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麒麟の翼 ~劇場版・新参者~

去年の邦画の出来があまりに低調だったため、今年はなるべく邦画は避けています。
具体的には、邦画を観る本数を洋画の半分以下に抑えるつもりです。

おそらく、今年の邦画年間興行成績は、1位『BRAVE HEARTS 海猿』、
2位『踊る大捜査線 THE FINAL(仮題)』でほぼ決まりでしょう。
邦画はテレビドラマの劇場版以外はほとんどヒットしません。
そのため今年もテレビドラマの劇場版が数多く公開されます。
上記の他にも『ホタルノヒカリ』『臨場』『SPEC』『ライアーゲーム』などなど、
現在ボクが把握しているだけでも13本予定されており、例年よりも多くなりそうです。
でもやっぱりテレビドラマの劇場版は映画として認めたくないというか、
安易に劇場版を製作するのは好ましく思えません。
映画館はテレビの有料放送の場じゃないぞ!
…と思いながらも、そのうちの何本かは観る予定です。

ということで、今日はテレビドラマの劇場版の感想です。
しばらく洋画の感想が続きましたが、今日から3~4本は邦画の感想になります。

麒麟の翼 ~劇場版・新参者~
麒麟の翼

2012年1月28日公開。
東野圭吾の人気ミステリー「加賀恭一郎シリーズ」第9作の映画化。

腹部を刺された状態で8分間も歩き続け、東京・日本橋の麒麟(きりん)の像の下で息絶えた男性。一方、容疑者の男は逃亡中に事故に遭い、意識不明の重体となる。日本橋署の加賀恭一郎(阿部寛)は事件を捜査するにつれ、関係者の知られざる一面に近づいていく。被害者はなぜ必死で歩いたのか、はたまた加害者の恋人が彼の無罪を主張する理由とは……。(シネマトゥデイより)



原作は読んでいませんが、テレビドラマ『新参者』は見てました。
本作は小説『新参者』の実写映画化ではなく、小説『麒麟の翼』の実写映画化なので、
別に「劇場版・新参者」なんて銘打つ必要はないですよね。
テレビドラマのファンはそんなこと明示してもらわなくてもわかってるし、
テレビドラマ見てなかった人に対して、敷居を上げてしまっているだけです。
内容も続編と言えるほど繋がっているわけでもないし、
ただ単に「ベストセラー作家・東野圭吾原作の最新ミステリー」として宣伝した方が、
興行的にも成功するんじゃないかと思います。
東野圭吾原作映画としてはテレビドラマ『ガリレオ』の劇場版『容疑者Xの献身』が、
劇場版を謳わなくても大成功しているので、それに倣えばよかったのに…。

『ガリレオ』と『容疑者Xの献身』がそうであったように、
『新参者』と本作も、同じ主人公による「加賀恭一郎シリーズ」ではあるものの、
作風はけっこう違うと感じます。
簡単に言うと『新参者』がオムニバス調の人情刑事ドラマだったのに対し、
本作はシリアスなサスペンスといった作風で、
下手に『新参者』の延長線で観てしまうと、期待に添わないかも…。
『新参者』と本作の間の、特別ドラマ『赤い指』が本作に近い雰囲気なので、
それを経由していれば想定できた作風でしょうが…。
ボクは『赤い指』より『新参者』の方が作風は好きなので、
想定はしてたといえ、ちょっと残念でした。
そのこともあって、「劇場版」を謳われることには違和感があります。

本作は本格ミステリーというよりは、社会派サスペンスだと思います。
腹部を刺された男・青柳武明(中井貴一)が、日本橋の麒麟像の下で力尽きる。
容疑者は現場近くで被害者の荷物を持っていた男・八島冬樹(三浦貴大)と断定されるが、
八島は逃走中に交通事故に遭ってしまう。
そのまま容疑者死亡で解決かに思われた事件だったが、
日本橋署の刑事・加賀恭一郎(阿部寛)は、被害者の遺留品に疑問を感じ、
従弟の警視庁の刑事・松宮脩平(溝端淳平)の協力を得て、事件の捜査。
すると容疑者・八島は、被害者・青柳が勤めるカネセキ金属の工場で、
労災隠しの上に強引な派遣切りにあっていた元・派遣社員であることが判明し、
本件は怨恨による刺殺事件の可能性が強まるが…、という話。

ボクは今は派遣社員ではないものの、ワーキングプアとして、
「労災隠し」とか「派遣切り」とかの労働問題には強い関心があります。
もちろん本作では、そんな労働問題は時事ネタとして使われただけのミスリードで、
事件の真相も動機も全く関係ないところにあります。
しかしボクはそんな真相よりも労働問題の顛末の方が気になって、
本筋の方に気持ちが入り難かったです。
とりあえず、そのあたりの感想から書きます。

