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キツツキと雨

先週、角川映画の今年のラインナップが発表されましたね。
洋邦ともになかなか期待できそうな作品が多かったように思います。
そんな中、特に注目されたのは、品川ヒロシの監督第三作目(タイトル未定)。
主に「もういいだろ」みたいなネガティブな形で注目されましたが、
角川映画(の邦画)は2009年も2011年も、品川の監督作が稼ぎ頭だったはずで、
本当なら毎年製作してほしい気持ちでいるんじゃないかな?
それにキム兄の監督3作目『オムライス』がまともに劇場公開されなかったりと、
次々と芸人監督が討ち死にする中、頑張っている方だと思います。
芸人だけではなく、俳優が監督するのも流行った時期がありますが、
次回作に結び付くのは稀で、異業種の人が映画監督として成功するのは難しそうです。

ということで、今日は今年一発目の角川映画の感想です。
小栗旬演じる若手監督が映画を撮る物語ですが、
小栗旬も『シュアリー・サムデイ』以降、監督業の話は聞かなくなりましたね。

キツツキと雨

2012年2月11日公開。
役所広司と小栗旬の初共演のコメディ・ドラマ。

小さな山あいの村にやって来たゾンビ映画の撮影隊。なぜだか手伝うことになった木こりの克彦(役所広司)は、プレッシャーに弱く使えない新人監督の幸一(小栗旬)にイライラする。しかし、幸一は克彦との交流で自分を取り戻していき、二人のいい関係がイマイチかみ合わなかった撮影現場にも不思議な影響を与え始め……。(シネマトゥデイより)



このところ、ずっと日本映画(実写)には幻滅させ続けられましたが、
ようやく期待以上の作品だと思える日本映画に巡り合えました。
今年は計二十数本しか日本映画(実写)を観ない予定ですが、
もう本作が今年の年間ベストになるんじゃないかと思うほどです。
身内に厳しい東京国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞したのも伊達ではないです。

岐阜県の山間の村でニート(失業中)の息子と2人で暮らす木こりの克彦(役所広司)は、
村にやってきた映画撮影隊のロケハンを、親切心から手伝うことになります。
その撮影隊は、B級ゾンビ映画の撮影なので、人手が足りず、
克彦は成り行きでエキストラのゾンビ役までするハメに…。
そんな慌ただしい撮影隊の中で、一人だけあまり働いていない若者が目につき、
克彦はそんな若者が自分の息子と被り、イラつきながらも気になり始めます。
その若者・幸一(小栗旬)は、実は働いていなかったのではなく、
その撮影隊の最高責任者である、新人映画監督だった、という話。

ボクは映画ファンなので、当然映画の裏側にも興味があり、映画を撮る映画は大好きです。
映画を撮影する人たちも、当然映画を撮影することに精通した人なので、
普通のお仕事モノ映画よりも理解が深い分おもしろく撮れると思います。
しかも撮るのはゾンビ映画ですからね。ゾンビ映画好きには堪らないです。
まぁゾンビ映画を撮影する大作映画『SUPER8』は、期待を裏切る酷い出来でしたが…。

幸一にとって、このゾンビ映画『UTOPIA~ゾンビ大戦争~』は初監督作品になります。
初監督作が撮れるというのに、なぜか浮かない表情の幸一。
きっとせっかく映画監督になったのに、こんなB級映画を撮らされる羽目になって、
意欲を消失しているのかな、と始めは思ったんですが、どうもそうではないようで、
自分が脚本も務めるこの作品が、面白いのかわからなくなり、自信を喪失しているのです。
若くして映画監督になるなんてすごいけど、周りのスタッフや俳優も目上の人が多くて、
自分より経験豊富な人たちを使用する立場なのも、プレッシャーがすごそうです。
それにそんな周りのスタッフや俳優も、所詮はゾンビ映画と思って撮影しているため、
あまりモチベーションも上がらず、いい映画になっている印象は受けませんよね。
主演の若手女優だけは、やたら乗り気で、その温度差が面白いですが、
そんな状態の中で、幸一は現場放棄しようとするまで追い込まれます。

しかし、たまたま撮影を手伝った木こりの克彦が、
この脚本に興味津々で、「面白くて感動できる」と大絶賛。
克彦は積極的に撮影を手伝うようになり、村人にエキストラ募集の呼び掛けをしたりして、
徐々に多くの村人たちも撮影に協力してくれるようになります。
すると自ずといい画が撮れるようになり、スタッフのモチベーションもアップ。
幸一も自信を取り戻し、いい映画にしようとベストを尽くすようになります。
村興しのご当地映画ならまだしも、村を上げてゾンビ映画に協力するというのが、
滑稽というか、和むというか、田舎の村落のコミニティの素敵さが羨ましいです。

娯楽とは無縁の村で、木こり一筋の克彦の評価なんてのは、正直当てにはならないけど、
この『UTOPIA~ゾンビ大戦争~』は、ゾンビ映画としてもたしかに斬新で面白いかも。
ゾンビは感染するだけではなく、ゾンビとして生まれることもあるという珍しい設定で、
生まれながらに自分の子どもがゾンビだとか、兄弟がゾンビだとか、
ドラマとして面白いものが作れそうな世界観になっています。
それに舞台が日本の村落なので、竹槍や農具を持ってゾンビと戦ったりと、
一風変わったゾンビ映画で、ちょっと観てみたい気になりました。
(ネット上に公式の疑似予告編の動画が転がってると思います。)
まぁ和製ゾンビ映画ってだけでも、そこそこ珍しいですよね。
実際この規模のゾンビ映画を日本で撮るとしたら、たぶん新人監督では無理です。
ロケやスタッフで必要な製作費が集まらないと思います。

なかなか面白そうなストーリーだし、克彦や村人の協力などもあり、
当初よりもかなり良くなったであろうと思える『UTOPIA~ゾンビ大戦争~』ですが、
所詮はB級ゾンビ映画なので、せいぜいシアターN渋谷あたりで単館上映される程度。
公開されてもヒットしないし、ロクな評価もされないでしょう。
始めの頃の幸一だったら、その反響に打ちのめされてしまうでしょうが、
彼は監督2作目として、またB級映画の撮影に着手します。
村も何事もなかったように元に戻ってしまい、祭りの後のような寂しさを感じますが、
幸一と克彦の心境には、確実にポジティブな変化が起きています。
年齢も住む世界も全く違い、もう会うこともなさそうな二人ですが、
不思議な絆で結ばれているのが伝わるラストで、とても心温まる作品だと思います。

余談ですが、スピルバーグもキャメロンも、B級映画がキャリアの原点です。
だからB級映画は新人監督の登竜門的な側面がありますが、
日本ではゾンビ映画のようなカルト映画は、カルト監督が撮るものであり、
あまり新人監督が撮るという印象はないですよね。
ちなみに本作の沖田修一監督は本作が商業映画監督2作目です。
けっこう若いイケメン監督ですが、幸一は自分がモデルなのかも?
一作目の『南極料理人』は大作ではないけど、B級映画でもなかったですが。

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