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コリン LOVE OF THE DEAD

昨日は「製作費1万5千ドルの超低予算映画」であることを売りにしている映画
『モンスターズ 地球外生命体』の感想を書きましたが、
お金がかかってないことがセールスポイントになるモノなんて映画くらいです。
それだけ低予算映画はいいものを作り出してきた実績があるということでしょう。
でもたまに「低予算なわりにいい作品だった」って思うことがあるじゃないですか。
超低予算映画でも、莫大な予算で作られた映画でも、お客が払う料金は一緒なのに、
同程度の出来の映画ならば、低予算のモノを観た方が得した気分になってしまいます。
ちょっと不思議というか、予算でハードル決めるのはあまりいい傾向ではないかな?

ということで、今日は『モンスターズ~』よりも低予算な映画の感想です。

コリン LOVE OF THE DEAD

2011年3月5日日本公開。
各国の映画祭で絶賛された超低予算ゾンビ映画。

世界中で死者がよみがえり生きた人間を襲い始め、ロンドンの街もパニックに陥る中、青年コリンも地獄絵図に巻き込まれ、自らもゾンビになってしまう。やがてコリンの意識は遠のいていくが、ある場所へ行かなければならないという衝動に駆られ始める。思うように動かない体を引きずりながらコリンがたどり着いた場所は……。(シネマトゥデイより)



本作はいろんな意味でかなり話題になったゾンビ映画ですが、
日本での公開がかなり限定的だったために、公開中は観に行けず、
先日DVDリリースされたことで、ボクもようやく鑑賞できました。
リリースまでの間、オアズケ食らってかなり期待が膨らんでいたので、
いざ見てみると、正直期待していたほどではないと感じてしまいましたが、
なるほどいろんな意味で興味深い、観るべきところの多い作品なのは感じました。

本作の避けて通れないポイントは、やはり超低予算ということでしょう。
なんと製作費がたったの45ポンド、日本円にして6000円にも満たない予算です。
『スーパーエイト』の劇中で小学生が作ったゾンビ映画の方がまだ予算かかってそう。
低予算映画というのは、少ない予算しか付かず、その範囲でなんとか製作することで、
結果的に低予算映画になってしまうものであり、自ら望んで撮りたいものではないです。
しかし本作の45ポンドというのはいくらなんでも低すぎで、
意識的に低予算映画にしたものと思われます。
その程度の金額なら、貧乏なボクでももう少し捻出できるもんね。

ただ6000円あれば誰でもこんな作品が撮れるというわけではないです。
もちろん脚本を書いたりや撮影の技術や才能も必要ですが、
それ以前に、もとからある程度は映画が撮れる環境があることが必要です。
本作の出演者やエキストラは、知り合いやフェイスブック等で集めた有志なので、
ギャラは一切払ってないそうですが、それを可能にするには人脈が必要です。
本作における製作費というのは、撮影中に新たに買い足さなければいけないものの代金で、
ほとんどの小道具や特殊メイクの化粧等は、監督やスタッフの持ち出し。
なので、撮影前に購入しておけば、製作費に計上されないというだけで、
実際には何十倍もの費用がかかっているはずだと思います。
編集にはアドビの映像編集ソフトを使っているそうですが、
もともと監督のパソコンにインストールされていたというだけで、
それだけでも買ったら数万円しますもんね。
なので、ただ才能と6000円の予算だけでは逆立ちしても作れない作品です。
ちょっとした本作の逸話ですが、その6000円の内訳は、
ロケに持ってくるのを忘れたフィルムや小道具の現地調達費や、
タダで参加してくれたエキストラに対するお茶菓子代だったそうで、
ほとんどが追加的に発生してしまった費用であり、
本来なら1ポンドもかからなかったかもしれないらしいです。

もうひとつのポイントは、ゾンビを主人公にした史上初の長編ゾンビ映画であること。
たしかに、終盤でゾンビ化してしまう主人公はけっこういるけど、
はじめからゾンビが主人公の作品ってのは見たことなかったかも…。
ゾンビ映画は成熟しきったジャンルで、もう全てやり尽くされていると思ってましたが、
まだまだ可能性はありそうです。
主人公をゾンビにすると、なんだかコメディになってしまいそうですが、
本作は意外なことにかなり切ないゾンビ映画になっています。
感情を持たないゾンビが主人公なのに、なぜ感情移入できてしまうのか、
なぜこれほど情緒的に描けるのか、ちょっと不思議な体験でした。
ただこの主人公のゾンビ、コリン(アラステア・カートン)が常に中心なわけでもなく、
けっこう脇道に反れるんですよね。
コリンのお姉さん視点の話だとか、大量のゾンビに襲われるグループとか、
ゾンビを弄ぶ男とそいつに騙される女性や、ゾンビ狩りをする暴力的な人間たちの話など、
人間がメインになっているシーンもかなり多いのですが、
それらはホントにありきたりな展開で、単にチープなゾンビ映画であり、どうにも退屈。
コリンだけの話では長編にするには間が持たないと考えたのかもしれませんが、
主人公がゾンビなのは本作を特徴づける大切なポイントです。
それを薄めるくらいな、短~中編映画としてまとめてしまった方がよかったかも。

本作には超低予算と史上初のゾンビ視点という2つのセールスポイントがあるわけですが、
どちらかひとつでも十分売りになるものを、2つ合わせたら更なる相乗効果になった、
…かといえばそうでもなく、ゾンビ視点というアイディアは、
もっと予算をかけて作るともっと面白いものにできそうな気がしました。
特に低予算映画がゆえのハンディカメラによる撮影は、
映像(特に特殊メイク)の粗を目立たせない効果と、POV的な臨場感を生んではいますが、
POVはカメラマンの存在を強く意識される演出であり、
せっかくのゾンビ視点が活かされないというジレンマがあります。
それと単純に解像度や(意図的な)手振れが酷くて、映像が不明瞭、見にくいです。
ゾンビ視点は、低予算でも魅力的なものを作ろうと考えたからこそ出た
奇抜なアイディアだろうから、切り離せるものではないのかもしれませんが、
もし予算をかけたら、ゾンビ視点の設定を更に活かせるアイディアもあるかもしれない。
低予算がゆえのスキも多い作品なので、予算付けてリメイクしてもいいかもしれません。

超低予算ということに関しても、ゾンビ映画は低予算が基本なので、
45ポンドという額面ほどのインパクトは受けません。
むしろ低予算を銘打ってはいる上記の怪獣映画『モンスターズ 地球外生命体』や、
SF映画『スカイライン-征服-』など、本作からすれば何千、何万倍もの予算がかかっているけど、
普通ならば多額の費用を必要とするようなジャンルであるそれらの作品の方が、
予算に関するインパクトは強いと感じます。

あと、いくらゾンビ映画としては斬新なアイディアだったとはいえ、
一般的にはジョージ・A・ロメロの流れをくむゾンビ映画の亜流であることは否めず、
そのジャンルにある程度の関心があり、見慣れている人じゃないと、
なにが面白いところなのかわからないんじゃないかと思います。
情緒的なドラマ性だけでなく、もっとホラーとしての怖さを描けていれば、
ゾンビ映画ファンだけでなく、ホラー好きや一般層にもアピールできて、
超低予算ホラー『パラノーマル・アクティビティ』のようにもっと話題作になれたかも。
現状ではゾンビ映画ファン以外にオススメできる作品ではありませんが、
ゾンビ映画ファンを名乗るならばマストな作品なので絶対見ましょう。

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