ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

ももへの手紙

今年は3年ぶりにジブリ映画が公開されない年です。
スタジオジブリ経営5カ年計画によれば、若手監督の作品2本続いた後に、
2年かけて超大作を製作するので、来年は宮崎駿監督の新作が公開されるはずですが、
今年はその新作の製作期間であるため、何も公開されないみたいです。
そのためかどうかわかりませんが、今年はアニメ映画が群雄割拠している気がします。

オリジナルでは『グスコーブドリの伝記』に最も期待をしていますが、
他にも『虹色ほたる 永遠の夏休み』や『おおかみこどもの雨と雪』、
『サカサマのパテマ』など、なかなか期待できそうな感じがします。
テレビアニメの劇場版も『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』や『ベルセルク』三部作、
『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』前後篇など、話題作が多いです。
一方でハリウッドのアニメは、ちょっとピークを過ぎた感が否めず、
今のところ『フランケンウィニー』くらいしか期待できないかな…。

ということで、今日は日本のオリジナルアニメ映画の感想です。

ももへの手紙

2012年4月21日公開。
『人狼 JIN-ROH』の沖浦啓之監督による感動の長編アニメーション。

父親を亡くしたももは、11歳の夏に母と2人で東京から瀬戸内の小さな島へとやって来る。彼女の手には、「ももへ」とだけ書かれた父からの書きかけの手紙が遺(のこ)されていたが、その真意はついにわからずじまいだった。ももは仲直りできないまま逝ってしまった父親のことで胸がいっぱいで、慣れない場所での新しい生活になかなかなじめずにいた。(シネマトゥデイより)



本作は第16回ニューヨーク国際児童映画祭の長編大賞や、
イタリアの第14回フューチャーフィルム映画祭最高賞プラチナグランプリ受賞など、
国際的にはすでに評価されている作品みたいです。
正直、それらの賞がどれほどのものかはわかりませんが、
日本のアニメ映画が海外で評価されるというのは嬉しいものです。
それもあって、ボクも本作には期待していましたが、
期待を裏切らない出来栄えだったと思います。

「妖怪」は和製ファンタジーとして、昔から存在するジャンルではありますが、
特にここ数年は、妖怪を題材にしたテレビアニメやアニメ映画が多くなった気がします。
本作もそのうちのひとつですが、去年のGW前も妖怪アニメ映画
『豆富小僧』や『鬼神伝』が公開されていました。
テレビアニメでは前クールで『夏目友人帳』を見ていたのですが、
『妖狐×僕SS』や『偽物語』など、他にもいろいろあったみたいですね。
(『偽物語』は劇場版『傷物語』が年内に公開されるとか。)
中には例外もあるでしょうが、このジャンルに対する印象は、良作が多いということです。
そしてなにより、最近では『friends もののけ島のナキ』が韓国で大ヒットしたことや、
本作が海外の映画賞を受賞したように、海外でも評価されやすいジャンルだと思います。
「妖怪」は英語でも「Yokai」であるように、日本特有の文化であり、
近年では世界に誇れる日本のポップカルチャーのひとつになっていると思います。
大事にしていきたいですね。

本作は『人狼 JIN-ROH』の沖浦啓之監督の第2作目となる長編アニメ映画ですが、
『人狼 JIN-ROH』も海外でかなり評価されたそうですが、
ボクは原作の押井守が苦手なので、そのシリーズは観てません。
ただ前作が押井守作品だと考えると、ファミリー向けファンタジーである本作は
SFである前作とはかなり趣が違いますよね。
それを思うと、ちょっと大丈夫だろうかと不安になりましたが、
そんな彼が7年もの製作期間をかけて完成させたらしいので、
本当にやりたかったのはこんな作品だったんだろうなと思います。
その出来栄えも長い年月をかけただけのことはあります。

本作の作画監督には『千と千尋の神隠し』の作画監督を起用しており、
キャラクターデザインも彼の手によるものらしいのですが、たしかにジブリ的な印象です。
ジブリよりも肉感的というか、リアル路線なキャラデザで、あまり好きじゃないです。
主人公ももは小学6年生なのですが、もっと大人に見えるし、
大人キャラの豊齢線など皺の描き方も、強調しすぎな気がします。
妖怪たちも全く可愛らしさを感じさせないデザインで、見慣れるのに苦労しました。
ボクとしてはもっとデフォルメされたキャラの方が好みなのですが、
人物の内面的な描写がとても丁寧にされていて、
徐々にキャラの魅力を感じることができたのには感心させられました。

