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SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者

今年は現時点で6枚の音楽CD(日本語ラップ)を買いましたが、
そのうちの4枚がケツメイシの4枚同時発売のベスト盤です。
急に強引で無茶苦茶なベスト盤の出し方するなと思ってたんですが、
案の定、その4枚のベスト盤を最後に所属レコード会社が、
トイズファクトリーからエイベックスに移籍になるそうです。
う~ん、よりによってエイベックスってなんか微妙かも…。

ウチで日本語ラップの記事をあまり書かなくなってから2年以上になります。
別に完全にやめたわけではないのですが、日本語ラップの感想を書こうにも、
ボクの好きなアーティストのCDが全くリリースされず、いわば開店休業状態です。
比較的メジャーな日本語ラップが好きなのに、それでもCDリリースしないし…。
可愛い女の子と握手できる特典でも付かなければCDが売れない時代なのはわかりますが、
全くリリースしないのであれば売れる売れない以前の問題で、
たとえ可能性は低いとしても、とりあえず打席に立たないことにはヒットは打てません。
日本語ラップは有料無料問わず、音楽配信が盛んになっているけど、
それもCDをリリースしない風潮に拍車をかけていますよね。
内輪にしか届かない配信なんて世間に何の伝播力もないこともそろそろわかったはずです。

ということで、今日は日本語ラップを題材にした映画の感想です。
勢い余ってサントラまで買ってしまいましたが、それが今年の6枚のうちの1枚です。

SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者

2012年5月5日大阪公開。
入江悠監督による青春ヒップホップ・ムービー『SR サイタマノラッパー』シリーズ第3弾。

かつて埼玉の弱小ヒップホップ・グループ「SHO-GUNG」の仲間と別れ、上京したマイティ(奥野瑛太)はラップを断ち切ることができず、先輩ヒップホップクルー“極悪鳥”の手伝いをしながらメンバーに入る機会をうかがっていた。しかし、ラッパーになりたいと願いつつも現実は厳しく、ある事件をきっかけにマイティは追われる身となってしまい……。(シネマトゥデイより)



東京から遅れること3カ月、漸く大阪でも公開が始まった本作ですが、
実は観に行くかどうか、けっこう悩みました。
関西では第七藝術劇場というミニシアターでのみの上映なのですが、
この劇場はボクの行動範囲からすると、ちょっと不便な立地で、
わざわざここに行くのはよほどの期待作の時だけです。
そういう意味では本作は微妙なラインで、梅田のシネコンでの上映なら確実に行くけど、
第七藝術劇場はちょっとめんどくさいな…って感じで、
更に前売り券が1500円とちょっとお高い設定なのも悩みどころでした。
前作『SR サイタマノラッパー2 ~女子ラッパー☆傷だらけのライム~』(SR2)は
前々作の好評を受けてかティ・ジョイ配給だったので、
直営のシネコン、梅田ブルク7での上映で余裕で観れたのですが…。
なんで今回はティ・ジョイが配給してくれなかったのかな?
前作の評判があまりよくなかったのかな?
入江悠監督の前作『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』と
同じ配給会社なので、その絡みがあっただけなのかな?

そういえば、『劇場版 神聖かまってちゃん』の報を聞いた時はちょっとショックでした。
入江監督は『SR2』の次は、当然第3弾に取りかかるものだと期待していたので。
それに同じ音楽映画ということもあり、入江監督さえも今の日本語ラップに呆れかえり、
アングラでもロックの方がまだマシだと、オルタナ・ロックの映画に鞍替えしたのかと…。
当時は神聖かまってちゃんはけっこう注目されてたし、
やはり長いものには巻かれろで、それも仕方ないかと思いましたが、
結局また日本語ラップ映画に戻ってくれたことは、単純に嬉しかったです。
余談ですが、『劇場版 神聖かまってちゃん』はヒットしそうな予感はあったんだけど、
ちょっと題材がオルタナティヴすぎたのか、それほどヒットしませんでしたね。
それと前後して神聖かまってちゃん自体の人気も落ち着いてしまった気がします。

話は戻って、本作を観に行くことにした理由は、
たまたま見た「めざましテレビ」で本作がとても面白そうに紹介されてたからです。
ボクは1作目はあまり好きじゃなかったけど、2作目はかなり面白くて、
『劇場版 神聖かまってちゃん』もイマイチ肌に合わなかったため、
本作も雑誌等で情報集めても、面白いのかどうか判断付きませんでしたが、
やはりなんだかんだでテレビの発信力は絶大で、これは絶対面白いはずと思わされました。
で、結局観てみて、予想通り面白くてよかったのですが、
ひとつ失敗だったのは、1500円の前売券で観てしまったことです。
なんと第七藝術劇場では、主演俳優の大阪での出没写真か、
野菜のブロッコリーを当日持参すると、一律1000円で観れてしまうようです。
出没写真はちょっと大変だけど、ブロッコリーなんて安いものです。(しかも美味しい。)
今後行く人は、是非ブロッコリーを持参するといいです。

さて、内容の感想に入りますが、予想通り面白い作品なのは間違いないけど、
日本語ラップのブーム到来を願うボクとしては、ちょっと残念なところも…。
というのも、本作はステレオタイプなヒップホップ像が描かれてしまっているからです。
前作、前々作は、ヒップホップとか自称して粋がっている怖いラッパーたちも、
実は普通の…、いや、普通より若干情けないくらいの若者として描かれ、
そのダメさにリアリティがあり、ラッパーに対して親近感さへ覚えました。
しかし本作の場合は、世間一般に思われているヒップホップの負の部分が大々的に描かれ、
ヒップホップ文化は犯罪の温床で、ラッパーはやっぱり怖い奴らというイメージを、
さらに助長しかねない内容になっていると思います。
前作までも、あまりに日本語ラップをダサく描きすぎで、
大好きだった日本語ラップのイメージを壊されすぎで憤ったところもあるけど、
実際に薬物やら暴力やらラッパーの不祥事などで、負のイメージしかない現状では、
それをさらに助長するのは、今はまだ待ってほしいという気持ちになります。
まぁそのイメージはただの先入観ではなく、そういう面も確かにあるのが問題なのですが。

(以下、ネタバレに注意してください。)

埼玉県で活動する5人組のヒップホップクルー"SHO-GUNG"だったが、KENとTECが東京進出、
後を追うようにMIGHTYも上京してしまい、SHO-GUNGはIKKUとTOMの2人だけに…。
それから2年後、東京でヒップホップクルー"極悪鳥"の見習いとして、
メンバー入りを目指すMIGHTYは、「NEW GENERATION MC BATTLE」で決勝まで行けば、
極悪鳥のメンバーにしてやると先輩MC大河から約束してもらえる。
見事に決勝進出したMIGHTYだが、決勝の対戦相手が極悪鳥が世話になるグループ
"フーリガン"のメンバー、TAKUMA THA GREATだったため、
極悪鳥の先輩MC林道から「決勝戦はわざと負けろ」との八百長命令が…。
指示通りわざと負けたMIGHTYだったが、メンバー入りの約束も反故にされ頭に血が上り、
MC林道をボコボコにして大怪我を負わせてしまう。
そのことで東京から逃げ出したMIGHTYは、元SHO-GUNGの先輩KENの紹介で、
栃木の自動車整備工場で働くことになるが…。

極悪鳥はハーコーなヒップホップクルーで、ステレオタイプな怖いラッパー集団です。
イメージとしては妄走族がモデルなのかな?(外見的なことだけですが。)
いや、レペゼン鷺宮なので、近所の練マザファッカーがモデルかも?
「イルカばっかSaveするECO J-POP キムチばっかSell Out野郎」と、
右翼ヒップホップ丸出しのパンチラインが、ダサいけど面白いです。
MIGHTYのMCバトルの対戦相手MC LEGEND(助)、zom、TOSSは、本職のラッパーだとか。
ボクくらいの浅い日本語ラップ好きでは知らない人たちばかりでしたが、
役者が演じるラッパーに負ける役なんてよく受けてくれたものだと感心しました。
『BECK』では桐谷健太演じるラッパーがMCバトルで本職を破るシーンがあったけど、
その時はさすがに本職の方が上手かったという印象だったのですが、
本作では本当にMIGHTYが勝っている感じに、違和感なく負けてあげています。
正直、フリースタイルは何言ってるかほとんど聴き取れなかったけど、
MIGHTYのオーディエンスの煽り方はかなり堂に入っていたと思います。

東京に居られなくなったMIGHTYが逃げ込んだ自動車整備工場は、
これまたかなり性質の悪い悪徳業者で、社長の等々力はイカついオッサンで、
近所の悪ガキ(やっぱりB-BOY)に高級車を盗ませては、
知り合いの悪徳産廃業者(人身売買もやってます)の紀夫サンに転売します。
紀夫サンの情婦はランジェリーパブのママなのですが、
この女も裏では従業員に無理やり客を取らせる売春斡旋をしています。
この悪徳業者のホットラインにMIGHTYは飲み込まれていくのです。
ある日、等々力と紀夫サンは一儲けしようと、自称北関東最大の音楽フェスを計画し、
その出演者募集で、栃木をはじめ北関東からヒップホップグループが集まるのです。
先達て池袋BEDのヒップホップイベントに警察のガサが入って、
出演者や客に強制尿検査をしたって話題が、日本語ラップシーンを揺るがせましたよね。
結局全員シロだったようですが、ヒップホップに対する先入観による国家権力の横暴です。
でも出演者がNIPPS周辺って聞くと、普段からイリーガルなリリックも多いだけに、
自業自得な面もあるというか、警察が踏み込みたくなる気持ちもわかります。
実態はどうあれ、ヒップホップのイベントが如何わしく思われているのは事実で、
本作にもそれが如実に反映され、等々力とか紀夫サンとか悪ガキB-BOYどもとか、
ヒップホップのフェスを仕切っているやつらは、とんでもない犯罪者ばかりです。

そのオーディションに、埼玉から我らがSHO-GUNGの2人、IKKUとTOMもやってくるのです。
それまではMIGHTYの転落人生を描いたクライムサスペンス調でしたが、
SHO-GUNGの登場から一転、ドタバタ喜劇が始まります。
このオーディションは出演者から参加料を巻き上げるための悪徳商法でしたが、
SHO-GUNGにとっては初めてステージに立てるチャンスには変わりなく参加を決意。
オーディションで意気投合した他の参加グループ"征夷大将軍"と意気投合し、
参加費節約のため2組一緒に"征夷大SHO-GUNG"としてエントリーします。
このレペゼン日光のヒップホップグループ征夷大将軍は3MC1DJ構成ですが、
3MCは本職ラッパーで、NO VOICEがHi-King、NO SIGHTがsmallest、NO SOUNDが回鍋肉です。
例によってHi-Kingに聞き覚えがあるくらいで、あまり知らないラッパーですが、
極悪鳥の面々と違って、こちらは文系ラッパー(オタクラッパー?)で怖さはないです。
極悪鳥は一見するとヒップホップのイメージ通りの怖いラッパーたちですが、
本物のラッパーは征夷大将軍のように全然怖くなくて気のいい奴らも多いってことですね。
なにしろ極悪鳥は役者が演じている偽ラッパー集団ですが、征夷大将軍は本職ですし。
見るからにダメそうな3MCですが、ひとたびラップをすると、さすがに様になっています。
征夷大将軍はコンセプトからして無茶苦茶で笑わせてくれますが、
一番インパクトが強いのはメンバーのひとり、DJ眠り猫です。
インパクトがあるのはいいんだけど、俳優のためか役を作りすぎで、
少しケレン味が強すぎて、リアリティも重視している本作の中では浮いてるかも…。
放送禁止用語連呼しすぎだし、あまりに変人すぎますよ。

そんな喜劇パートを挟み、再びMIGHTYのシリアスなクライム・サスペンスに突入。
紀夫サンたちから音楽フェスの仕切りを任されたMIGHTYですが、フェス当日、
紀夫サンの女のランパブのママが自分の彼女一美に無理やり売春させたことがわかり激昂。
彼は思わず鈍器で殴打し、ママは動かなくなってしまいます。
彼は栃木から逃げるための資金として、等々力や紀夫サンの事務所から金を盗み、
最後に音楽フェスの売上金も持ち去ろうとしますが、
会場でゲスト出演するために来ていた極悪鳥と鉢合わせになり、彼らからフクロ叩きに。
しばしの逃亡劇の後、MIGHTYは警察に取り押さえられ…。
MIGHTYがフェス会場に到着してからは、映画史に残りそうな長回しになります。
そうでなくても、その会場に動員されたエキストラの数は、
のべ約2000人とインディー映画最大規模の撮影だったそうです。
その無償で集まってくれたエキストラを統率して、驚異的な長回しをしたことは、
素直にすごい偉業だとは思うのですが、長回しが必要だったかといえば微妙…。
特に車で逃走するシーンはフロントガラスの向こうが全然見えず、
これならカット割してでももっと見やすい画にしてくれた方が…とも思いました。
最後はシリーズ恒例のフリースタイルで終わります。
てっきりMIGHTYはフェスのステージ上でフリースタイルすると思っていたけど、
実際はちょっと意外な場所でやることとなります。
う~ん、でも意外な場所だけど、フリースタイルするには向かなすぎる場所で、
もうちょっと長くしっかりとMIGHTYのフリースタイルを聞きたかったかも…。

日本語ラップの扱いは置いておくにしても、普通にかなり楽しめる作品なんだけど、
なんというか、真っ当な映画になりすぎているような気がします。
主人公がどんどん追い詰められ犯罪に走るフィルム・ノワールで、
言ってしまえば、よくあるパターンです。
それだけに安定的に楽しめるのも確かなのですが、
奇才の入江監督には変化球を期待してしまいますよね…。
フェスにしたってインディー映画であの規模は凄いけど、メジャー映画なら普通だし、
メジャー映画を意識せず、インディー映画にはインディー映画としての魅せ方もあるはず。
前作、前々作には、自分でも理解できない感動があったけど、本作には感じなかったし。
きっと風変わりだった前作、前々作と違うものにしようとして、
逆に普通の映画になってしまったような気がします。

もっと重箱の隅も突けますが、上映後に主演の奥野瑛太さんによる舞台挨拶があり、
本作の宣伝活動の大変さを説かれてしまったので、あまり厳しいことは書けない心境に…。
単純にサプライズでの登場だったので、嬉しくて舞い上がっちゃったって、
上映中にいろいろ思ったダメ出し個所も、飛んじゃいました。
逆に言えばその程度のダメなところが目に付くというのは全体的にいい作品な証拠。
和製フィルム・ノワールとしては最高水準の出来だと思うので観る価値はあります。
ブロッコリー持って第七藝術劇場に行こう!

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