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ファミリー・ツリー

今、第65回カンヌ国際映画祭の真っ最中ですね。
三大映画祭の最高賞であるパルムドール、金獅子賞、金熊賞くらいは、
映画ファンとして観ておくべきかと思うので、カンヌのコンペ部門にも注目しています。
どうせ観ることになるのなら面白そうな作品にパルムドールを受賞してほしいですが、
なんとなく3番目につまらなそうなミヒャエル・ハネケ監督の『Amour』が、
カンヌ好みの作品のような気がして、最有力なんじゃないかと懸念しています。
対抗は『Holy Motors』になるだろうと思いますが、こちらは面白そうです。

あと個人的に面白そうだと思うのはブルース・ウィリス主演の『Moonrise Kingdom』と、
ザック・エフロン主演の『The Paperboy』、トム・ハーディ主演の『Lawless』かな。
…って、人気俳優主演のハリウッド映画ばかりですが。
ハリウッド映画以外の外国映画だと『Cosmopolis』と『Paradies』は興味深いです。
でも日本人としては日本を舞台に日本人キャストで描かれた日仏合作映画
『Like Someone in Love』にも期待したいところです。
正直パルムドールは無理でしょうが、諸賞にでも引っかかってくれたら嬉しいですよね。
上記の作品はパルムドール受賞しなくても観に行きたいです。(『Amour』以外。)

ということで、今日は権威ある賞をいくつも受賞した映画の感想です。
国際的な映画賞はあまりないようですが…。

ファミリー・ツリー

2012年5月18日日本公開。
ジョージ・クルーニー主演のヒューマン・ドラマ。

マット(ジョージ・クルーニー)は、妻と2人の娘と共にハワイで暮らしていた。ところがある日、妻がボートの事故に遭い、そのまま昏睡状態となってしまう。それをきっかけに、妻が彼と離婚するつもりだったことや、そのことを長女(シャイリーン・ウッドリー)だけでなく友人たちも知っていたことが判明しショックを受ける。(シネマトゥデイより)



本作は第69回ゴールデン・グローブ賞ドラマ部門の作品賞を受賞した作品です。
その受賞を追い風に、第84回アカデミー賞の作品賞も受賞したいところでしたが、
作品賞の候補9本には選ばれたものの、惜しくも受賞はなりませんでした。
ですが脚色賞で見事にオスカーを受賞しています。
ボクはアカデミー賞の作品賞候補は全部観ることにしているので、
当然本作も観に行くことは決まっていたのですが、
未観賞の候補の中では本作が最も期待薄だと思ってました。
主演のジョージ・クルーニーは好きだし、ゴールデン・グローブ賞も受賞しているので、
普通に考えればハズレなはずないのですが、どうも邦題が…。
作品賞候補の中で最も駄作だった『ツリー・オブ・ライフ』と邦題が被っているので、
期待感が全然湧いてこなかったんですよね…。
『ツリー・オブ・ライフ』は去年公開の映画の中でも1~2を争う退屈な作品で、
それを観た時の悪夢が蘇るような邦題です。

そもそも邦題は原題では日本人に伝わりにくい時に付けるものなのに、
「ファミリー・ツリー」なんて、全く意味のわからない邦題ですよね。
観てみたらわかるかと思いましたが、やはり全くピンとこない邦題でした。
なんでも「大地に根を張り、受け継がれる家族の系譜」という意味で付けられたそうで、
本作の主人公はカメハメハ大王の末裔のひとりという設定で、
その展開が物語にも絡んでくるので、言われてみれば納得できなくもない邦題ですが、
それなら原題の「The Descendants(子孫)」の方がシンプルでよかったです。
なによりあの駄作の影が払拭できます。

まぁ邦題なんて、日本の配給会社が適当に付けるもので、作品の内容とは関係ありません。
本作は作品としてはかなり良質なものではないかと思います。
アカデミー賞では『アーティスト』と『ヒューゴ』ばかり注目されていましたが、
本作も作品賞の本命のひとつとして、としてもっと注目されてもよかったほどです。
主演ジョージ・クルーニーの演技もかなり素晴らしく、
ゴールデン・グローブ賞の主演男優賞を受賞したほか、
イギリスの映画雑誌が「史上最高の演技ベスト200」の45位に選んだほどです。
ボクも好きなので彼の出演作はよく観てますが、たしかに屈指の好演でした。
それに負けじと、主人公の家族や親戚役など他のキャストも好演していました。
特に主人公の2人の娘はよかったです。

