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恋の罪

園子温監督と、監督のご贔屓女優の神楽坂恵が結婚しましたね。
映画監督が出演俳優と結婚だなんて、商品に手を付けてるようなものだと思いましたが、
なんだかんだで、古今東西・洋邦問わず、女優と結婚する映画監督は多いです。
今年は満島ひかりも主演作を撮った映画監督と結婚しましたしね。
まぁ(キャスティングの裁量権のある)映画監督も、
その女優が気に入ったから起用するんだし、女優側も好意があればくっついて当然か。
その映画監督が映画を撮り続ける限りは、女優業の失業も心配ないしね。
特に神楽坂恵なんかは演技力よりも体を売りにするセクシー女優だし、
園子温監督が見捨ててしまえばその末路は…。
というか、彼女をセクシー女優にしてしまったのは園子温監督自身だし、
ある意味では責任を取ったとも言えるのかな?

ということで、今日は園子温監督、神楽坂恵出演の結婚前の作品の感想です。
奥さんを起用するのはいいけど、某アンダーソン監督みたいに露骨な贔屓はやめてほしいです。

恋の罪

2011年11月12日公開。
園子温監督が「東電OL殺人事件」に触発されて撮り上げたサスペンスドラマ。

ある大雨の日、ラブホテル街にぽつんと建っているアパートで女性の死体が発見される。その事件を追う刑事の和子(水野美紀)は、幸せな家庭を持ちながらもずるずると愛人との関係を続けていた。彼女は捜査を進めるうちに、大学のエリート助教授美津子(冨樫真)や、売れっ子小説家の妻いずみ(神楽坂恵)の秘密を知ることになる。(シネマトゥデイより)



実際に起きた事件を基に描かれた物語ですが、
同じく実在の事件が基となった園子温監督の前作『冷たい熱帯魚』は、
元ネタの事件をかなり踏襲していたのに対して、
本作はインスパイアを受けた程度の踏襲になってます。
物語の舞台と、登場人物の立場がやや似ている程度の関連性です。

元ネタの事件は平成9年の「東電OL殺人事件」。
当時としてはなかなかセンセーショナルな事件だったようで、
マスコミも騒いだらしいですが、ボクは興味もなかったようで全然覚えてないです。
でも本作の元ネタということでちょっと調べてみてから観に行きました。
ほぼオリジナルストーリーだったので、あまり意味はなかったですが…。
でも、「東電OL殺人事件」だなんて、今何かと話題の企業の社員の事件なだけに、
なんだかタイムリーなネタですよね。
ただ、3月11日以前にクランプアップしてしまっていたようで、
そんなタイムリーな話題は取り入れられるはずもなく…。
そもそも本作で描かれる事件の被害者女性はOLですらありません。
さらに意外にも主人公ですらないのです。

本作の主人公はその被害者女性が殺された殺人事件を担当する女刑事(水野美紀)です。
なので始めはてっきり、その女刑事が事件の捜査をしていくことで、
未解決である元ネタの事件を、園監督の解釈で解き明かすような、
刑事モノのサスペンスになっている映画と思ったのですが、全然違いました。
実はこの女刑事、表向きは主人公扱いなのですが、真の主人公ではありません。
もちろん、被害者女性も主人公ではなく、本作の主人公はとある主婦です。
その主婦は被害者女性と出会ったことで、事件に巻き込まれることとなる
この事件の重要参考人ですが、元ネタの事件にも存在しない完全オリジナルの人物です。
本作はほぼ彼女の回想のような形で、事件発生に至る経緯を追っていきます。

本作のキャストの中では、水野美紀はダントツの人気女優ですが、
彼女が演じる女刑事ははっきり言ってそれほど出番はありません。
女刑事のエピソードも、事件の捜査以外はほとんど取って付けたような程度のもので、
不倫の話とか、赤い服の女の幻覚を見る話とか、事件の大筋とは全く関係のないもの。
(不倫相手がアンジャッシュ児島だったのにはビックリしたけど…。)
女刑事は本作では狂言回しのような役割なので、むしろそんなエピソードのない、
普通の感覚の女性として描いた方が、観客にとっては観やすいと思います。
ただでさえ異常な登場人物が多い作品だから、狂言回し(進行役)まであんな淫乱てのは…。
女刑事の部下の若い男(五辻真吾)はまともな刑事なので、本作のオアシス的存在でした。
まぁ水野美紀も清純派のイメージをかなぐり捨て、のっけから体張って頑張ってましたが…。

肝心の刑事としての仕事も、彼女の捜査によって何か進展があるわけではなく、
終盤の犯人突然の自供により真相が見えてくるという感じです。
だから事件に関しても、女刑事はあまり活躍してないんですよね…。
その犯人も多くは語らず、自供中に自殺してしまいます。
なのに重要参考人(というか共犯者)として主人公の主婦が捜査線上に浮上するのは、
展開上ちょっと考えにくいもので、納得できません。
なのでサスペンスとして見ると、かなりお粗末なものだと言えます。

とはいえ本作をサスペンスとして観てしまったのは、ボクの勝手な思い込みで、
前作『冷たい熱帯魚』がクライム・サスペンスだったから、勘違いしてしまっただけのこと。
本作はサスペンスとして作られているわけではなく、社会派風味の人間ドラマです。
本作は、元ネタ事件の被害者であるエリートOLにしてもそうだけど、
本作の事件の被害者である美津子(冨樫真) のような仕事で成功した女性や、
主人公いずみ(神楽坂恵)のようなセレブ妻が、
金銭が欲しいわけでもないのになぜ売春に走ってしまったのか、
それに至る経緯やその心理状態を描いたサイコ・ロマンスなのです。

