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POV ~呪われたフィルム~

POVホラーの傑作『REC/レック』シリーズの最新作『REC/レック3 ジェネシス』の公開日が
4月28日に決まったみたいで、ひとまずホッとしました。
ハリウッドリメイク版の最新作『REC:レック/ザ・クアランティン2 ターミナルの惨劇』は
(そうなって当然の駄作でしたが)ビデオスルーだったし、
この手のホラー映画のシリーズものは劇場公開されないことも多いので、
なかなか日本公開日が決まらないことに、少しヤキモキしてました。
でもまだ東京のミニシアターでの上映が確定しただけで、
うちの地元で上映されるのかが未定なため、完全に安心はできません。
前作、前々作は大手のシネコンで上映してくれたので簡単に観に行けたけど…。

ということで、今日は和製POVホラーの感想です。

POV(ピーオーヴィ) ~呪われたフィルム~
ピーオーヴィ

2012年2月18日公開。
Jホラーの巨匠、鶴田法男が監督と脚本を務めたPOVホラー。

同じ事務所の先輩と後輩にあたる志田未来と川口春奈は、携帯電話用番組「志田未来のそれだけは見ラいで!」の収録現場に赴く。全国から寄せられた動画を紹介するその番組ではその日、実際の心霊現象を撮影した「心霊動画特集」の企画が進行していた。だが、春奈が通う中学校の「学校の怪談」のビデオを再生すると突如異変が発生し……。(シネマトゥデイより)



本作は東宝ではなくて、東宝映像事業部の配給なんですね。
東宝映像事業部は『監督失格』や『DOCUMENTARY of AKB48』を配給しているので、
ドキュメンタリー作品を配給する東宝の部門かなと思ってたんですが、
本作みたいなフェイク・ドキュメンタリーも配給するんですね。
もし本作をドキュメンタリーと誤認させるために東宝映像事業部から配給しているなら、
ちょっと手の込んだ、面白い配給方法だと思います。

でも本作はフェイク・ドキュメンタリーではあるけど、POVかどうかは微妙です。
POVとは、もちろん「Point of View (Shot)」の略で、日本語に訳せば「主観撮影」かな。
「主観撮影」とは、その言葉通り主観で撮影されているのであって、
そのカメラのレンズは観客の目であり、基本的にカメラを持つ人がその時点の主役です。
しかし本作は、撮影者の存在は明らかにされているものの、
撮影者は自分に起きている状況ではなく、主役である志田未来を撮り続けています。
クライマックスで霊が憑依した川口春奈を志田未来が追いかけて行くシーンなどは、
撮影者は完全に空気と化しています。
(また、幽霊が撮影者になってしまってるところまであります。)
これではPOVと呼べる演出とはいえず、カメラの台数が少ないだけの普通の撮影です。
というか、これがPOVなら、ほとんどの実写映画はカメラマンによるPOVになります。
POVホラーは、一時の世界的流行により、すでにやりつくされた感のあるジャンルですが、
タイトルに「POV」を冠する本作が、依然としてこんな基本的なことも理解できてないとは、
日本のホラーはかなり遅れてるなと再認識させられます。
十年ほど前はJホラーが世界をリードしているとさえ思ったのに…。

POVと呼ぶには憚られるけど、フェイク・ドキュメンタリーとしても最低レベルです。
フェイク・ドキュメンタリーは、あくまでドキュメンタリー(実録映像)の体裁です。
観客もドキュメンタリーだと思うように心がけ、暗黙の了解で成り立つジャンルです。
(稀にホントに騙される純真無垢な人もいますが。)
しかし本作は、撮影方法だけフェイク・ドキュメンタリー方式で、
演出や脚本がフィクション映画の作りになっているために、
どう好意的に見ても、ドキュメンタリーのようには見えません。
(本作ではどんな純真無垢な人でも騙されないでしょう。)

本作について、よく批判されているように、役者の演技にもたしかに問題はあります。
ただ、志田未来も川口春奈も他のキャストも、特別に下手な役者でもなく、
普通のドラマならあの芝居で十分通用すると思います。
しかしフェイク・ドキュメンタリーに求められるのは、
ただ自然な演技ではなく、芝居っぽくないセリフと演出です。
明瞭に話したり、電話で相手が話している内容を反復したり、心の声をセリフにするのは、
視聴者がストーリーを理解するのを助けるために、普通のドラマでは必要な演出ですが、
ドキュメンタリーとしては不自然であり得ない演出です。
そもそもフェイク・ドキュメンタリーは、脚本なんてない体裁なんだから、
ストーリーなんかいらないし、視聴者に優しい作りにする必要なないんです。

ストーリーがいらないってのは語弊があるかな。
正確には脚本を感じさせないようなストーリーにする必要があります。
実際に『パラノーマル・アクティビティ』みたいにストーリー性がないものもあるけど、
どうせなら、面白いストーリーがあるに越したことはないです。
しかし、それはあくまで脚本の存在を感じさせない程度にするべきです。
例えば本作で、幽霊によって夜の学校に閉じ込められたヒロインたち撮影クルーが、
幽霊の正体(生前のこと)を解き明かそうとしますが、これは違和感があります。
もちろん幽霊の詳細がわかれば、ドラマとしては深みが出るでしょうが、
これが実際に起きたことならば、話を面白くしようなんて考えるはずはなく、
とにかく学校から脱出することしか考えられないはずです。
結局、本作は普通の学園ホラーを、話題作りや予算削減のために、
慣れない(理解していない)POV手法で撮っただけです。
逆に言えば、POVにでもしないと誰も気に留めてくれないほど、
普通の映画としても脚本の出来も悪く、ストーリーも面白くない作品ってことですね。

「結末は秘密に…」みたいな注意書きが流れたので、
ネタバレはしないでほしいみたいだから、あまり内容には触れませんが、
特にどんでん返しや衝撃の展開が待っているわけでもないので、
秘密にしてほしいのではなく、あまり不評を吹聴しないでほしいというのが本音でしょう。
ただ本作の鶴田監督は、あろうことかこんな駄作を「120%の作品」と自賛…。
厚顔無恥にも「ここからJホラーが復権できる」を発言しています。
これでも在りし日のJホラーの第一人者の一人なんだから、
日本のホラーの低迷はまだまだ続きそうです。
本作の出来の酷さで、今年の目玉Jホラー『貞子3D』への期待も薄まりましたが、
『貞子3D』はなぜかJホラー映画畑の監督ではない(コメディ映画監督な)ので、
低迷するJホラーの枠には囚われずに、意外といい作品になるかも、とも思います。

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