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ドラゴン・タトゥーの女

先月、米タイム誌が2011年の映画予告編のベスト10を発表しました。
今日感想を書く『ドラゴン・タトゥーの女』の予告編も選出されていましたが、
たしかにアレはいい予告編でした。
1分半ほどの短い予告編全編にツェッペリンの「移民の歌」のカバーが使用され、
クールでスタイリッシュで、圧倒的な映像センスを感じさせ、
映画本編も上映されたら絶対観ようと思わせてくれるいい予告編です。
たしかツェッペリンは映画の楽曲提供にはうるさくて、
『スクール・オブ・ロック』で「移民の歌」を挿入歌にするときも、
主演のジャック・ブラックが使用許可を貰うためにかなり頑張ったとか…。
それが今回は挿入歌ではなく主題歌ですからね。
よほど乗り気じゃないと無理だろうし、映画の出来にも期待が持てます。

ただ米タイム誌の映画予告編のベスト10の、他の選出されたものを見ると、
『ツリー・オブ・ライフ』とか『エンジェル ウォーズ』とか、
予告編はいいのに本編は目に余る駄作、という作品も多いです。(※個人の感想です。)
駄作を予告編で面白そうに見せる編集力が評価されての選出かとも思われ、
過度な期待はしない方がいいのかもと不安も感じます。

ということで、今日は予告編の素晴らしい映画の感想です。
「移民の歌」が使用されてないロング・バージョンの予告編の印象は普通だったので、
予告編というよりも「移民の歌」が素晴らしいだけかも…?

ドラゴン・タトゥーの女

2012年2月10日日本公開。
『ミレニアム』3部作として映画にもなったスウェーデンの小説をハリウッドで映画化。

月刊誌「ミレニアム」で大物実業家の不正行為を暴いたジャーナリストのミカエル(ダニエル・クレイグ)。そんな彼のもとに、ある大財閥会長から40年前に起こった兄の孫娘失踪(しっそう)事件の調査依頼が舞い込む。連続猟奇殺人事件が失踪(しっそう)にかかわっていると察知したミカエルは、天才ハッカー、リスベット(ルーニー・マーラ)にリサーチ協力を求める。(シネマトゥデイより)



本作はスウェーデンの国民的小説が原作で、本国ではすでに映画化もされており大ヒット、
日本でもちょうど2年前に劇場公開されいたようですが、
ボクは原作小説も読んでないし、スウェーデン版の映画化作品の方も観賞していません。
日本でも少し話題にはなっていたので、スウェーデン版を観賞しようかと思った矢先、
ハリウッド・リメイク(本作)が公開されることが発表され、
それならハリウッド版を待てばいいか、と考えてしまいました。
今思えば、予習のためにでも観賞しておくべきだったと悔やまれます。

本作は、映像にこだわるデヴィッド・フィンチャー監督らしい作風で、
全編モノトーン気味で、かなりお洒落な感じの映像美に仕上がっています。
ただ、如何せんセリフが多すぎて、字幕の情報量が多く、
字幕を追うのに必死で、映像美が堪能できませんでした。
これは監督の前作『ソーシャル・ネットワーク』の時もそうだったので、
英語に弱い人は、この監督の作品を観る時は、あきらめて吹替えにした方がいいかも…。
特に本作は一応ミステリーなので、映像から得られる情報も、かなり膨大な上に重要。
事件の鍵となる映像がフラッシュバックで挿入され、字幕に気を取られて見逃すことも…。
そもそも複雑な人物の相関関係や、背景に他の事件も絡む複雑な事件なので、
ちゃんと理解しながら楽しむなら、自分のペースで進める小説で読むのがベスト。
情報量が多すぎて映像化には向かない作品だと思います。
こんな把握しきれないほど怒涛のテンポなのに、上映時間が2時間半を超えるなんて…。
ちゃんと推理を楽しむには自分で補完することが必須で、予習した方がいいです。
(予習したらネタバレしちゃうけどね。)

雑誌「ミレニアム」の切れ者記者ミカエル(ダニエル・クレイグ)は、
大財閥の元会長ヘンリック・ヴァンゲル(クリストファー・プラマー)から依頼され、
40年前に起こった元会長の親戚の娘ハリエットの失踪事件の調査をすることになります。
失踪事件はヴァンゲル家所有の島で起き、その時は島と本土を繋ぐ橋が不通状態であり、
犯人はヴァンゲル家一族の誰かであると考えられます。
血縁の因縁を軸にしたクローズドサークルで、横溝正史的なミステリーですね。
事件の因縁は4世代にわたり、人間関係もかなり複雑です。
依頼した元会長と失踪した少女ハリエットでも四親等の間柄で、
劇中の主人公ミカエルのように、人物相関図でもメモしながら観たいほどです。
スウェーデンが舞台なので、役名もゲルマン民族的で馴染みがなく、覚えにくいです。
同じスウェーデン映画のハリウッド・リメイク『モールス』のように、
舞台をアメリカに移して、名前もアメリカ風にしてもいいと思うのですが…。

さらには失踪事件の裏には、「レベッカ事件」と称する惨殺事件をはじめ、
聖書を基とした連続見立て殺人事件があり、そちらだけでも大量の犠牲者や、
ナチスや宗教差別などが絡む、ややこしい展開になっています。
しかも主人公のミカエル自身も、ある財界汚職事件を抱えたまま調査以来を受けており、
序盤は同時に何件もの事件を抱え込んでしまったような感じで、
本題であるハリエットの失踪事件に集中できません。
また、そんなミカエルの調査と並行して、事件とは直接関係ない、
ヒロインのリスベット(ルーニー・マーラ)の身の上話も描かれます。
いろいろ詰め込みすぎで、処理しきれなくなってきますが、それ以上に問題なのは、
リスベットの身の上が強烈過ぎて、本筋のハリエット失踪事件がどうでもよく思えること。
40年も前の失踪事件を解決することなんて、ただでさえ重要とは思えないことなのに、
付随的な内容が強烈過ぎたら、尚更興味が薄れてしまいます。

まぁ本作は、もともと謎解きやトリックの出来ではなく、
ヒロインのリスベットのキャラクターがウケて話題になっているので、
リスベットさえ強烈に描けたら、他はどうでもいいのかもしれません。
アカデミー賞でもリスベット役のルーニー・マーラが主演女優賞の候補になっているけど、
作品賞や脚本賞などは候補になっておらず、リスベット以外の関心のなさが窺えます。
たしかにレズやレイプ(フ○ラやア○ル)、モザイク処理されるほどの濡れ場など、
性的に体を張ったシーンが多く、リスベットには強烈な印象を受けます。
(このため、インドでは検閲をパスできなかったとか…。)
ただ噂ほど魅力的なキャラだとは思えなかったかな…。
20代なのに後見人が必要なほど、異常性を抱えている設定ですが、
ボクには異常者をわざわざ演じているようにしか見えませんでした。
レイプ魔に復讐する時も、サイコっぽく見せてるけど、かなり計画的で理性的だったし、
社交性が欠落しているようですが、終盤で変装した時は社交的に振る舞えてます。
しかも5万クローネをたった数日で20億ユーロに増やすなど、経済力も十分で
彼女がその気になれば、被後見人から解放されるのも造作もないはずです。
設定だけは極端だが、実態が伴ってない感じで、人物像の整合性に欠けます。

なによりヒロインとして魅力を感じないのは、尻軽すぎることです。
フリーの凄腕調査員であるリスベットは、ミカエルの助手にスカウトされますが、
調査に合流してすぐ、2人は肉体関係に…。
いずれ恋仲になったりするのは当然の展開だと思うけど、あまりに唐突すぎます。
レイプされた時は気の毒だと思ったけど、彼女にとってセックスがその程度のものなら、
あのレイプも観客が受けるほど衝撃的な出来事じゃなかったのかとも思えます。
社交性がないリスベットが、ミカエルに好意を寄せるまでになるのだけど、
その過程が描かれていないので、ラストシーンの彼女の行動もカタルシスを感じません。

それに本筋のハリエット失踪事件は、リスベットの情報収集で効率は上がったものの、
ミカエルの単独調査でもおそらく解決していたでしょう。
彼女は天才ハッカーなので、40年前の事件の調査では、それほど特技を活かせず、
結局聞き込みとか文献の調査とか、むしろ記者ミカエルの得意分野の代役をするだけ。
リスベットを活かすなら、もっと彼女に合った事件にするべきです。
結局リスベットの報告を待たずに、ミカエルは犯人に行きついてるし…。
そのミカエルにしても、犯人を特定する確実な証拠を得たわけではなく、
ちょっとした発言の矛盾で、アリバイを崩しただけです。
あとは勝手に犯人がペラペラ語り出して、事件の真相が判明しただけで、
ミステリーとしてはあまりにお粗末な展開だと思います。
ハリエットの行方についても、憶測がたまたま当たっただけで、
ミカエルの調査能力に対しても疑問が残ります。
それにこの事件だけでなく、連続殺人事件にしても財界汚職事件にしても、
犯人が死んで終わりというオチの付け方は短絡的すぎると思います。

結局最も盛り上がったのは主題歌「移民の歌」を使用したオープニングで、
あとは詰め込まれすぎた薄っぺらい話を、ただただ無心に追っていただけって感じでした。
本作は3部作の第一弾で、コロムビアは続編の『火と戯れる女(仮題)』、
第三弾『眠れる女と狂卓の騎士(仮題)』も撮影するつもりのようです。
本作は期待していたほどの大ヒットとはいかなかったみたいで、
ホントにシリーズ化されるかは五分五分だと思います。
原作小説は未完の遺作なので、主人公とヒロインの関係に決着付くこともないし、
どうせ未完で終わるなら無理して3部作完遂する必要もないかな。

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