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戦火の馬

今日は日本アカデミー賞の授賞式がありましたが、
ちょうどその時間は映画館でレイトショーを観ていたのでまだ結果は知りません。
いずれ日本映画の感想を書くの時にでも、日本アカデミー賞の結果にも触れたいですが、
今日はまだ本家アカデミー賞の話題からです。
昨日、一昨日と、主要6部門のオスカーの結果について書きましたが、
今日はその他の諸部門の結果についてです。

諸部門で世間(日本)の注目が高かった部門は、短編ドキュメンタリー部門でしょう。
東日本大震災を題材に、英国人監督が撮った『津波そして桜』 がノミネートされましたが、
惜しくもというか、予想通りというか、オスカー受賞には至りませんでした。
でも日本での公開すら決まってなかった作品ですが、この作品や東日本大震災が、
ノミネートを機に少しでも世界から注目されたなら、よかったんじゃないかと思います。
しかし、日本を題材にしたドキュメンタリーと聞くと、嫌な記憶が蘇りますね。
個人的に一番気になっていたのは、外国語映画部門を受賞した『別離』です。
この作品は脚本賞にもノミネートされてたんですよね。
外国語映画でも他部門を狙えることを初めて知りましたし、
それだけ素晴らしい脚本なんだろうと、期待も膨らみます。
今年は作品賞にアニメーション映画がノミネートされなかったので、
長編アニメーション部門も激戦でした。(いつもは作品賞候補が受賞するから。)
結果『ランゴ』が制しましたが、その辺りのことは長くなりそうなので、
近々公開の『長ぐつをはいたネコ』の感想の時にでも書きます。

ということで、今日は作品賞と諸部門5つにノミネートされながらも、
無冠に終わってしまった作品の感想です。

戦火の馬

2012年3月2日日本公開。
舞台化もされたイギリスの小説を、スティーブン・スピルバーグ監督が映画化。

農村に住む少年アルバート(ジェレミー・アーヴァイン)の愛馬であるジョーイが軍馬として騎馬隊に売られ、フランスの戦地に送られてしまう。敵味方の区別を知らないジョーイの目に、戦争は愚かさで悲惨なものとして映るだけだった。一方そのころ、アルバートは徴兵年齢に満たないにもかかわらず、ジョーイと会いたいがため激戦下のフランスへ旅立つ。(シネマトゥデイより)



スティーブン・スピルバーグ監督久々の実写映画です。
先だって公開された彼のアニメーション映画『タンタンの冒険』は残念な出来だったので、
本作に対しても少なからず不安を感じてはいたのですが、
何といっても去年のボクのベスト映画『リアル・スティール』を製作した、
ドリームワークスとディズニーの最強タッグでの映画なので、期待もかなりしていました。
で、いざ観てみた結果、不安は杞憂に終わり、期待には見事に応えてくれた作品です。
それがドリームワークスとディズニーの持ち味でもあるんだけど、
観る前から予定調和のハッピーエンドが予想できてしまうのは、ちょっとアレですが、
戦争映画なだけに、ちゃんとハッピーエンドに帰着することが見込める展開は、
戦争映画が苦手な人や、子どもたちにも受け入れられると思います。
人が死んだり、戦場に死体が転がってたりしますが、流血シーンなどは控えめで、
意図的に観客の対象を広げる演出にしたみたいです。
馬が主人公なので戦争のイデオロギー的な問題もあまりないしね。
(まぁどちらかというと、反ドイツな印象はあるかな。)

イギリスで小作人をしているテッド(ピーター・マラン)は、
農耕馬を買いにセリに行くが、あるサラブレッドの仔馬に一目惚れし、競り落とします。
しかし格好いいだけで畑仕事に向かないサラブレッドを大金で購入したため、
地主に納める小作料が払えなくなり、途方にくれますが、
息子のアルビー(ジェレミー・アーヴァイン)が、仔馬をジョーイと名付け、
農耕馬のように農耕具を牽引できるように調教し、農地を開拓します。
しかし収穫を目前に、天災で作物が全滅し、父トッドはジョーイを手放さなければならず、
折しも第一次世界大戦が勃発し、ジョーイはイギリス騎兵隊に売られ、軍馬になることに。
アルビーは悲しみながらもジョーイとの再会を信じて戦場へ見送ります。
本作はアルビーとジョーイの絆を描いた物語ですが、
主人公は馬のジョーイの方であり、ジョーイ中心で物語が進行します。

