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アナザー Another

梅田ガーデンシネマやシネ・リーブル梅田に行くたびに気になるのですが、
先月から新梅田シティに「ゆびきりの家」というお化け屋敷が建っています。
ストーリーのあるお化け屋敷で、参加型ホラー映画って感じなので、
Jホラーの好きなボクとしても一度入ってみたいのですが、
さすがに一人で入るのはちょっと気が引けます。怖いのではなく、恥ずかしくて…。
やっぱりほとんどの人はカップルで入ってますからね。
こういう時ばかりは、そういうのが好きな恋人でもいたらいいなと思います。
別に友達でもいいけど、男と一緒にお化け屋敷なんて嫌だから、女の子がいいですね。
それはそうと、ガーデンシネマに行くために、スカイビルに入ったら、
そのお化け屋敷の幽霊役らしき人が、白い布を被せられて、
スタッフに手を引かれながらエスカレーターに乗っていました。
たぶん休憩で楽屋にでも戻るところだったのでしょうが、
ちょっとシュールな状況でニヤけてしまいました。
あんなの見た後だから、例えお化け屋敷に入れたとしても怖さを感じないかも…?

ということで、今日はJホラーの感想です。

アナザー Another

2012年8月4日公開。
ベストセラー作家・綾辻行人の原作小説を映画化したホラーミステリー。

大学教授の父親が海外に行く期間中に限り、地方都市・夜見山市で生活する祖父母に預けられることになった榊原恒一(山崎賢人)。持病による発作で病院に運ばれた彼は、そこで出会った眼帯をした美少女から意味不明な言葉を告げられる。後日、夜見山北中学校に転入した恒一は、教室に病院の少女がいることに気付く。彼女の名が見崎鳴(橋本愛)だと知るが、クラスメートと担任は彼女が存在していないかのような言動を見せる。その理由を鳴本人に尋ねようとするが、そのたびに姿を見失ってしまい……。(シネマトゥデイより)



本作の原作小説は、ある理由から映像化は不可能だったはずです。
しかし原作はかなり人気があるようで、次々にメディア・ミックスされ、
漫画、アニメ、そして実写映画(本作)と展開していくことになります。
その映像化不可能な理由とは、いわゆる「叙述トリック」が使われているからです。
主人公のクラスの副担任の女教師と主人公の叔母さんが同一人物なのに、
それを意図的に別人であるとミスリードさせる文章になっています。
それは文章だからできることであり、映像化されてしまうとすぐバレるため、
映像化なんて無謀だと思われました。
一体どう乗り切るのか、今年の上旬に放送されたテレビアニメ版を少しだけ見ましたが、
アニメだと全く印象の変わるキャラとして描けばいいだけなので、
問題なく映像化することに成功していました。(律儀に声優は同じみたいです。)
しかし女優が演じるとなると、別々の女優が演じるのはさすがに無理があり、
実写映画版はどう映像化を実現させるのか、その一点が本作の最大の関心事でした。

しかし本作は、端から女教師と叔母さんを同一人物として描くという演出にしており、
これは「逃げ」としか思えず、正直非常にガッカリさせられました。
この原作小説は叙述トリックがミステリーとしての最大のポイントであり、
それが失われてしまえば、後に残るのは学園ホラーでしかありません。
原作小説は学園ホラーとしても人を惹きつける力を持っているため、
この演出でもそれなりに楽しめてしまうのですが、
やはり原作の魅力からはかなり減退していると言わざるをえないでしょう。
ならばどんな演出にするべきだったのかですが、それはボクも全くわからないので、
やはり本作は映像化するべきじゃなかったのだろうとしか言えません。

ただ、ボクがこの原作小説を高く評価しているかと言えば全くそんなことはなく、
学園ホラーとしてはグイグイ惹き込まれる展開で面白いですが、
登場人物の名前とか「現象」の設定(ルール)の設定とか、
あまりにもご都合主義すぎて、ミステリーとしては三流だと思っています。
件の叙述トリックにしても、女教師と叔母さんが同一人物であることが
真相に繋がるわけでもなく、実は真相を解くためのヒントなんて全く提示されず、
結果的にヒロインの超常的な特殊能力によって解決してしまうという、
ミステリーの禁じ手を平然と使用した内容だからです。
(叙述トリックだって、実際はアンフェアな手法ですけどね。)
ヒロインがその便利な能力を出し惜しみしなければ、
少なくとも合宿以降の犠牲者は出さずに済んだはずだし、
もっと言うなら、翌年以降も彼女を呼べば現象はすぐ対処できるはずです。
彼女は「いないもの」としてクラスから幽霊のような扱いを受けていますが、
実際に普通の人間とは言い難い女の子なので、普通の女の子だったら可哀想な境遇でも、
あまり気の毒な印象も受けず…。
できればヒロインはそんな不気味な特殊能力を持たない健気な女の子として描き、
主人公と一緒に推理で真相を解き明かす展開だったらよかったと思います。

なので本作はミステリーとして三流どころか、その体も成していないと思いますが、
何度も言うようにホラーとしてはなかなか見どころのある作品です。
転校してきた主人公の榊原恒一が、同じクラスの見崎鳴のことを、
自分だけに見えているようなので彼女は幽霊なのではないかと思います。
序盤は見崎鳴が幽霊なのか実在するのかで、観客の関心を掴みます。
徐々にどうやら見崎鳴は幽霊ではなく、クラス全員から「いないもの」と無視されている
実在のクラスメートだとわかりますが、何故彼女がそんな目に遭っているのかという、
次の疑問が浮上し、更に観客の興味をそそります。
友達から「いないものの相手をすると誰かが死ぬ」と警告を受ける恒一。
その現象は、26年前にあったある出来事がキッカケだとわかり、
彼はその出来事を調べ始めるのですが、その出来事が何なのかも気になるところです。
続いてその現象を止めるためにはクラスに紛れ込んだ「死者」を探し出し、
「死に還す」しかないとわかり、誰が「死者」なのかが関心事となります。
このように次々と新しい疑問が湧いてくる展開で、
とても続きが気になって、どんどん惹き込まれる巧みなストーリー運びです。

ホラー映画としては、別に貞子的な怨霊が出てくるわけでもなく、
画的にそれほど恐怖を感じるものではありません。
(そういえばヒロイン演じる橋本愛は、『貞子3D』の貞子役でしたね。)
しかし、現象による人の死に方の演出がとても面白く、
例えば、窓の外の焚火の中のスプレー缶が爆発した衝撃で窓ガラスが割れ、
その破片を避けようとした女生徒の足元が、雨漏りで滑りやすくなっていて、
転倒したところにたまたま傘が開いた状態で乾かされていて、
その傘の石突きが首に刺さり死んでしまうという展開で、
『ファイナル・デスティネーション』シリーズを彷彿とさせるような、
伏線を張り巡らせた事故死という演出になっていて、ドキドキします。
まぁR指定ホラーの『ファイナル~』のようなグロい死に様にはなりませんし、
スカシもあまりないので、死に方が読みやすいですが…。
避けられない現象という展開も、『ファイナル~』と類似した展開に思えますが、
それもそのはず、原作者曰く『ファイナル~』の影響を受けて執筆していたそうです。

見崎鳴の「死の色」を見る特殊能力により、副担任の三神先生が「死者」だとわかります。
前述のように、三神先生は恒一の叔母さんです。
現象を止めるには「死者を死に還す」、つまり死者を殺す必要がありますが、
家族である叔母さんを殺さなくてはいけない恒一の苦悩と葛藤が、
原作小説の最後の見どころでした。
結局、恒一は自分の手で叔母さんを死に還すのですが、
本作では三神先生が自ら死を選ぶような展開に改変されてしまっています。
これはある意味、叙述トリックの演出を変えたことよりも納得できない改悪です。
恒一の葛藤が描かれなかったのもそうですが、三神先生が自分を死者だと認めたも同然で、
現象の設定からしてもそんなことはあり得ない展開だと思います。
本作の制作サイドも、イクラアホでもこの展開の重要性はわかるでしょうから、
きっとこの改変は、別にいい話にまとめようとしたわけではないと思います。
たぶん「中学生が家族を殺す展開にすると、映倫がうるさそうだ」と考え、
レイティングをPG指定にするために仕方なく改変したのでしょう。
実際に客は若い子が多かったし、商業的には正しい判断だったのかもしれませんが…。

客と言えば、なぜか本作は全国で日本語字幕版を常時上映してますね。
ボクが観た劇場では、1日5回上映のうち、半数以上の3回が字幕版上映で、
時間の都合上ボクも字幕版で観ることになってしまいました。
もちろん邦画なので、外国語の映画ではありません。
おそらくは耳の不自由な方でも楽しめるようにとの計らいでしょうが、
これだけ大規模に行っているのは異例だと思います。
しかし健常者からすると、邦画に字幕が付いているのは正直少々見苦しいかな?
それにどうせならこんな客を選ぶ若者向けホラー映画じゃなくて、
高倉健の『あなたへ』とか一般的な作品の方が意味がある気がします。
(障害じゃなくても年をとれば耳が遠くなるんだし、シニア向け作品がいいかも。)

まぁそれは置いといて、図らずも字幕で観たことで、少し興味深かく思ったシーンも。
クラスメートが26年前に死んだ夜見山岬の話をしているのを聞いた恒一は、
同じ「みさき」である見崎鳴の話だと勘違いするところがあります。
でも字幕では「ミサキ」と表示されるので、客が「見崎」ではないんだから、
たぶん見崎鳴の話ではないんじゃないかと察してしまう気がします。
これではちょっと興を削ぐ気がするけど、夜見山岬のことは「ミサキ」、
見崎鳴のことは「見崎」と表示してくれるのは、わかりやすい気もしますね。
「みさき」といえば、原作にはもうひとり、藤岡未咲という少女の話も出てきます。
彼女は見崎鳴の実の姉妹で、恒一が転校する直前に死んでしまった、
この年の現象の犠牲者第一号だったのですが、本作ではあまり触れられません。
制作サイドが尺的な問題でその設定は入りきらないと考えたのかもしれませんが、
それなら見崎鳴が冒頭で霊安室に入っていくシーンも改変しないと、
実写映画版だけを観た人にとっては見崎鳴のその行動の意味がわからないはずです。
これは明らかに「原作やアニメも見てね」と言わんばかりのシーンで、
露骨なメディアミックスに思えて、映画ファンとしては不愉快な演出でした。

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