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映画 怪物くん

ORICON STYLEが10代から40代を対象に行った調査によると、
6割の人がマンガやアニメやゲームの実写化に否定的なんだそうです。
6割って意外と少ない気もするけど、過半数を超えてるんだから大勢としては否定的かな。
ボクは実写化にはけっこう寛容、というか推進派だと思うのですが。
今年公開された『あしたのジョー』『忍たま乱太郎』『うさぎドロップ』など思い返すと、
お世辞にもよかったとは言えない作品が多々あるのも事実です。

ただこれは、実写化云々よりも日本の映画やドラマの作り方が拙いだけじゃないかな?
例えばハリウッドだってアメコミを実写化していますが、ほぼ全て素晴らしい出来です。
新しくアメコミがハリウッドで実写映画化されると聞けば、
ただただ嬉しいだけで、否定的な感情なんて全く湧きません。
でももしアメコミが日本で実写化されると聞いたなら、不安しか湧きません。
つまり実写化そのものではなく、日本の実写化技術に懐疑的だってことです。

とはいえ『DRAGONBALL EVOLUTION』や『KOF』のこともあるし、
一概にハリウッドの実写化が素晴らしいとも言えません。
『AKIRA』のハリウッド実写化なんて、かなり不安ですし…。
ということはつまり、ただ日本のマンガやアニメが実写化には向かないだけかも?
だけど『モテキ』『カイジ2』なんかは悪くなかったし、向き不向きも原作次第かな?
来年は『ヒミズ』『アフロ田中』『テルマエ・ロマエ』などが控えていますが、
それらの実写化にはそれほど不安は感じません。
『逆転裁判』と『荒川アンダー・ザ・ブリッジ』はちょっと不安…。

ということで、今日はマンガ・アニメの実写映画化作品の感想です。

映画 怪物くん
怪物くん

2011年11月26日公開。
藤子不二雄A原作、テレビドラマ『怪物くん』の劇場版。

怪物ランドの王位継承式の日、怪物くん(大野智)は国民から大ブーイングを浴びてしまう。怪物くんは何もかも投げ出し、お供を連れて日本へ。ところが、着いたところは日本ではなく“カレーの王国”。そこで怪物くんたちは権力者ヴィシャール(上川隆也)に頼まれ、反乱軍に捕らえられたピラリ姫(川島海荷)と王子様を救出しに向かうが……。(シネマトゥデイより)



本作は去年日本テレビで放送されていたドラマ『怪物くん』の劇場版です。
放送当時は全く興味がなかったんで、一度も見てませんが、
劇場版である本作には正直かなり期待をしていました。
その理由は、本作と似た経緯(マンガ原作ジャニ主演)で劇場版化された『こち亀』が、
テレビドラマは大不評だったのに劇場版はかなりよかったことが一点。
(テレビドラマの評価を引きずっていたため集客はできませんでしたが…。)
そしてもう一点は、去年のボクのベスト邦画だった『ちょんまげぷりん』の監督で、
今一番鉄板な監督・中村義洋が劇場版の監督をするということで、
どう転んでも面白い作品になるだろうという確信がありました。
しかしその期待は無残に打ち砕かれ、本作は年間ベストどころか、
下から数えて片手に余るほどの凡庸な子ども映画、アイドル映画となっています。

中村監督の近年の作品はどれも素晴らしいものだし、全部好きだし、
今でもすごい監督だとは思っているのですが、本作で多少認識を改める必要があります。
今まではオススメの監督を聞かれたら、一番に中村監督を挙げていましたが、
本作がキャリアに残ってしまっていては、もう彼を人に勧めることはできません。
なんで彼がこんな作品のオファーを受けてしまったのか、悔やまれてなりません。
本来ならばこんなタイプの映画は撮る人じゃないんですが、
関ジャニ∞の錦戸亮主演の『ちゃんまげぷりん』が予想外に好評だったために、
ジャニーズ御用達監督として白羽の矢が立ってしまい、断れなかったのかも…。
また、一度くらい3D映画や子ども映画を経験しておきたかったのかもしれません。

「怪物くん」という作品自体は、実写化向きではないとは思いますが、
それほど悪い素材だとは思いません。
中村監督ならば、もっとおいしく調理できたはずです。
でも今回はテレビドラマの劇場版だし、オファーを受けた時点で脚本も完成していたので、
監督としてやることは、それを映画サイズに調整するだけ。
中村監督は企画立ち上げから脚本執筆から自分で参加するタイプの監督ですが、
今回はただ撮るだけの雇われ監督に徹したんだと思います。
映画は監督が最重要だけど、テレビドラマは脚本家が最重要なので、
劇場版である本作でも脚本家を尊重してしまったんじゃないかな?
その脚本家はテレビドラマの時からの脚本家なので、
結局テレビドラマを映画の尺でやっただけの、最も浅はかな劇場版に仕上がっています。

