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天地明察

昨日は敬老の日だったし、4日後は秋分の日なので、
今週は2日も祝日がありますが、ボクはどちらも普通に出勤日です。
去年まではほぼカレンダー通りの生活をしていたのですが、
今年の春から勤務シフトが変わってしまい、祝日どころか週末も出勤日になりました。
もちろん平日に休みはもらえるのですが、世間はカレンダー通りに動いているため、
不便を感じることも多々あります。
週末の昼休みに飲食店に行ったら平日限定のお得なランチがないとか…。
逆に平日が休みなので、映画館なんかは空いて、当日でもいい席が取れたりと助かります。
平日昼間の商業施設はどこも空いているので、遊びに行くには好都合のように思いますが、
友達の多くはその時間は働いているので予定が全く合わず、結局ひとりで遊ぶしかなく…。
ひとりで遊べるのは映画館くらいで、休みの日は映画をハシゴするだけで終わります。
カレンダー通りの生活というのが、如何に掛け替えのないものかを痛感しました。

ということで、今日はカレンダーを作った人の物語の感想です。

天地明察

2012年9月15日公開。
『おくりびと』の滝田洋二郎監督が、冲方丁原作の時代小説を映画化した娯楽大作。

太平の世が続く江戸時代、算哲(岡田准一)は碁打ちとして徳川家に仕えていたが、算術にもたけていた。もともと星を眺めるのが何よりも好きだった彼は、ある日会津藩主の保科正之(松本幸四郎)の命を受け、北極出地の旅に出ることになる。算哲らの一行は全国各地をくまなく回り、北極星の高度を測り、その土地の緯度を計測するという作業を続け……。(シネマトゥデイより)



本作は江戸時代初期の天文暦学者・渋川春海が、
日本初となる国産暦「貞享暦」を作るまでを描いた物語です。
暦(カレンダー)なんて、あって当然のものとして普段何気なく使っていましたが、
本作を観て、実は暦がとても精巧に作られているということを改めて実感しました。
とても興味深い物語で、今年観た邦画の中でも屈指の面白い作品でした。

渋川春海は作中では安井算哲という名前です。
どうやらその名前は名跡のようなものらしく、彼の本職は碁打ちで、
安井家はあの本因坊家に並ぶ、囲碁の家元のようです。
本作には史上最強の棋士とも言われる本因坊道策も登場し、
算哲の親友でありライバルとして活躍します。
そんなすごい碁打ちでありながら、数学や天文学にも通じているなんて、
ちょっとしたレオナルド・ダ・ヴィンチのような万能の天才ですね。
まぁ実際は万能ってことはなく、数字にはやたら強いって感じで、
魚の種類も見分けられなかったりと、少し抜けたところもあり、
そんなところが可愛げがあって魅力的です。
やっぱり囲碁も数字が強い方が有利なんじゃないかな?
ボクは囲碁で勝ったことないけど、簿記三級に落ちたほど数字に弱いし…。
数学者や塾の学生が、絵馬に図形の問題(設問)を書いて神社に奉納し、
それ見た人が解くという文化(算額)が本作で描かれていますが、
それがとても楽しそうで、そんなことでも楽しめる理数系の人を羨ましく思います。

ある日、算哲は会津藩主・保科正之から、北極出地を命じられます。
北極出地は日本各地で北極星を観測するという仕事で、たぶん測量が目的でしょうね。
そこでの働きが認められ、今度は新しい暦作りが命じられるのです。
当時の暦は唐から伝わった「宣明暦」を使っていましたが、
800年も前に発明された暦であるため、かなりの誤差を生じていたようです。
しかし暦は公家の歴博士が代々司っており、改暦を認めません。
暦は政(まつりごと)や経済に深く影響するため、公家の利権になってるんですね。
当時は庶民も諸事の日取りを決めるのに六曜など暦注を重視していたようで、
今以上に暦は生活に欠かせないものだったのだろうと思います。
なので朝廷の意向とはいえ、間違った暦を使い続けるのはよくないと、
保科正之は算哲に正しい暦を作ることを命じたのです。
でも新しく別に作らなくても、「宣明暦」も夏至や冬至が約2日ずれているだけなので、
日にちを2日ずらせばまた暫らくは使えそうな気がしたのですが…。

