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おおかみこどもの雨と雪

なにやら映画館に急に子どもが増えたなと思ったら、もう夏休みなんですね。
子どもが多いと、場内がちょっと騒がしくなるのは厄介ですが、
幼いうちから映画に慣れ親しむのはいいことです。
ボクは幼少期に映画に全く連れて行ってもらえなかったから、
その子たちがちょっと羨ましかったりもします。
ボクは結婚もしてないし、親戚にもまだ子どもはいませんが、
もし自分の子どもや甥や姪が生まれたら、映画館に連れまわしたいと思っています。
でも傍目に見ていると、子連れってけっこう大変そうで、
子どもが泣いたり、トイレをせがまれたりと、否応なく退席しなきゃいけないことが多く、
映画を真剣に見たいボクには耐えられないかも…。
やっぱり小学生以上になるまでは連れて行かないでおこうかな。

ということで、今日は厄介な子どもを持った母親の奮闘記の感想です。

おおかみこどもの雨と雪

2012年7月21日公開。
『時をかける少女』や『サマーウォーズ』の細田守監督が手掛けたアニメーション。

19歳の大学生花は、あるときおおかみおとこと運命的な恋に落ち、やがて雪と雨という姉弟が誕生する。彼らは、人間とおおかみの両方の血を引くおおかみこどもとしてこの世に生まれたのだが、そのことは誰にも知られてはならなかった。人目を忍びながらも家族四人で仲良く都会の一角で暮らしていたが、ある日、一家を不幸が襲い……。(シネマトゥデイより)



単刀直入に言えば退屈な映画でした。
上映時間は2時間を超えていないので、それほど長い作品ではないはずですが、
つまらないとまでは思っていなかったのに、だらだらと妙に長く感じられ、
それを簡潔に表現するならば「退屈」というのが妥当だと思います。
その原因のひとつとしては、物語としての盛り上がりがほとんどなく、
しかも全体的にシリアスな話で疲れてしまうからのような気がします。
中盤でちょっと楽しげな感じになりかけるも、またすぐに沈んでしまい…。
アニメだから絵のポップさでなんとか最後まで観ることができましたが、
もし実写だったなら集中力を維持できなかったと思います。
子どもだったら途中で飽きるので、アニメだからって子連れでは行かない方がいいです。
ボクが観た劇場でも途中からぐずり始めた小さい子がいましたが、
その子も可哀想だけど他のお客さんにも迷惑になるので。
退屈以前に子どもが観るには不適切なシーンや展開もありますので。

細田守監督の前作『サマーウォーズ』は、退屈とは思わなかったものの、
オンラインゲームを舞台にしたセカイ系ファンタジーで、
その世界観に馴染めず、全く楽しめない作品でした。
その点本作は、グッと現実的な世界観で描かれているので受け入れやすいかと思ったのに、
本作唯一のファンタジー要素である「狼男」の設定には全く現実味が感じられず、
結果としてその違和感がずっと付きまとい、やはり受け入れ難い作品になっています。
ゴシックホラーの怪物である狼男に現実味もなにもあったものではないけど、
本作のテーマは「母親」であり、ある若い母親の育児奮闘記として描かれていますが、
彼女の旦那(未婚かも)とその子どもたちが人狼である必然性は見出せません。
別に人狼でも宇宙人でも何でも構わないような味付け程度の設定ですが、
その設定が、母親の行動や思考に母親らしからぬ違和感を与えており、
普遍的なはずの「母親」というテーマが、ねじ曲がってしまっているように思います。
その結果、テーマが失われた内容のない作品となり、退屈さを際立てているのでしょう。
そもそも男である細田監督に「母親」なんてテーマは難しかったのではないかと。
少なくとも、彼の描く母親像には全く共感を感じません。
『サマーウォーズ』でも監督の実体験が基になっているらしいけど、
彼はけっこう特殊な家庭(親戚)環境で育ってるんじゃないかな?

女子大生の花は、大学である男性と出会い、すぐに親しくなります。
その男性は花に「自分はニホンオオカミの末裔の狼男だ」と告白しますが、
花はそれを受け入れ、その夜に2人は結ばれます。
このシーンですが、狼男は半人半獣の姿で花と結ばれるんですよね。
アニメだからまだマシですが、はっきり言って獣姦みたいでキモチワルイです。
それにゴシックホラーの狼男のように、人間が呪いで狼男になっているならいいけど、
彼は正真正銘ニホンオオカミの血が混ざっている半獣なので、
いくら好きとはいえ、それを受け入れてしまう花の心境は異常です。
しかも学生なんだから、せめて避妊くらいはしろと。
バイトで生計を立てながら奨学金を貰ってまで大学に通いながらも、
妊娠したからあっさり大学をやめるとか、主人公なのに全く共感できません。
なので彼女は普通の母親像とはかけ離れた特殊な女性だと思います。
男と同棲して、子どもまで作り、大学もやめた花を、彼女の親類はどう思っているのか…。
…というか、彼女の家族は初めから存在しないものとして設定しているようですね。
強引に展開を進めるために、邪魔な存在は都合よく排除したのでしょう。
円滑化を図るためにはそれも必要な演出ですが、「母親」という家族の絆を描く本作が、
登場人物の家族の設定を蔑ろにするのは正しい判断だったとは思えません。

2人目の子どもが生まれて間もなく、近所の川で死んでいる狼男が発見されます。
死体は人間の姿ではなく、オオカミの姿で…。
100年前に絶滅したはずのニホンオオカミの死体が民家のすぐ近くで発見されれば、
大変な騒ぎになりそうなものですが、そんな展開も都合よく排除されます。
シングルマザーとして幼い子どもを育てることになった花ですが、
子どもたちが人狼であるとバレないように、病気になっても医者にも診せられず、
保育園にも預けられないので仕事もできず、不自由な生活をすることになります。
隠れるように生活するので、児童相談所から虐待を疑われたりと、妙にリアルな展開も…。
そこで花は住み難い都会を離れ、人気の少ない田舎に引っ越すことにしますが、
その理由のひとつが、子どもたちが人間として生きるか、オオカミとして生きるか、
どちらでも選べるようにするという目的もあります。
…自分の子どもを動物として育てたいなんて思う母親がいるでしょうか?
しかも絶滅したニホンオオカミとして生きれば、孤独で不幸になるのは目に見えています。
大好きな旦那のように人間として生きてほしいと思うはずです。
都会生活の時も、娘を動物病院に連れていこうか悩んだりと、
自分の子どもをペットとでも思っているのかと…。
それに医者に診せられないことや、児童相談所の問題は、
田舎に越したからって解決することじゃないでしょうに…。

しかし、田舎生活が始まってからは、ちょっとだけ面白くなります。
それは違和感だらけの人狼の設定に関係なく、花が野良仕事で悪戦苦闘したりする様が、
都会者が安易に田舎で生活することの大変さを描いた普遍的な展開だからでしょう。
見かねた地元の頑固爺さんが厳しく指導してくれたり、
それをキッカケに次第に里の気のいい村人たちと交流が始まったりと、
悪戦苦闘しながらも徐々に田舎暮らしを満喫できるようになる過程が、
心温まる感じで、それまでの重苦しい雰囲気から解放されたような気がしました。
しかし、それも束の間、子どもたちの成長により、またシリアスな展開に逆戻りします。

花の2人の子ども雪と雨は、1歳違いの姉弟のですが、性格は正反対で、
姉の雪はお転婆で野性的なのに対し、弟の雨は甘えん坊で内気な子どもです。
雪はすぐオオカミになって野生動物を追いまわしたりして遊びますが、
雨はみんなから悪者扱いされるオオカミになりたくありません。
しかし、小学校に通うようになり人間の女の子と遊ぶようになった姉の雪は、
女の子らしくなりたいと思うようになり、徐々にオオカミらしさが抑えられます。
逆に弟の雨は、ある日に急にオオカミの野生の本能が目を覚まし、
どんどん人間の生活には馴染めなくなりはじめます。
初めとは全く逆の立場になるわけですが、3年、4年と成長するごとに、
雪はオオカミであることに、雨は人間であることに葛藤するようになり、
また重苦しいシリアスな展開が始まってしまうのです。
しかし、姉の雪が人間として生活したいと思った過程は得心がいきましたが、
弟の雨がオオカミの本能に目覚める過程はイマイチ意味がわかりません。
考えられることと言えば、川に落ちた時に頭を打ったのが原因かと思うのですが、
もしそうだとすると安易な展開ですよね。
まぁオオカミになりたいなんて思う人間はいるはずないので、
うまい動機が考え付かなかったのかもしれませんが、どうにも都合がいいです。

前述のように母親の花はかなり特殊な思考回路を持っているので、
まともな母子関係なんて描けるはずもありませんが、
本作は雪と雨の姉弟関係もかなり希薄だと感じます。
幼い時はそうでもないけど、成長するに従ってまるで赤の他人のような感じになり、
自分と違う生き方を選ぼうとする肉親に対し、「勝手にすれば?」と言わんばかりです。
雨がオオカミとして家を出た時の、母親の物分かりのよさにも違和感がありますが、
この姉弟も「さよなら」も言わないまま、もう二度と会わないんじゃないかと思います。
これで「母親」をテーマに家族の絆を描けているつもりなんだから笑っちゃいますね。
テーマを描き切ることに失敗し、娯楽性もない本作に残ったのは、
「獣耳幼女萌え~」なケモノ属性のオタクに向けたフェチ・アニメです。
一般人(特に子連れ)は迷わず『メリダのおそろしの森』を選択しましょう。
家族が野生動物に変身してしまうというのは本作と同じですが、
『メリダ~』の方が母子関係がうまく描けており、健全で何倍も面白いです。

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