とはいえ、尺だけではなく予算も映画サイズ。
本作には邦画最高レベルの20億円の製作費が投じられています。
さすがは日本一人気のあるアイドルグループのメンバーの主演作、
かなり期待されていたみたいですね。
ところが、そんな巨額の予算がどこに投じられているのかわからないくらいに、
かなりチープな映像で…。
CGは教育番組レベルだし、特殊メイクは特撮ヒーローレベル…。
特に酷いと感じたのがアクションシーンです。

主人公の怪物くん(大野智)は火を吐いたり腕を伸ばしたりできるのですが、
その特殊効果に頼りっぱなしで、怪物くん自体はほとんど動きません。
おそらくこのCGスタッフの技術では、役者の動きに合わせてCGが作れないので、
大野くんになるべく動かないように指示しているのでしょうが、
動くのはチープなCGで作られた腕ばかり、
全然アクションしないアクションシーンなんて、面白くもなんともないです。
ボスの巨大化した岩石男なんてもっと動きが悪く、
そいつの攻撃方法は岩を撃ち出して、怪物くんにぶつけるだけです。
その巨体を活かして大怪獣のように暴れまくれば楽しいでしょうが、
そんなCGIキャラを自在に動かせるだけの技術力もないのでしょう。
まさかそんなチープな特殊効果に製作費の大半が使われたんだとすると、
日本の特殊効果の技術に絶望感を感じるので、そうではないことを祈ります。

もうひとつ、大金が使われたとすれば、本作のために敢行したインドロケです。
劇場版になると内容をパワーアップすることに心血を注がず、
馬鹿の一つ覚えのように海外ロケをして、ロケーションだけを豪華にするのが、
テレビドラマの劇場版のあるあるネタのひとつですが、
本作は前述のように特撮がメインのファンタジーであるため、
ほとんどはグリーンバックによる合成だったり、セット内での撮影のシーンばかり、
インドらしい町並みや自然の情景は全くと言っていいほど登場せず、
海外ロケした意味があるのかも疑問です。
キャストもテレビドラマからのレギュラーはもちろんのこと、
新キャラ、モブキャラに至るまで日本人(と韓国人)で、
せっかく海外なのに現地のキャストはほぼ使用していません。
(日本人にインド人の恰好させている。)
きっとこのインドロケは、劇場版化に託けたドラマスタッフの慰安旅行ですよ。
それで邦画最高峰の製作費を浪費したんだとしたら、この出来には納得です。

そもそも、インドを舞台にする必要があったのかが疑問です。
ストーリー上でインドらしいところなんて、カレー以外には全くないし、
そもそも怪物くんがカレーが好きだなんて話聞いたことないから、
カレーを題材にする必然性すらありません。
(怪物くんはあんみつが大好物らしい…。)
おそらく、まずインドロケありきで脚本を書いたんだと思われます。
インドを舞台にしたいのなら、せめて敵の怪物くらいはガルーダとかナーガとか、
もっとインドらしい怪物をチョイスすればいいだろうに、なんだよ岩石男って?
インド人にしても貧しくて強欲な民俗みたいな描き方してるし、
こんなインドに対する敬意を欠いた作品は、間違ってもインド人に観てほしくないです。
インドじゃなくて「カレーの国」だから問題ないとでも?

インド人にも観てほしくないけど、日本人にも観てほしくないです。
メインターゲットであろう子どもたちには特にね。
なぜなら本作の日本語の乱れは凄まじく、教育上よろしくないから。
本作の主要なテーマは「ワガママ」についてです。
怪物ランドの王位を継承することになった怪物くんですが、
彼のあまりにワガママな態度を国民から非難され、王位継承を反対されます。
それでも最後までワガママを言い続ける怪物くんですが、
最終的にはワガママであることを逆に賛美するような展開になるのです。
本作では「ワガママ」の真の意味を「信念を貫き通すこと」と解き、
ワガママであることを是とするのですが、
もちろんそんなのはワガママの本当の意味ではありません。
「ワガママ」とは「他人を顧みず、身勝手にふるまうこと」です。
子ども映画だからこそ、日本語は正しく伝えるべきです。
嫌いなものを食べないことが、信念として称賛されていいはずはないです。

とはいえ、本作の本当のターゲットは大野くんのファンかな?
というか、彼のファン以外は観る価値がないかも。
マンガやアニメ「怪物くん」の往年ファンが観に行っているとは思えませんが、
原作ファンのためのサービスもあります。
怪物くんのお供の3人組によるアニメ時代のEDの合唱シーンなどがそうですが、
怪物くんと仲違いし、袂を分かった直後のシリアスな展開で、
陽気なED曲「おれたちゃ怪物三人組よ」を歌うのも変だし、
歌詞も「坊ちゃんのためなら~♪」って内容で、展開にそぐわないです。
ファンサービスのつもりだろうが、なんでも安易に詰め込めばいいってものではないです。
もっとTPOを考えましょう。

中村義弘監督、今回は脚本家がダメだったことにしておくので、
次回作で必ず汚名返上してください!

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