もちろん演技ばかりではなく、脚色賞でオスカーを受賞するくらいの作品なので、
ストーリーの素晴らしさも折り紙つきです。
2人の娘には振り回され、妻の浮気相手を探す情けない男を描いたコメディであり、
2人の娘を抱え、昏睡状態の妻を看取ることになる夫を描いたシリアスな感動ドラマが、
無理なく融合されており、とてもよく出来た脚本だと思います。
さらにそこに、タイトルにも関係するカメハメハ大王の子孫としての人生観も加わり、
内容の濃い重層的なドラマに仕上がっています。
それなのに全く重さを感じず、カラッといた印象を受けるのは、
常夏のハワイというロケーションの力かもしれませんね。
全編に流れるハワイアンな音楽も心地いいです。

オワフ島に住む弁護士のマット(ジョージ・クルーニー)はカメハメハ大王の子孫で、
カウアイ島に先祖代々の広大な土地を家族信託で持っている受託者です。
しかし永久拘束禁止の原則により、その土地をあと7年で手放さなければならず、
近々、誰に土地を売るべきか7人の従兄弟たちと親族会議で決めることになっています。
このあたりの土地の権利や法律のことは、正直よくわかりませんでしたが、
マットは大地主なわけだけど、地代で楽に生活しようとは思ってないみたいで、
カウアイの土地も手つかずの原野のままです。
その大自然を売れば、開発されリゾート施設が建つことになるようですが、
なんとなく、それはあまりいい印象ではないですよね。

一方でマットには、ボート事故で昏睡状態の妻がおり、
彼女が入院しているために、男でひとつで娘たちの面倒をみることになるのですが、
仕事人間だった彼は、10歳と17歳の年頃の娘との接し方がわからず四苦八苦します。
そんな折、医者から妻が回復の見込みはないと診断され、妻の事前指示書に従い、
延命治療を取りやめることになり、数週間後には妻が亡くなることが決定的に。
その知らせを受けた長女アレックス(シャイリーン・ウッドリー)は気が動転し、
母親が浮気をしていたという事実を彼に告げてしまいます。
思いがけない事実に愕然とするマットだが、浮気相手が誰なのか調べることを決めます。
当事者である妻は昏睡状態で、しかも余命幾許もない状況の中、
こんな告白をされても妻に怒りをぶつけるわけにもいきません。
はじめは「どんな野郎か確かめたい」というだけで始めた浮気相手探しですが、
妻が浮気相手を本気で愛していたと知り、死にゆく妻のために、
その浮気相手に最期のお別れをしてもらいたいと思うようになります。
もうマットの心中は、察することも出来ないほど複雑でしょうね。

長女の方も複雑な心中のはずですが、浮気相手探しにボーイフレンドを同行させたりして、
探偵のまねごとというか、ちょっと遊び気分のようです。
この長女のボーイフレンドのシド(ニック・クラウス)が、
図太い上に空気読めないアホな若者で、マットは親戚は不快感を露わにしますが、
実はなかなか憎めない奴で、後にマットとも男同士の友情的なものも芽生えたりします。
でも、彼の半端ではないアホさ加減はけっこう笑わされました。
彼がいなかったら、もっとシリアスで暗い話になってたかもしれませんね。
次女スコッティ(アマラ・ミラー)の天真爛漫さも、本作に華を添えています。

浮気相手が不動産業者のスピア(マシュー・リラード)だとわかったマットは、
出張中の彼を追ってカウアイ島にやってきます。
そこで彼が妻子持ちだと知り、しかも土地売却の取引相手の義弟という事実も判明。
マットは彼に妻の見舞いに来るように迫ります。
さらにカウアイ島の先祖から受け継いだ土地を今一度見たマットは、
親族会議である決断をすることになる、という話です。
本作は要するに血の繋がりがテーマなのでしょう。
自分のルーツである子孫としての誇りを再認識すると共に、
一番近い血族である娘たちとの絆も再認識するという展開です。
妻の死や浮気の発覚など、大変な苦難があったけど、それを娘たちと乗り越えたことで、
結果的に今まで疎遠だった娘たちと心が通じ合うようになったわけで、
妻の浮気や死も無駄ではなかったということでしょう。
まぁなんだかんだで妻は血族ではないし、血の繋がりがテーマであれば、
彼女の死はそれほど重要ではないと言えるのかもしれません。
血族である従兄弟たちはマットに対して理解もあるけど、
姻族である舅はマットにとっては少々鬱陶しい人だったし、
同じ家族や親戚でも、血の繋がりの有無は大きいのでしょう。

さて、『ツリー・オブ・ライフ』を除けば傑作ぞろいのアカデミー賞作品賞候補ですが、
日本で公開されていないのは残すところあと1本となりました。
本作は脚色賞受賞でしたが、残る1本は脚本賞を受賞しており、
本作を鑑みてもかなり期待が持てるかと思います。
その残る1本は今週末公開の『ミッドナイト・イン・パリ』です。楽しみですね。

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