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ミッドナイト・イン・パリ

今週末『ミッドナイト・イン・パリ』が公開されたことにより、
第84回アカデミー賞の作品賞候補作が、全て日本で公開されたことになります。
例年だと全て出揃うのに年を跨ぐことが多かったので、今年はかなり早かったですね。
候補9作品のうち、オスカーを獲得したのは『アーティスト』でしたが、
せっかく全部観たので、ボクなりにその9作品を良かった順にランキングしてみました。

第84回アカデミー作品賞候補作個人的ランキング(カッコ内はオスカー実績。)
1位『ヘルプ 心がつなぐストーリー』(助演女優賞受賞。)
2位『ヒューゴの不思議な発明』(撮影賞、美術賞など5冠。)
3位『マネーボール』(無冠。)
4位『ミッドナイト・イン・パリ』(脚本賞受賞。)
5位『アーティスト』(作品賞、監督賞、主演男優賞など5冠。)
6位『ファミリー・ツリー』(脚色賞受賞。)
7位『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(無冠。)
8位『戦火の馬』(無冠。)
9位『ツリー・オブ・ライフ』(無冠。)

これはあくまで面白いと思った順であり、オスカーに相応しいと思った順ではありません。
オスカーに相応しい順なら、やはり『アーティスト』がトップだと思います。
9位の『ツリー・オブ・ライフ』はダントツに面白くなかったですが、
他の8本は面白い作品揃いで、順位を付けてはみたものの、数字ほどの差はありません。
全て同率一位でもいいくらいに、各々見どころのある作品ばかりでした。
出来に差はないけど、ボクがミーハーなのでヒット作が上位になった感じです。
とてもいいアカデミー賞でした。

ということで、今日は最後の作品賞候補作の感想です。

ミッドナイト・イン・パリ
Midnight in Paris

2012年5月26日日本公開。
ウッディ・アレン監督・脚本によるロマンティック・コメディ。

ギル(オーウェン・ウィルソン)は婚約者(レイチェル・マクアダムス)と共に、彼女の両親の出張に便乗してパリを訪れる。彼はハリウッドで売れっ子脚本家として成功していたが、作家への夢も捨て切れずにいた。ロマンチストのギルは、あこがれの作家ヘミングウェイや画家のピカソらが暮らした1920年代の黄金期のパリに郷愁を抱いており……。(シネマトゥデイより)



オスカーを受賞したフランス映画『アーティスト』を筆頭に、
フランスが舞台となった『ヒューゴの不思議な発明』や『戦火の馬』など、
やたらフランス絡みの作品が多かった前回のアカデミー賞作品賞候補ですが、
最後に公開となる本作もフランスを舞台にした作品です。
本作は、そんなフランス付いていたアカデミー賞を象徴し、
大トリを飾るに相応しい、素晴らしい作品だったと思います。
本作はフランスの持つ芸術面での魅力がとてもよく伝わってくる内容なので、
アカデミー賞で『アーティスト』や『ヒューゴの不思議な発明』が高く評価されたのも、
本作の相乗効果によるところもあったんじゃないかな?

本作は、ハリウッドの脚本家で小説家志望の主人公ギル(オーウェン・ウィルソン)が、
婚約者と旅行で来たパリで、1920年代にタイムスリップし、
名だたるボヘミアン・アーティストたちの出会うという内容です。
ギルは移住したいほどパリが好きで、特に多くの芸術家が活躍した20年代への憧れが強く、
そんな彼がひょんなことから20年代と現在を行き来できるようになり、
20年代では憧れの作家ヘミングウェイや、ピカソ、ダリといった偉人たちの社交に参加し、
夢のような至福の時を過ごします。

過去の時代に行って歴史上の偉人と会うという、典型的なタイムスリップものですが、
ギルのように当時に憧れを持つ人なら、本作は楽しくて仕方がないでしょうが、
ボクのようにその時代の偉人のことに疎いと、本作の面白さはかなり目減りしそうです。
さすがに上記の3人の偉人のことくらいは知っていますが、
美術収集家ガートルード・スタインや、小説家のフィッツジェラルド夫妻、
音楽家コール・ポーター、ジャズ歌手ジョセフィン・ベーカー、写真家マン・レイなど、
全く知らない偉人たちも次々に登場するも、あまりピンとこず、ちゃんと楽しめません。
例えばギルが映画監督のルイス・ブニュエルに、彼が今度撮ることになる映画について、
助言を与えるパラドックスなコメディ・シーンがあるのですが、
もし彼のことを知っている人ならとても面白いネタだと思うけど、
彼のことも知らないし、何の映画の話をしているのか見当もつかないボクは、
確実に笑えるポイントを損していると思いました。
そういう意味では、敷居が高い映画という認識なのか、
映画館はかなり盛況でしたが、客層はインテリそうな年配の人ばかりで、
アラサーのボクでも一番若いくらいで、ちょっと場違いな気分になりました。

しかし予備知識がないと全く楽しめない映画化といえばそうでもなく、
憧れの偉人に思わぬ遭遇をしたギルのリアクションは面白いし、
今はその偉人たちを知らなくても、本作を観ると不思議とに興味を持つようになります。
ボクもすぐに件のブニュエル監督の映画について調べました。
『皆殺しの天使』というシュルレアリスムの代表的な映画のようです。
劇中では全く意味がわかりませんでしたが、今度レンタルしてみようと思えました。
もちろん、ちゃんと味わうなら登場する偉人たちを知っているに越したことはないですが、
若輩者でもそれなりに楽しめるし、観る意義もある作品だと思います。

そんな概要の作品なので、芸術を題材にした小難しそうな印象を受けるかもしれませんが、
全然そんなことはなく、基本的にはSFチックなロマコメで、
要するに男女の恋愛を描いた、チックフリックなストーリーです。
偉人たちは数多く登場しますが、そのほとんどはカメオ程度の扱いであり、
主要な登場人物はオリジナルキャラです。
ヒロインのアドリアナ(マリオン・コティヤール)も、20年代の登場人物で、
モディリアーニの元恋人でピカソの愛人、ヘミングウェイからも言い寄られるという、
如何にも実在しそうな設定ですが、本作オリジナルの架空の人物です。
ギルとその婚約者、そしてアドリアナの三角関係で展開し、
ギルが浮気を誤魔化そうとしたり、婚約者の父がギルを疑って探偵を雇ったりと、
けっこうドタバタ喜劇だったりします。
その三角関係が、意外な帰着をするのも興味深いところです。

ギルは婚約者との旅行先のパリで、ばったり婚約者の友人夫婦に出会います。
その夫婦の夫ポールは、パリの芸術について博識で、ヴェルサイユ宮殿で講釈たれたり、
ロダン博物館でガイドに噛みついたりと、やたらインテリぶった男で、
20年代に憧れるギルのことも「懐古主義」とバカにします。
ボクも懐古主義なタイプなので、ポールの態度にはちょっとイラッときましたが、
ギルも彼のことを「エセ教養人」と称して嫌います。
しかし過去と行き来できるようになったギルは、自分が黄金時代だと思っている20年代で
アドリアネと出会うのですが、彼女にとってはベル・エポック時代が黄金時代で…。
さらに時間を遡りベル・エポック時代である1890年代に行くと、
そこで出会った画家のゴーギャンやドガはルネサンス期こそ黄金時代だと言い…。
ギルはその時代にいる人には、その時代は退屈なもので、
もし憧れの時代に行ったとしても、いずれは別の時代に憧れるのだと悟ります。
いつの時代の人も「昔はよかった」と言っているという懐古主義者に対する教訓を、
パリの美術史と重ねてお洒落に映像化したのが本作でしょう。
そしてギルは、いくら憧れの時代でも抗生物質もない時代には住めないと結論付けます。
結局は今の時代が一番だという話なわけですが、そんな展開だと、
エセ教養人ポールの持論を肯定する結論となってしまい、ちょっと嫌な感じですよね…。
ただ本作も、ウッディ・アレン監督の懐古主義から生まれたことに間違いなく、
懐古主義を否定する意図はないんじゃないかと思います。
『メン・イン・ブラック3』『ダーク・シャドウ』『ザ・マペッツ』『虹色ほたる』など、
最近は懐古主義な映画をよく観てますが、どれも面白く、やはり懐古主義もいいものです。

さて、そんなウッディ・アレン監督は、本作の脚本も手がけ、
それによりアカデミー賞やゴールデン・グローブ賞の最優秀脚本賞を受賞しました。
プロット的にはシンプルなタイムスリップものなので、
特段評価されるようなこともなさそうな気がするんですが、
なんだかセリフがやたらお洒落で、使いたくなる名言も2~3ありました。
もしかするとこの辺りが評価されたのかもしれないなと感じます。
まぁもちろん日本語字幕を読んでのことなので、翻訳家が上手いのかもしれないけど…。
それにしても、本作の主人公ギルは、ハリウッドで売れっ子の脚本家なのに、
その仕事を全て蹴ってでもパリで小説家になりたいなんて、
ボクは小説家よりも、面白い映画の脚本家の方がスゴイと思っているので、
ちょっと考えられない転職願望です。
出版不況だし、影響力も収入も映画脚本家の方がよさそうだと思うのですが…。

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