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ジョン・カーター

ディズニーの最新作『ジョン・カーター』が悪い意味でヤバいらしい…。
なんでも興行赤字が映画史上最大の2憶ドルになる可能性があるそうです。
なぜそんな記録的なコケ方になったかについて、さまざまな考察がされており、
原作の古典SF小説が今となっては古臭く、今更感がある、というのが主な理由でしょうが、
ボクが思うに、ディズニーが信用されていないのも大きな要因だと思います。

原作小説『火星のプリンセス』は、全11巻の「バルスーム」シリーズの第1巻で、
つまり本作には続きがあり、実際に映画も全11作とはいかないまでも、
すでにトリロジー構想であることが発表されています。
しかし、ディズニーは全7巻の古典ファンタジー小説シリーズ『ナルニア国物語』を、
途中(第2巻)で投げ出した前科があり、今度もそうなる疑いを感じてしまいます。
『ナルニア国物語』は、決して悪い成績だったわけではないですが、
莫大な製作費をつぎ込んでいたため、期待ほど儲からなかったってだけです。
『ジョン・カーター』には『ナルニア国物語』以上の製作費がかかっており、
それこそ『アバター』並のヒットでもしないと、ディズニーの期待にはこたえられません。
そんなの当然無理で、トリロジー構想は投げ出すに決まっています。

ということで、今日は永久に未完の超大作映画の感想です。
もしかすると『ナルニア国物語/第3章』が20世紀フォックスに拾われたように、
他の配給会社が続編を製作してくれるかも?

ジョン・カーター

2012年4月13日日本公開。
E・R・バローズの古典SF小説『火星のプリンセス』を実写映画化作品。

1881年のニューヨーク、大富豪のジョン・カーター(テイラー・キッチュ)がこつ然と姿を消す。おいのエドガー・ライス・バローズに託された日記には、未知の惑星“バルスーム”でのジョン・カーターの驚きの体験がつづられていた。それは、全宇宙を支配しようとする“マタイ・シャン”によって滅亡の危機に直面していたバルスームが舞台で……。(シネマトゥデイより)



史上最大の赤字になるのもよくわかる、なんとも退屈な作品です。
本作はディズニーの110周年記念作品ということで、巨額の製作費を投じたり、
気合が入っているのは感じますが、どうも空回りしている印象です。
企画段階での原作選びから監督・キャスト選びまで全て裏目に出ています。

前述のように、本作の原作はSF小説「バルスーム」シリーズの第1巻『火星のプリンセス』。
この小説は『アバター』や『スターウォーズ』の原点ともいわれるほどの古典で、
なるほど、その2本のみならず、数多のスペースオペラやヒロイックファンタジー映画の、
プロトタイプのように感じられる世界観やストーリーでした。
それだけでも100年近く前に発表された原作小説が、
如何に影響力があり偉大な作品だったかは想像に難くないです。
しかし、それだけ数多の亜流作品が作られたことは、
本作の内容もそれだけ使いまわされたということです。
本作を観て一番感じたことは、何度となく見てきた古臭いストーリーと、
どこかで見たことある映像の連続による既視感です。
「これは斬新だ」と感じられるところは何一つありませんでした。
本作はアップルの設立者であり、ピクサーの創設者でもある、
「創造の先駆者スティーブ・ジョブズ捧ぐ」作品とされていますが、
原作小説はたしかに創造の先駆者的ですが、映画化の本作は創造性なんて微塵もないです。
こんなのを捧げられても、ジョブズも草葉の陰で苦笑いです。

ボクは原作を読んでおらず、『火星のプリンセス』とは今回が初めての出会いですが、
ボク同様、この原作の亜流作品から知ってしまった人にとっては、
原点である本作は、その亜流作品から退化した作品に感じると思います。
なので本作を心底楽しめる人は、映像化されたという事実だけで喜べる、
原作ファンだけじゃないかと思います。
おそらく本作の監督アンドリュー・スタントンもそんな原作ファンで、
彼が「是非映像化したい作品がある」と提案し、見事に実現させました。
しかも彼自身はピクサー出身のアニメーション監督にも関わらず、
わざわざ実写で映像化を望んだのですから、相当な想い入れがある作品だと思います。
でも彼としては本作を実写映像化できただけでも楽しかったでしょうが、
そんな古い原作小説に想い入れがない大多数の人からすれば、
そんなものは彼の自慰行為に他ならず、それが本作の成績に表れたのでしょう。

本作で実写映画初挑戦となるスタントン監督は、
あの名作アニメーション『ファインディング・ニモ』や『WALL・E/ウォーリー』の監督で、
アニメーションにかけてはホントに素晴らしい監督だと思います。
本作もアニメーションで製作すれば、もっとマシになったかもしれませんが、
近年のディズニーの火星冒険アニメといえば、
あの超駄作『少年マイロの火星冒険記』が思い出されます。
なんでも、火星が舞台の映画はコケるというメソッドがあり、
(ヒットしたのはオリジナル版の『トータル・リコール』くらいかな?)
どんな手法で製作しても、この原作を選んだ時点で敗色濃厚だったわけです。
ただアニメーションなら製作費は半分以下に抑えられたろうから、
史上最大の赤字なんて記録的な失態にはならなかったでしょうね。

スタントン監督は名作アニメーションの監督である以上に、
監督作はもちろん、『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』の脚本も手がけた、
超一流のストーリーテラーなのです。
そんな彼に原作ものをやらせたのも、そもそもの間違いのひとつでしょう。
もし彼に、完全にオリジナル脚本のスペースオペラや、
この原作の亜流作品を書かせたとしたら、もっといいものになったはずです。
原作ファンで原作に固執するあまり、せっかくの脚本力が発揮できていない気がします。
逆に言えば、彼以外で原作にあまり想い入れのない監督が本作を撮れば、
大胆なアレンジも平気でできるだろうし、ちょっとは斬新な作品になったかもしれません。

スタントン監督は、実写映画を撮るのが初めてだったためか、
キャスト選びに関しても、経験がなさが仇になっていると思います。
アニメーション映画は、ボイス・キャストが作品に及ぼす影響はそれほど大きくないため、
それと同じ感覚で実写映画のキャスティングも考えてしまったのかもしれません。
これだけ莫大な予算を投じる超大作だと、万が一にも失敗することは許されず、
集客力のある大スターを出演させるのが定石、というか賢明(無難)な判断ですが、
本作では若手俳優テイラー・キッチュを主演に据えています。
キッチュは『ウルヴァリン』の端役で少し脚光を浴びただけの、まだまだこれからの俳優。
彼は(日本では)同日公開となる超大作『バトルシップ』でも主演を務めており、
今後スターダムにのし上がっていくのは間違いないですが、本作が実質初主演作です。

ただキッチュは、決して悪い役者ではなく、
それこそどこかキッチュさのあるチャーミングな雰囲気を持っており、
サーク族や犬ウーラとの絡みが多い中盤にかけての演技では、
それがいい感じに活きていたと思います。
シリアスな展開になると途端に平凡になるけど、なかなかいい役者です。
ただひとりでこの超大作を背負うには、いささか荷が勝ち過ぎています。
スタントン監督は、キャストで評価されたくないという自らの過信から、
大スターのキャスティングを嫌がったそうですが、その結果がこれです。
『アバター』がサム・ワーシントンを主演にし、彼を大スターにしたように、
本作も青田買いのつもりでキッチュを大抜擢したつもりかもしれませんが、
それなら『バトルシップ』がリーアム・ニーソンを脇役で起用したように、
せめて脇だけでも集客力のある俳優を起用すべきでした。
本作はヒロイン以下、知名度イマイチな俳優ばかりです。
サーク族や他のクリーチャーも『スターウォーズ』のキャラの退化版にしか見えず、
スター不在の穴を埋めるだけの魅力は到底ありませんでした。

かなり酷評になってしまいましたが、そもそもギネス級の赤字映画を観に行くなんて、
ラジー賞受賞作を観に行くよりも愚かしいことで、もはや観に行った方が悪いのです。
ゴールデン・ウィークも間近な今、洋邦の大作映画やアニメ映画から、
オスカー受賞のクオリティ・フィルムまで、いろいろ話題作が上映されています。
退屈な上に完結すらしていない本作を観に行く必要は全くないです。
なんて忠告の必要もなく、お客さんたちは賢明で、
週末の1000円均一の日だったにもかかわらず、本作だけ客席ガラガラでした。
ちなみにオススメは『バトルシップ』です。

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