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ヒューゴの不思議な発明

第84回アカデミー賞のオスカー予想ですが、主要6部門中、
作品賞と監督賞の予想がハズレてしまいました。
昨日の記事で宣言した通り、まずその反省を書きたいと思います。

ボクは作品賞と監督賞はほぼニコイチ状態だと思っているので、
両賞は同じ作品がオスカーを獲ると確信しています。
だから監督賞5本にノミネートされてない作品賞候補4本は除外しました。
で、ボクは残る5本から『ヒューゴの不思議な発明』がオスカー獲ると予想しましたが、
実際に受賞したのは『アーティスト』でした…。
ボクも大方の予想通り、この2本のうちどちらかがオスカーを獲るとは思ってたのですが、
監督のネームバリューの差で、『ヒューゴ』のマーティン・スコセッシ監督が、
監督賞を獲るだろうと考え、必然的にニコイチで作品賞も『ヒューゴ』だろうと予想。
しかし、監督が誰とかよりも重大なことを見落としていました。

2年前のアカデミー賞で史上最高のヒット作で大本命だった『アバター』が
『ハート・ロッカー』に敗れるという予想外の事態が起きましたが、
アカデミー会員は高齢者が圧倒的に多く、最新技術である3D映画がお嫌いなんですよね。
『ヒューゴ』は3D映画だから反発を受けたのではないかと思うんですよ。
それどころか、その3D映画(最新技術)への反発が、
モノクロ・サイレント映画である『アーティスト』の票を伸ばしたかもしれません。
(サイレント映画の受賞は第1回アカデミー賞以来、83年ぶりらしいです。)
ボクはアカデミー会員の平均年齢の半分以下の年齢ですが、
3D映画は大嫌いなので、その反発心はわかる気がします。
でも端から『ヒューゴ』も2Dで観るつもりだったので、3D映画であることは忘れてました。

ということで、今日は惜しくもオスカー作品賞、監督賞受賞を逃した作品の感想です。

ヒューゴの不思議な発明

2012年3月1日日本公開。
世界各国でベストセラーとなった冒険ファンタジー小説「ユゴーの不思議な発明」を、
マーティン・スコセッシ監督が3Dで映画化。

1930年代のパリ。駅の時計台にひそかに住む孤児の少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)の唯一の友達は、亡き父が残した機械人形だった。壊れたままの人形の秘密を探る過程で、彼は不思議な少女イザベル(クロエ・グレース・モレッツ)とジョルジュ(ベン・キングズレー)に出会う。やがてヒューゴは、機械人形にはそれぞれの人生ばかりか、世界の運命すらも変化させてしまう秘密があることに気付き……。(シネマトゥデイより)



今年はパラマウントとユニバーサルが100周年になるメモリアル・イヤーらしいです。
映画って1世紀も前からあったんですね。
本作は邦題や冒頭のシーンは、イギリス児童ファンタジーのようですが、
ファンタジーというよりは、映画聡明期のパリを舞台とした歴史フィクションです。
世界初の映画監督と称された実在の人物、ジョルジュ・メリエスや、
彼の作品が題材となっている、映画史へのオマージュ作品です。
まぁ当時にしては明らかにオーバーテクノロジーを感じるところもあるので、
ファンタジーではないとは言い切れませんが…。

12歳の少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)は、
時計職人の父が亡くなってしまい、駅の時計係の叔父さんに引き取られ、
モンパルナス駅の時計台の中で生活しています。
彼は父が残した壊れたオートマトン(西洋からくり人形)を修理しているのですが、
仕掛けの作動に絶対必要なハート型のカギが見つからず…。
そんな折、駅構内のおもちゃ屋ジョルジュ(ベン・キングズレー)と、
その義理の娘イザベル(クロエ・グレース・モレッツ)に出会います。
イザベルはなぜかハート型のカギを持っており、それを使ってオートマタを作動させると、
オートマトンはヒューゴが初めて父と観たサイレント映画『月世界旅行』の絵を描き始め、
そこにはなぜかおもちゃ屋ジョルジュのサインが…。
ヒューゴとイザベルは、オートマトンとジョルジュの関係を調べ始める、という話。

