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あなたへ

先日閉幕した第69回ヴェネチア国際映画祭ですが、
北野武監督の『アウトレイジ ビヨンド』が健闘出来なかったこともあるけど、
いろんな意味で不本意な結果で終わってしまい残念でした。
まぁ去年の金獅子賞『ファウスト』も一昨年の金獅子賞『SOMEWHERE』も、
ボクにとっては年間ワーストに近い作品だったので、
あまり信頼できない国際映画祭ではあります。
今回の金獅子賞も絶対観に行かないと思います。

この時期は権威のある国際映画祭が多い時期で、
ヴェネチア国際映画祭にちょっと先行して第36回モントリオール世界映画祭が開催され、
今もまさに第37回トロント国際映画祭が開催中です。
もっと期間をずらして開催したら、各々もっと注目されると思うのですが、
まぁ映画ファンとしては、ちょっと楽しい時期ですね。
権威としてはヴェネチア>トロント>モントリオールって感じですが、
ボクの信頼感としてはトロント>モントリオール>ヴェネチアです。
開催中のトロントには日本から『テルマエ・ロマエ』が出品されていますが、
一番の注目はベン・アフレックの『アルゴ』ですかね。

ということで、今日は先日の第36回モントリオール世界映画祭で、
コンペ部門以外の審査員が選ぶエキュメニカル賞特別賞を受賞した日本映画の感想です。

あなたへ

2012年8月25日公開。
高倉健が降旗康男監督と20作目のタッグを組んだ人間ドラマ。

北陸の刑務所で指導技官として勤務する倉島英二(高倉健)のところに、亡くなった妻・洋子(田中裕子)が生前にしたためた1通の手紙が届く。そこには故郷の海に散骨してほしいと書かれており、英二は洋子が生前には語らなかった真意を知るため、車で彼女の故郷・九州へと向かう。その道中で出会ったさまざまな人々と交流するうちに、妻との思い出が頭をよぎり……。(シネマトゥデイより)



本作は週末興行成績初登場2位だったのですが、そんな好成績にもかかわらず、
驚いたことに平均客単価がたったの1110円だったとのこと。
これは観客がほとんどシニアばかりで、シニア料金の1000円で観た人が多かったからです。
逆に言えば、若い世代はほとんど観に行っていないってことですが、
それでも2週目の『アベンジャーズ』をも抑えての2位はスゴイですね。
というか、昨今の映画館が老人ばかりなことには、少々懸念も感じます。
映画鑑賞意欲がお旺盛なシニアに割安な特別料金を設けるよりも、
20代以下の映画離れの激しい若い世代に安価な料金を適用すべきです。

ボクはシニア料金を適用してもらえるまでには、まだ30年近くありますが、
平均客単価よりも高い料金を払って、本作を観に行きました。
若い世代が全く興味を示さない作品なので、比較的若いボクも例外ではなく、
当初は本作を観るつもりはさらさらなかったのですが、
やはりモントリオール世界映画祭に出品されたことだし、
本年度の日本アカデミー賞の最有力作品だろうと思ったので、
映画ファンとしては観ておくべきかと考え、半ば嫌々観に行きました。
劇場にはやっぱりシニアが多くて、ボクなんかは完全に場違いで後悔が過りましたが、
いざ作品を観てみると、不思議とそれなりに楽しめたように思います。
明らかにシニア向けの熟年夫婦の物語なので、感情移入なんてのはできなかったし、
別に感動したりもしませんでしたが、登場する人物が悉く豪華キャストなことと、
意外と魅せるストーリー展開に感心しました。

豪華キャストについては、やはり7年ぶりの映画出演となる主演の高倉健が売りですが、
ボクは世代的に彼の作品はほとんど観てませんし、彼の価値もわかりません。
むしろ7年も演技をしないで名優なんて持ち上げられていることに違和感を覚えます。
いざ本作を観てみても、歳の割にはしっかりした演技をするお爺さんだなって感じで、
それほど存在感があるわけでもなく、世間が何を有難がっているのかが不明です。
(はじめてじっくり見たけど、高倉健ってトミー・リー・ジョーンズに似てますよね?)
しかし、脇を固めるキャストがかなり豪華で、これだけのキャストを集められるのも、
高倉健の主演作だからに他ならず、超大御所であることは理解しました。
彼の妻役の田中裕子も、ボクにとってはあまり馴染みのない女優ですが、
実は過去にモントリオール世界映画祭で主演女優賞を受賞している人なんですね。
高倉健も主演男優賞を受賞しているはずなので、
モントリオール受賞コンビという、何気に粋なキャスティングです。

高倉健演じる主人公が、田中裕子演じる亡くなった妻の
「故郷の海に散骨してほしい」という遺言を実行するため、
長崎県平戸市薄香の港まで一人旅をするという旅情ものです。
主人公の倉島は富山刑務所に勤めているので、富山県から長崎県までの旅をします。
木工が趣味な彼は、ハンドメイドのキャンピングカーで行くのですが、
高速道路でも使えば1日あれば着く距離を、ほぼ地道で7~8日かけて行きます。
その理由はよくわかりませんが、ほとんど車上泊だし、高速料金が勿体なかったのかな?
…なんて、高速使って一日で着いたら旅情ものとして成立しませんね。
その旅路でのロケーションや、豪華キャストとの出会いが本作の魅力なんだし…。

富山を出発した倉島は、まず岐阜県飛騨高山に着き、
そこでビートたけし演じる中学校の国語教師と出会います。
豪華キャストの中でも一番の大物が真っ先に出てきたのには驚きました。
むしろたけしの登場シーンを最も楽しみにしていただけに、こんな早く出しちゃって、
後の楽しみがなくなるから、もっと出し惜しみしてほしかったとすら思いました。
すぐに別れてしまうのですが、山口県下関で再開したのは嬉しかったです。
彼は実は国語教師などではなかったことが判明するのですが、
ビートたけしらしい面白い正体で、ちょっと笑えました。
その下関では浅野忠信演じる警察官にも出会うのですが、
他のキャストに比べるとホントに勿体ないくらいのチョイ役で…。
ビートたけしにしてもそうだけど、海外の映画賞とかマーケットを意識した配役かな?

飛騨高山を出発した倉島は、京都で草なぎ剛演じるイカ飯の実演販売員と出会います。
車がエンコして困っていた彼を、大阪の物産展まで乗せていってあげるのですが、
流れでイカ飯の販売を手伝うことになります。
驚いたのは、その販売員の後輩(部下)役が佐藤浩市だったことです。
草なぎ剛の部下が佐藤浩市って、普通なら逆じゃないかと思い、
その時はとんでもないミスキャストだなと思ったのですが、
このふたりとは福岡県の門司で再開し、この妙な設定が後から利いてくるんですよね。
大阪では道頓堀の回想シーンでナイナイ岡村演じる阪神ファンも登場します。
ちょっとした遊び心かもしれないけど、回想シーンは夫婦2人だけの方がいい気がします。

大阪で悠長に2日間もイカ飯の販売を手伝った倉島は、
隣の兵庫県和田山の武田城址に立ち寄ります。
ボクは兵庫県民なので、ロケ地のひとつに我が県を選んでくれたのは単純に嬉しいですが、
大阪に行ったてことは瀬戸内海側を走ってるはずなのに、
但馬地方の和田山に寄るっていうのはかなり不自然です。
あまりに見え透いた観光PRで、ちょっと冷めますね。
富山を出る時に同僚の刑務官が「長崎まで1200~1300kmはありますよ」と言ってましたが、
実は普通に行けば1000km程度しかありません。
和田山に寄ればちょうど1300kmくらいになるのですが、
なぜ同僚は倉島が和田山に寄ることをちゃんと想定していたのか不思議ですね。

和田山を出発した倉島は、下関、門司を経て、ついに目的地の薄香に到着します。
(せっかく行程にあったのにすっ飛ばされた岡山や島根が可愛そう。)
そこで散骨のために船を探すが、漁師から「散骨は迷惑だ」と船を出してもらえず…。
別に海岸からこっそり巻いちゃえばいいと思うんだけど…。
そこで地元の食堂の看板娘と出会うのですが、彼女を演じるのが綾瀬はるか。
大好きな女優なのでビートたけしの次に登場を楽しみにしていたキャストですが、
博多弁を話す彼女もとても可愛らしく魅力的でした。
彼女のシニア受けがどうか知らないけど、当代随一の若手女優を起用するあたり、
一応彼女のファン層の若い世代の集客も狙ったのかもしれませんね。
彼女の母親役に余貴美子、婚約者の祖父役に大滝秀治と大物俳優を配していますが、
どうせなら婚約者も三浦貴大じゃなくて、若手人気俳優にしたらよかったかも。
いや、三浦貴大がダメなわけじゃないですが、周りが豪華キャストすぎるので、
彼だけ少々小粒で、バランスが悪く感じてしまうんですよね。

以下、重大なネタバレを含みます。

綾瀬はるか演じる看板娘の父親は、7年前に海で遭難して行方不明なのですが、
なんとその父親が、佐藤浩市演じるイカ飯販売員の部下だったのです。
いやぁ、島の口からそのことが語られるまで、そんな展開は全く予想していなくて、
このオチには正直かなり驚きました。
思い返せばそれまでにけっこう示唆されていたのですが、
全く気付かず、伏線の張り方の巧妙さに感心させられました。
気付かない要因のひとつは、佐藤浩市が若づくりなためです。
彼女の父親は倉島の妻の2つ下らしいので50代ってことになりますが、
見た目的にも草なぎの後輩っていう役柄的にも、せいぜい40歳そこそこにしか見えず、
まさか50代だったとは思いませんでした。
でも佐藤浩市って、実年齢も50代なので、別に変じゃないんですよね。
それに綾瀬はるかの父親役だと思えば若すぎる気もするけど、
余貴美子の旦那役だと思えば全く違和感はなかったかも。
むしろ年齢的に違和感を覚えるのは、高倉健演じる倉島で、
嘱託とはいえ、さすがにあの歳で刑務所の所員ってのは変だし、
妻役の田中裕子とも、夫婦を演じるには年齢差がありすぎると思いました。
もしかしたら倉島はまだアラウンド・セブンティーな設定なのかな?

倉島は薄香の郵便局で局留め郵便だった妻の最後の遺言を受け取りますが、
そこには一言「さようなら」としか書かれておらず…。
よほど感動的なことでも書いてあるのだろうと思っていたので、
これにはボクも拍子抜けしてしまい、なんだかガッカリしました。
倉島もそれにはさすがに動揺しますが、その一言を自分なりに解釈し納得します。
たぶん倉島や彼の妻に感情移入できるシニアならその解釈も補完できるのでしょうが、
人生経験がペラペラのボクにはどうにも納得できず、全く感動できません。
ただ、ボクの両親もシニア層なので、この夫婦の死別の物語を観ると、
両親に重なってしまって、ちょっと悲しい気分にはなりました。
何にしても、やはりボクが本作を味わうには時期尚早だったかなと思いました。

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