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プロメテウス

今年一番楽しみな映画『アベンジャーズ』の公開まであと10日を切りましたが、
その当日の8月14日(火)は、正式な日本公開日ではなく、先行上映の日です。
正式な公開日は17日(金)なのですが、15日(水)も16日(木)も先行上映するので、
それなら14日が正式公開日でもいいんじゃないかって思います。
ボクは本当に楽しみにしていたので、先行上映初日に絶対に観に行くつもりでしたが、
正直14日に先行上映されるのはムカつきます。
なぜ14日なんて平日が公開日になったかと言えば、もちろんお盆というのもあるけど、
主な理由は日本最大のシネコンであるTOHOシネマズのサービスデーだからでしょう。
毎月14日は誰でも1000円で観賞できるため、かなりの集客が見込めるのです。
それはお客さんにとっても有難いサービスだと思うけど、
本当に本作を楽しみにしていて、初日に観たいと思っているような大ファンは、
みんな1300円以上(ムビチケなら1400円以上)する前売り券を購入しているはずで、
通常料金1000円で観れる日に通常料金より高い前売り券を使うことになります。
はっきり言って、ファンを蔑ろにした、悪質な公開日の決め方だと思います。

今月25日(土)公開の『るろうに剣心』も、先行上映で実質22日(水)から公開です。
これはおそらく水曜のレディースデーで集客するためでしょうが、
それなら22日を正式な公開日にすればいいです。
例えば『マダガスカル3』は誰でも1000円のファーストデーの1日(水)が初日ですが、
先行上映なんて形はとらず、ちゃんと1日が正式な公開日になっています。
『アベンジャーズ』や『るろうに剣心』の配給方法に比べて、誠実さを感じます。

といことで、今日は先行上映で観た映画の感想です。
本作は24日(金)が正式な公開日ですが、4日(土)に先行上映されました。
ただし4日から正式公開日までずっと上映するわけではないので、
これが先行上映の正しい用い方だと思います。
(ただお盆にも先行上映するらしく、正式公開日には大方の人は観終わってそうです。)

プロメテウス

2012年8月24日日本公開。
『エイリアン』のリドリー・スコット監督によるSF大作。

人類が長年にわたって追い続けている、人類の起源にまつわる謎。地球で発見された古代遺跡から、その答えがあるかもしれない未知の惑星の存在が浮かび上がる。科学者たちを中心に編成された調査チームは、宇宙船プロメテウス号に乗り込んで問題の惑星へと向かう。惑星にたどり着いた彼らは、人類のあらゆる文明や常識を完全に覆す世界を目の当たりにして息をのむ。誰も到達できなかった人類誕生の真実を知ろうとチームの面々が探査に没頭する中、思いも寄らない事態が迫ろうとしていた。(シネマトゥデイより)



リドリー・スコット監督の『エイリアン』シリーズの5作目というフレコミで
企画がスタートした本作ですが、本作の予告編などでもわかるように、
本作は意識的に『エイリアン』シリーズではないかの如く宣伝されています。
監督自身も「同じ世界だけど続編ではない」みたいな曖昧な発言をしており、
ボクも本作が本当に『エイリアン』シリーズなのかは確信がありませんでした。
でもいざ観てみると、本作は紛れもなく『エイリアン』シリーズの最新作でした。
本作が『エイリアン』と密接にリンクしていることは重大なネタバレで、
本来ならば正式公開日の前に書くべきじゃないとは思いますが、
本作の面白味は『エイリアン』との関連性に依存するところもあり、
『エイリアン』も知らない人が本作を観てしまうのは非常に勿体ないと思うので、
お節介ながら書いてしまいました。
まぁ『エイリアン』のシリーズ一作目すら観たことがない人なんて稀だろうけど、
もし内容をほとんど覚えていないのであれば復習して本作に臨むのがいいです。
それから本作が『エイリアン』の関連作であるという以上の情報は持たない方が
本作は楽しめるので、これ以上のネタバレには触れない方がいいです。
つまりこの記事も未観賞の人はもう読まないでください。
「観に行かないから別に読んでも構わない」と思っているあなた。
こんな素晴らしい作品をミスミス観逃すなんて手はないですよ!

