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アシュラ

ボクはアニメーション映画がけっこう好きなのですが、
先月は『ファインディング・ニモ 3D』の1本しか観られませんでした。
それは単に公開スケジュールやタイミング的なことで観れなかっただけですが、
今月はけっこうな本数を観られそうな予定です。
先月末に公開のまだ鑑賞できていなかったものを含めて、2桁ちかい本数になるかも。
なので今月はアニメ映画の感想記事を書く機会も増えると思いますが、
実はアニメ映画の感想はちょっと苦手で、毎度苦労して書いています。
ボクはアニメ映画は好きだけど、アニメに日常的に接しているわけではなく、
映画でしかアニメを見ない、超にわかアニメファンなので、知識が乏しいんですよね。
声優にしても山寺宏一、野沢雅子、水樹奈々くらいしか知りません。
(最近やっと三ツ矢雄二を覚えました。)
それって実写映画で例えるなら、キャストを知らないで観ているようなものなので、
そんな状態ではまともな感想なんて書けるはずもないです。
ボクはアニメ映画に関してはタレントの声優起用に肯定的ですが、
その辺の事情も関係しているのかもしれません。

ということで、今日は数少ない既知の声優・野沢雅子主演のアニメ映画の感想です。
タレント起用では北大路欣也が出演し、存在感を示していました。

アシュラ

2012年9月29日公開。
ジョージ秋山の同名漫画をアニメーション映画化。

洪水やかんばつが相次ぎ、およそ10年もの長い期間続いた応仁の乱が勃発(ぼっぱつ)した1400年代の半ば。アシュラは荒野と化した京都でケダモノのように育ち、生き抜いていく。そんな中、優しい少女・若狭や法師の教えにより、言葉や笑うことを覚えたアシュラ。しかし天災が訪れ、人々は貧困によって追い詰められていき……。(シネマトゥデイより)



本作は1970年に発表されたジョージ秋山の漫画をアニメ化した作品ですが、
その原作漫画が掲載された雑誌『週刊少年マガジン』が、
その作品の残酷描写のせいで有害図書指定されたという逸話があり、
「映像化は不可能と言われた漫画のまさかの映画化」というフレコミで、
そこそこ話題になっていますね。
まぁ「映像化不可能」と言われて映像化された作品は五万とあるし、
特に「有害図書だから」という理由の場合は、図書ではなく映像になるんだから、
尺度も違うし、それほど困難なわけでもないような気がします。
さすがに実写化となると映像化不可能って気もしますが、それは残酷描写云々ではなくて、
『ドラゴンボール』を実写化するべきではないのと同じ理由です。

ちなみにボクは原作漫画は未読で、原作者のジョージ秋山という人も、
どこかで名前を聞いたことがあるという程度の認識です。
本作もカニバリズムがテーマの映画らしいという情報しか持ってませんでした。
実写映画では『ハンニバル』シリーズとか『スウィーニー・トッド』とか、
カニバリズムを描いた作品は多いですが、アニメではなかなか珍しいような気がして、
けっこう衝撃的な作品になっているのではないかと、期待して観に行きました。
いわゆる「怖いもの見たさ」ってやつですね。
なかなか雰囲気のある作画で、序盤のアシュラが産み落とされるシーンから、
かなり攻めた映像になっているように思えて、期待が膨らんだのですが、
肝心のカニバリズムの演出が全くグロくなくて…。
たしかに主人公アシュラは人肉を食べるのですが、その直接描写は避けられ、
獲物である人間を襲った後、口の周りに血を付けて「食べた」ことを表現するだけです。
それもそのはず、本作の映倫のレイティングは全年齢推奨の「G」なんですよね。
つまり小さい子どもが観ることも想定されていて、下手すれば深夜アニメより温いです。
製作サイドもせっかく有害図書の映像化というフレコミで問題作をアピールするなら、
18禁とまでは言わなくてもR指定上等くらいの意気込みを見せてほしかったです。
とはいえ、テーマがカニバリズムの本作を、映像的には問題がないとはいえ、
PG指定にもしないなんて、映倫もアニメに対して甘すぎると思います。
映像的な温さではいい勝負な『ハンガー・ゲーム』ですらPG指定したくせに…。
そもそも見たがらないとは思うけど、子どもには見せたいない内容なのは間違いないです。

つまり、映像的には子どもが観ても平気なほど控えめだったものの、
内容的には子どもが観せるのは憚れるくらいに、カニバリズムを描けていました。
物語の舞台は室町時代、洪水や旱魃による飢饉で人々は飢え苦しんでいます。
主人公は生まれて間もなく、飢えで気が狂った母親に食べられそうになり、
間一髪で命を拾うも、母親からは見捨てられた彼はひとりで生きることになります。
人肉を食べて飢えを凌ぎ、獣同然の生活を続けること8年、彼はある法師に出会います。
法師は彼が人間として生きられるように、言葉を教え、「アシュラ」という名を与えます。
そんなある日、ある村の地頭の息子を喰い殺してしまったアシュラは、
地頭に誅伐され、瀕死で倒れていたところを村の若い娘・若狭に助けられます。
水車小屋に匿われ、若狭の世話になった彼は、人間を殺さ(食べ)ないと誓うが…。
まるで野獣のように言葉も喋れず、人間を捕食して生きてきた少年が、
法師や若狭たち優しい人間と交流するうちに、人間らしさを取り戻すという話ですが、
本作の興味深いところは、必ずしも人肉食を間違ったことだとは描いていないことです。
アシュラも人肉を嗜好しているわけではなく、他の食べ物があればそれを食べますが、
何もない場合に仕方なく人肉を食べて飢えを凌ぐだけです。
餓死しそうな緊急時に、人肉しかなければそれを食べるのは仕方がないと思うし、
そもそも人肉食を禁忌とするのは倫理や尊厳の問題なので、
飢饉という非常事態にまで、倫理を優先して死を選ぶことが正しいことなのか、
…というようなことを描いているんだと思います。
またその逆に、人肉食してまで生き残る価値のある世界なのかという問題も描かれ、
アシュラや若狭が、人間としての尊厳と、生物としての本能の狭間で苦悩するという、
カニバリズムの是非について真面目に取り組んだ、意外と重厚な物語です。

しかし、あまりそれを感じさせず、なんだか軽くて陳腐に思えてしまうのは、
本作の冗談のようにオドロオドロしい作画が原因でしょうか。
はじめこそ雰囲気があって独創的な絵だと思いましたが、
よく見ると何だか恐怖漫画的で、悪趣味な娯楽性が感じられます。
またキャラデザに統一感がなく、個々の登場人物がまるで別人がデザインしたような感じ。
大人と子ども、男と女で、同じ人間とは思えないほど差があり、
特にヒロイン若狭のデザインは、モダンすぎて本作では浮いています。
若狭の恋人である散所の七郎のデザインも、まるでモブキャラのような陳腐さで…。
キャラのモーションはCGで作られているようで、滑らかなのはいいのですが、
手描き風の雰囲気には合わないし、どうも大袈裟で不自然で人間らしさに欠けます。

あとアシュラの声を務めた野沢雅子ですが、この人の声は個性的すぎる、
というか『ドラゴンボール』の孫悟空らのイメージが強すぎるので、
こんな妖怪みたいな子どもが悟空の声で喋るのは違和感があります。
『ドラえもん のび太と奇跡の島 ~アニマルアドベンチャー~』でも思ったけど、
ぶっちゃけ野沢雅子には『ドラゴンボール』以外の仕事は受けないでほしいです。
(劇場版が続行されるんだし、それだけでも一生安泰なはずです。)
でもキャリア的には、鬼太郎とか怪物くんとか閻魔くんとか、
妖怪染みたキャラを務めることが多かったみたいですね。
それにしても中盤までは喋っても単語程度だったアシュラが、
若狭に追い出された途端、「生まれてこない方がよかった」と発言し、
その後普通に文法を理解して会話できるようになったのは、強引で不自然な気がしました。
これなら最後までカタコトの方がよかった気がします。

特に映像面はもっと頑張ってほしいと思いましたが、内容的には興味深く、
アヌシー国際アニメーションフェスティバルやサンセバスチャン国際映画祭など、
海外での評価もそれなりに得ている注目作なので、観ておいて損はないかなと思います。
続編の含みを持たせない潔い終わり方もよかったです。

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