しかし、彼女たちの心理状態がボクにはよく理解に苦しく、
その経緯をいくら時間をかけて描かれていても、突飛に思えてしまいます。
それはその心境が哲学的すぎるためか、はたまたボクが男だからなのかわかりませんが、
これをちゃんと理解し、感情移入できる人なんてホントにいるのでしょうか?
なかなか訊く機会はないけど、女性は本作を観てどう感じたのか一度訊いてみたいです。
少なくとも、男である園監督の風俗嬢に対する解釈なので、
なんだかんだで男目線だし、男の方が理解できると思うんだけど…。

ボクが受けた解釈では、「体を金で売ることで自分を確立できる」という考え方だと思うけど、
それなら美津子にしてもいずみにしても、
それが目的ならばストリートガール(立ちんぼ)だけで事足りるはず。
わざわざ風俗店を介してデリヘルなんてする必要あるのか疑問です。
特にちょっと薹が立ってしまった美津子にとってはやりにくい形態だと思うし…。
いずみにしても彼女はそれ以前からAV嬢をしてるのだから、
「金もらってセックスする」ということなら、デリヘルやリスキーな立ちんぼしなくても、
目的は充分達成できていたはずです。
これではただ単に、いろんな売春方法を紹介したかっただけにしか感じません。
なお元ネタのOLさんは、ストレスによるセックス依存症だったという説が有力です。
それならなんとなく納得できますね。

そもそもボクは風俗とか行ったことがなく、あまり行きたいとも思わないので、
金銭が絡む如何にかかわらず、売春それ自体に理解に苦しみます。
まだ対価を得る風俗嬢側の方は(金銭目的なら)理解できなくもないけど、
金で女を買うという男の心境の方が、同じ男として理解できないです。
まぁボクは貧乏なんでそんな発想にならないだけかもしれないけど、
数万円払ってデリヘル呼べるだけの甲斐性のある男が、そんなに女に困るものかな?
ボクも好きな子にはけっこう高いプレゼントあげたこともあるけど、
好きでもない風俗嬢には一円も使いたくないです。
ましてやどこの馬の骨かもわからないストリートガールなんて、
金もらってもやりたくないと思うのが普通じゃないかな?
まぁボクの友人の中にも風俗大好きな奴もいるし、いざ体験したら嵌るのかもしれないです。
それにしてもヒロインいずみの夫(津田寛治)は相当な色魔なのに、
なぜセクシーな嫁さんとはセックスレスなわけ?
愛情はあるように見えたんだけど…?

理解できない、納得できないところが多く、園子温監督の作品の中では一番退屈でした。
(といっても、4作品くらいしか観てませんが…。)
どうしても『冷たい熱帯魚』と比較してしまいますが、
もっと娯楽性の強い作品を作る監督だと思ってたけど、本作はイマイチ…。
妙に哲学的で、アート系に走ってしまっているようにも感じます。
しかもあくまで哲学"的"なだけで、その実そう感じるだけで、何のことかわからないしね。
言ってしまえば、やたらエロ描写の多い昼ドラみたいな映画。
専業主婦が夫婦関係のストレスで売春に走ってしまう単なる愛憎劇でしょ。
園監督の持ち味であるエロは多いけどグロはそんなに多くはないし…。
そもそも元ネタの事件がそんなにグロい事件じゃないものを、
ファン・サービスなのか、あえてグロい猟奇事件にしているだけだしね。
そこは無理矢理なので、グロい猟奇殺人である必然性も感じられないし…。
なにより残念なのはユーモア(特にブラック・ユーモア)が全然足りてないってこと。
前作『冷たい熱帯魚』はエログロだけど、度が過ぎていて笑いどころも多かったのに、
本作の笑えるところは一カ所だけ、美津子の母(大方斐紗子)の登場するシーンだけ。
あとはエロいのに妙に神妙な、リアクションに困る内容になっています。
美佐子や風俗店店員のカオルをただのイカレた人物として描くのではなく、
もっと個性的なサイコ野郎として描くと面白くなったかもしれません。

本作は水野美紀の全裸や、女優の濡れ場などで、
セクシャルさを売りにしているだけの、普通の日本映画です。
普通の日本映画としてはつまらないわけではないけど、
鬼才・園子温監督に対してはその程度の作品では満足できません。
彼には、エロを抜きでも、センセーショナルな内容になる作品を撮ってほしいです。
…で、そんな鬼才監督の次なる作品が来年早々公開となる『ヒミズ』です。
これはエロもグロもない作品で、大手シネコンチェーンでも公開が予定されているような、
園監督初のメインストリームな作品となっております。
まさかの漫画原作映画で、しかも青春映画らしいです。
園監督の今までの作風を思えば、「大丈夫なのか」と心配知ってしまいますが、
世界三大映画祭のヴェネチア国際映画祭では高い評価を受け、鳴り物入りでの凱旋公開です。
エロがなくてもちゃんと評価されてるし、本作よりは期待できるような気がします。

しかし、本作『恋の罪』は実在の事件を基にした3本の映画、
いわゆる「家賃三部作」の2本目だったはず。(一本目は前作『冷たい熱帯魚』です。)
「家賃三部作」とは、監督が家賃を支払うための必要性にかられて撮った作品という意味で、
園子温監督レベルの映画監督でも如何に儲からないかという皮肉的な表現です。
しかし、ここ1~2年で急激に彼の国内外の評価が高まり、
『ヒミズ』みたいな大規模公開できる作品の監督ができるような
王道監督の仲間入りをしてしまった園子温監督。
きっと家賃に困るような生活とはオサラバしただろうし、
はたして「家賃三部作」の最後の一本は製作されるのでしょうか?

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