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ディクテーター 身元不明でニューヨーク

動画サイト「YouTube」にイスラム教の預言者ムハンマドを愚弄する短編映画が投稿され、
イスラム圏各地で反米抗議暴動が起こっているようです。
リビアでは米領事館が武装集団に襲撃され、駐リビア米大使が殺害されるなど、
洒落にならない状況にまでなってしまっているようです。
その原因となった短編映画『Innocence of Muslims』がどんな内容なのか気になったので、
YouTubeで見てみました。(削除されてるかなと思ってたけど、普通に見れました。)
投稿されていたのは13分の予告編みたいなものでした。
全編英語なので完全に理解はできませんでしたが、ムハンマドの生涯を描いた内容で、
彼のことを女好きなペテン師として描いています。
イスラム教に対してかなり悪意を感じる内容ではあるものの、
映画としての完成度は最低で、取るに足らない作品だと思います。
これで暴動を起こしたり、映画と関係のない大使館職員を殺害するのはやりすぎです。
ただし、風刺の仕方が度を超えているのも事実なので、制作者を擁護する気はなく、
アメリカは彼の身柄を差し出して事態の鎮静化を図ればいいと思います。

ということで、今日はリビアの独裁者カダフィ大佐を風刺した映画の感想です。
ハリウッドも今回の事件を受けてイスラムを風刺する映画は暫らく作り難くなるかも?

ディクテーター 身元不明でニューヨーク

2012年9月7日日本公開。
サシャ・バロン・コーエンによる痛快爆笑ムービー。

アラジーン将軍(サシャ・バロン・コーエン)は、幼いころから北アフリカにあるワディヤ共和国の独裁者として君臨していた。彼は気に入らない相手を即刻処刑したり、核ミサイルの開発に手を出したりとやりたい放題だったが、ある日、核ミサイルの件で国連から釈明を求められてしまう。そこで将軍は意気揚々とニューヨークに旅立つが、陰謀により捕らえられ、立派な口ひげをそられてしまい……。(シネマトゥデイより)



『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』『ブルーノ』など、
不謹慎なキャラを演じてきたお騒がせ男サシャ・バロン・コーエンが、
北アフリカにある架空のイスラム国家「ワディア」の独裁者を演じた本作。
彼が本作で演じた独裁者アラジーンは、またしても不謹慎なキャラで面白かったのですが、
『ボラッド』や『ブルーノ』のようなドッキリで構成されるモキュメンタリーではなく、
本作は完全にフィクションなので、どんな彼の行動や周りのリアクションも、
所詮は全て台本通りであり、不謹慎さということに関してはパワーダウンしています。
まぁ架空の国の独裁者のふりなんてすぐにバレるからドッキリは成立しませんし、
コーエン自身も有名になったのでモキュメンタリーはもう無理なのかも?
それは残念な気もしますが、完全フィクションな分、ストーリーはよく練られており、
普通のコメディ映画としてはかなり面白い出来になっていると思います。
それでいてシニカルさは強くなっていて、単なるコメディでは終わらない、
風刺の利いた作品に仕上がっていて興味深かったです。

ワディアの独裁者アラジーン将軍は、リビアの元最高指導者カダフィ大佐がモデルですが、
風貌はカダフィとは違い、生まれながらに蓄えられた顎鬚がトレードマークです。
思想的にはカダフィと同じで、反アメリカ主義、反ユダヤ主義の専制君主です。
かなり好色で我儘で幼稚な性格で、かなり厄介な独裁者です。
ワディアは産油国ですが、彼は「石油は売るな」という亡き父の言いつけを守っています。
しかし彼の叔父タミールは、石油の輸出で儲けたいと考えており、
そのために邪魔な甥のアラジーンを暗殺する機会を狙っています。
ワディアはこっそり核兵器の開発もしているのですが、国連安保理が軍事介入を決め、
アラジーンはそれを回避するためニューヨークの国連本部で釈明会見することになります。
しかしニューヨークで叔父タミールが雇った殺し屋に拉致され、
辛くも脱出するも、トレードマークの顎鬚を剃り落とされ、
誰も彼がアラジーン将軍だとは気付かない状況に…。
その間にもタミールは、アラジーンの影武者を立て、自分の傀儡として利用し、
会見でワディアの民主化を旨とする新憲法に署名させようと考えます。
アラジーンはなんとかそれを阻止しようとするが…、という話です。

「金正日を偲んで…」という文句から始まる本作は、
北朝鮮やイスラム圏の社会主義国など独裁国家の専制君主を揶揄する内容ですが、
返す刀でアメリカの民主主義の在り方もバッサリ斬っており、
単なる独裁者を皮肉る作品ではなく、むしろ反米的な作品だと思います。
というよりも、民主主義であるはずのアメリカも、その実態は独裁国家と変わらず、
それどころかもっと酷いということが描かれており、とても興味深いです。
普通に考えれば独裁国家のワディアが民主化されるのは喜ばしいことですが、
クーデターを企むタミールは石油利権で儲けたいという私利私欲のために民主化を謀り、
それで国内の油田がアメリカや中国の石油会社の手に渡ってしまうのは、
国益を考えれば喜ばしいことではありません。
実際にアメリカって資源の豊富な国は民主化させようと躍起になるくせに、
ロクに資源もない北朝鮮になんかは悠長に対応してますよね。
ワディアのモデルであるリビアも、実際にこっそり核兵器開発をしていましたが、
その事実を認め、核兵器を全廃しました。
しかし核の脅威がなくなった結果、NATOに容易に軍事介入されちゃって、
結局カダフィの政府軍は敗北することになります。
カダフィは石油の関税自主権を石油会社から奪い返したそうですが、
アメリカがカダフィ政権を倒したかった理由は、人道的な目的なんかではなく、
やっぱり石油利権が最も大きな理由ではないかと思います。
先達てのリビアの領事館襲撃事件も、ムハンマド侮辱映画は単なる引き金で、
リビア市民のアメリカに対する不信感が爆発したんだと思います。

トレードマークの顎鬚を失い、誰からも本物のアラジーンだと信じてもらえない彼は、
新憲法への署名が行われるホテルのケータリングを請け負う業者の求人に応募し、
従業員としてホテルに忍び込もうと考えます。
彼は見事に採用されましたが、その業者は経営難になり、計画の実行も難しくなって…。
しかし彼は短期間で経営を立て直してしまいます。
ライバル店を妨害したり、役人を脅したり、ダメ従業員に拷問したりと、
無茶苦茶な方法ですが、独裁者としての経験が意外なところで役に立ったものです。
ただのウツケかと思ってましたが、案外指導力もあるみたいですね。
本人もその経験で最高指導者としての自覚が芽生えたようで、
「最高の独裁者」を目指そうと決意します。
民主主義が不完全なものであることが証明された今となっては、
ボクも独裁が絶対的に悪いものだとは思えなくなりました。
独裁が悪いのではなく要は誰が独裁するかが重要なんですよね。
日本のようにリーダーシップの欠片もない奴が民主的に首相に選ばれるよりも、
指導力があり能力も人格的にも素晴らしい人が君主になる方が国民は幸せでしょう。
まぁアラジーンの場合は、指導力はあっても人格的に問題だらけですが…。

なんとか調印式までに影武者と交代できたアラジーンは、
会見の場で独裁の正統性、民主主義の欠点を演説します。
民主主義であるアメリカはわずか1%の富裕層が富を独占したり、
嘘の建前でイラクに進行したことなど、全く民主的ではないと主張します。
彼の主張はいちいちもっともで、民主主義って何だろうと考えさせられます。
その上で彼は「真の民主主義」を掲げ、ワディアを民主化するのです。
真の民主主義がどんなものなのか、とても興味が湧きましたが、
最低の独裁者だったアラジーンの本質がそう簡単に改善されるはずもなく、
一応最高指導者は選挙で選ばれることになったけど、完全な不正選挙で…。
やっぱり真の民主主義なんてものは不可能ってことですかね。

ここまで、アメリカに対する風刺のところを中心に感想を書きましたが、
本当に本作の面白いところは、やはりアラジーンがやりたい放題する序盤や、
ムスリムを揶揄するヘリコブターのエピソードなど、コメディシーンです。
その無茶苦茶な展開はかなり笑えます。
マスターベーションや出産に立ち会うシーンなど、下ネタも多いけど、
劇場で観る場合は下劣な下ネタだとどうしても笑いにくく、
特に知人と観に行ったりするとちょっと気まずかったりして、あまり楽しめませんでした。
それでも『ボラッド』や『ブルーノ』よりは控えめで、観やすい方です。
人間の生首で遊ぶちょっとグロいシーンもあるので、苦手な人は注意です。
まさかのロマンス要素もありますが、ヒロインの脇毛はやっぱり抵抗があるかな…。

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