企画段階から言われていたことですが、本作は厳密にはシリーズの続編ではなく、
第一作目のプリクエル(前日譚)という位置づけになります。
ちょっとおさらいを兼ねて1作目のリンク部分のあらすじを紹介すると、
今から100年ほど未来の話、シリーズの主人公であるリプリーの乗る宇宙船が、
宇宙での資源調達を終えて地球へ帰る途中、謎の惑星から発信される
救難信号を受信し、彼女たちはその惑星に立ち寄ることになります。
惑星に降り立った彼女たちの前に現れたのは、異星人の壊れた宇宙船で、
中ではその操縦手と思われる巨大な異星人が腹を突き破られ死んでいました。
エイリアンの寄生体チェストバスターにやられた異星人の死骸でしょう。
救難信号は彼が出したものでしょうが死後かなり経っていたようでした。
その異星人は通称「スペースジョッキー」と呼ばれますが、
本作はそのスペースジョッキーが題材となっている物語です。
エイリアンも出てこないことはないけど、頭部の長い所謂エイリアンは、
ラストのサービスカットにチョロっと出てくるだけです。
(形状も一般的なものとはかなり違い、「ディーコン」というタイプらしいです。)

2089年、考古学者のエリザベスはスコットランドのスカイ島の古代遺跡で、
35000年前に描かれた星座の壁画を見つけますが、その星の配置が、
世界各地の古代文明の壁画に描かれているものと一致することに気付きます。
しかしその星座は古代文明では観測できるはずのないもので、
彼女はその壁画は未知の地球外生命体からの招待状であり、
その星座の星まで行けば人類の起源が解けるのではないかと考えます。
それに賛同したウェイランド社の協力のもと、宇宙探索船プロメテウス号に乗り込み、
地球外生命体と接触するため、その星を目指して地球を発ちます。
彼女はその地球外生命体のことを「エンジニア(技術者)」と呼ぶのですが、
それは彼らが地球人を創造したと推察しているからです。

エリザベスたちは長い航海の末、その星に降り立ちますが、
そこにあったのは人工的な謎の遺跡。
さっそく内部を調査すると、オルメカヘッドのような地球人そっくりの巨石人頭像や、
謎の液体の入った有機的な筒、そして巨大な異星人の死骸を発見します。
この巨大な異星人こそが『エイリアン』の異星人スペースジョッキーであり、
エリザベスの探すエンジニアは当然スペースジョッキーだったということです。
本作では星座による招待状、『エイリアン』では救難信号でしたが、
メッセージを受け取り星に行くとスペースジョッキーの死骸がある展開は全く同じで、
本作は単なるプリクエルというだけでなく、シリーズ一作目のリメイクでもあるかも。
その後も仲間のひとりが謎のクリーチャーに寄生されて…、という展開も一緒ですが、
全く既視感はなく、それなのに一作目を見た時の何が起こるか分からないハラハラ感は
本作からも感じることが出来たのが不思議です。

この謎のクリーチャーはエイリアンとは形状も性質もかなり異なります。
でも所謂エイリアンの進化前の姿なのだろうと思います。
遺跡内で発見された筒はエイリアンで言うところの「エッグチェンバー」で、
その中にいる蛭のような生物が成長して蛇のようになったものが、
「フェイスハガー」のプロトタイプだと推測されます。
体液もエイリアン同様強い酸です。
このクリーチャーのフェイスハガーは宿主に直接チェストバスターを寄生させず、
脳内に蛭を寄生させて宿主(男)の行動を操り、女性と性交渉させ、
女性にクリーチャーの胎児、つまりチェストバスターのプロトタイプを宿らせます。
所謂エイリアンよりも回りくどい繁殖過程ですね。
エリザベスは蛭に寄生した恋人と性交渉したことで、
クリーチャーの胎児を宿してしまいますが、体内を突き破って生まれる前に
帝王切開で胎児を摘出してしまいます。
胎児はイカみたいな形状でしたが、これは未熟な状態だからで、
もし堕胎しなければエイリアンに近い形状になってたかもしれませんね。
驚いたことに摘出された胎児はそのままの姿で巨大に成長し、
クラーケンのようなクリーチャーになり、襲った相手に寄生体を植えつけます。
このようにエイリアンとは似て非なる未知のクリーチャーというのがミソで、
どんな生態なのかわからないからハラハラさせられるんですよね。