特に主人公ももは、よくぞここまで小学生らしさを表せるものですね。
彼女の子どもらしい内弁慶な対人関係の描写など、素晴らしい観察力だと思います。
また、ももの声優を務めた子役の美山加恋ちゃんも、予想外に上々の演技でした。
プロの声優かと思うほどの違和感のない声の演技ですが、実年齢もももに近いため、
プロの声優が演じる以上に、ももらしい声になっている気もします。
かなり冒険だったと思いますが、素晴らしいキャスティングでした。
ももの母親いく子役の優香も、まだそんな母親役なんてやるイメージはなかったけど、
思った以上にシックリきていて驚きました。
まぁ今クールのドラマでは、高校生の子どもがいる母親役をしているらしいですが…。

父を事故で亡くし、母と共に瀬戸内の汐島に移り住むも、慣れない生活に戸惑うもも。
そんな彼女の前に突然、3匹の妖怪イワ、カワ、マメが現れます。
菅原道真公によって黄表紙(江戸時代の絵本)に封印されていたと言う彼らだけど、
実はたまたま見つけた黄表紙に描かれていた妖怪を模して形を成しただけで、
それが妖怪と言えるものなのか、その正体はよくわかりません。
どうやら空の上からこの母子を見守るために使わされた「何か」みたいですが、
妖怪というよりも、もっとスピリチュアルな存在な気がしますね。
「見守り組」と称するその3匹の妖怪の他にも、この汐島には土着の妖怪が多数います。
その中には某掲示板の名物AAキャラのようなヘンテコな奴もいて、なかなか多彩ですが、
十把一絡げの扱いで、個々の妖怪としてはあまり目立った活躍は与えられておらず、
なんだかちょっと勿体ない気がしました。
見守り組よりもデザインが魅力的な土着妖怪もいたのに…。

ももの家に棲みついた見守り組ですが、彼らは手癖が悪く、島でやりたい放題。
成り行き上、同居することになったももは、彼らに振り回されますが、
一緒に行動するうちに、徐々に親近感を覚えるように…。
しかしある日、見守り組の悪さが原因で、ももは母親とケンカになり家を飛び出します。
なかなか帰ってこないももを心配して探しに出た母親ですが、持病の発作が起こり…。
母親が倒れたことを知り、慌てて家に帰るももですが、折しも島は台風に見舞われ、
電話では本土にいる医者を呼ぶことができず、ももは母親を助けたい一心で、
開通前の架橋を使って医者を呼びに行くが、暴風雨は激しさを増し…、という話。

ももは父親もケンカ別れした後に亡くしており、
仲直りしないまま別れたことで心を痛めていたので、
ケンカ後に倒れた母親もそうなるのではという不安を抱いています。
それはよくわかるのですが、母親の持病というのが喘息なんですよね…。
死に至ることもないことはないですが、緊急性を考えれば、
台風の中で沿岸を通って医者を呼びに行く方がよほど危険です。
ももは子どもなのでその判断はつかなくても仕方がないけど、
大人(郵便局員)も一緒になってももの無謀な行動に手を貸すというのは…。
ここはもっと緊急性の高い持病にしてもよかった気がします。

案の定、台風の中、立ち往生してしまうももですが、
そこに見守り組たち妖怪が助けに来ます。
見守り組にとっては、人の生き死にに関わることは禁止されている行為らしいのですが、
禁を犯してまで、ももを助けに来るというのは、とても尊い決断です。
…と言いたいところですが、彼らのこの行為は半分以上保身のためであり、
なんだかイマイチ感動できませんでした。
ももと見守り組の絆って、実は思ったほど強いものではなく、
別れのシーンにしても、意外とアッサリとサヨナラするんですよね。
個人的にはもっと別れを惜しんだりしてくれてもよかったです。
特にももとカワとの関係が希薄すぎる気がしました。

でも本作は、そんな妖怪たちと少女ももの交流がメインなわけではなく、
父親が亡くなり、母親にもワダカマリを感じている娘ももが、
母親の本当の気持ちを知り、父親の死からも立ち直るという、少女の成長物語です。
極論を言ってしまえば、妖怪の存在は、無くても成立しないわけではないです。
ラストの宮島さんのワラ舟流しのシーンは、どうしてもファンタジーが必要な展開ですが、
あそこまで描いてしまうのは、ちょっと過剰な演出だと思います。
正直、父からの手紙は、宛名だけのまま終わった方が抒情的でよかった気がします。
とはいうものの泣かされちゃいましたけどね…。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/682-ff934203
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad