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アイアン・スカイ

今日感想を書くのは、もう3週間も前に公開された映画です。
ボクは公開一週目に観たのですが、イマイチ印象に残らない作品で、
もっと印象的な他の作品の感想を優先的に書いているうちに、
本作の感想を3週間も放置してしまいました。
今日も本当は他に感想を書こうと思っていた新しい映画があったのですが、
映画の公開サイクルの早い昨今、ボク家の近所のシネコンでも明日で上映終了するらしく、
その前には感想を書いてしまおうと思い立ちました。
まだ上映が終了しそうなのに感想が書けてない映画が2本あります。
どちらも本作より更に前に公開された邦画ですが、
邦画は洋画よりも上映期間が長いのか、来週もまだ上映が続くみたいです。
それらも何とか上映中には感想を上げたいと思います。
もう重要なんて全くないと思うけど…。

ということで、今日は上映終了しそうな洋画の感想です。

アイアン・スカイ

2012年9月28日日本公開。
世界各国のSFマニアからカンパを集めたことでも注目された、異色のSFアクション。

1945年、連合軍の猛攻撃にさらされ、アドルフ・ヒトラーが率いていた「第三帝国」ナチス・ドイツは完全に敗北。しかし、その一部のエリートたちはひそかに月の裏側へと逃亡を図り、秘密基地を建造していたのだった。第2次世界大戦の終結から70年超にわたって独自の軍事テクノロジーを発展させ続け、虎視眈々(たんたん)と連合軍への復讐(ふくしゅう)の機会をうかがっていた彼らは、2018年、ついに決行のときが到来したと判断。UFOの大編隊を組んで、地球侵略を開始する。(シネマトゥデイより)



枕部分を読んでもらえればもうおわかりでしょうが、ボクは本作を全然評価していません。
でも、世間のレビューや感想などではかなり高い評価を受けており、とても不可解です。
まぁたった3週間で上映終了する劇場があるような映画ですから、
一般的にはその多くのレビューが実態を表しているとは言えず、
レビューを書こうというような一部のカルトな映画ファンにはウケがいいってだけかな。
(ボクもこうして感想を書いているのですけどね。)
実際に日本の批評家や映画ファンの評価は高いのに、海外の評価はイマイチで、
アメリカでは最大8館でしか上映されなかったみたいです。
それらの事実から、一般ウケしない作品なのは間違いなさそうです。

でも退屈するほどつまらないわけでもなく、当たり障りのない内容だったように思います。
しかし本作は風刺がウリの映画なので、当たり障りがないことほどダメなことはないです。
とにかく風刺の的が外れているというか、風刺しても仕方がないものを風刺しているので、
かなり中途半端な印象を受けるんですよね。
本作は風刺でナチスを切りつつ、返す刀でアメリカを切っているつもりだろうけど、
そのアメリカは共和党政権下のアメリカであり、ブッシュ大統領時代のアメリカで、
別に今のアメリカを揶揄しているわけではありません。
本作に登場する女性大統領のモデルも民主党の大統領候補だったヒラリーではなく、
共和党の副大統領候補だったペイリンです。
でもこういう作品は、現体制を切ってこその風刺だと思うんですよね。

例えば最近だと『ディクテーター』という風刺コメディ映画がありましたが、
その映画はイスラム圏のテロ国家を切りながら、返す刀でアメリカを切っていたけど、
そこで切られたアメリカは現在の実態に則したものだったので、痛快で面白かったです。
でも本作のように過去のものであるナチスや共和党政権なんて今更切ったところで、
どこが痛快な風刺なんだか理解できませんし、面白くもないです。
本作は国連も切っているという評価もありますが、本作で描かれているのは国連ではなく、
国際同盟と言う架空の国際組織です。
日本と北朝鮮が同じ席に着くような無茶苦茶な組織ですが、
ちゃんと風刺するつもりなら国連を使えばいいと思います。
つまり本作は、切っても問題ないような当たり障りのないものを揶揄しているだけの、
かなり中途半端な風刺映画ということです。
ナチスが劣等人種扱いするのも、ユダヤ人から黒人にすり替えられていますが、
これも比較的当たり障りが少ない方を選んだとみて間違いないでしょう。

アメリカに対する風刺は全く体を成していませんでしたが、
月面ナチスという発想は悪くなかったと思います。
しかし、発想は悪くなかったものの、描き方がダメであまり活かせていません。
第二次世界大戦後、敗北したかに見えたナチス軍の一部は月の裏側に逃げ込み、
地球帰還の機を窺っているという設定ですが、その月面ナチスはナチスらしくないです。
第二次世界大戦当時のナチスの科学力はおそらく世界一だったので、
1945年に月に行くこともあり得たかもしれないと思えますが、
それから2018年までの70年以上の間、テクノロジーがあまり進歩しておらず、
月面ナチス最高のコンピューターでさえ、iPhoneの足元にも及ばない能力です。
実質的に鎖国状態とはいえ、地球なんかよりも圧倒的に過酷な環境で生活し、
ヘリウム3の採掘場や宇宙艦隊まで持っているのに、文明のレベルが低すぎます。
ナチスを揶揄したい気持ちはわかるけど、テクノロジーや文明の進化など、
もっと説得力を持たせて描かないと、全くリアリティを感じず、揶揄にすらなりません。
月面ナチスの構成員も、ナチ公っぽいのは月面親衛隊准将アイドラーくらいで、
これのどこがナチスなのかと思ってしまいます。
なんでも、監督曰く「月面ナチスは史実のナチスとは別のもの」なんだとか…。
たしかにアイドラーもナチスを指す「第三帝国」ではなく「第四帝国」と称していますが、
そんなの逃げ口上にもほどがありますよね。