エリザベスたちの調査の結果、やはりエンジニアは地球人の創造主だと判明します。
というよりも、同じDNAを持っていることから地球人の祖先であると思われます。
『エイリアン』ではスペースジョッキーは固い外骨格に覆われている考えられたが、
実は外骨格と思われたのは宇宙服で、剥ぐと地球人に似た巨大なヒューマノイド。
彼らは35000年以前に地球に飛来し、地球人を創造したようです。
しかし約2000年ほど前に、彼らは地球人を絶滅させるため、
エイリアンの試作品と思われる生物兵器を製造し、地球に送り込むつもりでした。
エリザベスたちが降り立った星はエンジニアの故郷の星ではなく軍事基地です。
しかしエンジニアは軍事基地での実験事故で自ら生物兵器に寄生され、
地球に着く前にほぼ全滅してしまうのです。
この経緯は全てエリザベスによる推測ですが、たぶんその通りです。
10年以上前に監督がシリーズ5作目の構想について語っていたのですが、
それこそがスペースジョッキーの顛末を描きたいという内容で、
エイリアンはスペースジョッキーの生物兵器であるという案を述べていました。
しかしやはり事故で自らがエイリアンの餌食となり、
その死骸をリプリーたちが発見する一作目に繋がるという構想です。
まだ本作ほどは練り込まれてはいませんが、ほぼ当時の構想通りですね。

ここで疑問に思うのは、なぜエンジニアは自ら創造した地球人を絶滅させたいのか?
作中でもエリザベスが唯一の生き残りであるエンジニアに問いかけるのですが、
エンジニアから回答を得ることはできず、謎のままで終わってしまいます。
しかし本作の題名が「プロメテウス」であることを考えれば回答の糸口は掴めます。
このタイトルは単にエリザベスたちの宇宙船の名前ではありません。
プロメテウスとはギリシャ神話の神で、人類は彼が神々を模して創造しました。
つまりプロメテウスがエンジニアだったわけです。
エンジニアが巨大なのも、プロメテウスがタイタン族なことに由来するのかも。
神話ではプロメテウスは人間に火を与え、神に近づけようとするのですが、
人間を傲慢だと考えた最高神ゼウスは、そのことに腹を立て彼を磔の刑にします。
その後、人間にも災いを与えるために災いを詰め込んだ箱を人間の女に贈るのですが、
その女性がプロメテウスの義妹パンドラで、その箱が有名な「パンドラの箱」です。
その神から人類への最悪な贈り物が本作ではエイリアンの試作品であり、
エッグチェンバーが卵ではなく筒状の容器だったのはパンドラの箱がモデルだから。
つまりエンジニアと呼ばれる異星人は、ギリシャ神話の神々のようなもので、
プロメテウスのように35000年前に地球人を創造した個体もいれば、
ゼウスのように2000年前に地球人を滅ぼそうとした個体もいるということで、
今回エリザベスたちが出会ったのは、後者の個体だったのでしょう。

ではなぜ後者の個体が地球人を滅ぼそうとしたのかですが、
そこでヒントとなるのが約2000年前という年代です。
2000年前に何があったかと地球で言えば、キリストの誕生、キリスト教の成立です。
自分たちを模して創られた地球人風情が神格化されるという事態は、
本当の神であるエンジニアたちにとって面白くないに違いありません。
その時点での地球人全滅計画は、生物兵器の実験事故で失敗しましたが、
彼らの懸念の通り、増長した地球人は自分たちを模したアンドロイドを作ります。
本作に登場するアンドロイドのデヴィッドは、ロボットのように振る舞いますが、
おそらくちゃんと心を持っており新しい生命体も同然で、
それを作った地球人は神の領域を犯しているといえるでしょう。
エリザベスが科学者にもかかわらず信仰心の強いクリスチャンなのも、
その答えを導き出すためのヒントだったように思います。
彼女の異星人による人類起源説は、一見キリスト教を冒涜していそうですが、
実はダーウィンの進化論に異を唱えていて、キリスト教らしいとも言えますね。
ギリシャ神話とキリスト教とい、異なる神の体系を組み込んだ興味深い物語です。

映像の出来栄えとか、世界観の魅力とか、本作の素晴らしさをもっと伝えたいですが、
今日はもう時間がないので、これくらいにしておきます。
最後に、本作は『エイリアン』のプリクエルではあるものの、
これが正史に繋がるものとしては作られていないと思われます。
いわば『猿の惑星:創世記』や『バットマン ビギンズ』のようなポジションで、
ここから新シリーズとしてスタートするリブート作品と捉えるのが正解かも。
だから『エイリアン』とは別の歴史を辿る続編が製作されるかもしれませんね。
正直『エイリアン』シリーズは、『エイリアンズVS.プレデター』にぶち壊されたし、
監督主導で新シリーズとして立ち上げなおした方がいいです。

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