暦作りを始めた算哲ですが、意外にも一から新しい暦を作るのではなく、
唐時代の「宣明暦」と、元時代の「授時暦」、明の「大統暦」の中から、
最も精度の高いものを選ぶという方法を取ります。
そして「授時暦」を選ぶのですが、公家は元寇を持ちだし、元国の暦だからと拒否します。
算哲は世論を味方に付けようと、「宣明暦」「授時暦」「大統暦」の三暦勝負を始めます。
三暦勝負は各暦の蝕の予報が的中するかを比べるもので、
それにより「授受暦」の正確性をアピールしようと考えたのです。
そんな学術的なことに庶民が興味持つとは思えませんが、実は賭け事になってるんですね。
当時は囲碁の棋戦なんかも庶民の賭けの対象になっていたみたいです。
その三暦勝負で、算哲の思惑通り次々と予想を的中させる「授時歴」。
焦った公家は、算哲の天文台に忍者を使って襲撃をかけてきます。
まさか本作にアクション・シーンがあるとは思いませんでしたが、
やっぱり時代劇はちょっとくらいチャンバラがあった方が楽しいですね。

その忍者襲撃で暦学の師匠が殺されるなど、算哲は大打撃を受けますが、
極めつけは三暦勝負最終戦で、「授時歴」が予報を誤謬してしまい…。
さっぱり原因がわからないまま、算哲は落ち込んでしまいます。
しかし尊敬する和算師・関孝和に励まされ、彼は再び暦作りに挑みます。
余談ですが和算とは日本独自の計算方法で、そろばんを使った計算などがそうですが、
算哲や関孝和などレベルの高い数学者は、算木という道具を使うみたいです。
本作でも何やら枠の描かれた模造紙に木の棒を並べて計算していましたが、
全然使い方がわからず、逆に興味を惹かれました。
調べてみても使い方はわかりませんでしたが、どうやら高次の代数方程式も解けるそうで、
江戸初期にすでにそんなことが出来るということに驚きました。

関孝和に励まされ頑張ってはみたものの、やはり誤謬の原因はわからず、
ついには暦作りを投げだしてしまった算哲。
しかし碁のライバルである本因坊道策に叱責され、やる気を取り戻し、
水戸藩主・徳川光圀の協力を得て、日本独自の暦作りを始めるのです。
徳川光圀といえば水戸黄門ですが、水戸黄門ではない光圀を観るのはなんか新鮮です。
西洋かぶれだし、算哲に斬りかかったりと、好々爺なイメージとは全然違いました。
地球儀を自作した算哲は、「授時暦」の誤差が北京との時差よるものだと気付きます。
なんというか、そんな単純な原因だったのかと拍子抜けしましたが、
地動説もあまり知られていない当時では、気付きにくかったのかもしれませんね。
つまり「授時暦」も、中国で使えば正確な暦だったわけで、
算哲がやったことは時差を修正し日本版にしただけで、
偉業には違いないけど、日本独自の新しい暦とまでは言えない気がしました。

光圀により「大和暦」と名付けられたその暦は、
公家が「宣明暦」の代わりに推していた「大統暦」との勝負に勝ち、
天皇によって日本の暦に採用され「貞享暦」という名称になりましたが、
作中では描かれてませんが、採用から70年後に新しい暦「宝暦暦」が採用されます。
「宣明暦」から800年ぶりに改暦されたのに、たったの70年でまた改暦なんて…。
しかも「宝暦暦」は算哲の「貞享暦」よりも劣っていたそうで、
当時は今以上に暦が大切な割には、その扱いはかなりズサンですね。
まぁ「貞享暦」だって完璧に正確なわけではなく、
結局今の日本、いや世界ではグレゴリオ暦が採用されています。
4年に一度の閏年で誤差を補正する暦ですが、簡単なようでいて意外と複雑で、
西暦2000年が例外的に閏年になったのも記憶に新しいところです。
(4年ルールでは2000年は普通に閏年のはずだけど、100年ルールもあるそうで…。)
今年も7月に閏秒なんてのもありました。
いくら賢くてもそんな精密なことまで当時わかるはずもありませんね。

暦作りと並行して、妻となるエンとのロマンスも描かれます。
エンを演じる宮崎あおいは好きなので、やっぱりいいなと思いましたが、
算哲演じる岡田准一もそうだけど、たぶん10年以上の年月を描いている話の割には、
二人とも若々しいままで全く変化が感じられないのは違和感があるかな?
もっと歳月を感じさせる方が、暦作りの大変さや偉大さがもっと伝わったと思います。

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