、たちまち大ヒットし注文が殺到。
ワンスラーは家族を谷に呼び寄せ、スニードの量産を始めます。
しかしおじさんとの約束で、木を切れないテッドは、
高枝切りばさみでフワフワの葉っぱだけを採取して原料にしていましたが、
それでは生産が追いつかず、強欲な家族に唆され、次々と木を切り倒し始め…。
おじさんは再三警告するのですが「金儲けの何が悪い」と伐採し続け、
彼の家族は大儲けしますが、どんどん自然は失われ…。
このワンスラーには怒りといよりも、本当は木のいい奴なのに、
無知ゆえに道を踏み外してしまう彼の姿に、居た堪れない気持ちになります。
あっという間に、木は刈り尽くされ、これ以上のスニードの生産もできなくなり、
金の切れ目が縁の切れ目とばかりに強欲な家族は去っていき、
仲良しの動物たちも移住してしまい、親友の木の精霊であるおじさんも、
木のない世界には居続けられず、消え去ってしまいます。
荒廃した谷に残されたワンスラーは、その後延々と自分の過ちを後悔し続けます。
それから何十年か経ち、彼はやってきた少年テッドにトラッフラの種を託すのです。

前述のように、このワンスラーの回想シーンは原作を踏襲しているのですが、
原作が出版された1971年当時は、まだ環境問題が注目されはじめたばかりの頃です。
その頃からすでに子ども向けの絵本に環境問題なんてテーマを落とし込むなんて、
原作者のDr.スースの先見の明には驚かされます。
とはいえ、単なる森林伐採による自然破壊を描いているだけだし、
正直現在の深刻な環境問題からするとちょっと浅い内容ですよね。
今の企業なら利潤追求のために後先考えず原材料が枯渇するまで採取したりしないし、
ワンスラーの自然破壊はかなり極端な例です。
それを40年以上経った今、映像化しようっていうのだから、ギャップは測り知れませんが、
そこを上手く現代風にアレンジしているのが、本作のオリジナルとなる部分です。

原作では種を託されて終わりですが、本作では種を託されたテッドが、
スニードウィルに種を植える過程が追加されています。
綺麗な空気のボトル詰めを売ることで街一番の実力者になった実業家オヘアは、
木が光合成をして空気を作りだすと市民に知られると商売あがったりになります。
そのため、テッドが種を植えることをなんとしても阻止する必要があり、
テッドとオヘアの激しい種争奪戦が繰り広げられるのです。
ワンスラーは無知ゆえに環境破壊を行ったわけですが、
オヘアは環境破壊と知っていながら利益追求のためだけに環境保護を邪魔します。
どちらが悪質かは明白ですが、今どきワンスラーのような企業はなくても、
オヘアのような企業ってけっこうありますよね。
例えば、日本の東京電力など電力会社なんかがそうで、
あいつらは再生可能エネルギーが環境保全にとてもいいとわかっていながら、
自分たちの原子力発電を推進するため、再生可能エネルギーの開発を邪魔し続けました。
環境よりも既得権益を守ろうとする姿勢が、オヘアの行為そのものです。
そんな現代的な環境問題の在り方を足すことで、原作当時とのギャップを埋めています。

環境問題を謳っただけの作品ならば、説教臭さが鼻について鬱陶しかったと思いますが、
本作はエンタテインメント作品としても、かなり魅力的なものに仕上がっています。
アトラクション・ムービーなんて称していますが、主観映像を多用し、
川下りのシーンでは、まるでウォータースライダーに乗っているような映像だったり、
種争奪戦のチェイスも、まるでジェットコースターに乗っているような映像です。
ボクは2D版で観たのでそれほどでもありませんでしたが、
3D版だと臨場感もかなりアップしていたのではないでしょうか。
そんな主観映像のシーンを差し引いても、種争奪戦の盛り上がりは半端なく、
特に劇場にいたチビッコたちが息を飲んで種の行方を見守っている様子が伝わってきます。
種がオヘアに奪われそうになると、チビッコたちから感嘆の声が上がったりと、
かなり真剣に見入っているようようです。
争奪戦で言えば、本編前に『怪盗グルー~』のマスコットキャラである
ミニオンがバナナを奪い合う「ミニオンのバナナ争奪ゲーム」という
スラプスティックな短編が上映されますが、それを笑いながら見ていた時とは
明らかに違う緊張感をチビッコたちから感じられました。
86分という短めな上映時間も、幼い子でも集中力が切れないようにとの配慮だろうし、
本作はかなりチビッコが楽しめるように意識して作られている気がします。
もちろん大人も楽しめるので、とてもいいファミリー向け作品だと思います。

ストーリーで少し気になったのは、原作を踏襲した回想部分と、
オリジナルのテッドの活躍部分の二段構造は興味深い構成なのですが、
やはり別々のものなので、二段構造の弊害もあったように思えたことです。
例えば、こんな木の一本もない世界にしてしまったのは、ワンスラーとその家族なのに、
テッドの敵として、まるでオヘアが諸悪の根源かのような描き方になっていますよね。
テッドの時代にはワンスラーは改心した後なので、敵役にはなれず、
オヘアがスケープゴートとして全ての憎しみを引きうけているのですが、
最後は成敗されて酷い目に会うし、ちょっと彼も気の毒な気がします。
それよりも本当の諸悪の根源なのに反省すらしなかったワンスラーの家族に、
何か制裁を加えるべきだろうと思いました。逃げ得は許し難いです。
また、自然を回復させたのはテッドなのに、再び戻ってきたロラックスおじさんは、
種を託しただけのワンスラーに謝辞を述べますが、称賛されるべきはやはりテッドで、
これでは筋が違う気がしますよね。
とはいえ、ワンスラーとおじさんの再会には素直に感動させられたし、
そこにテッドがいたらその感動も薄れる気もするので、これで正解だとは思いますが…。
おじさんは自然が回復したことよりも、親友ワンスラーと再会できたことの方が
嬉しかったんだろうと思うと、この2人の友情の深さに強く感動しました。
う~ん、やっぱり大した欠点もないし、名作だと思います。

イルミネーションの今後ですが、来年『怪盗グルー~』の続編が公開され、
再来年はミニオンのスピンオフが公開される予定です。
どちらも楽しみですが、続編やスピンオフだけじゃなくオリジナルも早く観たいです。
ただ実写とCGIアニメの融合作品だった去年の『イースターラビットのキャンディ工場』は、
かなり幻滅する出来だったので、今後はフルCGIアニメだけに集中してほしいです。

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