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メリダとおそろしの森

2009年あたりから、CGIアニメ映画のブームが始まりましたが、
今年上半期は『長ぐつをはいたネコ』の一本しか公開されず、
CGIアニメ映画のブームもちょっと落ち着いたような気がします。
ボクはCGIアニメが好きですが、昨今の粗製濫造な状況は遺憾だったので、
バブルがはじけてくれたことはいい傾向なのかもと思います。
でも、ほとんど公開されないという状況は、やはり寂しくもあり、
今年の上半期は日本の普通のアニメばかりで、物足りなさを感じていました。
しかし、この夏以降、ピクサーの『メリダとおそろしの森』を皮切りに、
ドリームワークスの『マダガスカル3』や『不思議の国のガーディアンズ』、
ソニーの『モンスター・ホテル』や(アードマンの)『ザ・パイレーツ!』、
イルミネーションの『ロラックスおじさんの秘密の種』など沢山公開されます。
いずれも実績のあるアニメーション・スタジオなので、粗製濫造の惧れはないでしょう。
CGIアニメ以外にも洋邦問わず期待できるアニメ映画も多く、これからは楽しめそうです。

ということで、今日はその先駆けとなるCGIアニメ映画の感想です。

メリダとおそろしの森
Brave.jpg

2012年7月21日日本公開。
ピクサー・アニメーション・スタジオ13本目の長編アニメーション。

王女メリダは王家のしきたりや伝統に反発を覚え、娘に女性らしい優雅さを身に付けるよう願う母と度々ぶつかっていた。そんなある日、彼女は鬼火に誘われるようにして森の奥深くへと入り込み、魔女の家にたどり着く。そこで彼女は自分の運命を変えてもらいたいと訴え、その願いがかなうと同時に、それまで安泰だった王国が災禍に見舞われてしまい……。(シネマトゥデイより)



『トイ・ストーリー3』『カーズ2』と珍しく続編ものが続いたピクサーが、
久しぶりの完全新作として製作されたのが本作で、
ピクサー映画好きなボクとしても期待したいところだったのですが、
本作の製作が発表された当時から、とても強い懸念を感じていて、
どうにも気持ちが盛り上がらないまま、公開日を迎えてしまいました。
その懸念というのは、本作がピクサー映画らしくないということです。
主人公はピクサー映画史上初の女性キャラで、しかも中世のお姫様。
なんだかディズニー・クラシックスのプリンセスもの映画みたいじゃないですか。

2006年にディズニーがピクサーを買収し子会社化しましたが、
実態としてはピクサーがディズニーのアニメ部門を吸収合併したようなものでした。
『ルイスと未来泥棒』『ボルト』以降のディズニー・クラシックスは、
実質ピクサーの管理下で製作されたようなもので、
ピクサー映画とディズニー・クラシックスの間に、クオリティ的な差はなくなりました。
しかし実質同じだからこそ、ブランドが大事で、両者は住み分けをはかるべきです。
大雑把に言えば、これまでは『Mr.インクレディブル』や『カーズ』など、
ピクサー映画は男の子向けの作品が中心で、一方のディズニー・クラシックスは、
『プリンセスと魔法のキス』や『塔の上のラプンツェル』等のプリンセスものなど、
女の子向けの作品が中心で、ちゃんと住み分けが出来ていたように思うんです。
それがプリンセスもののピクサー映画である本作の登場で完全に崩れました。
本作の最後に「スティーブ・ジョブズに捧ぐ」と出ますが、
ピクサーによるディズニー吸収を主導したのがジョブズであるため、
ある意味、両者の垣根を感じさせない本作は、彼に捧ぐ作品として最適ですが…。
なお、本作がプリンセスもので、比較的女の子向けな作品になっただけではなく、
次のディズニー・クラシックス『シュガー・ラッシュ』はテレビゲームを題材にした、
比較的男の子向けの作品になっているようです。

そんなわけで、懸念はピクサー自体のコンセプトによるものなので、
本作の出来がどうであったとしても払拭されることはありませんが、
その懸念のキッカケである本作を期待して観に行こうという気にはなりませんでした。
だから本作自体よりも、同時上映されるオスカー候補作『月と少年』や、
『トイ・ストーリー』のスピンオフ『ニセものバズがやって来た』の、
2本の短編アニメの方が楽しみだったくらいです。
『ニセものバズ~』はマクドのハッピーセットで貰えるような
オマケのオモチャの悲哀をコミカルに描いた内容で、とても面白く、
『月と少年』も「この発想はなかった」と思わず膝を打ってしまうような内容で、
短編アニメはどちらも大満足な出来だったように思います。
そして、その後に始まる本作なのですが…。

物語は王妃である母親から政略結婚をさせられそうになった王女メリダが、
「まだ結婚なんてしたくない」と、母親の気持ちを変えるための魔法の薬を
森の魔女に作ってもらうのですが、どうも注文の仕方に行き違いがあったようで、
魔女から「母親の気持ちを変える薬」ではなく、「母親を変える薬」を渡され、
その薬を盛ったケーキを食べた母親は、なんとクマの姿になってしまう、…という話です。
結論から言えば、悪くなかったです。
プリンセスが主人公ではあるものの、王子様とのロマンスがあるわけでもなく、
むしろ家族の絆がテーマであり、その点ではピクサーらしい作品だとも思います。

その魔法を解くには「プライドに裂かれし絆を治せ」というヒントを解き、
2度目の日の出を迎えるまでに実行しなくてはなりません。
メリダとクマになった母親は、2人だけで魔法を解く方法を探すため行動を共にし、
その過程で、メリダは母親の大切さを再認識し、王女としての責任が芽生え、
母親もメリダの日常を垣間見て、娘の気持ちを理解するようになります。
まさにそれこそが魔法を解くヒントの答えだったという教訓的な物語で、
母親が娘を守るために凶暴なクマ、モルデューに立ち向かうところとか感動したし、
とてもいいファミリー・ムービーですが、少々王道すぎるというか、
正統派な童話的な物語で、安定感はありますが意外性に欠けるかなとも思います。
ピクサーはオリジナルしか作らないので、本作には原作となる童話はありませんが、
童話「髪長姫」が原作の『塔の上のラプンツェル』などよりも、ずっと童話的な内容です。
魔女が登場しているシーンだけは、ナビダイアルのような魔女の伝言など、
童話らしからぬヒネリの利いた演出で面白いのですが、
他のシーンはCGIアニメの雄であるピクサーとしては凡庸な出来だったかと…。

ピクサーの信条は"第一にストーリー、第二にキャラクター"ですが、
本作はストーリーが正統派すぎる上に、キャラクターも弱いと思います。
『カーズ』にしても『トイ・ストーリー』にしても『ファインディング・ニモ』にしても、
脇役に至るまで誰がスピンオフしてもおかしくないような個性的なキャラだらけなのに、
キャラの魅力だけに頼ることなくストーリーも素晴らしかったことが、
ピクサー作品の今日における評価に繋がっていると思うのですが、本作のキャラは…。
ヒロインであるメリダの赤毛のカーリーヘアは、かなり高度な技術で作られているらしく、
その甲斐あってとてもチャーミングなキャラになっています。
(日本語吹替でヒロインを担当したAKB48大島優子も予想外に頑張っていたと思います。)
彼女以外はビジュアル的に印象に残るようなキャラはいないように思います。
中世の北欧(スコットランド)が舞台なので、登場人物もそれらしい格好をしていますが、
どのキャラもみんなどこかで見たことある感じなんですよね。
(はっきり言ってしまえば『ヒックとドラゴン』です。)
ピクサーは人間以外のキャラを描く方が力を発揮すると思います。
(それはピクサーに限ったことではなく、CGIアニメの特性かもしれませんが。)
メリダの3つ子の弟たちも、クマ化してからの方が断然魅力的だったしね。

ピクサーに対する懸念のこともあったので、純粋には楽しめなかった本作ですが、
これがピクサー作品ではなくディズニー・クラシックスとして公開されていれば、
ボクも楽しめたと思うし、普通の人はスタジオがどこかなんて気にしないだろうから、
普通に観る分には十分に楽しめる作品なのだろうと思います。
ピクサーの次回作は『モンスターズ・インク』のプリクエル(前日譚)、
『モンスターズ・ユニバーシティ』です。
タイトル通り、サリーやマイクの大学時代の物語らしいのですが、
ピクサーにとってプリクエルは初めてだし、どんな作品になるのか全く想像できませんね。
その前に今年9月には『ファインディング・ニモ』の3D版も公開になるとか。
『ファインディング・ニモ』も2015年以降に続編が公開になるみたいです。

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