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先生を流産させる会

昨日感想を上げた『ゴッド・ブレス・アメリカ』は公開から1カ月、
今日感想を上げる『先生を流産させる会』は公開から3カ月経っており、
最新作を中心に扱うウチのブログとしては珍しく古い映画の感想が続きますが、
この2本もウチの地方(関西)では先週末公開されたばかりの最新作です。
昔みたいに映画のフィルムを持ち回りで巡業的に上映しているわけでもないだろうに、
未だに「全国順次公開」みたいな公開方法を取る映画って何なんですかね?
東京を優遇しているというか、地方をナメてるとしか思えないし、
そんな映画を地方の人が有難がって観に行けば、尚更ナメられると思うから、
こんな地方を2番館、3番館扱いする無礼な配給会社の映画はボイコットすべきです。
…とはいえ、面白そうな作品だとついつい観に行っちゃうんですよね。
ただし、やはり全国一斉上映の作品よりも期待値のハードルが高く設定されるので、
全国順次上映の作品を観に行く機会はかなり少なくなります。(評価も厳しくなります。)
それはボクだけじゃないはずなので、全国順次上映した場合は
全国一斉上映した場合に比べ、かなり儲けを損なっているはずです。
話題性も東京の初上映時から右肩下がりになるはずだしね。

ということで、今日は東京公開から3カ月も遅れ大阪公開された映画の感想です。

先生を流産させる会

2012年5月26日公開。
愛知県半田市の中学校で実際に起きた事件を題材にしたサスペンスドラマ。

郊外の中学校で教師を務めるサワコ(宮田亜紀)が妊娠し、彼女が担任を受け持つクラスの生徒たちは活気づく。そんな中、ミヅキ(小林香織)はサワコがセックスをしていることに異常な嫌悪を示す。やがて彼女は、自分が率いるグループで「先生を流産させる会」を結成、サワコの給食に理科室から盗んだ薬品を混入して流産を促そうとする。味の異変を察知して給食を吐き出したサワコは、ミヅキの仕業だと知って彼女と仲間を激しく戒める。だが、それを受けてミヅキは反省するどころか、より嫌がらせをエスカレートさせていき……。(シネマトゥデイより)



羊頭狗肉とはこのことで、衝撃的なのはタイトルだけで中身はかなり微妙…。
中学一年生が寄ってたかって担任教師を流産に追いこむというインモラルな内容の、
『告白』のようなサスペンスかと思ったら、むしろその行為自体よりも、
その中学生グループのリーダー格の少女をサイコパスとして描いた作品で、
印象としては『エスター』のようなモンスター映画に近いです。
そのリーダー格のミヅキは雰囲気からして異常さを感じる気味の悪い少女で、
そんな見ただけで嫌悪感を覚えさせる風貌の子役を発掘してきたことはお手柄です。
窓の外から手招きするシーンなんて完全にホラーで、ゾッとします。
しかしサイコパスもののホラー映画としてはそこそこかもしれないけど、
本作に期待していた内容とは全く違ったので、高評価には繋がりません。
それにしてもミヅキを演じた子は、デビュー作でこんな役を演じさせられて、
今後の女優人生大丈夫なのかなと心配になります。
彼女以外のグループの女子たちも全員映画初主演だったようですが、
フィルモグラフィーの先頭にこんな嫌悪感を覚えるタイトルが載ってしまうのは、
あまりポジティブなことにはならないような気がします。
まぁ演技未経験だったらしいので、ほとんどの子は演技の道には進まないでしょうが。