騎兵隊でジョーイは、戦友となる馬トップソーンと出会います。
フランスでドイツ軍に奇襲をかけた騎兵隊が敗れ、2頭はドイツ軍に捕まり、
負傷者を運ぶ荷馬として使われたり、ドイツ軍の脱走兵により野に放たれ、
ジャム農家の娘に飼われて、束の間の憩いの時を過ごしますが、
またドイツ軍に捕まって今度は大砲牽かされたりと、戦下のフランスを転戦することに…。
そんな2頭の馬が、なんとなく韓国映画『マイウェイ』の主人公たちの姿と重なりますが、
その主人公たちのように、ドイツ軍で2頭はそれこそ馬車馬のように働かされ、
周りの馬たちは次々と力尽き、処分されていきます。
本作の原作小説は、まさにこのような戦時の馬の不遇を描くことが目的だったようで、
戦争では人間だけでなく、相当数の馬も死んだのだという事実を伝えたいという、
反戦動物愛護の物語だったようです。
本作は、そんなメッセージ性は希釈されているので、観易くなっていると思いますが…。

一方、アルビーは騎兵隊の敗戦を知り、ジョーイを探すためイギリス軍に入隊し、
フランスのソンム川での戦線に、同郷の仲間とともに参戦します。
ここから塹壕での戦争シーンが続くため、暫らく馬が登場しません。
ボクは戦争映画を観たいわけではなかったので、ちょっと退屈な時間が続きます。
なんとなく監督が『パシフィック』でのノウハウを活かしたいがために、
無理やり作ったような展開に思えます。
本作は上映時間が長いので、ジョーイに関係ないシーンはあまり入れないでほしかった。
ここに時間を割くなら、もっとジャム農家の少女との交流を厚くしてほしかったです。

しかし、ソンム川戦線のドイツ軍側にはジョーイも軍馬として投入されていたのです。
戦友トップソーンも戦死し、ドイツ軍からも置き去りにされたジョーイは、
戦火の中を一頭で駆け巡り、バリケードの有刺鉄線に絡め取られ、
イギリス軍とドイツ軍の中間地帯で身動きが取れなくなります。
そんなジョーイをなんと両軍の兵士が協力して助け出してくれるのです。
ここはかなり感動しました。
そしてイギリス軍に引き取られたジョーイは、アルビーと感動の再会を果たし、
めでたしめでたし、…と思いきや、軍の所有馬として終戦後またセリに…。
そこでジョーイを競り落とした人物はなんと…、という話です。
ハッピーエンドなのは予想できましたが、その人物の再登場は意外でした。
ちょっと予定調和すぎる展開だけど、ベタに感動しました。

それにしてもこの作品、何がスゴイって馬の演技ですよね。
馬が従順で賢い動物なのは知ってるけど、ジョーイのあの扇情的な演技は見事です。
戦友トップソーンに対する友情や慈しみの気持ちが、ホントに伝わってきましたもん。
ホントに綺麗なサラブレッドだし、はじめはほとんどCGなんじゃないかと思ったくらい。
でもどうやら本作は、ほとんどCGは使っていないようです。
クライマックスの戦場など馬が危険に晒されるところは仕方なく使ったようですが、
ほとんど全て、実物の馬が演技しているということらしいです。
(何気にガチョウの演技もよかったです。)
馬の演技だけでなく、規模もかなりスゴくて、
ドイツ軍の野営地を百数十騎で奇襲するシーンなんて、迫力満点でした。

しかしその奇襲で、ジョーイを駆って出撃したニコルズ大尉は、馬上で戦死…。
その後ジョーイでドイツ軍から脱走を図ったシュレイダー兄弟も銃殺刑。
はじめにジョーイをセリ落としたテッドも、そのために農地を失いかけているし、
ジョーイは素晴らしい馬だけど、所有者はなぜか不幸になるので、
厄病神というか、けっこうサゲマンな馬ですよね。
最終的にはアルビーのもとに帰り、ハッピーエンドでしたが、
彼もジョーイを探すために(親友とか)かなりのものを犠牲にしています。
そこまでしてジョーイを探す、あるいは生かし続けるのが正しかったのか、
これぞ「人間万事塞翁が馬」の故事を地で行くストーリーではないでしょうか。

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