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虹色ほたる 永遠の夏休み

先々週末は『映画「紙兎ロペ」 つか、夏休みラスイチってマジっすか!?』が、
先週末は『虹色ほたる 永遠の夏休み』というアニメ映画が公開になりましたが、
まだ梅雨入りもしてないというのにもう夏休みを題材にした映画が公開になるなんて、
ちょっと気が早すぎるんじゃないかと思います。
入れ替わりの早いこのご時世では、夏休みを待たずに公開終了しているはずです。
夏が舞台の『ももへの手紙』なんて、4月に公開したからもう終わりそうですもん。

日本映画って季節や時節柄に無頓着すぎると思います。
まぁ実写映画なら夏に撮ったものを次の夏まで公開のは困るでしょうが、
アニメーションに関しては、いつでもどの季節でも描けるわけで、
もっと公開時期に合わせた内容にするとか、公開時期を内容に合わせればいいはずです。
2作続けて冬の話だった『劇場版 名探偵コナン』ですが、
なにがなんでもGW映画として公開しなきゃいけないものなのかな?
冬休み映画として公開しても、大ヒットは間違いないと思うけど…。
むしろ季節にそった内容なら、客足が伸びるかも。

ということで、今日は夏休みが舞台のアニメーション映画の感想です。
まだ暑くなり始めたばかりだというのに、もう夏の終わりを感じてしまいました。

虹色ほたる 永遠の夏休み

2012年5月19日公開。
川口雅幸のWEB小説を映画化した感動のアニメーション。

夏休みに入り、小学校6年生のユウタは一人でダムのそばの山里に昆虫採集にやって来る。そこは交通事故で亡くなった父親とよくカブトムシを探しに来た二人の思い出の場所で、彼はそこで不思議な老人と出会い飲み物を分け与える。やがてユウタは突然の豪雨で足をすくわれ意識を失い、目を覚ますと30年以上前の村にタイムスリップしていた。(シネマトゥデイより)



父親を亡くした小学6年生のひと夏の不思議な冒険ファンタジーということで、
同じような概要の『ももへの手紙』の出来栄えから、本作の出来も大体予想してましたが、
あまりの出来の良さに、ちょっとビックリしてしまいました。
決して低く見積もっていたつもりはなかったのですが、予想外に素晴らしく、
現時点で今年公開のアニメ映画の中では、最も感動しました。
音楽こそ松任谷正隆&由実夫妻ですが、キャストにはタレントを使用せず、
『ももへの手紙』よりも地味だし、宣伝もそれほどされておらず、
興行的には厳しそうですが、内容では圧勝していると思います。

映像は風景は繊細で写実的なのに対し、人物の描き方にかなりクセがあり、
筆で描いたものに着色したようなデザインのキャラがグネグネ動く様は、
ちょっと異様さもあり、はじめは馴染めませんでしたが、
観ているうちに慣れるというか、それが味わいになってきます。
なんでもCGなどは使わず、すべて手描きによるアニメーションなんだそうで、
ある意味アーティスティックな描き方なので、日本よりも海外でウケるかもしれません。
すでに第6回メキシコ国際映画祭コンペ部門で、銅賞を受賞したそうですが、
もっと大きな国際映画祭に出品しても、いい線いける気がします。
テレビアニメの劇場版ばかりで手軽に儲けている印象だった東宝アニメーションですが、
ちゃんと本作のような良心的なオリジナルアニメ映画も製作できるんですね。
できれば年一本ペースで作ってくれるといいのですが、本作の興行成績なんて、
おそらく『ONE PIECE FILM Z』の1~2割程度だろうから難しいかな…。

父親を事故で亡くしたユウタは、山奥のダムで昆虫採集の最中に謎の老人を助けます。
その後、突然の大雨による濁流に流され、崖から転落したユウタですが、
謎の老人の不思議な力で昭和52年にタイムスリップさせられ、無傷で助かりますが、
元の時代に戻る手続きには1カ月ほどかかるらしく、
ちょうど夏休みの間、その時代に滞在することになります。
流行りのタイムスリップもの作品ですね。
ただユウタは今の子どもではなく、ちょっと前の子どもです。
劇中のケータイがやたら古かったり、「タイムレンジャーが好き」という発言から、
10年ほど前の子どもだと推察されます。
なんでそんな微妙に現在とギャップのある設定にしたのか不思議でしたが、
その理由も最後にわかるので納得です。
それにボクたち大人にしたら、ちょっと昔の子どもの方が感情移入しやすいですよね。
今の都会っ子は、夏休みにカブトムシ捕りをしたいなんて思わないだろうし…。