本作はドイツとフィンランドとオーストラリアの合作映画なのですが、
ドイツでは今でも鉤十字を使用するだけで法律に触れるらしいけど、
こうして娯楽映画でナチスをネタにする分にはなぜか問題ないんですね。
日本だと「月面大日本帝国軍が地球を侵略する」なんて映画は絶対撮れませんが、
ドイツはもう「我々はナチスとは関係ない」ってスタンスなんでしょうか。
月面ナチスの宇宙船がNYに現れ、国際同盟本部ではどこの国の船か議論になりますが、
まず彼らが嫌疑を掛けたのはインド、続いて日本、中国です。
(北朝鮮は自国の船だと言い張りますが、相手にされません。)
宇宙船の掲げる鉤十字を卍(まんじ)と解釈したわけですが、
普通ならハーケンクロイツだと思うはずで、真っ先にドイツに嫌疑を向けるはず。
あたかもドイツがナチスとは関係ないと言わんばかりの演出だと思いました。
インドや中国はまだしも、アメリカと同盟国の日本を疑うなんて無茶苦茶な展開です。

月面ナチスの攻撃に対し、アメリカは宇宙戦艦USSジョージ・W・ブッシュを出撃させます。
(あまり笑いどころのない映画でしたが、このネーミングはちょっと可笑しかったです。)
この宇宙戦艦は宇宙の軍事利用を禁止する宇宙平和条約違反にも関わらず、
アメリカが密かに建造し、隠し持っていたものなのですが、
実は他の国も宇宙戦艦を隠し持っていて、USSジョージ・W・ブッシュの危機に、
文字通り真っ先に助け舟を出したのがオーストラリアです。
続いて各国の宇宙戦艦も出撃して、国際同盟の大艦隊となるのですが、
フィンランドはなぜか武器を積んでおらず…。
これがどういう意味の風刺なのかはわかりませんが、
オーストラリアとフィンランドは本作の製作国なので、
ドイツの本作へのスタンス同様、この演出にも何かしらの意図があるように思われます。

この月面ナチス艦隊VS国際同盟艦隊のドッグファイトも、
ハリウッド映画に比べると重量感がないというか、
なんだかチープでショボかったです。(よく言えばレトロだけど。)
それもそのはずで、本作はかなり低予算だったみたいですね。
製作費は750万ユーロですが、そのうち100万ユーロはなんと映画ファンからのカンパです。
そのこともあたかも「映画ファンから期待されている」かのように話題になりましたが、
裏を返せば、配当が期待できないと思われたから、出資者が足りなかったわけですよね。
予算だけでなく、アイディアも足りなかったのか、
映画ファンからネットでアイディアまで募集したみたいで…。
道理でオタク染みた一般ウケしにくい内容になっているはずです。
日本での宣伝もニコニコ動画を利用して、ガンダムオタクとかにアピールし、
通常の予告編にニコ動のコメントを乗せた趣味の悪い予告編を劇場上映していました。
あんなつまらないコメントが流れるせいで、内容が見え難い予告編に何の意味があるのか。
ただでさえニコ動が嫌いな人ってかなり多いのに、宣伝としては逆効果ですよ。
これはボクの持論ですが、ニコ動が好きなやつは、劇場で黙って映画なんて観ませんし、
劇場で映画を観るのが好きな人は、海賊版の温床であるネット動画は嫌いです。

最後に、よかったところを一点だけ。
ヒロインのレナーテを演じたブロンドの女優が可愛かったです。
強烈なナチ女だと思ったら、意外にも清純派ヒロインで魅力的でした。
レテーナは地球を侵略しようなんて思っておらず、ただ地球に帰還して、
国家社会主義ドイツ労働者党の理想を流布したいと考えています。
彼女は生まれた時から月面ナチスのプロパガンダを受けてきたので、
純粋にナチスは素晴らしいものだと思い込んでいますが、
地球に来て、映画『チャップリンの独裁者』をフル尺で観ただけで、
簡単に洗脳が解けてしまうんですよね。
ちょっと強引すぎる展開だと思いました。
あと、戦闘中でも国歌が流れると斉唱してしまうナチスの兵も無理があると思います。
アイドラーの死に方にしても、ナチスを徹底的にバカとして描きたいのでしょうが、
人間味すらなくなって、妙な生態の人型エイリアンって感じです。
宇宙からエイリアンではなく、我々と同じ地球人が攻めてくるというのが、
本作のSF映画としての独創性なのに台無しです。

なんでも続編と前日譚も企画してるとか…。
もし実現しても、次は日本で公開されないんじゃないかな。

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