ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

テルマエ・ロマエ

アニメ映画はちょこちょこ観に行っていたけど、実写の邦画を見るのは約2カ月ぶりです。
去年の夏前から、邦画を観に行くたびに地雷を踏んでいたので、
最近は邦画を観に行くことに臆病になって、無意識に避けていました。
一昨年はけっこう豊作だったと思うけど、去年はかなり凶作で…。
今年はあまり観れてないのですが、最近の邦画の評価はどうなんでしょう?
興行収入ランキングでは依然として邦画の方が人気あるみたいだけど…。

来月も邦画を1本観に行く予定ですが、その次はまた夏まで行かないかも。
でも今週末から公開が始まった『わが母の記』は、高倉健の『あなたへ』と共に、
本年度の日本の映画賞を席巻しそうだし、一応観ておくべきかな?
それ以外では、今年公開される邦画の中では園子温監督の『希望の国』と
北野武監督の『アウトレイジ ビヨンド』は注目度が高そう。
あと『BRAVE HEARTS 海猿』と『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』は
興行面で注目されることは間違いなさそうです。
自称映画ファンとしては、それくらいは観ておいた方がいいかな?

ということで、今日は久しぶりに観たいと思えた邦画の感想です。

テルマエ・ロマエ
テルマエ・ロマエ

2012年4月28日公開。
ヤマザキマリの人気コミックを阿部寛主演で実写映画化。

古代ローマ、アイデアに煮詰まり失業した浴場設計技師のルシウス(阿部寛)は、友人に誘われた公衆浴場でタイムスリップしてしまう。たどり着いた場所は、何と日本の銭湯。そこには「平たい顔族=日本人」がいて、彼は漫画家志望の真実(上戸彩)と出会う。ルシウスは日本の風呂の文化に感銘を受け、そこで浮かんだアイデアを古代ローマに持ち帰り一躍有名になっていくが……。(シネマトゥデイより)



本作はマンガ大賞や手塚治虫文化賞短編賞など各種漫画賞を総なめにした漫画が原作です。
ボクはその原作漫画の存在は噂には聞いていたものの未読ですが、
テレビ放送されたFROGMANによるFLASHアニメの方は見ました。
そのアニメもかなり反響があったようですが、ボクもかなり楽しめました。
それまでは本作も観に行くべきかどうか迷っていましたが、
そのアニメを見てからは公開が待ち遠しく思えるようになっていました。

…でも、ちょっと期待値が上がりすぎちゃってたかもしれないです。
出来としては悪くはないけど、アニメの時に受けたほどの衝撃的な面白さは得られず、
待ちに待ったわりには、こんなものかといった印象です。
まぁ元がギャグ漫画で、映画もアニメもそのギャグを忠実に再現していたら、
同じネタを二度見たようなものですからね。
パンチ力が弱まるのは仕方のないことかも…。
たしかに古代ローマ人のキャラを、顔の濃い日本人俳優が演じるというのは、
実写映画ならではのネタで面白いですが、それも所詮は出オチ。
それも序盤で慣れる、いや、本作の予告編の段階で慣れてしまってました。

はっきり言って、漫画を映像化するなら、実写よりアニメの方が向いているのは当たり前。
最近は『うさぎドロップ』や『カイジ2』や『宇宙兄弟』など、
実写映画の公開に合わせてテレビアニメを放送することが多いですが、
比較されたら実写映画は負けてしまいます。
相乗効果を狙ったメディアミックスのつもりかもしれませんが、
実写映画の方にはあまりいい影響があるようには思えない風潮です。
特に本作の場合、テレビアニメでFLASHアニメというインパクトの強い技法だったため、
それを上回るのは至難の業だと思われます。
本作も邦画のわりにはかなり気合の入った映像で頑張っていたとは思いますが…。

それに本作の原作漫画はストーリー漫画ではなく、一話読み切りのギャグ漫画なので、
一話十数分のテレビアニメならいいけど、長編映画化するには向かない作品だったかも…。
長編映画化にあたり、複数のエピソードを一本の長いストーリーにまとめるため、
オリジナル要素の「つなぎ」に使っているのですが、この「つなぎ」の我が強すぎて、
完成された作品である原作の展開に、雑味を与えてしまっている気がします。
その邪魔な「つなぎ」が、オリジナルキャラである上戸彩演じるヒロインの存在です。

紀元前128年古代ローマ、派手なテルマエ(大衆浴場)ばかりが持て囃される風潮に
嫌気がさした真面目なテルマエ技師ルシウス(阿部寛)は、
テルマエをもっと安らげる場所にする斬新なアイディアを考えていた。
そんな彼は、ある日突然、時空を超えて現代の日本の銭湯にやってきてしまい、
そこで見た近代的な大衆浴場に感銘を受け、そこでの経験を持ち帰り、古代ローマに再現。
一躍注目のテルマエ技師となった彼は、皇帝ハドリアヌスの目に止まり…、という話。
本作は現代にやってきた古代人が、近代的な設備を見てカルチャーショックを受ける、
タイムスリップによる異文化ギャップをネタにしたコメディです。
特に風呂をはじめ、高度に発展した日本の水回りの文化は世界に誇れるものであり、
それを目の当たりにした異文化の人が、激しく動揺し敗北感を覚えるという展開は、
なんとも日本人の自尊心をくすぐられるもので、面白い上に気持ちいいです。

ハドリアヌス帝に仕えることになったルシウスは、日本の風呂文化を模倣し、
更なる(当時としては)斬新なテルマエを建造していきます。
そんな折、彼は時期皇帝の椅子をめぐるお家騒動に巻き込まれるも、
彼の活躍と日本の風呂文化により、古代ローマ帝国は更に繁栄するというストーリーです。
この皇帝のお家騒動も、けっこうオリジナルな脚色が加えられていますが、
史実を絡めながらも、無理なくまとまっており、大筋ではよかったと思います。
でもその一連の流れに関わってくるヒロイン、山越真実(上戸彩)のせいで、
なんだか面白味が目減りしている気がします。

山越真実は漫画家志望の女の子で、後にルシウスを題材に漫画を書きます。
それが本作の原作『テルマエ・ロマエ』というオチなのですが、
それからもわかるように、基本的には狂言回し的立ち位置のキャラです。
しかし彼女は、ヒロインとして主人公ルシウスと並び立つ主要キャラ扱いされています。
原作にないオリジナルキャラってだけでも眉をひそめてしまうのに、ヒロインなんて…。
しかもヒロインとしてルシウスとの絡みを作るために、
かなり強烈で強引なキャラ設定がなされており、原作を歪めています。
まずルシウスが時空を超えると、なぜか彼女の近くに現れるという設定になり、
そのため彼女も、常に風呂の近くにいる必要があり、漫画家というだけではなく、
派遣でショールームに勤め、実家は温泉旅館という妙なキャラ設定が付きました。
更には古代ローマ人のルシウスと喋るために、古代ラテン語を数日でマスターし、
古代ローマ帝国の歴史にも精通してしまうという、あり得ない特技を身につけます。

それは100歩譲って認めるとしても、一番これはダメだろと思ったのは、
山越真実が「自分は未来人である」ということをルシウスに話してしまったことです。
それまでルシウスは、現代の日本のことをローマ帝国の属州のひとつで、
日本人を「顔が平たい族」と称し、奴隷の民族だと考えていました。
だからこそ自分たち古代ローマ帝国の技術を凌駕する奴隷民族に対して、
衝撃や敗北感を覚えて激しく動揺するルシウスの様子が可笑しかったし、
日本人としても自分たちの文化が世界最高だと自負している外国人が、
日本の風呂文化に驚嘆してくれることで、自尊心をくすぐられるのです。
しかしそれが時代による技術の進歩となると話は別で、
未来の技術が過去の技術より優れているなんて当たり前で、そこに国は関係ありません。
未来人とわかればルシウスの「顔が平たい族」に対する畏敬の念も薄れるでしょう。
本作の売りだったはずの異文化ギャップネタの面白さも否定されたような気がします。

そもそも山越真実が未来人だとわかったのは、
彼女が時空を超えて古代ローマに来たことで、歴史が変わってしまい、
時期皇帝がアントニヌスからケイオニウスになる流れになります。
彼女はその時代の流れを元に戻してくれるようにルシウスに進言するのですが、
別に古代ローマの歴史が変わっても彼女には何ら問題ないはずです。
結局、ルシウスの活躍で歴史は元に戻りますが、そこは彼女の進言がキッカケではなく、
ルシウスの自由意思でそうなってほしかったと思います。
実際にルシウスはケイオニウスが皇位に付くことを危惧していたので、
山越真実がいなくても、同じ展開にすることは可能でした。

逆に山越真実は、ルシウスのテルマエ技師としての仕事に対する誇りと情熱に感化され、
諦めかけていた漫画家になる夢を取り戻すのですが、彼女が漫画家になるのが、
はたしてハッピーエンドと言えるのかも疑問です。
彼女の実家の温泉旅館は赤字続きで、もう倒産寸前の状態でした。
それを見捨てて漫画家の夢を叶えることがはたして正しいことなのか、
ここは実家を救ってこそ、真のハッピーエンドじゃないのかと思うんですよ。
特に本作はお風呂を題材にした話なわけだしね。
逆にルシウスが失われた古代ローマのテルマエ文化を活かして、
この赤字温泉旅館の立て直しに一役買うくらいの展開を期待しました。
そうなればヒロインの存在も意味があったと思いますが、現状では邪魔でしかなく、
山越真実が登場するたびに、ウンザリした気持ちになりました。

もし狂言回しとして「平たい顔族」にオリジナルキャラが必要なら、
男のキャラの方がよかったんじゃないかと思います。
日本の風呂文化には「裸の付き合い」ってものもあるじゃないですか。
でも相手がヒロインだと、それも出来ませんしね。
そういえば風呂文化が題材なのに、ヒロインのセクシーなシーンも皆無でしたね。
いろんな意味でやっぱり上戸彩を本作のヒロインにしたのは間違いじゃないかな…?
セクシーなシーンじゃないけど、「金精大明神祭」とかいう、
若干卑猥さを感じるシーンが少しだけあったけど、あれは何の意味が?
ルシウスは山越真実の近くに出現するという、本作でわざわざ足したルールを、
自ら破ってしまっているだけのような気がするんですが…。
多分原作にあるんだろうけど、このエピソードを無理やり入れるくらいなら、
もっと誇るべき日本の風呂文化を取り扱ってほしかったです。

どうもテレビアニメ版からの劣化を感じてしまったために酷評気味になりましたが、
お金もかかっており、出オチとはいえ阿部寛の好演もあって、
邦画としてはかなり面白い方の作品ではないかと思います。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/683-04628240
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad