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人生はビギナーズ

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』の感想記事のまくらに書いた
ボクの本年度アカデミー賞のオスカー予想ですが、
意外にも主要6部門中の俳優4部門は全て的中していました。
予想中はけっこう難しいと思ったけど、決まってみると順当な結果に思えます。
オスカー俳優4部門の予想について少し振り替えてみます。

主演男優賞は『ファミリー・ツリー』のジョージ・クルーニーが有力と思いましたが、
『アーティスト』が主要6部門に必ず入るのは間違いなかろうと考えていたので、
入るとしたらジャン・デュジャルダンの主演男優賞しかないかなと予想しました。
まぁ結局『アーティスト』は作品賞と監督賞も受賞していたのですが…。
主演女優賞は『マーガレット・サッチャー』のメリル・ストリープはいつも通り顔見せで、
『ヘルプ』のヴィオラ・デイヴィスが本命かと思っていたのですが、
助演女優賞は黒人枠として『ヘルプ』のオクタヴィア・スペンサーで決まりだろうから、
主演女優賞は『ヘルプ』は選ばないんじゃないかと予想しました。
助演男優賞の『人生はビギナーズ』のクリストファー・プラマーは、
異論を差しこむ余地がないほど下馬評が圧倒的で、予想の余地もなかったです。
史上最高齢の受賞らしいけど、有権者の年齢層(平均62歳)を考えれば当然の結果かな。
あえて保守的(白人の高齢者が選びそう)な予想をしてみると、
そのまま的中してしまうので、やはりアカデミー賞は保守的すぎると思います。
ハズレた作品賞、監督賞の予想の反省は、次の記事で…。

ということで、今日は助演男優賞でオスカー受賞した作品の感想です。

人生はビギナーズ

2012年2月4日日本公開。
ユアン・マクレガー主演のヒューマン・ドラマ。

息子のオリヴァー(ユアン・マクレガー)に、ゲイであることをカミングアウトしたハル(クリストファー・プラマー)。妻に先立たれ、自身もガンを宣告されるが、父は75歳にして新たな人生をスタートさせる。一方、オリヴァーは38歳になっても、内気な性格からなかなか恋をすることができない。しかし父が亡くなった後に仲間から呼び出されたパーティーで、運命の女性アナ(メラニー・ロラン)と出会い……。(シネマトゥデイより)



本作は公開週から4週遅れで観に行ったんですが、劇場はほぼ満席に近い状態でした。
やっぱりアカデミー賞効果でしょうか。
かくいうボクも、アカデミー賞に影響されて、急きょ観に行くことにしたんですが、
もす本作がオスカーを獲っていなければ、観に行く気は全くなかったです。
よく調べたわけではありませんが、苦手なゲイ映画らしいという情報は掴んでいたので…。
アカデミー賞関連作はなるべく観るようにしているのですが、
『キッズ・オールライト』とか『シリアスマン』とか『ミルク』とか、
ここ数年1本は関連作にゲイ映画が紛れており、難儀してます。
(『シリアスマン』はそれほどゲイ映画でもないので、楽しく観れましたが…。)
本年度は『J・エドガー』がゲイ映画枠かと思っていたのですが、
予想外に1部門もノミネートされず、オスカーのゲイ映画贔屓も終わったかと思いきや、
なんのことはない、ちゃんと別のゲイ映画が俳優部門でオスカー受賞です。
ゲイ映画だから受賞してとは思ってないけど、全映画におけるゲイ映画の割合を考えれば、
アカデミー賞関連作はあきらかにゲイ映画率が高いです。
『J・エドガー』はゲイを揶揄する映画だから落選した気すらします。

ただ、嬉しい誤算だったのは、ゲイ役を演じてオスカーを受賞したのが、
助演男優賞のクリストファー・プラマーだったということです。
ロクに調べず勝手なイメージで主演のユアン・マクレガーがゲイ役と思い込んでいました。
彼が主演でゲイ役を演じたゲイ映画『フィリップ、きみを愛してる!』は
かなり残念な出来だったので、それよりかはきっとマシだろうと望みが湧きました。
主人公がストレートなら、ただゲイも登場するだけの普通の映画としてきっと楽しめます。
とはいえ、アカデミー助演男優賞を獲ったことが本作を観に行く動機なので、
必然的にゲイ役のクリストファー・プラマー中心で観ちゃったんですが…。

で、いざ観てみた印象ですが、予想以上に観易かったです。
ゲイといっても75歳以上のお爺さんだから、あまり性的に激しいところはなく、
男同士の絡みもフレンチキス程度で、とても爽やか(?)でした。
ただ、内容的には予想以上にゲイ映画として成立しており、
ゲイの歴史的不遇や差別意識の改善を図ったと思われるシーンがけっこうあり、
ゲイの啓蒙活動的な映画という側面もあることは間違いなさそうです。
本作は監督の実体験が基になっており、ゲイだった父親のことを描いたそうです。
だから監督自身も同性愛に対してかなり理解がある人なんだろうと思いますし、
少しでも啓蒙できればという想いはあるだろうと感じます。
ボクはゲイが苦手だけど、全体的にハートウォーミングな作品なので、
ゴリゴリのゲイ映画よりも、そのメッセージがすんなり入ってきたように思えます。
特に「男とセックスしない男は、ゲイに対し身の危険を感じている」というゲイの指摘は、
たしかにその通りだなと納得してしまいます。
ボクがゲイが苦手なのは、彼らを怖いと思っているからだということに気付かされました。
その上で、もっと普通に接しなければいけないなと啓蒙された気分です。
(身の回りにそれらしき人はいないので、接する機会もありませんが…。)

ある日、75歳の父(クリストファー・プラマー)は「私はゲイだ」とカミングアウトし、
ゲイ・プライドに属し、若いボーイフレンドまで作り、ゲイライフを満喫し始めます。
38歳の息子オリヴァー(ユアン・マクレガー)は、厳格だった父の変貌に動揺します。
しかし、父が癌で亡くなった喪失感の中で、正直に生きた父の姿を思い出し、
改めて自分自身の生き方を見つめ直していく、…という話。

オリヴァーと出会ったばかりの女性アナ(メラニー・ロラン)のロマンスを軸に、
晩年一緒に暮らした父の話や、母と過ごした少年時代の話の回想が並行して描かれます。
父の晩年の話はゲイがどうとかよりも、父の癌との闘病がメインに思えましたが、
ボクとしてはその方が感情移入しやすくてよかったです。
母との少年時代の話は、正直どんな意図があったのかよくわかりませんでしたが、
おそらくはゲイの歴史的不遇を描くために使われたのだろうと思います。
父と母が結婚した1955年当時は、ゲイは心の病だと考えられており、
治療しなくてはいけないと考えられていた時代で、旦那のゲイは治せると結婚したものの、
寂しい思いをすることになった母の結婚生活を描いているようです。
母はユダヤ人なのですが、結婚当時はユダヤ人であることを隠す必要があった時代で、
そんなユダヤ人の歴史的境遇と、ゲイの境遇を重ね合わせているのでしょう。
ユダヤ人は市民権を得ているんだから、ゲイだってもっとカミングアウトすればいい、
みたいなメッセージかな?

軸のロマンスは、父を失った喪失感を引きずったオリヴァーが、
家族に問題を抱えたアナと傷を舐め合い、くっ付いたり離れたりするだけの話で、
正直なんだか退屈なロマンスでした。
そもそもクリストファー・プラマーのオスカーを獲った演技を観に行ったので、
彼の役の死後の話は、端から興味が湧きにくいというか…。
ただ、そこでそのオスカー俳優を上回る素敵な俳優が登場します。
父のペットであるジャック・ラッセル・テリアのアーサー(コスモ)です。
このイヌコロが芸達者でめちゃめちゃかわいいです。
時折、「もう結婚したの?」などと、主人公に話しかけます。
もちろんホントに喋るわけではなく、ただ字幕が出るだけですが。
おそらくはオリヴァーの自問をアーサーの言葉として表示しているのでしょうが、
ホントにアーサーがそう言っていると思わせる、絶妙な表情が素晴らしいです。
寂しがりでオリヴァーと常に行動を共にしており、登場時間も長いのですが、
テーマ的にもボクには退屈で耐えられないかもしれない内容だっただけに、
アーサーのかわいい活躍は、かなり救いになりました。
アカデミー賞前にも『アーティスト』と『ヒューゴ』のイヌのバトルが勃発しましたが、
その一角にアーサーも加えてほしいです。
おそらく作品への貢献度では1番じゃないかと思います。

話は戻って、クリストファー・プラマーのオスカーですけど、
助演男優賞の候補作は本作と『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』と
『マネーボール』を観ましたが、その中では本作が受賞は妥当だったかなと思います。
『ものすごくうるさくて、…』のマックス・フォン・シドーは、
クリストファー・プラマーと並んでオスカー最年長ノミネートだったらしいですね。
結果には不満はないけど、長年のキャリアがある名優が演技がうまいのは当たり前なので、
年寄りばかり選出するアカデミー賞の在り方には多少不満を感じます。
そういう意味では『マネーボール』のジョナ・ヒルの受賞を期待しました。
そうなれば初の年下のオスカー俳優誕生だったのに…。
ちなみに残りのノミネート作2本は、たぶん観ないと思います。

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