オートマトンはヒューゴの発明したわけではないので、
正確には邦題を『ヒューゴと不思議な発明』にするべき。
父の残したものの秘密を調べる少年の話ということで、
奇しくも本作とオスカーを争った映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』と、
ちょっと似通ったところがあると感じました。
どちらもカギ穴をめぐるストーリーというのも共通してます。
コチラはカギがない状態ですが、アチラはカギしかない状態わけですが。
ただ、そのカギ穴探しが大部分を占める『ものすごく…』とは違い、
本作はカギだけならかなりあっさり見つかります。
その後のジョルジュの秘密の方が重要なストーリーなのです。

もう感想の冒頭でジョルジュ・メリエスの名前に触れてしまったので、
ネタバレに他なりませんが、おもちゃ屋のジョルジュは、
オートマトンが描いた絵の映画『月世界旅行』の製作者(監督)だったのです。
彼は見世物のシネマトグラフに感銘を受け、サイレント映画の製作に乗り出します。
彼は手品師だったので、そのトリックを応用し、次々に斬新な特撮技術を考案し、
彼の製作したサイレント映画の数々は大評判となります。
しかし第一次世界大戦が勃発し、彼の作品の多くは失われてしまい、
時代も彼の映画を求めなくなり、彼は破産し、しがないおもちゃ屋になります。
時代の変遷で忘れられてしまった映画人の話ということで、このあたりの展開も、
奇しくもオスカーを競い合った『アーティスト』に通じるものがありますよね。
両者とも作品賞を有力視される中、結局『アーティスト』に軍配が上がりましたが…。

本作も作品賞は負けてしまったものの、『アーティスト』と並ぶ最多5冠で、大健闘です。
やっぱりアカデミー会員は映画が好きに決まっていいるので、
映画史が題材になっているこの2本が高評価を受けたんだと思います。
その中で両者の明暗を分けたのは、(前述のように3Dということも大きいでしょうが、)
本作はサイレント映画時代のオマージュが込められた作品だけど、
本物のサイレント映画『アーティスト』がノミネートされてしまったことでしょう。
本作を観て、サイレント映画の素晴らしさを再認識したアカデミー会員たちは、
サイレントで撮られた『アーティスト』への評価を高めたでしょう。
本作は図らずも敵に塩を贈ったのではないかと思えます。

また、本作はフランス映画の先駆者へのオマージュを込めたハリウッド映画ですが、
『アーティスト』はアメリカ映画史にオマージュを込めたフランス映画という、
全く逆の構図となっているのも興味深いところです。
フランス映画がオスカーを獲ったのは初めてのことらしいですね。
アメリカのアカデミー賞だから、ハリウッド映画の方が有利な気がするけど、
フランス映画を描いたハリウッド映画より、ハリウッド映画を描いたフランス映画の方が
ウケがよかったってことでしょうね。
本作は年が年ならオスカー受賞してもおかしくない作品ですが、相手が悪かったです。
どうやら配給会社は受賞をかなり期待していたようで、当初は9日(金)公開予定でしたが、
アカデミー賞授賞式の熱気が冷めないうちにと、1週間前倒しで公開したようですが…。

物語としては、父が残した人形の秘密が、孤児になった息子を新しい家族に導く話で、
フランス映画史なんてマニアックな題材の割には、
映画史に関心がなくてもワクワクドキドキできるアドベンチャーでもあり、
年配の映画ファンから小さい子どもまで楽しめる素晴らしいファミリー映画です。
犬も大活躍するので、犬好きにもオススメ。
欲を言えば、主人公ヒューゴとヒロインのイザベルは、ただの友達って感じなので、
もう少しボーイ・ミーツ・ガール感を演出してほしかったかな。
(けっきょく2人は姉弟同然になってしまうわけだし。)
あと本屋のラビスや彼の蔵書「ロビンフッド」が、意味ありげに登場する割に何もなく、
そのあたりを巧く活かしていれば、ほぼ完璧な作品になったと思います。

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