ユウタがタイムスリップした先は、ある山奥の村ですが、
その村はダム開発で沈むため、秋には閉村することになっていて、
村の子どもたちにとっては昭和52年が村での最後の夏休みになります。
ユウタは謎の老人の不思議な力で、村の少女さえ子の従兄として生活することになり、
さえ子や村で出来た親友ケンゾーと一緒に、夏休みを楽しく過ごします。
昆虫採集したり、川で泳いだり、花火を見に行ったり、夏祭りの出店で遊んだり、
夏の田舎の情景ってなんだかノスタルジックな感じがしますよね。
ボクも子どもの頃は夏休みをド田舎の祖父の家で過ごしたりしましたが、
毎日野良仕事を手伝わされて、そんな楽しい経験なんて全くなかったのに、
不思議と懐かしさを感じてしまいます。
そんな現在ではなかなか味わえなくなった貴重な体験の中でも特に貴重なのが、
さえ子とケンゾーと3人で蛍を見に行ったことです。
この村は昔、虹色に光る蛍の導きで旱魃から救われたという話があるほどの蛍の名所で、
山奥の夜の水辺には無数の蛍が飛んでおり、とても幻想的な光景です。
こんな大切な自然をダムに沈めるなんて、現在では考えられないような横暴です。

以下、ネタバレ注意です。

ただただ楽しいだけの毎日ですが、実は仮の従妹さえ子にはある秘密があり、
実はさえ子もユウタと同じで、謎の老人によりタイムスリップしてきた子どもなのです。
彼女はユウタの父の事故に巻き込まれて死にかけたところを、老人に助けられたのですが、
その事故で重傷を負っており、一緒にだった兄は死んでしまっているので、
彼女は手続きが終了しても、元の世界には戻らず、兄の所(天国)に行くと決めています。
そのことに気付いたユウタは、さえ子が元の世界に戻るように説得するのだが…。
まさかの展開で驚きましたが、なんだか急に悲しくシリアスな物語になりましたね。
ちょうど夏の終わりを感じさせる独特の哀愁や、閉村が迫り村人が減って行く物悲しさで、
どんどん叙情感が高まり、胸が熱くなります。
そして、説得は実らぬまま、さえ子が昭和52年から去る最後の夜、
ユウタは強引に彼女を蛍を見に連れ出します。
それはとても感動的な展開なのですが、ここで妙なアーティスト性が爆発してしまい、
急に人物の作風が劇画的になるシーンが挿入されるのですが、それがイマイチ…。
普段はすごく可愛らしいさえ子ですが、写実的になったそのシーンではなんかブスだし…。
普段がデフォルメチックなデザインだけに、ホントはこんな顔なのかと、
ちょっとショックを受けてしまいました。
何の脈絡もない劇画化もどうかと思うが、せめて写実的でも可愛らしく描いてくれたら…。

そんな実はボーイ・ミーツ・ガールな作品だった本作ですが、
ユウタも元の時代に戻る日が来ての、ケンゾーとの別れのシーンもなかなか感動的で、
男同士の友情を描いた物語でもあります。
このひと夏の思い出は、タイムスリップするとみんなの記憶から消されてしまうのですが、
現代に戻ったユウタは、さえ子やケンゾーと奇跡的に再会を果たすことになります。
それもとても感動的だったのですが、それ以降はちょっと蛇足な感じがしたので、
ボクとしてはさえ子との再会で終わった方がよかったかな…。
記憶が完全に蘇るのも予定調和すぎるし、なにより虹色ほたるが公衆の面前に現れるのは、
あまりに奇跡的すぎる展開で、現実離れしすぎだと思えます。
あんな水柱や蛍の海は、本作の作風から鑑みると、ちょっとやりすぎだと思えました。

あと惜しいと思ったのは、さえ子の事情や閉村のことが物語の中心になり、
ユウタ自身が巻き込まれ系主人公で終わってしまったように思えたことです。
さえ子だけではなく、ユウタも父親の死から立ち直る展開があってもよかったかな。
このタイムスリップで少し成長したユウタが、元の時代に戻ってから、
母親と再会するシーンもほしかったと思います。

クライマックス以降はちょっと惜しいところもありましたが、
それでも日本のアニメ映画として、年に1~2本あるかないかの傑作でした。
こんな劇場オリジナルアニメがもっと製作されるように、
少しでも多くの人に本作を観に行ってほしいです。

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