やっぱり製造業への派遣は大いに問題があると思います。
2004年の小泉政権下で製造業の派遣が解禁されたわけですが、
派遣切りはもちろん、ワープア、格差社会、就職難など、いろんな労働問題の元凶です。
製造業への派遣は一度白紙に戻すべきです。
2008年の秋葉原通り魔事件で一時見直されそうな機運がありましたが、
その事件は、結局無差別殺人だったために、あまり同情は集められませんでした。
しかし派遣切りは、殺したいほど恨まれても仕方ない行為だと思います。
でも、そんな不遇な状況でも犯罪に走らず派遣に甘んじる人っていうのは、
基本的に人がいいので、残念ながらあまり刃傷沙汰には発展しません。
でも、それで製造業の派遣が見直されるなら、多少の刃傷沙汰はあってもいいし、
加害者にも酌量の余地はあると思います。

ボクの知り合いにも、工場での作業中に怪我をした人がいるんですが、
労災が下りなかった人がいます。
労災隠しの恐ろしいところは、労災が下りなくても、
医者に労働中の怪我だとわかってしまうと、健康保険すら使えなくなることです。
知り合いは軽い捻挫だったために、自力で治ったみたいでよかったですが、
もし病院にかからないと後遺症が残るような怪我だったら大変でした。
特に派遣社員は怪我をした工場ではなく、労災の責任は派遣会社が負うシステムなので、
ややこしいし、労災が下りにくいらしいです。
不安定な就業形態だけに、その後の報復待遇を恐れて、泣き寝入りするケースも多いです。
だから危険が多い製造業なんかに派遣を許可しちゃいけないんです。
せめて派遣先に労災を請け負う義務を移すべきです。

本作は結局、元・派遣社員の八島は真犯人ではなく、
「労災隠し」や「派遣切り」は動機とは関係なかったわけです。
だから被害者のカネセキ金属の製造本部長・青柳は、
そのことで恨まれて殺されたわけではないから、「殺されても仕方ないやつ」という
世間からの汚名が返上されたような描き方ですが、そんなことはないです。
「労災隠し」は彼が預かり知らぬところで工場長がしたことですが、
製造本部長として彼が強引な「派遣切り」をした事実には何も変わりがなく、
殺されるほどのことはないかもしれないが、褒められたものではないです。
労災にしても、部下である工場長に対する監督不行届だし、
労災の原因(安全装置)すら把握していない、ダメな管理職ですよ。
子どもの心配するいい親かもしれないが、他人(派遣社員)には冷たい単なる親バカ。
どんな想いで殺されるに至ったとしても、あまり同情できません。
カネセキ金属は多少ダメージを受けましたが、青柳に全ての罪を被せた工場長は、
いまいち社会的な制裁を受けていないまま終わっているのも、不愉快です。

ミステリーとしてもイマイチかな。
被害者・青柳が急に日本橋七福神巡りを始めた理由とか、彼のの息子の不可解な態度とか、
気になる謎はいくつも示され、興味を引き込まれますが、
あまりにも想像を絶する突飛な理由で、全く謎解きの要素がありません。
殺人事件自体にしても、犯人が終盤になってようやく登場になり、
急転直下で事件の真相が明かされるので、犯人当てための推理の余地はありません。
それにこの殺人事件の裏には、ある意味で殺人事件よりも悲惨で陰湿な事件が絡んでおり、
殺人事件の方はどうでもよくなる、というところもあります。
その悲惨で陰湿な事件の方は、加害者が刑事罰を受けないまま終わってしまっているので、
どんな感動の真実を明かされても、もちろん感動はできないし、
不愉快というか、全然スッキリしないというか、後味の悪い映画だと思いました。

全体的には重苦しいシリアスな悲劇の物語ですが、
加賀刑事と松宮刑事のデコボココンビの絡みは、『新参者』の時のような喜劇のノリで、
湿っぽい本作の中ではオアシス的な楽しいシーンでした。
いや、『新参者』の頃より、このコンビは格段にいい味を出し始めているので、
どうせならその軽いノリで挑めるような、軽めの痛快な事件で続編を製作してほしいです。
原作でも本作が「加賀恭一郎シリーズ」最新作なので、
続編が製作されるとなってもかなり先の話になりそうですが…。
東野圭吾原作映画としては、来年公開の『プラチナデータ』が次回作かな?

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