ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

ヘルプ 心がつなぐストーリー

ハリウッド版『バトル・ロワイヤル』とも称される『ハンガー・ゲーム』が、
全米歴代3位のオープニング成績を叩きだしたことで、社会現象になっています。
日本では、今年の秋に公開になりますが、待ち遠しいです。
(その頃には『ダークナイト・ライジング』に抜かれて歴代4位かな?)

評論家のウケもなかなかいいらしい『ハンガー・ゲーム』ですが、
一部の原作ファンからはキャスティングに対し不満が上がっているようで…。
なんでも、原作の人気キャラ数名に黒人が配役されたことが気に入らないそうです。
その不満を黒人差別だと解釈した人との間で論争が勃発し、
ちょっとした人種差別騒ぎになっているようです。
やっぱりアメリカの黒人差別ってまだまだ根深いんでしょうね。
ボクは日本人だし、黒人差別をしているつもりはないけど、
ホラー映画とか観ていると、黒人のキャラはきっと死ぬだろうと思ってしまうし、
オスカーでも主演俳優賞は黒人は受賞しないだろうと予想してしまいます。
内心では「黒人より白人の方が優位」と思っているのかもしれません。
まぁ『ハンガー・ゲーム』に関して言えば、原作と映画でキャラの人種が違えば、
ファンが違和感を覚えるのは当然だと思いますが…。

ということで、今日はアメリカの黒人差別について描いた映画の感想です。
本作が助演女優賞を受賞したのは予想どおりでしたが、
それもオスカーの助演俳優賞は黒人枠があると思っていたからです。

ヘルプ 心がつなぐストーリー

2012年3月31日日本公開。
1960年代、実在の女性たちについて記したベストセラー小説を映画化した人間ドラマ。

アメリカ・ミシシッピ州。1960年代当時、白人家庭でメイドとして働く黒人女性は“ヘルプ”と呼ばれていた。作家志望のスキーター(エマ・ストーン)はメイドの置かれた立場に疑問を抱き、彼女たちにインタビューをすることに。仕事を失うことを恐れて、皆が口をつぐむ中、一人の女性の勇気が社会を揺るがすことになる。(シネマトゥデイより)



本作はアカデミー賞やゴールデン・グローブ賞の助演女優賞をはじめ、
全米映画俳優組合賞3冠など、かなり評価が高い作品ですが、
なによりも入れ替わりの激しい全米ボックスオフィスで、
3週連続1位を記録したということがすごいと思います。
全米1位の連取は、内容が素晴らしいということのなによりの証明です。
なのでボクも日本公開されるのをかなり楽しみに待っていたのですが、
その期待を上回る素晴らしい作品で、今年観た中ではベスト3に入る出来です。

1960年代の公民権運動を背景に、アメリカ南部を舞台にした作品で、
白人家庭に仕える黒人メイドこと「ヘルプ」の実情を描いた物語なので、
なんだか社会派で重たい作品のようにも思いますが、
全然そんなことはなく、むしろかなりコメディタッチで軽く描かれています。
しかしそんな中にも、ちゃんとメッセージ性は損なわれることなく込められていて、
軽いけど、しっかりした満足感を得られる、いい塩梅な映画です。

南北戦争後に黒人奴隷は解放されたものの、
本作の舞台であるミシシッピ州など、1960年代当時のアメリカ南部は黒人差別が強く、
「分離すれど平等」という考えのもと、人種分離(ジム・クロウ)法など、
南アフリカのアパルトヘイト政策のような状態が合法的に認められていました。
それどころか、黒人の立場を向上させるような行為自体も違法だったみたいです。
またKKK団など過激な人種差別者もウヨウヨしており、
差別を受ける黒人たちも、公民権運動なんてすると殺されかねない状況です。

そんな状況の中で、ミシシッピ州ジャクソンの人種差別主義者のリーダー的存在である
白人女性ヒリー(ブライス・ダラス・ハワード)が、「住宅保健衛生法」と称し、
白人家庭に黒人専用のトイレ設置を義務づける人種分離法の素案を作り、
同級生で地元紙の新聞記者の白人女性スキーター(エマ・ストーン)に、
新聞に掲載するように依頼します。
しかしスキーターは黒人メイドを差別するそんな法案に対し疑問を感じており、
作家志望の彼女は、そんな黒人メイドの現状を本にして出版しようと考え、
黒人メイドのからインタビューしようとしますが…、という話。