本作は実際の事件を基に作られており、
その基となった事件はかなり衝撃を持って報道されたので、
さすがのボクも「先生を流産させる会」というネーミング程度は覚えていました。
でも一過性の報道だったので、その事件の内容や顛末までは覚えてません。
観賞後に知ったのですが、本作の内容は実際の事件からかなり改変されているみたいです。
本作では最終的に流産してしまった担任のサワコ先生ですが、
実際の先生は幸運にも流産するまでには至らなかったそうです。
中でも最も大きな変更点は、会のメンバーが男子生徒から女子生徒になったことでしょう。
(わざわざ舞台を今どき珍しい女子中学校にする徹底ぶり。)
内藤瑛亮監督曰く「男子だとイタズラで終わるからつまらない」、
「女子にすればもっと深く描ける」ということで改変したそうです。
その目論見が当たったのかどうかはわかりませんが、
この改変は実際の事件の根本を大きく歪曲する解釈であり、
これはもう「実際の事件を映画化した」とは言えないレベルです。

実際の加害者男子生徒は席替えの不満とか他愛のない理由で犯行に及んだようですが、
本作のミヅキたち加害者女子生徒は、思春期の性に対する嫌悪感から、
「サワコ、セックスしたんだよ。気持ち悪くない?」と、
担任の妊娠に対する反発から犯行を始めます。
監督は「妊娠を嫌悪するキャラでないといけない」と考え、
男子生徒を女子生徒に変更したそうですが、これでテーマが深まっているかは甚だ疑問で、
むしろ男子生徒による担任への純粋な悪意を、妊娠に対する性的嫌悪感に置き換えたのは、
加害者生徒の犯行の動機に一定の正統性を持たせているようなものです。
最終的に流産にまで至る本作の方が衝撃的なようにも思えますが、
生徒の残酷さや悪意では、実際の事件の方が格段に衝撃的で、その心の闇は深いです。
結局、監督は物語を深く掘り下げたつもりが、逆に薄っぺらく改悪しちゃってるんだよね。
まぁこんな悪意に満ちた犯行をただの「イタズラ」と称する程度の認識だから、
実際の事件の深刻さなんて、端から全く理解できてないんでしょうが。

それにミズキは精神病質者として描かれていて、
買い物カートで幼児を轢こうとしたり、ウサギを地面に叩きつけて殺したりと、
単なる「妊娠を嫌悪するキャラ」ではなく、精神病質者として描かれており、
監督自身が改変してまで描こうとしたテーマにも沿わないキャラ設定です。
性的嫌悪感から流産させようとする思春期少女の魔の手から、
大人であり教師として毅然とした態度で子どもを守ろうとする女教師という、
女性同士の戦い、或いは女性ならではの心の問題を描いているのでしょうが、
少女の思春期の心境はそこそこ描けているように思うけど、
さすがは男性監督だけあって、母親になる女性の心境は全く描けてないと思います。
ボクも男なので女性の心境を理解できるなんて思ってないけど、
普通の感性なら、妊婦が生徒に胎児が殺されそうだと身の危険を確信していながら、
それでも危険な職場に出勤しますか?
(実際の事件の先生は、生徒が流産させようとしていることも知らなかったそうです。)
サワコ先生は生まれてくる子どもよりも仕事の方が大切なのかと思えてしまいます。
彼女は口では「子どもを殺した奴を殺す」と言っていますが、それも単なる脅しで、
実際に胎児を殺したミヅキを殺さないどころか、身を呈して守ろうとしたり…。
これも母親であることよりも教師であることを優先しているようで、違和感があります。
普通なら『告白』の女教師のように、生徒であれ子どもを殺したやつは憎いはずです。
そもそも妊娠中にあんな高いヒールを履くなんて、妊婦の自覚が足りてないです。
要するに本作は女性の問題を描くのは完全に失敗していて、
単なる精神病質者(サイコパス)と熱血教師の戦いになってしまっているんですよね。

本作は事件の本質を歪曲するほど改変したくせに、全く面白くもなっていない駄作ですが、
実際の事件がこうして作品になり、事件の存在が拡散したり、半永久的に残ることで、
実際の加害者生徒たちは一生反省と後悔をすることになるだろうから、
多少は意味があるのかなと思います。
その点でも、事件に忠実であった方が、より効果的だとは思うのですが…。

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