ヒリーが黒人用トイレの設置を呼び掛けるのは、黒人が不潔で、
同じ便器を使うと病気がうつるからと真剣に信じているからで、
これは差別以前に当時の人々の教養が足りなすぎるからのような気もします。
しかし黒人メイドを不潔で病気持ちと決めつけている半面、食事を作らせたり、
大事な子どもの世話をさせたりするんだから不思議なものですね。
自分たちも子どもの頃は黒人メイドに育てられていたのにね。
一方のスキーターは子どもの頃に面倒を見てくれた実家の黒人メイドに対して、
育ての親として親愛を感じており、黒人メイドに対する偏見はありません。
そうなるのが当然だと思うけど…。

ヒリーは極端なほどのレイシストで、性格も最悪の嫌な女として描かれていますが、
他の白人たちはそれほど酷くは描かれていません。
ヒリーの取り巻きも、その町のリーダー的存在である彼女に従っているだけだし、
スキーターや、ヒリーから距離を置くシーリア(ジェシカ・チャステイン)も、
黒人メイドに対して偏見はなさそうです。
意外にもヒリーの母親など、年配の白人たちもそれほど人種差別に熱心ではないようです。
結局、本作はヒリーひとりを極端な悪者として描いているわけです。
もし白人の多くを悪く描けば、白人がマジョリティである全米でヒットするわけないです。
それに本作の根底には人種差別があるのは確かですが、
ストーリー的にはすごい嫌な女であるヒリーを懲らしめる内容であるため、
人種差別に頓着の薄い日本人でも、十分に楽しめるんじゃないかと思います。
その懲らしめ方がまた強烈で、普通なら気分が悪くなるようなやりすぎな報復ですが、
あの嫌な女ヒリーに対してなら許せてしまえますし、かなり笑えます。
それにその方法が、図らずも後に自分たちを守る盾になるという、巧い展開です。

その面白い報復をした黒人メイドがミニーですが、
彼女を演じるオクテイヴィア・スペンサーがオスカー助演女優賞です。
演技が巧いかどうかはわかりませんが、個性的でよかったですね。
ミニーはもともとヒリーの家の黒人メイドでしたが、
暴風雨の日に黒人メイド専用の野外のトイレを使用せず、
ヒリーの家のトイレを使用したためクビになります。
その後、ヒリーから仲間ハズレにされているシーリアの家に仕えることになります。
シーリアを演じたジェシカ・チャステインもオスカー助演女優賞にノミネートされました。
シーリアは少し浮世離れした女性ですが、それゆえかミニーとも仲良くなります。
途中で流産したりと、ちょっと重い展開にもなりますが、彼女もよかったです。

一方、スキーターの本の出版の最初の協力者になった黒人メイドがエイビリーンです。
エイビリーン演じるヴィオラ・デイヴィスは、スキーター演じるエマ・ストーンと、
W主演でしたが、ストーンを差し置いてオスカー主演女優賞にノミネートされました。
でも対抗馬がメリル・ストリープでは、相手が悪すぎましたね。
それにアカデミー会員の94%が白人だし…。
オスカーは獲れなかったものの、彼女もとてもよかったと思います。
ミニーはコメディ色の強いキャラでしたが、エイビリーンはもう少し人間的なキャラで、
ところどころで彼女の演技に感動させられました。
特に仕えていた家の子どもに「私の本当のママよ」と言われたところなんかは…。
ラストはヒリーの報復にあい、ちょっと寂しい終わり方をしてしまいますが、
黒人差別というまだ終わったわけではない問題を描く上では、
完全にハッピーエンドじゃなかったのはよかったのかもしれませんね。

全体的に笑えるし感動できるし、かなりいい映画だと思いますが、
一点だけ蛇足な気がしたのは、スキーターの彼氏スチュワート(クリス・ローウェル)。
特に黒人メイドの話に絡んでこなかったし、別にいらなかったかと…。
本作の場合は女性のコミュニティの話として、男はあまり出てこない方がいいとも思うし、
上映時間も2時間半近くもあるので、いらないところは極力切った方がよかったです。

こんないい作品でも日本では初登場10位にも入らないんですね…。
けっこう劇場は盛況だったけど、公開館数が少なすぎるのかな?

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/672-45a4e288
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad